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ロボ・ステーション


新たなロボット像を示す 最新!システムインテグレート
遠隔操作で長期間の線量計測ができる移動ロボット【明治大学・黒田研究室】

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写真:半自律制御により長期間にわたって線量計測が行える移動ロボット「CERES」の試作機。サイズは縦2.2m×幅1.2m×高さ1.5mで、重量は60kg。最高速度は40cm/sec。放射線量計のほか、風向・風速・雨量などの気象観測機器や科学観測機器などを搭載する。

明治大学 理工学部 機械工学科
黒田洋司准教授

〒214-8571
川崎市多摩区東三田1-1-1
http://www.isc.meiji.ac.jp/~amslab/racing/index.html

「3.11」以降、被災地の支援に向けロボット技術を活用した提案がいくつかなされている。国際レスキューシステム研究機構や東大海洋アライアンスによる水中ロボットによる海中探査はその一例であり、これらの調査結果は港湾の復旧計画に役立てられている。

ただ、ロボット技術の活用が最も望まれているのは、遠隔操作による長期的かつ広範囲な線量計測であろう。

福島原発事故により高濃度の放射性物質が放出され、その影響により多くの住民が避難生活を余儀なくされている。チェルノブイリ原発事故による汚染が数十年にわたって続いていることからわかるように、放射線の観測は長期間にわたり、かつ非常に広範囲に実施しなければならないが、人手による観測は被曝量の増大を招く。また、定点観測用のモニタリングポストが設置されているが、計測したい場所をきめ細かく観測することができない。ゆえに、ロボット技術を活用した線量計測が強く求められる。

明治大学の黒田洋司准教授らは、遠隔操作により長期間にわたって線量計測が行える移動ロボット「CERES(Continuous Environmental Radioactive Emission Surveyor、セレス)」の試作機を、3月7日の実証実験(かわさき・神奈川ロボットビジネス協議会など主催)で公開した。携帯回線(FOMA回線)でインターネットに接続することで、計測した放射線データなどを送信することが可能。GPSの座標データおよび方位角などの情報も送信するため、PCや携帯端末(スマートフォン)を用いて遠隔操作することができる。また、畳一畳程度のソーラーセル(約180W)とリチウムイオンバッテリーを搭載しており、長期間にわたって単独で運用することができる。実証実験を通じてシステムの信頼性などを検証した後、新型CERESを開発し、実運用につなげることを計画している。

写真1:半自律制御により長期間にわたって線量計測が行える移動ロボット「CERES」の試作機。サイズは縦2.2m×幅1.2m×高さ1.5mで、重量は60kg。最高速度は40cm/sec。放射線量計のほか、風向・風速・雨量などの気象観測機器や科学観測機器などを搭載する。

写真1:半自律制御により長期間にわたって線量計測が行える移動ロボット「CERES」の試作機。サイズは縦2.2m×幅1.2m×高さ1.5mで、重量は60kg。最高速度は40cm/sec。放射線量計のほか、風向・風速・雨量などの気象観測機器や科学観測機器などを搭載する。


動画1:かわさき・神奈川ロボットビジネス推進協議会などによる実証実験で公開したCERESのデモ

はやぶさプロジェクトの知見を活用

黒田准教授は、「はやぶさプロジェクト」で小型ローバー「MINERVA(ミネルバ)」の自律制御の開発に携わるなど宇宙探査ロボットの研究開発でも知られている。これらの知見を有効活用して開発した。

例えば、ソーラーセルとリチウムイオンバッテリーとの組み合わせによる電源管理システムには、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙機に搭載されているものと同様の回路パターンを実装。また、小型PCにはMINERVA2に搭載されるものと同等のシステムを使用した。

遠隔操作による移動制御は、搭載したGPSとIMU(Inertial Measurement Unit、慣性計測装置)で得た情報をもとにPCや携帯端末で行う。GPSには、好条件であれば位置情報精度1m以下を確保できる「Differential GPS(DGPS)」(2つの受信機で測位した位置の差をもとに算出する方式、写真2)を使用。Googleマップ上でおおよその位置および方位情報を管理することができる。

これに加え、車体前方にステレオカメラを搭載することで、3次元計測により自己位置推定をしながら障害物回避を行うようにした(写真3)。ステレオカメラで計測した段差や傾斜角、地面の粗さなどの3次元地図情報からトラバーサビリティ(踏破可能性)を評価し、走行しやすい経路を生成して走行する。ゆえに、Googleマップ上で目標位置を指示すれば、トラバーサビリティを繰り返し評価して、そこに向かって自律移動することができる。また、ステレオカメラでは車線(白線)も認識できるため、レーンをキープしての移動もできる。

搭載したDGPS(写真2、左)とステレオカメラ(写真3、右)。ステレオカメラ計測した3次元地図情報からトラバーサビリティを評価して自律移動を行う。PCや携帯端末から遠隔操作が可能で、遠隔操作と自律移動を組み合わせた構成となっている。 搭載したDGPS(写真2、左)とステレオカメラ(写真3、右)。ステレオカメラ計測した3次元地図情報からトラバーサビリティを評価して自律移動を行う。PCや携帯端末から遠隔操作が可能で、遠隔操作と自律移動を組み合わせた構成となっている。

搭載したDGPS(写真2、左)とステレオカメラ(写真3、右)。ステレオカメラ計測した3次元地図情報からトラバーサビリティを評価して自律移動を行う。PCや携帯端末から遠隔操作が可能で、遠隔操作と自律移動を組み合わせた構成となっている。

ただし、建物や木の陰などに入り込むとGPS信号を受信できない場合があるため、実運用時は2台以上の複数台で運用する予定している。また、より信頼性の高い自律移動や障害物回避に向け、ステレオカメラを2組の構成にしたり、レーザレンジファインダーを搭載したりすることも検討している。
 2組のステレオカメラを搭載する手法は、アメリカ航空宇宙局(NASA)が開発する探査ローバーで利用されている。NASA用語では、遠方を捉えるカメラを「Navcam(ナブカム)」、近くを捉えるカメラを「Hazcam(ハズカム)」と表現されているが、このような構成を構想しているようだ。

なお、一見すると車体構造は華奢に見えるだろうが、ジオメトリ(幾何形状)を調整しやすくすることを意図して、組立家具を積極的に利用した結果である。設計パラメータはほぼ固まっており、新型CERESの設計に踏襲され、次期開発システムではロバスト性の高いハードウエアになると見込まれる。

信頼性を高めるための期間が必要

ただ、公開した試作機にはいくつかの課題を抱える。
 1つは夜間の消費電力。夜間はスリープモードへと移行し、その間は、1時間に6分間起動してヘルスモニタリングを実行するのみとしている。それでも3W程度の電力を消費するため、1週間ほど曇天が続けば復帰できなくなる可能性がある。現在、構想している改良案では、10日間程度はバッテリのみで稼働できるとしており、少なくとも1カ月間の単独運用に耐えるとしている。

もう1つは、FOMA回線による通信速度。FOMA回線のフルスペックの1/10程度の通信速度に設定しており、条件が良ければ300kbps程度を確保できるとするが、実際には悪条件下での運用が見込まれる。実証実験を通じて、通信ソフトウエアの改善につなげたいとしている(写真4)。また、ソーラーセルのサイズや駆動モータ(DCモータ×4)の容量(写真5)など、慎重にパラメータを算出してシステム設計を行ったが、あくまで机上のものであるため、実証実験の結果を次回の開発に役立てたいとしている。
 そのほか実証実験では、スリープモードへの移行と同モードからの復帰、計測データの自動アップロード、遠隔操作や踏破性能などの評価を行った。

スマートフォン上でカメラ映像を見ながら遠隔操作が行える(写真4、左)。4つのDCモータ(独maxon製)による4輪独立駆動方式となっている(写真5、右) スマートフォン上でカメラ映像を見ながら遠隔操作が行える(写真4、左)。4つのDCモータ(独maxon製)による4輪独立駆動方式となっている(写真5、右)

スマートフォン上でカメラ映像を見ながら遠隔操作が行える(写真4、左)。4つのDCモータ(独maxon製)による4輪独立駆動方式となっている(写真5、右)

福島原発の20km圏内での長期観測での利用を目指すが、まずは、夏頃をめどにハードウエアの信頼性を高めるとともに、無人運用試験や複数台による協調運用試験などに取り組み、新型CERESの開発につなげる。また、このような利用は提案段階にあることから、関係省庁との調整などについて知見があれば、ぜひ提供してほしいと、黒田准教授は述べる。
 CERESによる観測データは、黒田研究室ホームページに随時アップされているので、関心のある方は参照してほしい。

動画2:黒田研究室によるCERESの紹介ビデオ


掲載日:2012年3月21日

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