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ロボ・ステーション


新たなロボット像を示す 最新!システムインテグレート
簡易教示やチョコ停回避など知能化技術を実装したロボットセル【IDEC】

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簡易教示やチョコ停回避など知能化技術を実装したロボットセル

IDEC
代表取締役会長兼社長 舩木俊之

〒532-8550
大阪市淀川区西宮原1-7-31
http://www.idec.com/jpja/

近年、変種変量生産への対応を目的に、一部製造業で生産拠点の国内回帰が進んでいる。これに伴いセル生産方式が導入されているが、今後の少子高齢化に伴う労働人口の減少や、アジア各国の人的資源を背景とした国際競争力への対応などを見据えると自動化が求められる。すなわち、ロボットを活用したセル生産システム(ロボットセル)への移行である。

IDECでは2000年からロボットセルを運用しており、産業用スイッチや産業用リレーなどの変種変量生産を行っている。併せて、ロボットセルの高機能化も進めており、「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」(NEDO、2007~2011年度)に参加して以降は、知能化技術ならびに関連するソフトウエア・モジュール(「知能化モジュール(※)」と表現されている)の開発に取り組んでいる。具体的には、ティーチング(教示)時間の自動化やチョコ停からの自動復帰などに関する知能化技術であり、現在これらの機能を実装した知能化モジュール群の公開に向け準備を進めている。

※:開発した各種知能化技術をソフトウエア・モジュールのかたちで実装している。後述のように、複数のソフトウエア・モジュールが連携して知能化技術を発揮するため、本文では「モジュール群」という表現を用いている。なお、これらモジュール群はロボット用ミドルウエア「RTミドルウエア」のフレームワークに準拠して作成している。

ティーチング時間を短縮する知能化技術

IDECでは、ロボットセルに6軸垂直多関節ロボットと4軸水平多関節ロボット(スカラロボット)を利用しており、これらの動作をターゲットに知能化モジュール群を開発している。

基本的なセルの構成から説明しておくと、これらの2台のロボットを中央に据え、その周囲に組立治具や部品トレイなどを配置している(画像1)。一度に多数の部品を把持できるマルチハンド(画像2)により部品トレイ(部品供給トレイ)から部品を取り出し、組立治具を用いて組み立て、完成品を部品トレイ(部品完成品トレイ)に並べるという動作を繰り返す。マルチハンドは工程に応じて自動交換が可能で、変種変量生産に対応する。

画像1(左):IDECのロボットセルの基本構成 画像2(右):外販を開始したマルチハンド

画像1(左):IDECのロボットセルの基本構成 画像2(右):外販を開始したマルチハンド

ロボットセルに限った話ではないが、ロボットを利用した生産システムではシステムの立ち上げに時間を要する。おもな要因の1つにティーチングがあげられ、正確かつ高精度に動作経路を定義するのに時間を要する。その自動化に向け開発したのが「教示支援モジュール群」である。

部品トレイからの部品の把持にかかるティーチングの自動化と、現場でのオンラインでの動作経路の修正作業(中継点の追加作業)をターゲットにしており、ロボットセル内に設置したステレオカメラを利用して行う。

同モジュール群の利用により、それぞれのティーチングは非常に簡素なものとなっている。
 前者では、まず部品トレイに付与した複数のマーカの3次元座標をステレオカメラで計測し、事前に登録した部品トレイのデータベースと比較して部品トレイの種類および位置姿勢を取得する(画像3・左)。部品トレイごとにマーカの配置が異なっており、把持対象の位置情報なども紐付けして登録されている。
 次に、得た情報をもとに把持対象の位置にハンドカメラを移動し、把持対象の正確な位置姿勢を計測する(画像3・右)。ステレオカメラによる計測でおおよその位置姿勢が得られるが、把持対象が微小部品になると高い検出精度が求められるので、ハンドカメラにより詳細な位置姿勢を計測するようにしている。これら一連の作業を実行するのみでティーチングを終えることができ、IDECによると2~3分程度で済むとしている。

なお、前半の作業に対し「概略座標補正機能」を、後半の作業に対し「詳細座標補正機能」をそれぞれ知能化モジュール群として用意している。

画像3:ティーチング時間の短縮。概略座標補正機能によりステレオカメラで部品トレイのマーカを検出して登録したトレイを識別(左)。詳細座標補正機能によりハンドカメラで部品の正確な位置姿勢を得る(右)。

画像3:ティーチング時間の短縮。概略座標補正機能によりステレオカメラで部品トレイのマーカを検出して登録したトレイを識別(左)。詳細座標補正機能によりハンドカメラで部品の正確な位置姿勢を得る(右)。

後者の動作経路の修正は、ティーチングペンダントのタッチパネルを操作して行う。タッチパネル上に表示されたステレオカメラの画像に中継点を定義し、概略座標補正機能により計測することで動作経路の追加や修正が行える(画像4)。現場でよくなされる、障害物を回避するために中継点を追加する作業を、このような簡易な操作で可能にしている。

画像4:タッチパネルに中継点を定義し、概略座標補正機能により計測することで動作経路の追加や修正ができる。

画像4:タッチパネルに中継点を定義し、概略座標補正機能により計測することで動作経路の追加や修正ができる。

チョコ停を回避・自動復帰する知能化技術

チョコ停とは、作業中のエラー発生による一時的な停止のことである。マルチハンドの指先や組立治具のセンサの状態を確認することでチョコ停を認識できるが、復旧作業にはメンテナンス要員が当たっている。長期連続稼働に向けてはロボットセルが自律的に原因を排除する方が望ましく、画像処理により事前回避と自動復帰を行う知能化技術を開発している。

事前回避では、上述の詳細座標補正機能を利用しており、把持する前に部品トレイ上の部品の位置を認識し、位置ずれが発生していれば、部品トレイを載せているXYテーブルで補正を行う(画像5)。また、事前に部品トレイ上の部品を検査することで、ハンドリングミスにつながると判定される部品はあえて把持しないようにしている。ここでの検査は天井カメラなどで捉えた2次元画像で行っており、合致度により良品判定を行っている(画像6)。

さらに、学習機能を実装しており、ハンドリング可能と判定したにもかかわらず把持できなかった場合は、その都度学習し、合致度に反映することで次のハンドリングに役立てるようにしている。しかしながら、それでもチョコ停の発生を避けられないため、併せて自動復帰を実装している。

写真1:ランダム・ビン・ピッキングを可能にしたロボットシステム 写真2:複数ロボットによるワークの持ち替え作業を連鎖させることで、次のロボットがハンドリングしやすい位置姿勢に変更する。

チョコ停の事前回避。詳細座標補正機能により位置ずれを補正する方法(画像5・左)と、事前に部品トレイ上の部品の合致度を判定する方法(画像6・右)がある。

自動復帰は次のような手順で行う。
 前段階として、事前に各工程における本来の「あるべき姿」、復帰対象とする「異常状態」、異常状態からあるべき姿への「復帰動作」を学習させておく。1つひとつの異常状態に対し、それぞれの復帰動作を記憶させる。

そして、実際にチョコ停が発生したときは、該当する工程や場所は作業の進捗度や異常検知のタイミングなどから推定されることから、まず該当個所を画像で捉え、あるべき姿の画像と比較して異常エリアを検索する。次に、事前に学習した異常状態をもとに異常の内容を識別し、復帰動作を選択する。同時に、異常の原因となっている部品の位置姿勢など異常状態を計測する。最後に、計測した位置姿勢をもとに、復帰動作に必要な座標情報をロボットに伝え、選択した復帰動作を実行することでチョコ停の原因を排除する(画像7)。

例えば、ハンドリングミスにより部品が落下し、裏返しになったことが原因でチョコ停が発生した場合は、裏返しとなっている状況を異常状態として認識し、復帰方法としてバキュームによる撤去を選択。同時に部品の位置姿勢を計測し、その作業に必要な座標情報をロボットに伝えて撤去作業を実行する。チョコ停の原因を排除した後は、再び画像認識を行い、生産を再開できる状態になったことを確認している。

画像7:チョコ停からの自動復帰の手順・画像のキャプチャー(STEP1)、異常エリアの検索(STEP2)、異常エリアの識別(STEP3)、復帰動作の選択(STEP4)、異常エリアの計測(STEP5)、復帰行動の実行(STEP6)という手順で進める。

画像7:チョコ停からの自動復帰の手順・画像のキャプチャー(STEP1)、異常エリアの検索(STEP2)、異常エリアの識別(STEP3)、復帰動作の選択(STEP4)、異常エリアの計測(STEP5)、復帰行動の実行(STEP6)という手順で進める。

IDECの調査によるとチョコ停の原因は、部品の取り出しミスによるものが64%、組立ミスによるものが18%と、ハンドリングミスに起因するものが8割以上にも上る。このような復帰方法によりチョコ停からほぼ自動で復帰できるといえよう。IDECでは今後、実稼働システムと同等の検証システムにて8時間連続稼働を実施し、ロバスト性などを検証した後、滝野事業所(兵庫県)の現場に適用することを予定している。

開発した知能化モジュール群については、トレイなどのロボット周辺グッズとともに提供することを予定している。これらは複数のモジュールが連携することで機能を発揮するようになっており、センサデバイスを制御する「Sense」系と、アクチュエータやロボットを制御する「Act」系、システムの状態遷移を定義した「Plan」系などに分類、整理している。ロボット周辺グッズとの併用により、高機能なロボットセルを容易に構築することができ、また、ロボット周辺のシステム構築を担うシステムインテグレータにとっては、これらを利用することで付加価値の高い提案につなげられる。

■参考文献
[1]濱田航一,米澤浩,飯田勝久,樋口伸夫,井田勝久,“千手観音モデルによるロボット制御セル生産システムの進化”,計測自動制御学会 第10回 システムインテグレーション部門講演会(SI2009),2009.
[2]米澤浩,濱田航一,飯田勝久,“ロボット制御セル生産システムにおけるチョコ停からの自動復帰手法“,第27回 日本ロボット学会学術講演会,2009.

掲載日:2011年12月 6日

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