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ロボ・ステーション


新たなロボット像を示す 最新!システムインテグレート
ワークの移動先を予測して把持、不規則運動をするワークの扱いで期待【IHI】

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検証システムによる予測技術の検証風景

IHI
代表取締役社長 釡 和明

〒135-8710
東京都江東区豊洲3-1-1
http://www.ihi.co.jp/

近年、ロボットビジョンの普及により位置が定まらないような対象物(ワーク)の把持が可能になっている。そして、計測した試作情報をフィードバック情報として用いるビジュアルサーボを利用すれば、移動量を把握できないワークでも対応することができる。

ただし、ビジュアルサーボでは高速カメラのほか、高速な画像処理システムや応答性の高いロボットアームが必要とされる。コスト面で大きな課題があり、生産用途での利用は難しい。また、ロボットビジョンをハンドカメラ(ロボットの手先に配置)として利用した場合、ハンドリングに伴い、ワークがカメラの視野から外れたり見失ったりする時間が生じる。

図1(左)移動量を把握できる搬送装置上でのワークのハンドリング 図2(右)ビジュアルサーボを用いたワークのハンドリング。移動量を把握できないワークも把持できる

図1(左)移動量を把握できる搬送装置上でのワークのハンドリング
図2(右)ビジュアルサーボを用いたワークのハンドリング。移動量を把握できないワークも把持できる

IHIでは、撮像周期が一般的なそれとほぼ同じハンドカメラを利用しながら、独自の運動推定アルゴリズムにより把持を可能にする技術開発に取り組んでいる。現在から約200ms(ミリセカンド)先の未来の位置の予測を可能にしており、この予測技術をロボットアームの制御に適用することで、不規則な移動をするワークでもハンドリングが可能になると期待される。

拡張カルマンフィルタで移動先を予測

実装した運動推定アルゴリズムには「拡張カルマンフィルタ」を使用。ロボットビジョンにより一定周期で対象物の位置姿勢を計測し、これにより移動先を予測する。

カルマンフィルタは、誤差のある計測値を用いて動的なシステムの状態を推定したり制御したりするフィルタの一種である。物体の位置と速度など時々刻々と変化する量を推定する目的で多用されている。ロボットビジョンのような用途では、画像の入力遅れを補償する目的で活用される例があり、先に述べたような、ワークがカメラの視野から外れたり見失ったりした時間が生じた際、その間の対象物の移動量を予測する手段として使える。

また、予測にかかる誤差を評価することで突発的な運動の変化を検出できる特徴も備えており、例えば、ラインの停止や他のワークとの衝突などにより対象物の移動量が変化しても、予測可能なタイミングを判定することができる。こうした特徴から拡張カルマンフィルタを利用するに至った。

まだ検証段階はあるが、IHIではハンガーに吊された状態での搬送を想定して、振り子運動するワークを例に技術検証を行っている。

構築した検証システムは、おもにハンドカメラを搭載する垂直多関節ロボット(ロボットアーム)と、ロボット正面に配置した、スライドテーブルに吊したワーク、ワーク側面に配置した固定カメラから構成。ワークはスライドテーブルの往復運動により振り子運動をする。スライドテーブルの位置情報はロボットに与えておらず、ハンドカメラと固定カメラだけを用いてワークの位置姿勢を計測する。計測結果から、拡張カルマンフィルタによりワークの角速度や、振り子運動の支点からワークの重心までの長さなどを推定し、推定結果をフィードバック情報としてロボットアームに入力する。使用したロボットアームの動作には約150msの動作遅れがあるため、推定結果を用いてワークの移動先を予測したうえで制御を行っている。

図3(左)検証システムの概要 写真1(右)検証システムによる予測技術の検証風景

図3(左)検証システムの概要
写真1(右)検証システムによる予測技術の検証風景

検証結果は非常に良好なものとなっており、既述の通り、ワークの現在位置を200ms事前に予測できることを確認している。またスライダが往復運動する際、折り返し時に発生する外乱が予測精度に影響を及ぼすが、拡張カルマンフィルタによる予測誤差を評価することによりワークの運動の変化を検出することも確認している。

予測する時間幅は約200ms事前まで任意に設定可能としており、ハンドリングに伴いワークがハンドカメラの視野から外れる時間分なども考慮して把持位置を予測できるとしている。

ハンガーに吊されたワークのハンドリングで期待

紹介した検証方法では、ワークの運動モデルは振り子の視点が等速直線運動をすると仮定している。ワークがモデルと異なる運動をした場合は予測が外れやすくなると懸念されるが、IHIでは運動モデルの適合度に応じて把持動作を開始したりキャンセルしたりすることで、高い成功率で把持できると見ている。ゆえに今後は、紹介した予測技術によるワークの移動先の予測値とモデル適合度を用いて、ロボットアームの動作の実現に取り組むとしている。また、検証では画像処理を簡単にするためにワークにマーカを貼付していたことから、マーカレスで、かつ複雑な運動をするワークにも対応する画像処理技術などの開発にも取り組む。

開発した予測技術は、ワークの把持のほか様々な用途への展開が見込まれるが、ハンガーで吊された状態で搬送される鋳物部品のハンドリングに有効と見ており、まずは自動車の生産ラインに向け提案することを予定している。

■参考文献
[1]江本周平,藤井正和,曽根原光治,“移動体把持ロボットに向けた状態推定手法による予測技術の開発”,ロボティクス・メカトロニクス講演会2011(ROBOMEC 2011),2011.

掲載日:2012年1月31日

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