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ロボ・ステーション


新たなロボット像を示す 最新!システムインテグレート
顧客の行動を計測して、その人に合った商品を奨めるロボット【ATR】

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写真:店舗内外連携サービスの概要

国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
知能ロボティクス研究所
所長 萩田紀博

〒619-0288
京都府相楽郡精華町光台二丁目2番地2
http://www.irc.atr.jp/member/

近年、市場の成熟化に伴い、製品およびサービスのカスタマイズ化が進んでいる。単にカスタマイズするだけではなく個々人に合わせたトータル価値の提供が求められており、それに伴い、顧客とともに顧客価値を共創することの重要性が叫ばれつつある。

以前は、製品を販売した後やサービスを提供した後に企業が顧客調査をしなければ、使い心地をはじめ顧客ニーズを把握することができなかった。しかし最近は、BlogやSNSなどの発展により、ある強い興味を持った、あるいは専門性を持った顧客同士がWebサイト上にコミュニティを形成して自分の意見を述べるようになっている。顧客の興味や要望を理解しやすい時代になりつつあり、企業の多くは、これらのサイトをウォッチしたり、コミュニティを支援したりすることで開発のヒントを得るようになっている。広く捉えれば顧客価値の共創がなされているといえる。

しかし本来は、顧客が製品を使って、あるいはサービスを受けて、どのような体験をしているのか、また、どのような感情を抱いているのかをリアルタイムに把握し、それに応じて提案するのが理想的である。米国で影響力を持つ経済学者の1人だったC・Kプラハラード(2010年逝去)は、著書「価値共創の未来へ」[1]で価値共創が重視される時代の到来を予見し、それを可能にする技術基盤を有する企業が優位になることを主張した。その後、発刊した著書「新時代のイノベーション」[2]では、これを有する企業が業界内で飛躍的にプレゼンスを高めたことを紹介し、自身の考えが実証されたことに触れている。そして、これらの事例を通じて、ロボットの要素技術の1つであるセンサが重要な役割を果たすことが認識され始めている。

その先鞭といえる取り組みを展開しているのが、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)が提案する、店舗への誘導や商品レコメンド(推奨)が行える「店舗内外連携サービス・システム」である(図1)。後述する、実空間で商品レコメンドが行える仮想店舗「ユビマート」に、センサなどで取得した店舗外での購買行動を組み合わせることで、ロボットが顧客を該当する店舗に案内したり、来店した目的に応じて商品を推奨したりすることができる。顧客の移動速度から急いでいるかどうかも判定することができ、こうした顧客には優先的に対応するなど、実験を通じて、状況に応じた案内ができることを示している(動画)。

図1:店舗内外連携サービスの概要

図1:店舗内外連携サービスの概要

動画:店舗内外連携サービスのイメージ。急いできた顧客には優先的に対応して商品推奨を行っている

店舗内外の購買行動を計測して商品推奨

ユビマートは、「環境情報構造化」技術や「ネットワークロボット」技術(複数の異なるロボット連携するためのプラットフォーム技術)などの利用により、顧客の購買行動を自動で取得・蓄積し、解析することで、ロボットとデジタルサイネージを通じて、顧客に合わせて店舗内を誘導したり商品推奨をしたりする仮想店舗のことであるAmazon(アマゾン)などのECサイトでなされている商品レコメンドを、コンビニエンスストアを模した実店舗で実現しており、店舗内での顧客の動線や滞留場所、視線、商品を手にしたかどうかといった情報をもとに行う。例えば、顧客が「おにぎり」を手にすると「飲み物の販売棚」に誘導したり、販売棚に足を運んだときは、それに合った商品として「お茶」を奨めたりすることができる

環境情報構造化技術は、もともとは環境に埋め込んだ複数センサにより人の行動を計測し、状態を推定することで、ロボットにサービス提供(案内や誘導など)を促すことを目的に開発した技術だったが、購買行動の取得や蓄積、解析を行う中核技術として流用した。

新たに構築した店舗内外連携サービス・システムでは、これにロボットとレーザ測域センサ(LRF)で取得した、店舗外での購買行動を組み合わせることで、顧客を該当する店舗に案内したり店舗内で来店目的に応じた商品を推奨したり、さらには状況に応じて対応したりできるようにした。

開発したプラットフォームは、おもに「購買行動センシングシステム」と、ネットワークロボット含む「顧客・誘導レコメンデーションシステム」から構成される(図2)。

図2:ユビキタスマーケット(ユビマート)のプラットフォーム

図2:ユビキタスマーケット(ユビマート)のプラットフォーム

前者は、計測した顧客の位置と向き、視線、商品の位置情報を行動履歴として顧客行動履歴データベース(DB)に統合・蓄積し、位置情報を統計的に解析することで店舗内の場所や行動の意味づけを行う。基本的な処理は、上述のユビマートとほぼ同じである。また、場所や行動の意味づけなど購買行動の解析には、ユビマートと同様、環境情報構造化技術を活用し、店舗外にも拡張している(図3)。

LRFは店舗内に18台、店舗外に6台を設置しており、店舗内外のLRFの計測領域内に滞在する間に限定したIDを付与し、移動や滞留などの購買行動を取得する。また、移動速度をもとに顧客が急いでいるかどうかも判定することができる。

後者は、ロボットとデジタルサイネージを通じて誘導や商品推奨を行う。店舗内と店舗外のロボットは、ともにネットワークロボット技術上で動作させており、ロボット同士に加え、デジタルサイネージと連携しての情報提供ができる。店舗外のロボットが顧客と交わした会話情報は顧客行動履歴DBにアップされるため、店舗内のロボットが付与したIDをもとに顧客を特定し、それに対応したインタラクション(応対や会話など)ができる。

図3:ユビマート仮設店舗のおもな機能

図3:ユビマート仮設店舗のおもな機能

店舗内外における顧客の購買行動を連携してのサービスは、次のようなイメージで検証している。

店舗外のロボットが昼食を買いに来た顧客と、急いでボールペンを買いに来た顧客をそれぞれ該当する店舗に案内し、店舗内のロボットが、それぞれの目的に応じて売り場を案内。急いでいる顧客には、割り込ませて優先的に対応した(図4、5、動画)。

上述の動画で示した通り、それぞれの目的に応じて店舗および売り場を案内するとともに、急いでいる顧客に対しては、割り込み処理により優先的に対応し再度、元の状態に復帰できることを、実験を通じて示している。


図4(左)店舗内外連携サービスのイメージ。図5(右)店舗内外連携サービスのセンサシステムとロボットおよびデジタルサイネージの配置

まずは店舗コンサルとして展開

2011年のはじめに実施した実験では、実験には男性25名、女性25名の計50名が参加してもらっており、アンケート調査を通じて、ロボットへの親しみやすさが高く、「買い物が楽しくなる」といった好意的な回答が多くあった。これらのロボットをそのまま店員として使える可能性を感じさせた一方で、むしろ「買い物がしづらい」との回答が20%程度に上った。推奨のタイミングが合わなかったことに原因があると推定され今後、そのタイミングについて改善が求められるだろう。

とはいえ、ATRではそのままのシステム構成で事業化できるとは到底考えておらず、店舗コンサルと商品推奨、顧客誘導からなる「ユビキタスマーケットコンシェルジェサービス」での提供が妥当との見方をしている。開発したプラットフォームをユーザー企業に提供することで、購買行動にもとづくコンサルに加え、商品推奨や顧客誘導による成果保証型広告料(アフィリエーション)による収入が見込まれる。

特に、サービスイノベーションの創出につなげようとする「サービスサイエンス」における『観察』と『分析』のフェーズでは定量的な行動計測が求められることから、購買行動の計測を切り口とした、店舗コンサルを含むレンタル提供が実用化に向けた第一段階になると見ている。

【参考文献】
[1]C・K・プラハラード,ベンカト・ラマスワミ(有賀裕子訳),“価値共創の未来へ”,ランダムハウス講談社,2004.
[2]C・K・プラハラード,M・S・クリシュナン(有賀裕子訳),“イノベーションの新時代”,日本経済新聞社,2009.

掲載日:2012年3月 8日

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