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特定補助金活用事例

世界初のマイクロ流路チップを用いた細胞分離装置を開発。
日本の生命科学研究と医療診断の競争力に貢献を目指す

株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ

 iPS細胞などを活用した再生医療やがん治療の研究が進むにつれて、医療業界での需要が高まっている機器がある。「セルソーター」と呼ばれる、細胞を分離して解析する装置だ。現在、日本で使われている生命科学用の分析装置や医療診断装置のほとんどが欧米製である。研究開発に基づく独自製品で、この状況を打破しようと試みる、バイオ・ベンチャーのオンチップ・バイオテクノロジーズ。創業者で代表取締役社長の小林雅之(こばやしまさゆき)氏に、創業の経緯や製品の特長、今後の戦略を聞いた。

Q:御社の製品「セルソーター」は、既存の細胞分離・解析装置と比べて、どこが革新的なのでしょうか?
小林社長:この分野では過去40年間、米国が先行したため、米国製品が世界市場の標準となっています。これまでのセルソーターの細胞分離方法は「Jet in Air方式」というもので、細胞を高速で分離できる利点がある一方、細胞にダメージを与えてしまう欠点があります。細胞がダメージを受けると、細胞本来の機能や特性を研究することが難しくなります。
 当社の方式は独自開発の「Flow Sift方式」でその特徴は、大きく3つあります。第1に細胞へのダメージがないこと。第2にサンプル間の汚染が起きないこと、第3に小型で使いやすいことです。
 1つ目と2つ目については「マイクロ流路チップ」を用いて、そこに細胞を流し込む方式によって実現しています。また、小型化できたため、市販の安全キャビネット内に設置することができ、オペレーターや外部への汚染を防止することも可能になりました。
Q:製品特性のカギを握る「マイクロ流路チップ」の開発において、どのような点に注意されましたか?
小林社長:チップの素材にこだわりました。ガラスの切削で作ると1点10万円程度と高額になるため、量産が難しい。プラスチックなら1点千円前後で生産できるため、使い捨てが可能となります。それにより、汚染を防ぎ細胞分離・解析における安全を確保できます。
 プラスチックでチップを作ると決めたことで、日本の製造業の強みを生かせるようになりました。成型を手掛ける工場に連絡を取り「こういうものを作りませんか」と私自身が持ち掛けて回りました。最初は先方も「そんなものが商売になりますか?」と不思議そうでしたが、一緒にやる気になって下さるところが数社出てきて、何度も試作を行いプラスチック製のチップを作ることができました。成型の技術は一朝一夕に習得できるものではありませんから、パートナーが見つかったことが大きな強みになりました。
 この技術の蓄積は欧米にはありません。仮に追いつこうとしても、すぐには出来ないでしょう。また、当社が先行して開発・製品化しており、当社の特許によって参入障壁を築いています。
Q:御社の「使い捨て交換マイクロ流路チップによるセルソーター」を使うことで、医療業界や個人の健康という観点で、どんな利点がありますか。
小林社長:がん治療を例にお話ししましょう。がん患者さんの血液には、ごく微量ながん細胞が循環していて、これが転移の原因になっています。ただし、血液1CC中には50億個の血球細胞があり、そのうち、問題になるがん細胞は数十個しかありません。これを的確に分離して解析することで、的確な抗がん剤を選ぶことができます。分離・解析の部分で、当社製品をお使いいただけます。
 従来ですと、生検手術でがん組織を入手し、組織染色や遺伝子解析でがんを詳しく調べて、使用する抗がん剤を決めていました。この方法では頻繁な検査は難しく、がん組織が取れない場合もあります。一方、血液検査なら採血量は数CC ですみ、定期的に行うことができます。
Q:既に製品は出荷もされている状態です。今後、クリアすべき課題や経営目標を教えてください。
小林社長:はい。海外展開と診断用途への展開です。
 既にバイオの研究用として50台近く売れています。日本のベンチャー企業が開発した生命科学用の分析装置で、販売価格が1000万円以上のものが累積販売台数50台以上を超えた例は当社以外にないと思います。
 しかし、海外ではまだ数台しか販売実績がありません。2019年頃までには海外での売上が国内と同程度になるように伸ばして行きたいです。
 診断用途は、先ほどお話した当社のセルソーターによる血液検査で癌の診断、最適な薬の選択を実現することです。そのためにはもっと多くのがん患者さんの血液での測定を行い、予後や生存率について、3~5年程度の情報を蓄積し、対照群と比較することで、臨床的な有意性を確認する必要があります。
 がん患者さんの人数と検査頻度から概算して、国内市場の規模は約600台弱、50%のシェアを取れると考えて280~290台を見込まれます。
Q:研究開発や事業化に際して様々な公的制度を活用されています。
小林社長:当社のマイクロ流路チップ・セルソーターに関しては、平成23・24年度(補正を含む)の補助金を使わせていただきました。
 また、平成28年に日本政策金融公庫の特別貸付制度「新事業育成資金」から運転資金4000万円の融資を受けています。こちらは、「資本性ローン」であり、財務体質の強化に役立ちました。同時期にベンチャーキャピタルからの資金調達(1億2000万円)を行ったのですが、資本性ローンの審査が先行し、こちらが通ったことで、VCからの資金調達もスムーズになったことがありがたかったです。同じ形で平成26年にも資金調達ができました。
 現在、オフィスは東京都小金井市にある東京農工大学の敷地内に設置された「農工大・多摩小金井ベンチャーポート」にあります。通常のオフィスビルに入居するより、信用力が増しており、人材採用時や大学・企業との共同研究に役立っていると感じています。
Q:社長はもともと、ベンチャーキャピタルご出身です。起業を決意したきっかけなどを教えてください。
小林社長:大卒後、VCに勤務していました。30代半ばを前に「どうせいつか死ぬのだから、世の中のためになることをやって、生きている証を残したい」と思うようになりました。
 大学時代学んだ経済発展論によれば、ある分野のリーディングカンパニーは、最も需要が伸びている国から生まれます。日本企業が半導体や自動車で世界を席巻したのは、日本が最需要国だったから。これからは日本の人口は急激に高齢化していきますから、医療関連、取り分け診断装置の需要が増えていくでしょう。
 しかし、医療機器や診断装置はほとんどが欧米製です。このままでは、高齢化で医療費が高騰する中、日本はダメになってしまう、と危機感を覚えました。自社オリジナル製品を開発し、日本の生命科学研究と医療診断での競争力維持・向上に貢献したい、と考えて今も頑張っています。

活用したSBIR支援措置

  • 平成24年度(補正)イノベーション実用化助成事業
    テーマ「ワイヤレス制御マイクロ流路チップ・セルソーターの開発・製品化」
  • 平成23年度 がん早期診断・治療機器の総合研究開発
    テーマ「血中分子・遺伝子診断のための基礎技術の研究開発(癌マーカー細胞群の濃縮・検出・培養技術の確立とその診断応用)」
  • 平成23年度(補正)戦略的基盤技術高度化支援事業
    テーマ「バイオハザード対応・無菌・ダメージレス・マイクロ流路チップ・セルソーターの開発」
会社概要
会社名:
株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ
設立年月日:
2005年4月1日
資本金:
1億円
株主構成:
経営陣・大手ベンチャーキャピタル5社
本社所在地:
東京都小金井市中町2-24-16 農工大・多摩小金井ベンチャーポート
会社サイト:
http://www.on-chip.co.jp

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