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ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記2010―事業拡大に邁進するその後の彼ら
まずはパワー増幅の研究開発に挑む仲間を増やしたい―アクティブリンク 藤本弘道さん、城垣内剛さん

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藤本社長 城垣内取締役
藤本社長 城垣内取締役

アクティブリンク

代表取締役社長 藤本弘道

京都府相楽郡精華町光台3-4 パナソニック内

「我々が目指そうとしていることはクルマの世界に近いのかもしれない。例えば建設車両や救急車両の開発では、ベースとなるシャシーをあらかじめ定義しておき、それをもとに用途や作業環境に応じてカスタマイズやローカライズがなされ、最適な姿や形へと変貌を遂げている。
 POWER LOADER(パワーローダー)も同様にベースを定義し、かつプロトコルをオープンにしておくことで作業内容や利用環境に応じてアームやエンドエフェクタを柔軟に変更してもらう―。こんな環境を構築できれば普及が見込まれるはずなのでは」

アクティブリンクの藤本弘道社長は、近い将来の事業のあり方をこう語る。

同社は2010年10月、研究機関などに向け「パワーローダーライト(POWER LOADER Lighit:PLL、写真1)」を販売すると発表した。重作業支援向けPOWER LOADERを下肢のみとした構造で、市販デバイスを中心にシステムが構成されている。パワー増幅ロボットの研究開発の促進を意図するがゆえの構成だが、そうした思いを聞かされると将来の普及を見据えたプラットフォーム(クルマでいうシャシーに近い)といえる構成でもあり、同社の懐の深さを感じさせられる。

写真1:2010年10月に研究機関に向け提供を開始したPOWER LOADER Lighit 写真1:2010年10月に研究機関に向け提供を開始したPOWER LOADER Lighit

写真1:2010年10月に研究機関に向け提供を開始したPOWER LOADER Lighit

パワー増幅分野の研究開発の発展を期して

アクティブリンクは、パナソニックの社内ベンチャー支援制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」(PSUF、※1)を活用して設立した企業である。2002年に応募し、約1年間の検討期間を経て2003年6月に起業した。受託R&Dを本業としており、POWER LOADERの実用化開発ならびに応用開発を中心に活動している。また最近は、加齢などによる筋力低下の予防に向けたトレーニング機器(写真2)の製造販売も手がけている。動作追随を可能にするアクチュエーション技術とウエアラブル機器設計技術をコアにした事業展開に特徴がある。

※1:2001年4月~04年3月まで運用され、年3回募集した。「(パナソニック、当時松下電器)本体への将来的な貢献度」「社外で取り組む有効性」「事業規模」「独自性と市場性」や、提案者自身の「経営者としての適正」などをポイントに、外部機関の支援を得て事業のブラッシュアップと審査を実施し、選定された。3年目で単年度黒字、5年目で累損解消をすることが事業継続の見極めとなっている。出資比率は、松下電器が51%以上、提案者本人が30%以下、外部30%以下が目安となっており、アクティブリンクでは、松下電器が99%、藤本社長が0.5%、城垣内取締役が0.5%だった。

写真2:拮抗筋への電気刺激で得られる筋収縮を運動抵抗に利用したトレーニング機器。例えば、膝を伸ばす運動では、伸展側の大臀筋と外側広筋などが主動筋に、屈曲側の大腿直筋と大腿二頭筋などが拮抗筋になり、このとき拮抗筋に電気刺激を与え、筋収縮を発生させると、主動筋に負荷がかかることになる。自発的な筋収縮と電気刺激による筋収縮を混合した訓練を行うことから「ハイブリッド訓練機」と表現している。術後のリハビリ用途での利用が始まっているほか、宇宙飛行士の筋肉の萎縮防止としての利用も見込まれており、2012年には国際宇宙ステーションでの実証実験が予定されている。

写真2:拮抗筋への電気刺激で得られる筋収縮を運動抵抗に利用したトレーニング機器。例えば、膝を伸ばす運動では、伸展側の大臀筋と外側広筋などが主動筋に、屈曲側の大腿直筋と大腿二頭筋などが拮抗筋になり、このとき拮抗筋に電気刺激を与え、筋収縮を発生させると、主動筋に負荷がかかることになる。自発的な筋収縮と電気刺激による筋収縮を混合した訓練を行うことから「ハイブリッド訓練機」と表現している。術後のリハビリ用途での利用が始まっているほか、宇宙飛行士の筋肉の萎縮防止としての利用も見込まれており、2012年には国際宇宙ステーションでの実証実験が予定されている。

これまでに、過去に小サイトで紹介した「上肢リハビリ支援スーツ」や、POWER LOADERを応用展開した「鍛造作業補助システム(※2)」など印象的なシステムを複数発表しているが、同社が注目されるきっかけとなったのは全身タイプのPOWER LOADERと思われる。SF映画「エイリアン2」に登場したパワーローダーと同じ名称を持つに相応しい外観を備え、その実現への期待を抱かせたからである。

※2:パンタグラフ構造のアーム先端に把持機構を付加したもので、把持したワークの上下方向と回転(捻り)方向の動作をパワーアシストする。エアハンマー鍛造作業は、熟練作業者が大型のヤットコを用いてワークをハンドリングしているが、ワークの重量が大きいうえに、ハンマーが落ちる瞬間にワークを金型内に位置決めしたり把持を少し緩めたりするといった微調整が要求され、作業負荷が非常に大きい。同システムの利用により、その負荷を軽減し、かつ熟練技能の発揮を可能にすると期待される。これを試験導入しているまこと工業では、5kg程度ワークで10秒/1個のタクトタイムを実現しており、実導入に近いレベルを達成しつつある。

ところが、その注目度とは裏腹に、パワー増幅分野の研究は手薄である。空圧アクチュエータ関連を除くと、サイバーダインの「HAL」やマンマシンシナジーエフェクタズ(MMSE)の「パワーエフェクター」、東京農工大の超音波モータを活用した、農作業支援向けパワーアシストスーツしか見あたらない。しかし、この分野の研究開発はきわめて重要である。重作業支援に加え「介護福祉関連をはじめとする生活支援への応用展開も十分見込まれるはず」(藤本社長)だからである。このような状況に一石を投じる意を込め、提供を始めたのが上述のPLLである。

PLLは片脚3軸、計6軸から成る下肢のみの構造で、ペダル下部の力覚センサで検出した脚力の大きさと方向に合わせて、脚の動作に追従しつつパワー増幅を行う。最大で400Nまで脚力を増幅することができる。人(装着者または搭乗者)と制御器、ロボットを力学的相互作用のループの中に取り込まれた構成にすることで、ロボットの挙動を機械的に、かつダイレクトに人にフィードバックするパワー増幅のエッセンスを理解できる構成となっている(同社では「ダイレクトフォースフィードバック」を表現している)。
 また、研究用途に向け取り扱いやすくしており、OSにはRT-Preemptパッチ(※3)を適用したLinux2.6を、制御回路にはFA用パソコンをそれぞれ採用しており、購入後に使い慣れたOSを再インストールするなど自由にマスタマイズできる。

※3:ハードリアルタイム処理を実現するために必要なLinuxカーネルに対する変更内容をまとめたもの。

加えて、同社独自の研究開発助成プログラムを用意している。1年以内に研究状況をホームページなどで公開し、3年以内に研究成果をホームページや学会発表を通じて紹介し、他の研究者が再現できることを条件に900万円を助成するというもので、これにより通常価格の半額程度での購入が可能になる。ベンチャーが用意するとは思えない大胆なプログラムである。
 藤本社長はいう。
 「パワー増幅の研究開発が進まない主因は、それに適した公開されたハードウエアが存在しないこと。ゆえに、二の足を踏まれている研究者が多いのでしょうが、いまのままでは、この分野の研究は先細りしてしまう。一緒に研究開発に取り組んでくれる仲間を増やしたいというのが我々の思いであり、PLLの情報を公開し、かつ助成プログラムも用意したのです」

最近は、学会レベルではパワー増幅も含まれる力制御の研究が未成熟であるとの認識が高まっており再び、この研究を取り上げようとする機運がある。同社の取り組みは、こうした流れも受け、狙い通りパワー増幅の研究開発を促進すると期待される。

運搬作業と災害救助に向け実用化を推進

話題をPOWER LOADERに戻すと、現在は、運搬作業支援と災害救助支援に向け実用化研究を進めている。前者はPLLをベースに作業内容に適したアームおよびエンドエフェクタを搭載した構造になる見込みで、後者はNEDOのイノベーション推進事業「研究開発型ベンチャー技術開発助成事業」(2009年度採択)にて、消防研究所と共同研究を進めている。

一方、全身タイプについては、「みなさんがイメージされるようなものと異なるものになるかもしれない」と前置きしつつも「2015年過ぎには実用化できれば」と、藤本社長は話す。実用化に至るまでに再度、試作検証を行うことを予定している。
 2008年に公開した試作機(写真3)では、いくつかのテーマをもって試作・検証に臨んでいた。1つは、搭乗者が腰を置くサドルに支点を置き、そこから力ベクトルの変化により腕および脚の動作に追従させることが可能かである。従来にない構造を持つPOWER LOADERの制御では、設置部分を原点として関節角度状態における関節位置の3次元座標を求める多関節ロボットとも、重心をコントロールすることで歩行制御する2足歩行ロボットとも異なるからで、これについては実証されたという。

写真3:2008年に公開した全身タイプのPOWER LOADERの試作機 写真3:2008年に公開した全身タイプのPOWER LOADERの試作機

写真3:2008年に公開した全身タイプのPOWER LOADERの試作機

もう1つは、オートバランス制御を実装せずに、このような大きな構造物を動作(歩行)できるかである。試作機の脚部構造は、荷重を支えつつ搭乗者の脚部との干渉を避けられるよう、鳥脚状に構成したリンク構造を採用していた。POWER LOADER自体の重量など重力によるアクチュエータへの影響を最小に抑えることと、歩行時の遊脚への応答性を確保することに加え、予測不可能な過度な負荷に対抗することを狙ってものである。次期試作機は「これとPLLを融合した構造にするだろう」と、開発を担当する城垣内剛取締役は説明する。

「POWER LOADERや下肢のみのパワーペダルでは本体前方から見たときの脚の関節位置にこだわって製作した。しかしPLLの開発を通じて、脚を前後に動作させるのであれば横方向から見たときの関節位置の方が重要であることに気づき、PLLでは軸の構成および位置を変更した。実際に、足先にマウントするだけで歩行をコントロールできたし、この見方の方が理にかなっていると確認されたからです」
 城垣内取締役は、そう続ける。

災害救助向けは型番が「MS-03」と、全身タイプの型番「MS-02」の後継となっており、これらの知見を盛り込まれるものと想像される。また災害救助向けについては、現場での様々なミッションに耐えられるように「複数のツールを交換しながら作業が行えるようエンドエフェクタ部を工夫したい」と、今後の開発構想について、さらに説明を続ける。

POWER LOADERは当社で製造・販売する

意欲的に開発に取り組む同社の活動で今後、気になるのは、親会社であるパナソニックとの関係性である。例えば、かつて研究開発していた上肢リハビリ支援スーツがパナソニックヘルスケア(当時はパナソニック四国エレクトロニクス)に移管されたように、POWER LOADERも事業化の段階ではドメインと呼ばれる専門事業部にシフトされるのではと想像されるからである。

これに対し、藤本社長はいう。
 「ヘルスケア分野は大きな事業が見込まれるのに対し、パワー増幅の分野は各作業に適したものが要求され、小回りが利く事業体制が適しているはず。したがってPOWER LOADERについては、ファブレスにはなるが、当社がメーカーとして製造販売することを計画している」
 また、「我々はパナソニックの事業が拡大することをミッションとしており、大きな事業化が見込まれるものは移管します。ですが、POWER LOADERはうちが手がける方がよいでしょうし、こうした意思決定の自由度は創業当時から高く、我々の判断を尊重してもらっています」と付け加える。
 メンテナンス会社と提携し、そこで保守をしてもらうような事業体制をイメージしているという。

これに関連して、藤本社長は今後の事業の方向についても語ってくれた。
 「(すでに紹介したが)当社は動作追随を可能にするアクチュエーション技術とウエアラブル機器設計技術をコアにしています。密接に関わるパワーアシストとトレーニングなど力に関わる分野は切り込むが、それ以外は考えていない。
 これらの技術をコアコンピタンスにしている以上、なおさらそうでしょうし、ブレるのは、これらで事業が成立した後でよい。そう考えていますよ。」

私見となるが、筆者はPOWER LOADERは人と制御器、ロボットが力学的相互作用のループの中に取り込まれた構成となることで、人の器用さを発揮しつつパワー増幅が行えるという特徴を備えており、汎用性が高いシステムになると捉えている。運搬作業支援をメインターゲットにしているが、これだけでも、その特徴を生かすことで様々な応用が見込まれ、事業として大きな成長が期待される。加えて、下肢構造のPLLはパワー増幅システムのベース部分となり得るものであり、カスタマイズには協力企業の協力が求められるとはいえ、相当な台数が生産されるのではと思われる。
 すると、パナソニック本体に移管されるのではと先走って考えてしまうが、それはまだ5年程度先の話であり、まずは実際に、そう考えるまで現在の研究を具現化してほしい。そう期待している。

(取材&テキスト作成:ロボナブル編集部)


掲載日:2011年3月16日

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