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アイデアを刺激する 最新科学技術キーワード


新構造システム建築

震度7の大地震に遭っても使い続けられる―。自動車や造船産業とともに高強度化技術を培ってきた日本の鉄鋼メーカーと、インフラづくりで高度経済成長を支えてきた建設業界のコラボレーションによって、ついに"究極の建築物"が姿を現した。経済産業省、国土交通省などの支援を受けた新構造システム建築物研究開発合同委員会が2004年度から研究開発に取り組んできたプロジェクト「革新的構造材料を用いた新構造システム建築物」。今年1月の実証実験でその性能が証明された。

【使用実績は一部】

新構造システム建築物を支える高強度鋼材は、引っ張り強度が1平方ミリメートル当たり780ニュートン(800ニュートン級)、降伏強度が同700ニュートンという強度を持つ。現在、建築分野で使用されている鋼材の引っ張り強度は、同400―490ニュートンのものがほとんど。その倍近い800ニュートン級の使用実績は、高層ビルの一部など片手で数えるほどしかない。

とはいえ、自動車や大型のタンカー・コンテナ船、建設機械などには800ニュートン級の鋼材が使用されており、鉄鋼メーカーにとって製造面でのハードルは高くはない。課題は高強度になるほど鋼材の溶接がしづらくなること、そしてコストの2点に尽きる。

新構造システム建築

新日本製鉄建材事業部建材開発技術部マネジャーの志村保美さんによると、まず溶接性の問題に対しては「溶接なしで建築できるようにすればいい」と発想そのものを転換。梁(はり)や柱を結合する際には、ボルトなどで止める乾式接合を採用した。これにより、解体する場合でも「ボルトを外すだけで済むため、解体作業のコストを削減できるし、鋼材をリユース(再使用)しやすくなる」(志村さん)そうだ。プロジェクトでは施工や管理のしやすさに加え、リユースをより円滑にするため、鋼材一つひとつにICタグを付けて管理する実験も併せて行った。

【厚さ・量とも半分で】

さらに「溶接がなければ合金添加もしなくて済む」(同)という利点もある。一般に鋼材の強度を高めるにはニッケルやクロムなどさまざまな合金を添加する必要がある。その分、コストが高くなるため極力、合金の添加量を抑えて強度は熱処理で出すようにした。溶接が不要となれば、溶接性を改善するために添加する合金も不要となり、さらにコストを下げられるわけだ。

実際の価格について、新日鉄の志村さんは「強度が2倍になれば、厚さは半分で済む。結果として、鋼材の使用量は半減するので、あとは鋼材コストを2倍以下に抑えればいい」と説明する。

【費用対効果の均衡点】

実証研究のために建てられた実験棟

実証研究のために建てられた実験棟

まるで巨大な鳥かご―。これが今年1月、新構造システム建築物の研究開発の集大成として、実スケール実証実験が行われた建築物。800ニュートン級の鋼材を組み上げた高剛性の外殻構造部分と、利用空間となる内側のボディー部分が制震ダンパーでつながれている。実験では起震機で再現した震度7クラスの地震に対し、柱、梁、床などの主要構造部材が無キズで、ボディー部分では揺れを7分の1に低減できることが確認された。

建設を担当した竹中工務店は鋼板を溝形に曲げ加工した梁の柱接合部(仕口)だけを平板のまま残し、組み立て柱となる山形鋼で挟み込んでボルト固定する「ノンフランジ仕口」を新たに開発。同社エンジニアリング本部副本部長の油川真広さんは「薄い鋼板の柱・梁を、溶接レスで確実に摩擦接合する手段」と胸を張る。

新構造システム建築物の研究開発は08年度までの5年間で要素技術が確立され、いよいよ実用化段階を迎える。民間側の参加団体・企業で事業化に向けた普及・啓発組織「新構造システム建築物普及連絡会」(仮称)の設立準備が進んでおり、先行して有志による有力不動産ディベロッパーへの技術説明も始まった。

鋼材価格の問題は残るものの、「実際の建築費に占める構造躯体のコストはほとんど3分の1以下」(油川さん)という事実もあり、すでに費用対効果の"均衡点"は手が届くところまで来ているようだ。

展望・この技術

駄物から脱却へ

高炉を持つ鉄鋼大手メーカー間では、建設用鋼材を意味する「駄物」という別称がまかり通ってきた。自動車や電機、造船向けに代表される構造用鋼板が厳密な成分・組織設計や高度な熱処理技術により強度や加工性を高めてきたのに対し、鉄筋やH形鋼などの建設用鋼材は極端な言い方をすれば「決まった形の鉄であればいい」といった感覚だったのだ。

構造用鋼板の多くは大口需要家と価格交渉して直接納入する"ひも付き"契約で、安定収益源となっている。一方、建設用鋼材は市場でスクラップを原料とする電炉メーカーや中国などからの輸入品とも競合し、相場色が強いことも背景だった。

今回のプロジェクト「革新的構造材料を用いた新構造システム建築物」は、建設用鋼材が駄物から脱却するきっかけになるかもしれない。


掲載日:2009年9月17日

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