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ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記2010―事業拡大に邁進するその後の彼ら
ド派手なロボット・ビデオ融合ゲームで新風を興す―メカトラックス 永里壮一さん

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永里壮一代表取締役

メカトラックス
代表取締役 永里壮一

〒814-0001
福岡市早良区百道浜2-3-2
TNC放送会館2F ロボスクエア内
http://www.mechatrax.com/

9月はじめに東京池袋のアミューズメント施設に新たなアーケードゲームが登場した。ヒューマノイドとビデオゲームを融合した機種で、ヒューマノイドを操作して正面のディスプレイに表示されたミッションをクリアする。リアルなロボットとバーチャルなビデオゲームとのインタラクションが新鮮だ。
 それ以上に目を惹かれるのは、女の子がド派手にデコレートされたヒューマノイドを手にする外観で、新たな体験を味わえるのでは?と期待感を持たせてくれる。

ヒューマノイドとビデオゲームを融合したアーケードゲーム「デコロボ大戦」 ロボットを操作してボールを投入口に投げ込んで、正面のディスプレイに表示されたミッションをクリアする

ヒューマノイドとビデオゲームを融合したアーケードゲーム「デコロボ大戦」(写真左)。ロボットを操作してボールを投入口に投げ込んで、正面のディスプレイに表示されたミッションをクリアする(写真右)。

開発したのは、ヒューマノイドとクレーンゲーム機を融合した「ロボキャッチャー」の開発で知られるメカトラックスである。これに次ぐ新商品として打ち出したもので、景品獲得を楽しむロボキャッチャーと違い、ゲーム(ミッション)そのものを楽しむ。その外観は演出の一環としてつくり上げたもので、ロボットを派手々々(ギャルギャル)しくデコレートしたことから「デコロボ大戦」という商品名を付している。

「エンターテイメント性を追求した結果!」
 同社の永里壮一社長は、演出の狙いをそう簡潔に説明する。狙い通り、エンタメ色は十二分だ。同時に、正統的な見せ方であることに気づかされる。アミューズメント施設は女子高生を中心に若い女性客が多い。年齢を問わず、女性は貴金属類をはじめ光沢系に強い興味を抱く。加えて、ロボット好きとされる20代から40代前後の男性客への訴求と違い、こうした客層に向けた提案はヒューマノイドそのものへの要求機能を低減できる可能性もある、からである。

理詰めの考察から生まれたロボキャッチャー

メカトラックスは、2005年12月に設立したロボットベンチャーである。設立当初は、研究機関に向けに高性能ヒューマノイド「KRB-1」を販売していたが、価格が65万円と高価であり、受注生産だったことから売れ行きは芳しくなかった。ヒューマノイドの開発・販売というビジネスモデルの難しさに直面していたが、ヒューマノイドの技術シーズとクレーンゲームの市場ニーズとを融合することでロボキャチャーの開発に至る。

ヒューマノイドとクレーンゲーム機の融合という新たな組み合わせで話題となった「ロボキャッチャー」 ヒューマノイドとクレーンゲーム機の融合という新たな組み合わせで話題となった「ロボキャッチャー」

ヒューマノイドとクレーンゲーム機の融合という新たな組み合わせで話題となった「ロボキャッチャー」。

「ロボキャッチャー」という成果物のみを捉えると、単にこれらを融合した"思いつきによる開発"と誤解されがちだが、そこに至るまでには綿密な構想がなされている。

当時(2005年から06年頃)、永里さんがまず考察したのはヒューマノイド市場をめぐる情勢だった。現在もさほど変わらないが、(教育を除き)ホビー用途以外では市場性が見出しにくいうえ、5万円から10万円の価格帯で年間数千体が売れる程度。にもかかわらず、参入メーカーが多いため低価格化が急速に進んでいた。価格競争に巻き込まれずに高機能なヒューマノイドを販売し続けるには、ビジネスユーザーをターゲットにすべきだが、「適切なアプリケーションを提示できなければ投資判断がなされない」(永里さん)。
 また、技術面でも課題が多かった。現在のヒューマノイドは特定条件下(事前の軌道計画ができる範囲)であれば稼動できるが、オープンフィールド(一般社会)で動かせる技術レベルに到達していない。実用的な運動制御を可能にするためには稼動環境を固定したり限定したりすることが求められた。

こうした考察から見えた有力なアプリケーションがクレーンゲーム機だった。ヒューマノイドの身体性(手足をはじめ身体を有していること)により創出されるエンターテイメント性にフィットしているうえ、専用の筐体により稼働環境が安定する。しかも、筐体内に隔離できるため「ロボットの安全性を担保することができ、ビジネスベースに乗せやすい」(同)という利点があった。

一方で、クレーンゲーム機市場に目を向けると新たな機種を求められていたことが伺えた。日本アミューズメントマシン工業協会によると、2005年の業務用クレーンゲーム機の売上げは年間127億円あり、試算では毎年1万台から2万台が出荷されていた。機器1台から得られる年間プレイ代は170万円程度に上るが、うち1/3程度が景品コストに費やされており、"景品人気"に依存する体質になっていた。
 こうした中でのロボキャッチャーの登場は市場から歓迎され、初めてお披露目した2007年の「AOUアミューズメントEXPO」では人気機種ランキング1位を獲得するに至った。永里さんの読みはずばり的中したわけで、当時の考察を整理すると以下の図のようにまとめられる。

永里社長が2006年頃に行った考察を整理した図(ロボナブル編集部で解釈しまとめた) 永里社長が2006年頃に行った考察を整理した図(ロボナブル編集部で解釈しまとめた)

永里社長が2006年頃に行った考察を整理した図(ロボナブル編集部で解釈しまとめた)。

このような考察はロボキャッチャーとともに高く評価され、2007年7月には「九州技術開発ファンド(※)」投資1号として1億円の出資を受けた。これをもとに開発・製造および販売のための「特別目的会社(SPC)」を設立し、必要な技術シーズをSPCに投入してファンドとの共同事業を開始。ロボキャッチャーの製品版の発表に至る。決して思いつきではない、このような考察が投資するに足る事業として認められたのである。

※九州地域の中小・ベンチャー企業が保有する技術力や知的財産権の価値を評価し、投資を行う。不動産などの担保余力がない企業や、公開を目指さない企業に対しても投資を行う。企業への直接投資ではなく、「プロジェクト・ファイナンス」と呼ばれる手法や匿名組合出資と呼ばれる手法を活用する。(株)パテント・ファイナンス・コンサルティングが運営する。

製造企業の倒産などを乗り越え、企業として進化

ファンドより出資を受けた当時は、日経ビジネスなどでも取り上げられ、大きな話題になった。また2007年末には上市を果たし、2008年以降は大きな飛躍が期待されていた。ところが、思わぬかたちで経営が振り回されることになる。

最も痛手となったのは製造委託企業で、当時JASDAQ上場のプロデュースの倒産である(販売は福岡の老舗企業・アールエスが担当)。粉飾決算に端を発した上場廃止、民事再生法の適用により出荷できない状況に追い込まれた。粉飾決算の発覚は2008年9月だが、「3月頃から生産が停滞し始めていた」(永里さん)という。これを受け、専用部品を多用するロボキャッチャーと違い、汎用部品の積極利用によりコストダウンを図った「プチ・ロボキャッチャー」(69万8,000円、ロボキャッチャーは198万円)を急遽発表するが、「実質1年近くは製造も販売もできない状態だった」と振り返る。

ほかにも起業間もない同社を困難が待ち受けていたが、山あり谷ありの経営を乗り越えつつプチ・ロボキャッチャーの急展開と直販体制の構築により、この約2年間でロボキャッチャーと合わせて100台程度を販売している。また今年6月には、プチ・ロボキャッチャーに対し購入1年後に最低買取価格を保証する「下取りプラン」をスタートし、シンガポールに開設した駐在所を介して、アジア各国のアミューズメント施設に低価格で販売することも始めた。苦難のたびに迅速に新たな取り組みを始めている。
 「月並かもしれませんがが、ピンチをチャンスと捉えた結果ですよ」
 永里さんはさらりと言うが、上述のようなことがあってもなお同社が新製品を発表できるのは、このような判断および対応があってのことである。開発力に加え経営力も進化していることに気づかされる。

期待感を抱かせるモノづくりが人を集める

現在、同社は冒頭で紹介したデコロボ大戦の販売に注力している。東京池袋をはじめ各地でロケテストを実施している。
 デコロボ大戦をもう少し詳しく説明すると、2本のジョイスティックでヒューマノイドを操作し、ボールを投入口に投げ込むことで正面のディスプレイに表示されたミッションをクリアする。3種類あるゲームのうち、例えば「ロボキャノン」では、投入した個所の砲台から砲弾が発射され、敵をぶちのめすことができる。難易度に応じて敵が移動したり、倒すのに必要な攻撃回数が変化したりするため、子供からゲーマーまで幅広い層で楽しめる(動画1)。また、ビデオゲームのコンテンツをバージョンアップするだけで、ハードウエアを変更することなく新たなゲームに切り替えられるのも大きな魅力である。

動画1:デコロボ大戦・動画

ミッションでの敵への攻撃は、2本のジョイスティックでロボットを操作し、ボールを投入口に投げ込むことで行う。例えば「ロボキャノン」では、投入した個所の砲台から砲弾が発射され、敵を攻撃することができる。難易度に応じて敵が移動したり、倒すのに必要な攻撃回数が変化したりするため、子供からゲーマーまで幅広い層で楽しむことができる。 ミッションでの敵への攻撃は、2本のジョイスティックでロボットを操作し、ボールを投入口に投げ込むことで行う。例えば「ロボキャノン」では、投入した個所の砲台から砲弾が発射され、敵を攻撃することができる。難易度に応じて敵が移動したり、倒すのに必要な攻撃回数が変化したりするため、子供からゲーマーまで幅広い層で楽しむことができる。

ミッションでの敵への攻撃は、2本のジョイスティックでロボットを操作し、ボールを投入口に投げ込むことで行う。例えば「ロボキャノン」では、投入した個所の砲台から砲弾が発射され、敵を攻撃することができる。難易度に応じて敵が移動したり、倒すのに必要な攻撃回数が変化したりするため、子供からゲーマーまで幅広い層で楽しむことができる。

今回、エンターテイメント性を追求するに当たり、外観デザインやビデオゲームコンテンツなどの制作は、ロボキャッチャーのデザインも手がけた空気(株)の白川東一氏に依頼した。同氏は今年6月に、国際的な映像作品のアワード「Telly Awards(テリー・アワード)」でBronze(銅賞)を受賞するなど国内外で高く評価される気鋭のクリエイターである。
 「プチ・ロボキャッチャーは(プロデュースさんの倒産の影響により)慌ただしい中で発表しました。開発の必要性に迫られたとはいえ、白川さんの思いがまったく込められていません。特に今回は、ゲームそのものを楽しんでもらうためエンターテイメント性の追求は必須であり、(ロボキャッチャーへの)原点回帰が最良の選択だったのです」
 永里さんは、同氏に託した理由をこう説明する。

ビデオゲームを見ると、エンターテイメントとして精緻につくり込まれているのがわかる。
 例えばロボキャノンでは、ターゲットになる巨大敵ロボットはじっとしているかと思いきや目を光らせて突然ジャンプをしたり、怪しげなダンスを繰り出したりする。絶妙な"小憎たらしさ"を醸し出すことで、プレーヤーに従来にない楽しさを提供したり、倒そうとする意欲を掻き立てたりするものになっている(動画2)。また、ビデオゲームの映像は可愛らしい色使い(配色)により、女の子がヒューマノイドを手にする奇抜な外観と乖離していない。全体としてのデザインの調和もとられている。本格的な受注はこれからだが、9月に実施したロケテストでの評判は上々のようだ。

動画2:ロボキャノン・動画

ロボキャッチャーもデコロボ大戦もそうだが、同社の製品は意外性とともに期待感を感じさせる見せ方や提案をしてくれる。そのためか、ロボキャッチャーの開発では永里さんの知人がBGMをはじめ様々なジャンルの楽曲を提供してくれた。デコロボ大戦ではデコ職人が楽しみながらヒューマノイドにデコレートしてくれているという。知らず知らずのうちに、周囲が積極的かつ自然に協力するような開発になっている。

「常に新しい提案をしているせいか、金融機関も行政もうちには比較的温かく対応してくれます。いろいろありましたけど、うち(の会社)は恵まれている方でしょう」

永里さんは、そう何でもないように話すが、強烈な意外性と斬新さに富みつつも周囲に期待感を抱かせるような提案がそうさせているのだろう。またそれだけ、ロボキャッチャーもデコロボ大戦もエンターテイメント性の創出に成功しているといえ、ロボキャッチャーに続きデコロボ大戦も大きな話題になると思わずにはいられない。

(取材&テキスト作成:ロボナブル編集部)


掲載日:2010年11月30日

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