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ロボ・ステーション


新たなロボット像を示す 最新!システムインテグレート
人と同じ動きで綿菓子をつくるロボット開発、教示・再生の汎用性を示す【東洋理機工業】

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人と同じ動きで綿菓子をつくるロボット開発、教示・再生の汎用性を示す【東洋理機工業】

東洋理機工業
代表取締役社長 細見 成人

〒555-0012
大阪市西淀川区御弊島6-13-60
http://www.toyoriki.co.jp/

今から約50年前の1961年、米Unimation(ユニメーション)社が世界初の産業用ロボットとして「ユニメート」を導入した。産業用ロボットの基本原理の発明者であり、ジョセフ・F.エンゲルバーガーとともに同社を設立したジョージ・デボルは、1954年に「プログラム可能物品搬送装置」の特許を申請。ユニメートが実用化されたのと同じ1961年に認可を受けている。その後、ユニメートはわが国に技術導入され、国産初の産業用ロボットとなったが、彼の特許であるプログラム可能な搬送機械という考え方と教示・再生(ティチーング・プレイバック)は、いまも産業用ロボットの基本概念といえよう。なぜなら、現在稼働している産業用ロボットのほとんどがティーチング・プレイバック方式で動作しているのだから。

これを最も端的に感じさせてくれるのが、東洋理機工業が「2011国際ロボット展(iREX2011)」で公開した、綿菓子をつくる双腕ロボット「綿菓子ロボット」(写真)である。人と同じように、綿菓子機の中央にある釜にザラメを投入し、釜の細かい穴から糸状になって出てきたザラメを割り箸で絡め取る。安川電機の双腕ロボット「MOTOMAN-SDA10」をもとに開発しており、前回のiREX2009では同ロボットでお好み焼きを調理していた。ティーチング・プレイバック方式の普遍性の高さに、改めて気づかせてくれる。

写真:東洋理機工業が公開した、綿菓子をつくるロボット。鎌の細かい穴から糸状になって出てきたザラメを割り箸で絡め取ることができる(東洋理機工業内で調整中に撮影)

写真:東洋理機工業が公開した、綿菓子をつくるロボット。鎌の細かい穴から糸状になって出てきたザラメを割り箸で絡め取ることができる(東洋理機工業内で調整中に撮影)

ロボットによる綿菓子づくりは超D難度

披露した綿菓子ロボットは、商売のために開発したものではない。調理という高度な作業を通じて、非製造業における産業用ロボットの新たな用途開発を議論してもらうことを目的としており、iREX2007に出展した「たこ焼きロボット」(汎用6軸構成のロボットを使用)、上述のお好み焼きロボットに続く3回目の取り組みとなる(お好み焼きロボの動画はこちら)。

綿菓子をつくる作業は、人と同様のプロセスで進める。まず左手でスプーンを、右手で割り箸をそれぞれ把持する。専用ハンドは使用せず、いずれも2爪並行開閉グリッパーで把持する。次に、左手でスプーンを使ってザラメを綿菓子機の釜に投入。釜の細かい穴から糸状になって出てきたザラメを、右手で把持した割り箸で絡め取る。きれいに絡め取ったら、綿菓子機の脇に配置したスライダー機構に挿入し、最後に、右手でスライドさせて来場者の手前に綿菓子を差し出す(動画)。

1つの綿菓子をつくるのに綿菓子機の中で割り箸を計40回転させている。その間、回転させる位置を高さ方向で3段階(上・中・下)に調整しており、例えば、最初の10回転は割り箸を綿菓子機に深く入れた状態(下)で回転し、次の5回は浅く入れた状態(上)で、さらに次からは少し深く入れた状態(中)で回転させる(動画)。最適な割り箸の回転数および回転させる位置(高さ)を見出すことで糸状のザラメを絡め取ることを可能にした。

動画:綿菓子ロボットが綿菓子をつくる様子。割り箸を回転させる位置を段階的に変更することで綿菓子を絡め取っているのがわかる

過去に扱った対象物も超柔軟物であり、ハンドリングが非常に難しい。しかしながら、たこ焼きはたこ焼き機の溝の中で加熱することで、お好み焼きは鉄板で加熱することで、それぞれ形状が安定する。これに対し綿菓子は、糸状になって出てくるザラメは綿菓子機の中で不規則に回転運動をするうえ一向に安定しない。しかも、二度として同じような回転運動をすることがない。ゆえに、これまでに扱った対象物の中で最も扱いが難しく、超「D難度」の技を披露したといえよう。

ティーチング・プレイバック方式に代わる方式は?

また、片腕7軸構成の双腕ロボットを利用したことも綿菓子づくりを可能にした要因となっている。一般的な6軸構成では、手先の位置姿勢(XYZ)を指示すると各関節が一義的に決まるため、障害物と干渉があると回避することができない。これに対し7軸構成は1軸多いために、同じように指示しても腕のかたちを障害物に干渉しない位置姿勢に変更することができる。

綿菓子づくりでは、ザラメを釜に投入するとすぐに糸状になって出てくるため、割り箸を把持している右手を綿菓子機に素早く投入することが求められる。7軸構成の利点を生かしつつ、スプーンを把持している左手に干渉することなく、このような動作を行って見せた。それ以外にも、綿菓子機のカバーに干渉しないように動作をしたり、狭いブース内で右手と左手で割り箸を何度も持ち替えたりするなど、7軸構成の特徴を生かした動きをふんだんに披露した。

ただ、冒頭の話題に戻るが、綿菓子ロボットを完成できたのは「会期前日の深夜まで続いたトライ&エラーのすえ」と説明している。実環境でティーチングするがゆえの直感性と、「現物合わせ」による正確性を有するデボルの特許が綿菓子づくりでも有効に機能しており、いかに普遍的な特許であるかが伺い知れる。

本連載では、画像処理システムをはじめ周辺システムを組み合わせた高度なシステムインテグレート例を紹介してきた。
 ティーチング・プレイバック方式では、例えば組立作業では対象物とのわずかな位置ズレにより作業の失敗を招くため、治具などによる位置決めが求められる。また、ロボットが高い繰り返し精度を有していたとしても、作業環境側の不確定要因を押さえ込むのは不可能であり、一時的なエラーにより作業が停止することもある。さらに部品供給においては、ロボットに作業をさせるために、あらかじめ部品を整列しておくという“お膳立て”が必要とされ、これらのフォローはすべて人が行っている。したがって、ティーチング・プレイバック方式の限界を超えるための取り組みを紹介してきたといえるが、一方で、デボルの特許のように普遍的な技術ではなく、産業用ロボットそのものが進化しているのだろうかと疑問符がつく。

昨年秋に、産業用ロボットの課題を調査した際、『産業用ロボットの基本構造の革新・技術進歩』を求めるとの回答が最も多く寄せられた。回答した人たちも、きっと似たような問題意識を抱いているのであろう。今後の産業用ロボットのさらなる発展・普及を期すためには、デボルの特許と同様、普遍的な技術が創出されるべきだろうし、それへの期待を込め、本連載の終了としたい。

参考文献
[1]横小路泰義,“循環産業創成を目指した自律型セル生産ロボットシステム”,日刊工業新聞2011年11月8日付け別刷特集,8面,2011.

掲載日:2012年4月 3日

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