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アイデアを刺激する 最新科学技術キーワード


高度浄水処理

蛇口をひねれば当たり前のように流れてくる水。飲んでもおなかを壊さない「安全な水」は、タダで手に入るものだと日本に住む私たちは考えがち。ところが、世界には安全な水を安定供給できない国がまだまだある。私たちが安全でおいしい水道水を口にできるのは、高度な浄水処理技術のあるおかげ。さらに浄水度を上げた次世代型の水道施設づくりに乗り出そうとしている大阪市水道局と、安全な水のため、さまざまな分析・監視技術を持つ大阪府水道部を訪ねた。

【"だだ下り"今は昔】

「漫才のネタで『淀川の水飲んで腹だだ下り』というのがあった」と話すのは大阪市長の平松邦夫さん。「それが今では普通に飲めるどころか、おいしい水になった」と水自慢に余念がない。

おいしくなった秘密は高度浄水処理にある。以前のクサーいニオイや"だだ下り"(下痢)の原因だった微生物の除去を目的に、大阪市で最大規模の柴島(くにじま)浄水場(大阪市東淀川区)を高度浄水処理施設に整備。1992−99年度での総事業費は753億円にものぼる。

高度浄水処理

高度浄水処理のポイントはオゾン処理と粒状活性炭による分解処理だ。汚泥などを沈殿させた後、高度浄水施設へと水が運ばれる。

施設でのファーストステップは中オゾン接触池でのオゾン処理。カビの原因になる有機物質を分解したり、"黒い水"の元になるマンガンを酸化させ、ニュートラルな状態にしたりする。柴島浄水場で使用するオゾンは、電圧6400ボルト、周波数500−720ヘルツの電気で放電を起こし、空気中の酸素の一部をオゾンに変えている。

"水の旅"はまだまだ続き、急速砂濾過池を通過。「後オゾン接触池」でカビ臭や、発がん性が疑われる環境汚染物質トリハロメタンの原因となる有機物質の分解と消毒を行い、粒状活性炭(GAC)吸着池にたどり着く。GACは粒の中に孔が空いている活性炭。1グラム当たり1000平方メートルという表面積を持つ孔にいる微生物が、オゾン処理で取りきれなかった有機物をキャッチして分解する。

その後、塩素処理を経て配水池に移動。00年3月には、市内のほかの浄水場でも高度浄水施設が完成、市内全域へ高度浄水処理水の給水を始めた。

【ナノフィルター】

次世代の浄水技術を研究する大阪市水道局の実験施設内部の様子(大阪市淀川区)

次世代の浄水技術を研究する大阪市水道局の実験施設内部の様子(大阪市淀川区)

さらに大阪市はナノメートル単位(ナノは10億分の1)の微細な穴で細菌などを取り除くナノフィルター(NF膜)を使った次世代型都市水道システムの構築にも乗り出す。柴島浄水場に実験施設を建設中で、秋には阪神水道企業団(神戸市東灘区)と共同で研究を進める予定だ。実験テーマはオゾンや活性炭を使う高度浄水処理のほか、加圧浮上分槽などを加えた高度浄水処理。現行技術の最適化・高度化を図る。

NF膜以外の次世代技術として、生物高速濾過装置(BRF槽)、浸漬(しんせき)マイクロフィルター(MF)膜などを使った実験も想定。BRF槽や浸漬MF膜はオゾンによる化学処理が不要になる。それに加え、「副生成物を抑えることができる」と大阪市水道局の原正之さんは期待を寄せる。ここで得られた結果をもとに10−20年後にも実用化に踏み切る考えだ。

【異常を自動判別】

大阪市水道局が販売するペットボトル入りの水「ほんまや」。価格は1本100円

大阪市水道局が販売するペットボトル入りの水「ほんまや」。価格は1本100円

「府民に水を送り出すという使命があるため、水質管理技術に力を入れている」と話すのは大阪府水道部の前床紀文さんだ。府では独自の監視技術を開発しているが、その中でとりわけ目を引くのが「コイセンサー」。

5個の水槽を用意し、最上流に常駐するよう飼いならしたコイが、毒物の流入など水質に異常が見られた場合、下流の水槽に逃げる習性を利用している。コイを監視カメラで撮影し、その映像を画像処理。コイの異常行動を自動的に判別している。

ところで、今までコイが下流に逃げてしまったことはあるのか? 前床さんによれば、「コイヘルペスの発生以外に、下流に逃げた事例はこれまでない」。この言葉に、コイヘルペスにかかってしまったコイには申し訳ないと思いつつ、ホッと胸をなで下ろした。

ほかに「ゆうきセンサー」は、ガスクロマトグラフ分析計による有害物質の自動連続監視装置。ベンゼンなど23項目の揮発性有機物質を連続して自動測定し、一定値を超えると警報を出す。

こうした分析技術が認められ、試験などを行う機関に求められる国際規格ISO/IEC17025に、従来の金属14項目に加え3月には水銀、陰イオン類、アルデヒド類、陰イオン界面活性剤など計9項目の金属分析が可能と追認された。「これだけの成分を分析できる自治体は珍しいはず」と前床さんは胸を張る。

展望・この技術

日本発の水ビジネスの期待も

平松邦夫大阪市長が「今では普通に飲めるどころか、おいしい水になった」と太鼓判を押す大阪の水。おいしい水を実現するには高い技術力、長い歳月、そして多額の資金が必要だ。浄水技術だけでなく、河川の浄化技術にも期待したいところ。橋下徹大阪府知事も「川で泳ぎたいですね」などと事あるごとに話している。

いま水処理技術の海外展開が、財界や自治体、企業などを巻き込んで動きだそうとしている。世界的な水資源の争奪戦が激化しそうな様相を帯びるなか、時代は"水の産業革命"を迎えようとしている。技術と政治の両面をクリアしていけば、日本発の水ビジネスとして、海外の水メジャーに対抗できる日が来るかもしれない。


掲載日:2009年9月10日

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