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ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記2010―事業拡大に邁進するその後の彼ら
ロボット事業に向けては、とにかく続けることが大事!―パーソナル・テクノロジー 坂本俊雄さん

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坂本俊雄代表取締役

パーソナル・テクノロジー
代表取締役 坂本俊雄

〒665-0051
兵庫県宝塚市高司3-8-29
http://www.pti.co.jp/

「これまで不況とはほとんど縁がなかったのですが、今回のリーマンショックはちゃいますねぇ。仕事が減りましたよぉ。長年付き合いがあった計測機器メーカーとの開発はやり尽くした感がありますし、関西地区のロボット開発プロジェクトは停滞ぎみですし、うちも例に漏れず苦しいですねぇ」

関西地区でシステムインテグレータとして活躍するパーソナル・テクノロジーの坂本俊雄さんは、苦笑交じりに、そう切り出す。以前、異色の開発案件もしなやかに対応できる希有な存在として紹介したが、リーマンショックに端を発した今回の不況は同社の経営にも影を落としているようだ。

それでも、次世代ロボット分野のリーダーを育成する社会人向け教育プログラム「EPEER(イーピア)」に参加し、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)と共同でコミュニケーションロボットを活用した販促活動に関する実証実験などを経験した。「2009年からは不況の影響で仕事が減少するだろう」と想定しての受講であり、確かに仕事は減ったかもしれないが、実証実験を扱った論文を「第9回 情報科学技術フォーラム」にて連名で発表(発表者はATRの塩見昌裕研究員)した。確実に今後の仕事の糧としたようだ。

カスタマイズから販促用途へ

同社は、坂本さんが29歳のとき(1994年10月)に立ち上げた企業である。おもに計測・制御・通信や各種情報処理に関するシステムの設計開発を手がけている。起業する以前は水位計などを扱うセンサメーカーに在席し、自社センサを活用したシステム開発や提案をしていた。ここで個人として活動できることに自信を深めたことが、その若さでの独立につながっている。

そんな坂本さんがロボットに深く関わるようになったのは、関西地区で次世代ロボット開発が活発になった2005年からで、東洋理機工業の細見成人社長からの"半ば強引な"勧誘による。もちろん、次世代ロボットの開発にはシステム構築が必須であり、「本来業務の延長線上に位置づけられる」という"確かな理由"もあってのことだが、細見社長を介して次世代ロボット開発ネットワーク「RooBO(ローボ)」に参加。その後、菱田伸鉄工業の菱田聡社長を迎え「RooBOカスタマイズチーム」を結成することになる。
 同チームのおもな開発実績をあげると、脳神経外科医に納品した「患者見守りロボットシステム」や日本食研の「バンコロボ」などの各種キャラクターロボット、今でもロボット関連のイベントでは大人気の「お好み焼きロボット」がある。

キャラクターロボットの取り組み例(バンコ) 国際ロボット展2009で人気を博したお好み焼きロボット
2005年に脳神経外科に導入した患者見守りロボットシステム。無断で外出しようとする患者を測域センサが検出すると、ロボットが優しく声掛けをして外出の防止あるいは足止めをし、同時に、監視用パソコンに警告を出す。さらに、ネットワークカメラにより外出社を撮影して監視用パソコンに画像を転送・表示・記録を行う。 見守りロボットのシステム構成。ifbotを中心に、患者の動きを検知する測域センサとネットワークカメラ、これらを管理する監視用パソコンから構成される。当時のifbotはLinuxで稼働しており、カスタマイズが比較的容易だったため採用した。システムの設計・開発は、坂本さんが手がけた。

(左上)キャラクターロボットの取り組み例(バンコ)
(右上)国際ロボット展2009で人気を博したお好み焼きロボット
(左下)2005年に脳神経外科に導入した患者見守りロボットシステム。無断で外出しようとする患者を測域センサが検出すると、ロボットが優しく声掛けをして外出の防止あるいは足止めをし、同時に、監視用パソコンに警告を出す。さらに、ネットワークカメラにより外出社を撮影して監視用パソコンに画像を転送・表示・記録を行う。
(右下)見守りロボットのシステム構成。ifbotを中心に、患者の動きを検知する測域センサとネットワークカメラ、これらを管理する監視用パソコンから構成される。当時のifbotはLinuxで稼働しており、カスタマイズが比較的容易だったため採用した。システムの設計・開発は、坂本さんが手がけた。

また2008年のはじめには、顧客ニーズに応じて柔軟にカスタマイズできるプラットフォームロボット「pul(プル)」も発表している。ロボットの主要機能をモジュール化し半製品にしたもので、各種センサやカメラなど外部機器との連携を可能にする各種インターフェースや、音声認識・合成機能などコミュニケーションロボットに必要な機能をほぼひと通り備える。

発表当初はキャラクターロボットの開発を意識してカスタマイズの容易さを提案していたが、ある時からは、pul(ロボット)のアイキャッチの高さを生かした、PR用途に向けた提案に切り替えている。「ロボットは目立つし、話題性もある」という展示会での反応を踏まえたもので、pulとパソコン、大型モニターとの連携により、来場者が商品番号を告げるとpulが音声認識をして該当する商品説明をし、同時に大型モニター上で商品説明が表示されるというデモを披露して、こうした用途で活用例を創出した。その後、販促用途での応用を模索するようになり、後述するEPEERでの取り組みにつながる。
 この路線変更は「物理的な利便性がないがために目的を明確化しにくく、ビジネス化への道筋が見出しにくい」と、コミュニケーションロボットが抱える課題を冷静に捉えた結果でもある。

「pul」のアイキャッチの高さを生かしたPR用途での提案例。来場者が商品番号を告げると、ロボットが音声認識をして該当する商品説明を行い、同時に大型モニター上でも商品説明がなされる。

「pul」のアイキャッチの高さを生かしたPR用途での提案例。来場者が商品番号を告げると、ロボットが音声認識をして該当する商品説明を行い、同時に大型モニター上でも商品説明がなされる。

コミュニケーションロボの事業化はまだ先?

坂本さんが参加したEPEERとは、次世代ロボット市場を開拓できる人材育成を目的に、大阪大学や奈良先端科学技術大学院大学、ATRなどの各機関が連携し、それぞれの技術やノウハウを生かして「基礎技術力」「実践開発力」「実証評価力」を育成する2年間の教育プログラムである。受講生は1年目は、ロボット要素技術やシステム統合に関する技術力を「基礎技術力」として習得し、2年目は、次世代ロボットの利用現場などを想定して試作機を開発し、実フィールドでの検証などを通じて「実践開発力」および「実証評価力」を身に付ける。

2年目からは、奈良先端大で画像処理を学習するグループと、阪大の知識・機能創成工学専攻「基盤PP(PIER Program)(※)」を受講するグループに分かれて取り組む。坂本さんは後者に参加し、冒頭で紹介した実証実験を大阪南港の商業施設「ATC(アジア太平洋トレードセンター)」で実施した。

※同専攻の「創成工学演習(Project-Based Learning)」を発展させたカリキュラム。企業から先端の研究開発テーマの提供を受け、3名の学生からなる各グループに、企業からの講師1名と阪大の教員2名を指導者とする少人数教育体制のもと、発想から設計、開発、評価までの一連のサイクルを体験させ、問題設定および解決力やコミュニケーション力、リーダーシップ力などを育成する。本来は、坂本さんのような社会人ではなく学生が受講する。

ここでの取り組みの一端を紹介すると、その目的は、コミュニケーションロボットの販促効果により広告収入や成果報酬を得るというビジネスの可能性を見出すことにある。ATRの「Robovie-miniR2(ロボビー・ミニ・アールツー)」と、大型ディスプレイ、クーポン発行プリンタからなるシステムを構築し、Robovie-miniR2が身振り手振りなどで集客し、ATC内のオススメ店舗の紹介・クーポン券の発行を通じて来場者の購買行動につなげるというストーリーで検証した。
 具体的には「(1)ロボットの有効性」「(2)ロボットが推薦する効果」「(3)対話シナリオの違いによる効果」について、(1)は同ロボットの有無で、(2)は非推薦と推薦で、(3)は、最初もしくは最後に推薦するという推薦のタイミングで、それぞれ検証した。

アンケート調査を交えた検証結果では、Robovie-miniR2のような小型ロボットでも多くの来場者を惹き付け、その推薦により紹介した特定店舗のクーポン配布率を向上できることが確認された。Robovie-mini-R2がいたときでは10倍程度の集客があり、アンケート結果でもそれを活用した販促活動に対し『合理的』との声があがった。また(3)については最初に推薦する方が効果的であり、そのタイミングにより配布率が増減することも確認された。一方で、高い集客力が必ずしも実際のクーポンの配布数にはつながらなかったという課題もあがった。

コミュニケーションロボットの販促の流れ 発行したクーポンと実証実験に関するアンケート

(左)コミュニケーションロボットの販促の流れ
(右)発行したクーポンと実証実験に関するアンケート

これらを踏まえ、坂本さんはいう。
 「確かに、たいへん興味深いデータが得られ(論文の執筆につながった)が、そもそも(実証実験に協力してくれた)店舗が期待するような集客とは次元が異なるかもしれません。技術的な課題も加味すると、ビジネスベースに乗せるのはまだ先かなぁという印象です」
 また、「対話を通じて顧客の好みを推定するなどマーケティング情報の収集にも寄与する仕組みを組み合わせることも必要なのでは」と続ける。

実は、このような話は2009年春に取材した際も聞いており、pulから始まる一連のコミュニケーションロボットの実用化はまだまだ遠い印象を受ける。それでも、「(ロボットのような新しい価値観を認めてもらうには)とにかく続けることが大切でしょうし、だから最近は『継続こそロボット成り』なんてことを言っています」。坂本さんは、そう前向きな姿勢を見せてくれる。

大手と中小が分業できる産業の階層化を

コミュニケーションロボットに関する取り組みが目立つ坂本さんだが、最近は介護福祉分野に関心を抱くようになっている。手始めとして、RooBO内で介護福祉分野を理解するための勉強会を企画・立案し、8月下旬より開催している。司会進行も自ら務めている。

この分野における機器開発は、特定の身障者に必要とされ、かつ症状に合わせたつくり込みを行う「オーファン・テクノロジ」(ユニバーサルデザインの対極)が要求される。マスマーケティング・マスプロダクション型のビジネスモデルが成立せず、大手企業がこの分野に及び腰になっている主因になっている。
 坂本さんは、こうした現状を踏まえ、またシステムインテグレータとしての自身の役割を込めて、こう言う。「大手と中小が分業できる階層化された産業構造ができれば、介護福祉ロボットの普及もあり得るのでは」と。
 つまり、「大手企業が、例えば移乗介助を支援するロボットのベースを最大公約数として開発・提供し、それを我々のような中小企業がカスタマイズやローカライズ(=事業者向けのカスタマイズ)を担う」という構造である。さらに、サービスやメンテナンスを担う企業を加味したものをイメージしている。

考えてみれば、汎用の産業用ロボットは各現場の要件に合わせて教示をしたり他システムと接続したり組み込んだりすることで初めて価値が生まれる。いわば「半完成品」であり、システムインテグレータが存在することで様々な生産現場での利用が可能になっている。したがって、カスタマイズやローカライズを担うようなプレイヤーは必要であり、この存在が介護福祉ロボットの普及を担う可能性がある。
 実際、坂本さんが手がけた患者見守りロボットシステムは、コミュニケーションロボット「ifbot(イフボット)」にレーザ距離センサやカメラシステムなどを組み合わせ、カスタマイズを行うことで患者への声かけや見守りを可能にした。5年が経過した今でも、必須のロボットシステムとして稼働している。

「介護福祉分野に関心を抱き始めたのは自身の親のこともあり、身近な問題になってきたから...」。坂本さんは、そう理由を明かすともに「せっかくロボットに関わっているからこそ、自身のシステムインテグレートで手助けしてあげたい」と力を込める。
 そのためには、坂本さんがいうような産業構造が必須であり、産業用ロボットの分野で構築されている、産ロボメーカーとシステムインテグレータあるいは商社などのような関係性が構築されることを期待したい。この分野でも、坂本さんのようなプレイヤーが活躍できる場がたくさんあるだろうし、ロボット開発の再度の活性化につながればと思う。

(取材&テキスト作成:ロボナブル編集部)


掲載日:2010年12月16日

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