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ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記2010―事業拡大に邁進するその後の彼ら
レベルに応じた教材が揃う、これからが成長に向け勝負!―JAPAN ROBOTECH・河野孝治さん

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河野孝治代表取締役

JAPAN ROBOTECH
代表取締役 河野孝治

〒814-0001
福岡市早良区百道浜2-3-2
TNC放送会館2F ロボスクエア内
http://www.japan-robotech.com/

ベンチャー企業にとって販路開拓の道のりは険しい。知名度の低さや販売網の未整備といった課題を抱えており、たとえ製品や技術が優れていたとしてもターゲット市場に受け入れられないことがある。ところが、福岡市にオフィスを構えるJAPAN ROBOTECHに対しては、同じくベンチャーでありながら、ロボット業界内では次のような言葉がよく聞かれる。

「あそこは例外でしょう...」
 「なんせ、河野さんという一騎当千の営業マンがいますから...」

最近出展した、6月末開催の「ロボット産業マッチングフェア北九州」は大学の研究室による技術PRの意味合いが非常に強く、商談を成立させるのは難しい状況下にあった。それでも、河野さんが説明を始めると1人、また1人と来場者が同社のブースに足を止め、近々発売予定の倒立二輪タイプの教育教材ロボット「MiniWay(ミニウェイ)WV-007」の商談を複数成立させた。もちろん、同社が扱う教育教材ロボットが「教育に使える!」と判断されてのことだが、河野さんの営業力(提案力などを含む)と人的ネットワークによるところが大きい。

一時期、数名の営業担当を置いていたが、現在は実質、河野さんが1人で営業活動している。それでも、上述の言葉の通り一騎当千のごとく精力的に営業し、新規顧客の獲得につなげている。

「ロボット産業マッチングフェア北九州」の会場で、MiniWayの説明をする河野さん(写真左側)。1人、また1人と、学校関係者が同社のブースを訪れた。

「ロボット産業マッチングフェア北九州」の会場で、MiniWayの説明をする河野さん(写真左側)。1人、また1人と、学校関係者が同社のブースを訪れた。


顧客となる先生とロボット教材を共創

改めて同社の紹介をしておくと、JAPAN ROBOTECHは2003年4月に、福岡市の「ロボット関連ベンチャー育成事業」の認定を受け、ロボスクエア内に設立した企業である。翌年には、主力商品となるロボット製作・学習教材「ROBO DESIGNER(ロボデザイナー)」の販売を開始した。

河野さん自身は、古くから教材関連のビジネスに関わっており、それ以前は、イーケイジャパンでCOO(Chief Operating Officer)を務め、電子工作キット「ELEKIT(エレキット)」の販売に携わっている。1995年から約7年間在席し、「ロボカップジュニア」大会が新設された際は、ELEKITのロボットキットを同競技対応モデルとして売り出し、アジア各国での拡販に尽力した。「(同大会の)啓蒙普及という姿勢で臨んだ」(河野さん)提案および営業が、大会への参加を教育の柱にしようとする動きがアジア各国で広がり、結果、拡販の成功につながった。
 河野さんは、営業時にはもちろん自社製品の説明をするが、教育のあり方にも熱心に触れる。それが好感を持たれる理由の1つだが、この頃に身に付けた営業スタイルなのかもしれない。

また、同大会の啓蒙活動を通じて、ロボカップの提唱者である北野宏明氏と知り合うことになり、さらに同氏を通じて、早稲田大学の高西淳夫教授らとも知り合う。そして、同教授らの協力のもと生み出したのがROBO DESIGNEER(*1)である。

*1:ROBO DESIGNERは、福岡市の産学研究開発サポート事業「進化するロボット学習教材開発事業」の枠組みで、上述のMiniWayは福岡県の「ロボット開発技術力強化事業」(2008年7月~2010年3月)の枠組みで、それぞれ開発している。

ROBO DESIGNERは、コントローラボードとアクチュエータ、センサおよび数点のロボットパーツ、専用の開発環境「TiColla」で構成される教材で、コントローラとパーツ、他のパーツ類とを組み合わせることで自律型車輪駆動ロボットなどが製作できる。TiCollaは小中学生でもアルゴリズムを習得できるよう「タイル」と呼ばれるオブジェクトを組み合わせることでプログラミングができるソフトで、フローチャートの「処理」や「判断」を表す図と同様にタイルが扱える。このような扱いの容易さと、ユーザー自身が課題設定をしながら組み立てる仕組み(*2)が好評を博している。
 国内外の高専や大学で教材として利用されており、2007年秋の段階で1万2,000台を販売している。ここ数年は年間4,000台前後を安定販売していることから、2万台以上を販売していると推計される。

*2:ROBO DESIGNERではセンサやモータなどの取付け位置が定義されていない。ユーザー自身が設計目標を設定する必要があり、また、その過程で遭遇する問題を解決しなければ完成には至らない。このように自ら課題を設定し、問題を発見・分析し、解決する能力を培うことができる仕組みが込められているのが特徴の1つである。設計をするのは「アナタ自身です!」という意味を込め、「ROBO DESIGNER」という製品名になっている。

(左)ROBO DESIGNER Platformセット。コントローラボードとアクチュエータ、センサおよび数点のロボットパーツ、専用の開発環境「TiColla」から構成される。ユーザーはコントローラとパーツ、他のパーツ類とを組み合わせることで自律型車輪駆動のロボットなどが製作できる。(右)TiCollaのプログラム作成画面。「タイル」と呼ばれるオブジェクトを組み合わせることでプログラミングができる。フローチャートの「処理」や「判断」を表す図と同様に、タイルを扱うことができる。また、本格的なC言語をサポートする開発環境「TiColla CDE」もある。

(左)ROBO DESIGNER Platformセット。コントローラボードとアクチュエータ、センサおよび数点のロボットパーツ、専用の開発環境「TiColla」から構成される。ユーザーはコントローラとパーツ、他のパーツ類とを組み合わせることで自律型車輪駆動のロボットなどが製作できる。(右)TiCollaのプログラム作成画面。「タイル」と呼ばれるオブジェクトを組み合わせることでプログラミングができる。フローチャートの「処理」や「判断」を表す図と同様に、タイルを扱うことができる。また、本格的なC言語をサポートする開発環境「TiColla CDE」もある。

これほどまでに販売できた要因として、"JAPAN ROBOTECH価格"といわれる低価格での販売(例えば、ROBO DESIGNERの基本セット「RDS-X01:Platform」は税込みで9,975円)がよく挙げられる。こうした側面もあるが、最大の要因は高西先生をはじめ、ユーザーとなる先生方との共同開発(=共創)にある。
 例えばTiCollaには、タイルを組み合わせることでアルゴリズムを習得できると同時に、C言語によるプログラミングも学習できるというユニークな機能を持たせているが、テスト授業による仕様検証などを通じて挙げられた機能である。販売間近のMiniWayも、同様の方式で開発を進めている。仕様変更や追加機能などの要望に応えるために上市に時間を要するきらいがあるが、その甲斐あり「使える教材!」として認知され、売れているのである。

ベンチャーなので、やはり経営はやりくり

同社の近況に触れると、少なからず2008年秋以降の経済危機の影響を受けたが、それよりむしろ、人的な面で苦労させられている...。そのような印象を受ける。
 もともとMiniWayは4月末から発売を始める予定だったが、専用の開発環境の開発が間に合わず、夏以降に延期することを決断している。開発を担当する協力企業のソフトウエア開発担当者の体調不良が原因で、こればかりは、河野さんには如何ともし難い。現在は、社内の電気設計担当者が開発に当たっている。間もなく完成の予定だ。

また、かつてベテランの営業スタッフを雇っていたが、2008年のリーマンショック以前にレイオフするという決断も下している。
 2007年秋に、組込みシステム技術者向けの教育教材「SYSTEM CREATOR(*3)」を新たに商品ラインナップに加えたが、対象ユーザーのレベルが高くなるため、必然的に教材の内容も高度化する。容易に扱え、かつ説明ができるROBO DESIGNERと違い、ベテランスタッフにとって新たに高度な内容を理解するのは難しく、うまく説明できないために、営業から足が遠のくという状況になってしまった(同社に限らず、こうした状況は散見される)。ゆえに、そのような決断をせざるを得なかったのである。
 「リーマンショック以前に決断したからこそ、うちはまだ(企業として)あるのでしょうし、退社された方も、現在のように職探しに苦労を強いられることを免れたことでしょう...」
 河野さんは、そう振り返る。

*3:SYSTEM CREATORに関しては、期待されたほど販売台数は伸びなかった。組込みシステム技術の不足がよく指摘されるが、どちらかと言えば、携帯電話や情報家電などアプリケーション層の開発を担う組込みソフト技術者が不足している。同教材ではハードウエア技術や、それを制御するデバイスドライバなどが学習できるが、こうした特徴と不足しているエンジニアの属性がマッチしなかったからと推測される。

さらに昨年は、麻生政権時に第二次補正予算で2009年度に使用する補助教材に経費が認められ、小中学生でも扱えるROBO DESIGNERに拡販のチャンスが訪れたが、政権交代とともに霧散と化した。運転資金を借り入れるための格好の材料になるはずだっただけに惜しまれる。
 いくらROBO DESIGNERが売れているとはいえ、低価格で提供しているため利幅が大きいとは言い難い。それだけに「うちも例に漏れず、やりくりしながらの経営ですよ...」と漏らす河野さんにとっては痛い出来事だったようだ。

それでも、MiniWayの販売と並び、河野さんが期待を寄せていることがある。高西研究室や九州大学などと新たに取り組む医療用訓練ロボットの開発である。
 腹腔胸手術の技能評価を目的としたシステムで、人間の腹部を模した構造体の中に可動する臓器が複数あり、これらが微妙に動作する状況下での施術を判定する。施術者には実際に使用する鉗子などを利用してもらい、カメラ画像をもとに点数化して技能評価を行う。人工皮膚や臓器などの素材は京都科学が提供し、JAPAN ROBOTECHはロボット技術を応用して稼働部や構造体を開発する。

このようなロボットの場合、実際に治療を行うわけではないので、薬事法などの制約を受けることはない。また、教育カリキュラムの開発を担当する九州大学が九州大学内視鏡トレーニングセンターで実際に使用し、新たな医療用訓練ロボットとして世界に発信していくことになっている。さらなる広がりが期待される。

レベルに応じて2タイプの教材が揃う、これからが本番

最後に、販売を控えるMiniWayを紹介しておくと、これも高西教授らと共同開発した倒立2輪タイプの教育教材ロボットである(動画1、2)。搭載した加速度センサで検出した並進加速度を、レートジャイロセンサで検出した角速度の積分値を加えてキャンセルし、さらに、エンコーダで検出した車輪角度と角速度を加えたパラメータをもとにモータを駆動することで倒立姿勢を維持する。

動画1:高西研究室が開発したMiniWayの応用例1。サッカー競技の様子(動画提供:早大・高西研究室、JAPAN ROBOTECH)。

動画2:応用例2。相撲競技の様子(動画提供:早大・高西研究室、JAPAN ROBOTECH)。

倒立2輪タイプの教育教材ロボット「MiniWay(ミニウェイ)WV-007」。専用シミュレータも備えており、ロボット技術の基礎学習から応用まで幅広く活用できる。無線通信ユニットとデータ収集MMC(マルチメディアカード)を搭載するフルスペックタイプの「MiniWay Advanced」は約20万円、基本構成タイプの「同Platform」は約10万円での販売を予定している。写真はAdvancedタイプ。

倒立2輪タイプの教育教材ロボット「MiniWay(ミニウェイ)WV-007」。専用シミュレータも備えており、ロボット技術の基礎学習から応用まで幅広く活用できる。無線通信ユニットとデータ収集MMC(マルチメディアカード)を搭載するフルスペックタイプの「MiniWay Advanced」は約20万円、基本構成タイプの「同Platform」は約10万円での販売を予定している。写真はAdvancedタイプ。


MiniWayが搭載するエンコーダ付モータとセンサ類(左)と、制御基板(右)。これら単体での販売も行っている。2相出力エンコーダ付DCモータ「RDO-29BMA」は2008年末より販売を開始しており、価格は1個当たり3,780円。ギヤ付は1万500円。10個以上の購入の場合は、1個当たり7,980円にて販売している。良心価格のため多くの研究室で支持されている。

MiniWayが搭載するエンコーダ付モータとセンサ類(左)と、制御基板(右)。これら単体での販売も行っている。2相出力エンコーダ付DCモータ「RDO-29BMA」は2008年末より販売を開始しており、価格は1個当たり3,780円。ギヤ付は1万500円。10個以上の購入の場合は、1個当たり7,980円にて販売している。良心価格のため多くの研究室で支持されている。


MiniWayの開発でも、テスト授業などを通じたうえで開発している。写真中央にある過電流防止ヒューズを付加することで、過電流が発生したときに制御基板を保護するとともに、DCモータへの電流供給を防止するようにしている。ある生徒が過負荷の状態で使用したときの事象を踏まえ、急遽設置した。

MiniWayの開発でも、テスト授業などを通じたうえで開発している。写真中央にある過電流防止ヒューズを付加することで、過電流が発生したときに制御基板を保護するとともに、DCモータへの電流供給を防止するようにしている。ある生徒が過負荷の状態で使用したときの事象を踏まえ、急遽設置した。


2足歩行ロボットを題材にした教育教材は多くあるが、大学生が学習するにはかなり敷居が高い。しかしながら、このような倒立振子制御は2足歩行制御の基礎知識であり、その触りを理解するには格好の題材となる。2008年末から試作機の公開を始めており、販売開始ながら多数の教育機関での採用が決まっている。

MiniWayの販売により、ROBO DESIGNERは大学1、2年生以下のレベルに向け、MiniWayはそれ以上のレベル向けという具合に、「ロボット工学教育に向け、ようやく理想的な商品構成」(河野さん)になる。
 MiniWayについては、3年間で3,000台を販売することを目標に掲げているが、ROBO DESIGNERと違い、フルスペックタイプが約20万円、基本構成タイプが約10万円と、高価な商材となる。それでも、すでに多数の教育機関で採用が決定していることなど踏まえると、そう難しい目標でもないように感じられる。レベルに応じた商材が整ったいまからが、河野さんの営業力が試されるといえるだろうし、今後の成長に向けた第一歩として販売目標をクリアしてほしい。

(取材&テキスト作成:ロボナブル編集部)


掲載日:2010年9月15日

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