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ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記2010―事業拡大に邁進するその後の彼ら
ビジネスプロデューサーとしても才能を発揮―ロボリューション 小西康晴さん

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小西康晴代表取締役

ロボリューション
代表取締役 小西康晴

〒592-0001
大阪府高石市高砂3丁目24番地
http://www.robot-revolution.com/

2007年6月に逝去された首都大学東京の谷江和雄教授は、将来のロボット産業(ここではサービスロボット産業)は、RT(Robot Technology)要素メーカー、ハードウエアとして提供するロボットメーカー、これらを顧客ニーズに合わせて開発・提供するシステムインテグレータの3業種による分業体制になることを予想していた[参考文献1]。その市場立ち上げに向け、特に重要なのがシステムインテグレータといわれる中、その役割も担うことで存在感を増しているのが、ロボリューションの小西康晴さんである。起業する以前に在席した村田製作所(以下ムラタ)での経験を生かし、ロボット業界を軸足にコンサルタントとして活動している。

起業した頃は、谷江教授が描いた産業構造モデルを踏まえたビジネスモデルを描き、要素技術メーカーと研究機関、製造業者、サービスプロバイダー、顧客を結び付ける立ち位置でコンサルテーションに当たっていた(図1)。ただ、ここ1、2年の小西さんの活動を見ると、その業務内容はビジネスプロデューサー的な色合いが強くなっている。「ムラタセイコちゃん」開発プロジェクトや現在、携わっている介護福祉分野に向けたロボット開発は、特にそうである。

その理由について、小西さんはこう説明する。
  「様々な業種の方と関わるうちに、ロボットビジネスに対する各メーカーさんのアプローチのまずさが見えてきた一方、自分なりに世の中に求められているものや『あるべき開発の姿』が見えてきました。自分で企画・提案できるようになったこともあり、プロデューサー的な色合いが強くなったのかもしれません」
  サービスロボットの市場規模はまだまだ小さいこともあり、こなれたビジネスモデルが提示されることは少ない。また、それを支えるビジネスプロデューサーも数えるほどしかいない。こうした現実を踏まえての業態の変化なのもしれない。

図1:起業した当初描いていたロボリューションのビジネスモデル。ロボリューションのポジショニングには変化はないが、業務内容はビジネスプロデューサー的な色合いを強くしつつある。

図1:起業した当初描いていたロボリューションのビジネスモデル。ロボリューションのポジショニングには変化はないが、業務内容はビジネスプロデューサー的な色合いを強くしつつある。

自身の経験をそのままビジネスに

改めてロボリューションを紹介すると、小西さんが2006年6月に、各種ロボット開発・導入、運営に関するコンサルを主業務に立ち上げた企業である。コンサルといっても、一般的なそれとは異なり、上述のシステムインテグレータに加え、プロジェクトマネージャーやリサーチャー、プランナーなど複数の役割を兼ね備える。例えば以前、参画していた大和ハウス工業の「住宅床下点検ロボット開発プロジェクト」では、技術調査から要求仕様の取りまとめ、運用マニュアルの作成までを手がけた。

このように幅広く業務をこなせるのには、冒頭で触れた通り、ムラタでの経験が大きい。
  2002~05年まで生産技術開発本部に在籍し、グループ企業向けの産業用ロボットの開発に携わっていた。入社間もない頃に、所属したリーダーと開発を立ち上げたが、ほどなくリーダーが異動となり、独りで開発をまとめなければならないという経験をした。また、ロボットを利用する各部署のニーズをヒアリングして整理し、全関係者に発信したり、機能分離をはじめとするシステム設計に携わったりもした。小西さんいわく、「システム設計+社内広報という珍しい役割を担っていた」とのことだが、ここでの希有な経験を自身の強みとして見出し、そのままビジネスモデルに反映したといえる。

すでに起業して4年以上が経過したが、小西さんと似たような業態の企業や個人はまだまだ少ない。小西さん自身「サービスロボ市場の黎明期において手薄な業種」であることを見越したうえでの起業だったが、企画・提案力も備わったこともあり、いまも変わらずロボット業界内では重宝される存在でいる。それゆえに、小西さんのポジショニングは、"ロボットをつくらないロボットビジネス"の代表例として、資金的にリスクを伴いがちなベンチャーを志す人の間で参考になっている。

ロボットによる行動展示で広告宣伝の可能性を示す

小西さんは、すでに複数の開発プロジェクトに関わってきたが、最もよく知られるのは、メディアでの露出が高い「ムラタセイコちゃん」の筐体設計プロデュースになるだろう(図2)。

小西さんは、『機能価値』と『感性価値』の両面から価値分析を行うが、ムラタセイコちゃんでは後者を重視し、『デザイン』『こだわり』『調和』『共感』『遊び心』の5つの要素から訴求力の創出に成功した。具体的には、女性デザイナーによる女性視点による『デザイン』、開発秘話を通じての開発陣の『こだわり』の見える化、兄貴分(厳密には従兄弟にあたる)の「ムラタセイサク君」との『調和』(写真1)、小冊子の配布など顧客から『共感』を得る努力、押し付けにならない『遊び心』である。ムラタの電子部品を訴求するPR用ロボットでありながら、人に感動を与えたり共感を獲得したりすることに成功しており、その成果は、企業イメージや人材の獲得で如実に現れている(※1)。

※1:ムラタセイサク君とセイコちゃんを起用した出前授業の開催などCSR活動を複合的に重ねることで企業イメージの向上にも結び付けている。例えば、2006年度の日経企業イメージ調査『技術力がある企業』の一般個人の部門で、電子部品メーカーとしては異例の高順位となる24位にランクインし、また、2006年度の新卒者の応募者数は、好景気により技術系の採用競争が激化する中、前年比60%増を達成した。

図2:小西氏がムラタセイコちゃんの開発プロジェクトで担当した業務(図提供:ロボリューション) 写真1:セイサク君とセイコちゃんの筐体は、素材、製造方法、塗装方法に至るまで異なるにもかかわらず、並んだときに違和感をおぼえさせないようバランスと調和を意識して製作されている。"

(左)図2:小西氏がムラタセイコちゃんの開発プロジェクトで担当した業務(図提供:ロボリューション)
(右)写真1:セイサク君とセイコちゃんの筐体は、素材、製造方法、塗装方法に至るまで異なるにもかかわらず、並んだときに違和感をおぼえさせないようバランスと調和を意識して製作されている。

また、このプロジェクトでは広告・宣伝に対し、ロボットという「メディア」を用いてイノベーションが興せる可能性も示したことでも注目されている。
  一般に、展示会における電子部品をはじめとする要素部品の紹介は、姿・カタチを見せるだけの静的な展示にとどまる。展示パネルには仕様や用途例など詳細な説明がなされているが、わかりやすいとは言い難く、訴求力も不足している。これに対し、ムラタセイコちゃんはジャイロセンサをはじめムラタの電子部品を多数実装しており、平均台走行やカーブ走行などのデモは、これらの機能が直感的にわかる。インパクトも大きい。従来の静的な電子部品の展示形態に対し、このように機能をわかりやすい様相で提示する展示形態を「行動展示(※2)」と、小西さんは表現する。北海道の旭山動物園が実践する行動展示をそのまま拝借した言葉だが、「ロボットという媒体を利用した行動展示に切り替えることで、顧客に新たな価値提供が行えるのでは」と続ける。

そして現在、小西さんは、その可能性をさらに追求すべく、新たな取り組みを始めている。その1つが、非接触方式のページめくりシステム「エアリアル」である。デジタルサイネージと連動したシステムで、本体上面には超音波センサ(ムラタ製)を横並びに5個、ファイバーセンサ(オムロン製)を4区画に1つずつ実装する。前者でページをめくる手の動作(方向)を検知して画面上のページをめくり、後者で50mm程度の距離まで手が近づいたことを検知し、検知したセンサの区画に該当する画面のエリアを拡大表示する。

ムラタセイコちゃんでは、来場者は機能を「見る」にとどまっていたのに対し、エアリアルでは電子部品を活用した独自のインターフェースを通じて、それを「体感」できる仕掛けになっている。しかもiPadなどと違い、非接触でページがめくれるという従来にない経験が味わえる。経験価値を重視した新たなデジタルサイネージシステムとして興味深いうえ、現実世界とバーチャル空間をつなぐインターフェースとしても期待される。行動展示への探求がデジタルサイネージやインターフェースに新たな価値をもたらしそうだ。

図3:小西さんが提案している非接触方式のページめくりシステム「エアリアル」。デジタルサイネージと連動したシステムで、本体上面には超音波センサを横並びに5個、ファイバーセンサを4区画に1つずつ実装する。前者でページをめくる手の動作(方向)を検知して画面上のページをめくり、後者で50mm程度の距離まで手が近づいたことを検知し、検知したセンサの区画に該当する画面のエリアを拡大表示する。非接触でページがめくれるという従来にない経験が味わえる「経験価値」を重視したシステムになっている。

図3:小西さんが提案している非接触方式のページめくりシステム「エアリアル」。デジタルサイネージと連動したシステムで、本体上面には超音波センサを横並びに5個、ファイバーセンサを4区画に1つずつ実装する。前者でページをめくる手の動作(方向)を検知して画面上のページをめくり、後者で50mm程度の距離まで手が近づいたことを検知し、検知したセンサの区画に該当する画面のエリアを拡大表示する。非接触でページがめくれるという従来にない経験が味わえる「経験価値」を重視したシステムになっている。

トータルプロデューサーへと進化、求められる人材像の1つ

冒頭でも触れたように、ここ最近はビジネスプロデューサーの色合いを強くしている。自らビジネスのタネを仕込み提案するようになっており、上述のエアリアルはその一例である。また、介護福祉分野に向けたロボット開発では、ビジネスのあり方を実施企業に提案し、採用された結果、深く事業にコミットしている。また、事業化に向けた組織づくりから関わることで、より深く長期戦略を踏まえたビジネスプロデュースを実施している。

コラムでも紹介してもらったが、小西さんは「ロボットによるイノベーションを興すためには『3つのデザイン階層』に整理して検討すべき」と説いている(図4)。すなわち「(1)ビジネスデザイン」「(2)外的デザイン(インダストリアルデザイン)」「(3)内的デザイン(エンジニアリングデザイン)」であり、(1)から(3)の順番で取り組むのが理想的なアプローチの1つとしている(詳細はロボナブル「ロボット開発で重要な3つのデザイン階層」を参照してほしい)。これが冒頭にあった『あるべき開発の姿』の1つでもある。

図4:小西さんが提案するロボットビジネスを構築するうで必要な3つのデザイン階層。大きくは(1)ビジネスデザイン、(2)外的デザイン(インダストリアルデザイン)、(3)内的デザイン(エンジニアリングデザイン)から成り、(1)から(3)の順番で取り組むのが理想的なアプローチの1つとしている。

図4:小西さんが提案するロボットビジネスを構築するうで必要な3つのデザイン階層。大きくは(1)ビジネスデザイン、(2)外的デザイン(インダストリアルデザイン)、(3)内的デザイン(エンジニアリングデザイン)から成り、(1)から(3)の順番で取り組むのが理想的なアプローチの1つとしている。

ところが、サービスロボットの事業化に向けた取り組みでは、技術者を中心にプロダクトアウト的なアプローチで進められがちで、このプロセスが逆転していることが多い。試作開発した後にビジネスデザインを検討するために、実用化に向けた現実的なストーリーが描けなかったり、ビジネスパートナー探しに四苦八苦したりしている例に事欠かない。ゆえに、冒頭での「アプローチのまずさ...」という言葉につながっているのだろうし、プロデューサーの色合いを強くしているのだろう。

実は、小西さんも起業する以前に参加した、大阪市のロボットラボラトリーが主催する「ロボットビジネス起業塾(※2)」では、技術者だったこともあり「プロダクトアウト的な思考からなかなか抜け出せなかった」(小西さん)。世の中に要素技術が豊富に存在することに改めて気付き、要素技術メーカーとロボットを使いたいユーザーまたはサービス事業者とをつなぎ合わせてロボットを提案するシステムインテグレータを兼ねるコンサルとして起業した。そして最近は、さらに考え方を進め、「これら各層をバランス良くまとめ上げられる『トータルプロデューサー』を目指している」(同)。さらなる進化を遂げようとしている。

小西さんを見ていて感心させられるのは、ムラタ時代に培った開発をまとめ上げる力もさることながら、世の中の動向を的確に捉え、業界内での自身のポジショニングをしなやかに変革していること。つまり、自身の価値をより一層高めていることである。コンサルタントのような個人プレーヤーには常に求められることとはいえ、センスの高さを感じさせられる。
  次に、どのようなロボットビジネスをプロデュースしてくれるのかも楽しみだが、彼が目指す方向性に、ロボット業界で必要とされる人材像の1つがあるようにも思われる。こうした意味でも、小西さんの動向は注目される。

※2:ロボットテクノロジー(RT)を使った新たなビジネスモデルを構想し、それを事業化できる人材の育成を目的としたアフタースクール。同塾から6社が起業した。

(取材・テキスト作成:ロボナブル編集部)

■参考文献
[1]谷江和雄,ロボット市場を立ち上げるために,東芝レビュー,2004年9月号,p.12,Vol.59,No.9,2004.

掲載日:2010年9月28日

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