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アイデアを刺激する 最新科学技術キーワード


有人宇宙実験棟「きぼう」

地球周回軌道に浮かぶ国際宇宙ステーション(ISS)。そこに設置された日本で初めての自前の有人宇宙実験棟「きぼう」が6月中にも完成する。無重力を利用して今後1、2年の間におよそ100の実験を行う。成果は広く公開し、科学の発展に役立てる計画だが、技術革新や産業創出への期待も膨らむ。日本の宇宙飛行士がISSに長期滞在する時代を迎え、最先端の宇宙研究開発を担う「きぼう」。宇宙利用拡大に弾みをつけるきっかけとなるのか。

【来月中にも完成】

ISSは米国、欧州、ロシア、日本、カナダなど15カ国が参加する国際共同プロジェクト。地球から高度400キロメートルの軌道上を周回し、大きさはサッカー場の規模に匹敵する。さながら宇宙の実験工場だ。その一角にある「きぼう」は大型バス1台分に相当する。ISSには米、ロ、欧などの実験棟もあり、各国独自の実験や共同研究が進む。

有人宇宙実験棟「きぼう」

2度にわたるスペースシャトル事故の影響で、ISSは当初完成予定だった94年よりも16年遅れて来年に完成する。日本はそのISSに7000億円超を投じてきた。現在、日本人として初めて長期滞在中の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士、若田光一さんが来月中にも、シャトルで打ち上げられた船外実験施設を「きぼう」に組みつけ、完成させる。

地球では約38億年前、初めて生物が誕生したといわれる。以来、重力のある地上で生物は生まれ育ってきたため、無重力の宇宙では、地上では考えられない現象に遭遇する。たとえば無重力だと体に負担がかからないため、高齢者に多い骨粗しょう症に似た症状が起きる。ISSに滞在中の飛行士は毎日2時間の運動を続けても、骨粗しょう症患者の約10倍の速さで骨密度が減少するという。

骨から溶け出したカルシウム分も尿に混ざり、尿路結石を発症しやすい。3カ月で大腿(だいたい)骨の骨密度も5%ほど減少し、半年間滞在すれば、大腿骨が元の状態に戻るのに3、4カ月かかるという。若田さんは被験者となって骨粗しょう症の治療薬を週1回、服用。薬が宇宙でどこまで効果があるか研究中だ。

【被ばく線量も計測】

「きぼう」の実験装置を紹介する若田さん

「きぼう」の実験装置を紹介する若田さん

またフクダ電子が開発した24時間計測可能な手のひらサイズの小型心電計を体に装着。小型ハイビジョンカメラを使い、電極の位置確認などを撮影してデータを地上に送り、地上での遠隔医療技術も検証している。JAXA宇宙飛行士健康管理グループ長の立花正一さんは「心電図の微妙な変化からストレスや睡眠不足も読み取れる。将来は自律神経のバランスの評価にも使いたい」という。

未来に向けた実験も始まっている。東京大学名誉教授の浅島誠さん(発生生物学)が提案した約3万5000個の遺伝子を持つアフリカツメガエルの細胞実験はその一つ。カエルの腎臓から取り出した細胞を培養し、無重力でも臓器形成が進むかどうかを観察。カエルは地上では数日で臓器を形成し始めるが、今回、宇宙では10日たっても形成できなかった。

浅島さんは「その原因遺伝子を突き止めて、臓器形成の仕組みに迫りたい」と意気込む。「この研究成果はいずれ人間が宇宙で暮らし、子孫を残すようになった時、役立ってくれるだろう」と期待する。

【ゴミ対策重要に】

ISS(国際宇宙ステーション)

ISS(国際宇宙ステーション)

一方、ロケットや衛星の残骸(ざんがい)物である宇宙ゴミへの安全対策も課題だ。宇宙ゴミは直径10センチメートル以上のサイズなら地上から監視できるが、10センチメートル未満なら監視できず、低軌道を周回するISSや衛星に衝突する恐れがある。

実際、3月には宇宙ゴミがISSにも急接近。衝突の恐れから、飛行士が一時、ISSにドッキングされた帰還用の宇宙船に緊急避難する事態も起きた。

将来、月探査や火星への重要な足がかりとなるISS。今後、日本の飛行士は1年から1年半に1人ずつ宇宙に長期滞在する。宇宙開発は利用のための開発へ大きく変わろうとしている。「きぼう」での実験を生かした宇宙開発は生命医学や環境改善など、地上に還元できる成果を産み出し、技術のブレークスルーへの引き金となる可能性もある。

展望・この技術

費用対効果念頭に波及効果の高い実験を

自前の日本実験棟「きぼう」がまもなく完成する。研究と実験を自由に行える意義は大きい。ただ、ISSの運用期限は2015年までで、期間を延長するかどうかはまだ決まっていない。オバマ米大統領は8月までにISS計画を含めて宇宙計画の見直す方針を示している。だが、関係者の間では、過去2度にわたるシャトル事故の影響で、ISS建設が延びたこともあり、その運用期間を20年まで延長するとの見方が強い。

すでに08年度までの22年間に、「きぼう」に投じた総コストは7600億円に上る。今後も運営費に毎年400億円の費用がかかり、運用期間も限定的とみられる。「費用対効果」を見据え、必要不可欠な実験を行わなければならない。それは科学的にも社会的にも波及効果の高い実験であるべきだろう。


掲載日:2009年7月 9日

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