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特定補助金活用事例

古代からある鋳造技術に最新のITを組み合わせ
若い社員に働きがいと楽しさを提供

株式会社伊藤鋳造鉄工所

 金属を熱して溶かし、砂で作った鋳型(いがた)に流し込んで固める鋳造(ちゅうぞう)技術は、遠くメソポタミア文明から使われていたといわれる古いものだ。長い伝統を持つ鋳造の現場に次々と現代のIT技術を取り入れ、若い従業員のやる気を引き出す経営者がいる。祖父が興した鉄工所の三代目経営者にして、海外にも生産拠点を展開する伊藤幸司(いとうこうじ)社長にお話を聞いた。

Q:ずいぶん大きくて立派な工場をお持ちです。従業員数も100名近く、海外にも展開されていますね。
伊藤社長:現在、従業員数は98名になります。8割が工場勤務で2割が事務系です。ベトナムのハノイに生産拠点がありまして、今も10数名、ベトナムの若い従業員が本社に来て学びながら仕事をしています。本社からベトナムに生産技術などの指導に行くこともあります。
 幸い、現在は大手メーカーさんから直受の仕事が多いのです。2003年に本社と工場をここ、東海村に移転しました。それ以来、直接取引いただけることが増えてきました。大手メーカーの担当者の方から「この工場と取引したい」と思っていただけるような、活気のある会社にしたい、といつも考えています。
 当社で作っている製品は、単価は高いのですが、短い納期でこれだけのものを作れるところは、そうない、と自負しています。自社だけが儲かればいい、とは考えず、利益が上がればお客様にお戻しする(次回、価格を下げる)という発想で、持続的にお取引いただけるように工夫しています。
Q:ものづくり関連の補助金を上手に活用されています。
伊藤社長:はい。おかげさまで当社の経営方針に合わせた技術革新に活用させていただいています。ただ、従業員には「単に補助金をもらうための申請はしないように」と常々、話しています。使わない機械を買ってもお金が無駄になってしまいます。
 会社の方向性としまして、2つのことを意識しています。1つ目は鋳造の工程をなるべく内製化すること。コスト削減になる上、必要な仕事を社内に取り込むことで雇用確保につながります。2つ目はIT活用による技術革新。経営の効率化につながりますし、若い人が働いていて、楽しい工場にしたい、とも考えています。
Q:具体的には、どのように活用されましたか。
伊藤社長:1つ目は鋳物を作る際に必要な砂型を作る機械の購入です。価格2300万円のうち、1000万円の補助金をいただいています。鋳物は、溶かした鉄を砂型に流し込んで冷やして固めて作ります。これは、遠くメソポタミア文明の頃から、また日本では奈良の大仏を作っていた時代から使われていた技術です。
 これまでは砂型の一部を外注していたのですが、この時に購入した機械を使い、砂型生産を内製化できたことで、砂型にかかるコストが大幅に下がりました。加えて、砂型を作る作業を自社内に取り込むことができたので、従業員の仕事を新たに生み出すことにもつながりました。これは平成26年にいただいた補助金で購入した機械の成果です。
 2つ目は、鋳物の削りかすである切り粉の塊を圧縮してリサイクルする機械の購入です。毎年、ものすごい量の削りかすを、コストをかけて捨てていたのですが、それでは資源もお金も勿体ない。工場から、なるべくごみを出さず、循環型の製造設備にしていくことは、時代の要請でもありました。ここでは、2000万円ほどの機械を購入し、うち約半分の1,000万円を補助金で充てさせていただきました。
 3つ目は、製造工程を管理するシステムです。特に、鋳造工場の工程管理用システムを開発しました。1300万円かかったうち、858万円の補助金で使わせていただいています。当社の製造する製品は、多品種少量という特徴があります。様々な機械の鉄で作られる部分を当社工場で作っています。中には、海外の地下鉄に使われるエンジンなどもあります。
 多種多様な製品を作っている上、一個の鋳物を作るのに関わる人が数十人いるため、管理に手間がかかっていました。かつては手入力していたのですが、新しいシステムを使うことで、バーコードで読み取って製品情報をデータ入力できるようになりました。今後は、各製品がどこにあるのかトラッキングできるようにしたい、と思っています。
Q:先ほど「鋳物はメソポタミアや奈良時代から」というお話がありましたが、お聞きしていると、最新技術を取り入れていらっしゃる印象です。
伊藤社長:日本の鋳物工場としては珍しいかもしれません。ITによるマネジメントを取り入れることで、作業指示書の確認が容易になり、担当者が変わっても知識の継承をしやすくなりました。
 工場の現場で、若い人が楽しく働けるようにしたい、と思っているのです。今、従業員の平均年齢が36歳。中小の製造業としては若い方だと思います。鋳造業という業界、私は父や祖父の会社ということもあり、好きで入って職人として働いてきました。今も鋳造技術については、社内の誰より詳しいという自信があります。
 でも、他の従業員は、最初からそこまでやる気があるわけではないでしょう。だったら、仕事を面白くして、働きがいのある工場を作ろう。皆がこの仕事を楽しくなるようにしたいと思っています。鋳物工場の仕事は体力を使う、大変な仕事です。でも社会にとって確実に必要とされるし、ものが出来ていく仕事は楽しいです。製造現場にITやロボットを取り入れることで、この仕事を楽しいと思ってもらえるようにしたいのです。
Q:若い従業員の気持ちをよく考えています。
伊藤社長:やっぱり、楽しく働ける会社にしたいのです。最初にお話しましたように、ベトナムに従業員を派遣したり、国内の大手企業で勉強させたり、人材育成の機会はなるべく活かしています。戻ってきた社員は生き生きと働くようになります。
 入社したら、古代メソポタミアからの鋳物の歴史を勉強したり、研修センターでは、灰皿や土瓶、鍋などを実際に作らせたりするのです。色んな工夫をして、この仕事を好きになって、長く働いてもらいたいと思っています。1人前になるのに10年かかる業界ですから、従業員は本当に大事なんです。

活用したSBIR支援措置

  • 平成26年度(補正) ものづくり・商業・サービス革新事業
    テーマ「鋳造現場に即した生産管理システムの最適化による工程の見える化と納期達成率向上」
  • 平成25年度(補正) 中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業
    テーマ「自動造型装置導入による再生砂を利用した鋳造資材の内製化と製造工程の開発」
  • 平成24年度(補正) ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金
    テーマ「鋳物切削粉の流通改善と圧縮装置導入による材料リサイクルシステムの開発」
会社概要
会社名:
株式会社伊藤鋳造鉄工所
設立年月日:
1946年2月9日
(現社長の祖父が個人で鉄工所を設立した日)
資本金:
1,000万円
株主構成:
経営陣など
本社所在地:
茨城県那珂郡東海村村松3129番地43(平原南部工業団地内)
会社サイト:
http://www.itofound.co.jp/

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