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ロボ・ステーション


中小モノづくり企業が挑む!新ロボ技術−ものづくり補助金事業から要注目技術を紹介
「『重い』『柔らかい』『変形する』袋が扱えるディパレタイジングロボを開発」モリマシナリー・安原紀明さん、鈴木洋次さん

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ロボット・専用機部
鈴木洋次 次長

モリマシナリー

取締役社長 森 徹

〒701-2434
岡山県赤磐市仁堀東1383

「柔らかい」「不定形」「超微小」...。このようなワークは、機械設計の世界では「難供給ワーク」とされ、専用治具を用意したりワークに何らかの作用を加えたりすることで安定化する方法が採られる。また、ここに機械設計の醍醐味があり、ベテランエンジニアの"飯の種"になっている。
 モリマシナリーは、こうした手法を一切使わずに、重量25kgにもなる柔軟かつ不定形な樹脂袋のハンドリングに成功し、パレットから荷下ろしができる「ディパレタイジングロボット」として発表した。特殊構造のエンドエフェクタにより、袋を左右の両側から抱え込むようにしてハンドリングする。約80kgに及ぶ把持力により樹脂袋は大きく変形するが、それでも安定して把持し続けることができる(動画)。
 これほど重い樹脂袋をハンドリングできるロボットシステムの開発は極めて珍しい。それだけ画期的であり、セメント袋や穀物袋のハンドリングなど多方面での利用が期待されている。

動画:積み上げられた樹脂袋の荷下ろし作業が行えるディパレタイジングロボット

試作・検証のすえに最適な構造に到達

モリマシナリーは、金属ロール成形機やATC(自動工具交換装置)に加え、舶用エンジン部品や自動車部品などを一貫生産する総合機械メーカーである。成形機事業部や成形ロール事業部、省力機械事業部など計7つの事業部から構成され、様々な開発案件に対応できることを強みとする。

ディパレタイジングロボの開発は、岡山県産業振興財団などの主催によるニーズ発表会で、大手石油化学製品メーカーとのビジネスマッチングしたことに端を発する。同メーカーでは現在、パレットからの樹脂袋の荷下ろし作業を2人1組の作業員で行っている。1つのパレットだけでも40袋(1段5袋×8段)、計1トンもあり、作業者にかかる負荷は尋常ではない。その作業のロボット化に対し開発依頼が寄せられた。現在は、「ものづくり中小企業製品開発等支援補助金(試作開発支援事業)」に採択され、開発に取り組んでいる。

開発したシステムは、おもに安川電機製の6軸垂直多関節ロボット「MOTOMAN-HP165D」と独自開発のエンドエフェクタ、レーザレンジファインダ(LRF)、架台、位置データ作成用ソフトウエア(岡山大学とダイコーテクノが開発に協力)から構成される。架台上部のLRFで積み上げた樹脂袋の位置および形状を認識してから作業を行う(写真1~5)。MOTOMAN-HP165Dは可搬重量が165kgもありオーバースペックだが、コストパフォーマンスに優れるうえ様々な検証に耐えられるとの判断から使用した。製品版では、異なるロボットを使用する可能性がある。

写真1~5:開発したディパレタイジングロボットのおもな構成

写真1:架台に設置した単軸ロボットとLRF。LRFを単軸ロボットで移動させることで樹脂袋の3次元での位置および形状の認識を可能にしている。単軸ロボットはIAI製、LRFは北陽電機製。 写真2:独自開発のエンドエフェクタ。左右3本ずつ配置したステンレス棒の開閉動作により把持する。

(左)写真1:架台に設置した単軸ロボットとLRF。LRFを単軸ロボットで移動させることで樹脂袋の3次元での位置および形状の認識を可能にしている。単軸ロボットはIAI製、LRFは北陽電機製。 (右)写真2:独自開発のエンドエフェクタ。左右3本ずつ配置したステンレス棒の開閉動作により把持する。

写真3:ステンレス棒の構成。上側は補強用。下側の2本は左右に配置してあり、これにより把持対象の樹脂袋に加え、それ以外の樹脂袋にも滑らかに接触することを可能にしている。 写真4:ハンドリング時の樹脂袋の不規則な変形に追従できるよう、上下・左右に微妙に可動できる構造にしている。 写真5:岡山大学とダイコーテクノと共同開発した位置データ作成用ソフトウエア。右側にパレット全体の状態が、左側に走査した段の樹脂袋の状態がそれぞれ表示される。

(左)写真3:ステンレス棒の構成。上側は補強用。下側の2本は左右に配置してあり、これにより把持対象の樹脂袋に加え、それ以外の樹脂袋にも滑らかに接触することを可能にしている。 (中)写真4:ハンドリング時の樹脂袋の不規則な変形に追従できるよう、上下・左右に微妙に可動できる構造にしている。(右)写真5:岡山大学とダイコーテクノと共同開発した位置データ作成用ソフトウエア。右側にパレット全体の状態が、左側に走査した段の樹脂袋の状態がそれぞれ表示される。

システムの核となるエンドエフェクタは、左右3本ずつ配置したステンレス棒の開閉動作で把持する。補強用の1本を除き、残り2本は左右に配置してあり、これにより把持対象の樹脂袋に加え、それ以外の樹脂袋にも滑らかに接触する。他列の袋を傷つけずに袋の底部まで滑らかに入り込むことができる(写真3)。
 開発当初は、1本の棒で樹脂袋を把持しようとしていた。把持対象の樹脂袋には形状に沿って回転することで滑らかに接触できる一方、他列の袋に対しては逆回転となり、袋の底部まで入る込むことができず、袋を傷つける原因になっていた。一見すると簡素な設計変更に思われるが、試作・検証を繰り返したすえに到達した最適解である。

開発時の苦労に関連すると、把持方法には真空吸着方式(写真6)と双腕ロボット(写真7)の活用も検討し、試作を行った。断念した理由は、前者は樹脂袋の変形により十分な吸着力が得られないから、後者は双腕ロボットが高価なうえ荷下ろしできるエリアが制限されるから、である。「『左右から袋を把持せざるを得ないだろう・・・』との結論は見えていたようだが、経験のないワークだったため、あえて試作して検証した」(ロボット・専用機部の鈴木洋次氏)という。

冒頭でも、このような重量物で、柔軟かつ不定型なワークをハンドリングできるシステムは珍しいと述べたが、それゆえに解析不能な厄介な現象が多かったのだろう。試作・検証により1つひとつ課題をつぶしていったからこその独自機構といえる。

写真6:開発当初に検討した真空吸着方式のエンドエフェクタ。樹脂袋の変形により十分な吸着力が得られないため断念した。 写真7:もう1つ検討した双腕ロボットによる搬送。双腕ロボットが高価なうえ荷下ろしできるエリアが制限されるという問題があった。

(左)写真6:開発当初に検討した真空吸着方式のエンドエフェクタ。樹脂袋の変形により十分な吸着力が得られないため断念した。 (右)写真7:もう1つ検討した双腕ロボットによる搬送。双腕ロボットが高価なうえ荷下ろしできるエリアが制限されるという問題があった。

従来にないシステムだけに期待は大

今年度中には、ディパレタイジングロボットとして上市を予定しており、1カ月につき2台、年間で計24台を販売することを目指している。当面は、ニーズを寄せてくれた大手石油化学製品メーカーへの納品を最優先に取り組む。

従来にないシステムであるがゆえ、様々な用途や分野への展開が期待されるが、いくつか改善すべき課題が残されている。
 1つは、エンドエフェクタの構成の見直し。ハンドリング時の樹脂袋の不規則な変形に追従できるよう、上下・左右に微妙に可動する構造にしたが、機構が複雑になったためにメンテナンス性に課題を抱える(写真4)。安定したハンドリングを損ねない必要最低限の機能に絞り込むことで、構造の簡素化を図ろうとしている。

もう1つは、タクトタイムの向上。単軸ロボットによりLRFを移動することで、樹脂袋の位置および形状の3次元認識を可能にしているが、そのために走査に相当な時間を要している(写真1)。3次元距離画像センサに切り替えることなども検討しており、走査時間がなくなるだけでも相当な効率化が見込まれる。また、センサの変更により荷下ろしをする対象物かどうかといった判定機能を持たせることも検討している。

モリマシナリーでは、NC加工機からのワークの取り出しなど、定型物のハンドリングについては開発経験が多く、ノウハウを有している。しかし今回は、対象物が対象物だけに、最適な把持方法を見出すには「ゼロベースでの検討を強いられた」(鈴木氏)。そのために短期間ながら、試作・検証を繰り返すという手間のかかる開発となったが、それだけにチャレンジングな取り組みであり、結果、応用展開への期待は大きいのだと思われる。


掲載日:2010年6月22日

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