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ロボ・ステーション


中小モノづくり企業が挑む!新ロボ技術−ものづくり補助金事業から要注目技術を紹介
「ロボ産業育成を担う雛形プロ『ツアーガイドロボ』を開発・提案」愛知工業大学・奥川雅之さん、竹田設計工業など

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写真前列左が奥川雅之准教授、右は石丸英章名古屋事業所長
写真後列左から、矢野久美子営業マネージャー、鞍岡敬一所長付、入江一文副所長

愛知工業大学

工学部 機械学科 奥川雅之

〒470-0392
愛知県豊田市八千草1247
http://www.ait.ac.jp/index.html


竹田設計工業

代表取締役 竹田健司

〒450-0003
名古屋市中村区名駅南2-7-36号
http://www.takeda-dsn.co.jp/

企業の受付案内から公共施設のナビゲーションまで、様々な方面に向けて案内が行えるサービスロボットが提案されてきた。2000年代の半ば頃までは盛んに研究開発がなされていたが、期待されたほど導入が進まず、また、有意なコストパフォーマンスを示すのが難しい用途であることから、開発意欲は冷めつつある。

そんな中、愛知工業大学の奥川雅之准教授は、岐阜工業高等専門学校竹田設計工業なとどともに、博物館や美術館に向け「ツアーガイドロボット」(図1)の開発に取り組んでいる。倒立二輪による軽快な移動と本質安全設計を両立した独自機構が特徴で、楽しく、かつ安心安全なガイドが期待される。

開発プロジェクトではもちろん、製品化も目指しているが、その先の取り組みとして、これをプラットフォームに実用的なサービスロボットおよびビジネスモデルをつくり上げることを志している。「東海地区におけるロボット産業の育成を見据えた"雛形プロジェクト"である」(奥川准教授)ことに開発の重要な意味がある。

図1:大阪芸術大学の中川志信准教授によるツアーガイドロボットのデザイン案。コンセプトは「クール」「ユーモア」「クレーバー」。子供たちに威圧感を与えることなどを考慮し、当初の120cmから90cm程度に小さくすることを予定している。技術レベルなどを考慮した結果、公共施設でのサービス提供が担えるロボットの方が実用化が早いと判断し、同ロボットの開発を選択した。

図1:大阪芸術大学の中川志信准教授によるツアーガイドロボットのデザイン案。コンセプトは「クール」「ユーモア」「クレーバー」。子供たちに威圧感を与えることなどを考慮し、当初の120cmから90cm程度に小さくすることを予定している。技術レベルなどを考慮した結果、公共施設でのサービス提供が担えるロボットの方が実用化が早いと判断し、同ロボットの開発を選択した。

自己復元機構を持つ倒立二輪機構

ツアーガイドロボットは、科学館や博物館などで来場者とインタラクションしながら展示物の案内をするロボット。スタッフ(助手)による遠隔操作で稼働し、また助手と連携して案内サービスを行う。来場者にはタブレットPCやヘッドセットカメラを提供し、これらを介してのインタラクションも想定している(図2、3)。画像や音声などの処理は外部PCで行う(いわゆる「リモートブレインシステム」)。

図2:ツアーガイドロボットの利用イメージ。来場者にはタブレットPCやヘッドセットカメラを手渡し、これらを介してのインタラクションも想定。 図3:検討しているシナリオ案。操縦やツアーの補助をする助手と連携してガイドを行う。

(左)図2:ツアーガイドロボットの利用イメージ。来場者にはタブレットPCやヘッドセットカメラを手渡し、これらを介してのインタラクションも想定。 (右)図3:検討しているシナリオ案。操縦やツアーの補助をする助手と連携してガイドを行う。

サービス内容からすると遠隔操作である必然性はないが、基本技術として確立しておけば、レスキューをはじめ様々な用途に応用展開できる可能性がある。「プラットフォーム化を見据えた活動であるため、あえて採用した」(奥川准教授)。また、岐阜高専・各務原市連携事業として取り組んでいることから、地元企業や研究機関が保有する要素技術に加え、伝統工芸を役立てることも検討している。具体的には、木工や和紙の技術を生かして本体を構成することを予定している。

2006年から始まった開発はゆるやかに進展してきたが、昨年秋以降は、「ものづくり中小企業製品開発等支援補助金(試作開発等支援)」の採択を受け、製品化に向けた活動を加速している。直近の目標としては、大阪芸術大学の中川志信准教授によるデザインを実スケールで製作することに加え、倒立二輪機構に関する技術的課題をクリアすることを掲げている。

移動機構には、奥川准教授が岐阜高専在席時に考案した、自己復元機構を有する倒立二輪を採用している。重心位置を回転中心より下方に配置することで生じる復元力により倒立を維持するのが特徴で、ダルマや起き上がり小坊師のように、横方向から強い力が加えられても電源を遮断しても倒立状態に復帰したり維持したりすることができる(写真)。機構設計の工夫により本質安全設計を達成している。

自己復元機能を有する倒立二輪機構の試作機。

自己復元機能を有する倒立二輪機構の試作機。

また同機構の採用に伴い、一般的な倒立二輪と違い、加速度センサとジャイロセンサにより本体の姿勢角を計測している。姿勢角に関する定常偏差や、傾斜路や段差乗り越え時に静的な姿勢変化などが生じ、ジャイロセンサのみでの計測が難しいからで、外乱推定オブザーバを応用したセンサフュージョンにより姿勢角を検出する。

ただし、凹凸がある路面での走行など高周波での振動が発生する場合、加速度センサが姿勢角の変化以外の動きを検出してしまい、姿勢角の推定に影響を与える。現在、様々な手法を検討しているという。
 また、機構についても見直しを進めている。同機構の採用により傾斜路や段差乗り越え時に本体が傾いてしまうからで、このようなときでも本体部は地面に対しほぼ垂直状態を維持できる設計変更を進めている。

このような機構を採用した背景には、奥川准教授自身の学術的なチャレンジがあり、サービスを指向しながらシーズ優先であることは否定できない。が、倒立二輪ならではの軽快な走行性は楽しいガイドをもたらすことが期待されるし、また自己復元機構は安定感をもたらし、開発者にも来場者にも安心感を与える。結果的として、ツアーガイドロボットに適した機構といえる。

サービスの下に専門企業が集積するピラミッド構造を

現在、同機構の安定化に向け、重心検討および配置検討などを進めている。名古屋市の竹田設計工業と共同で取り組んでおり、航空宇宙や自動車分野での設計開発で高い実績を持つ同社の協力は心強い。8月にはひと通りの設計および試作を終え、9月23日の「第28回 日本ロボット学会学術講演会」の一般公開で試作機を披露することを予定している。その後は、「かかみがはら航空宇宙科学博物館」に持ち込み、実証実験に取り組むことも検討している。

近い将来の目標であるロボット産業の育成に向けては、現在の連携事業の枠組み(図4)を拡大した「ロボット開発コミュニティ」の形成により臨むことを構想している。「実用的なロボットサービス」の下に、下層にはプラットフォームとなる各種要素技術を有する企業群が、中間層にはロボットデザインを手がける企業や人が、中間層の上位には、企画立案、販売・サポート担う企業や人がそれぞれおり、そこに研究機関や自治体、NPOが参画するようなピラミッド構造を構想している(図5)。
 奥川准教授らのイメージとしては、強いてあげると「建築業界のようなもの」で、住民のニーズに合致した住空間を提案するインテリアコーディネータ的な役割を担うロボットデザイン担当者がいたり、ロボットや要素技術をパッケージ化してサービス提案ができる役割を企画立案がいたりするなど、「顧客と対話して提案できるような役割を担う企業や人が存在し、彼らを起点に開発やサービス提案に取り組む」ことを想定している。

図4:岐阜高専・各務原市連携事業による開発の枠組み。 図5:目指すロボット開発コミュニティのイメージ。

(左)図4:岐阜高専・各務原市連携事業による開発の枠組み。 (右)図5:目指すロボット開発コミュニティのイメージ。

現在は、プラットフォームとなる各種要素技術を担う企業や人が集まった状態で、このような構造をつくり上げるのはこれからである。また構築した後は、ツアーガイドロボットの開発で培った要素技術や、デザイン手法や生産技術などの開発手法を共有する活動も残されている。それゆえに、ツアーガイドロボットの開発はボトムアップ的な取り組みとなり、肝心のビジネスモデルが後付になっている印象を与えるが、ひとたび、この構造が形成されれば、ビジネスデザインの検討から始められる理想的な流れでロボットビジネスの構築、産業化に向けた取り組みを展開できる。

ツアーガイドロボットの開発は、一見すると実用化に至るのかが危ぶまれる取り組みに思われるが、このようにロボット産業の育成に向けた雛形プロジェクトであることを知ると意義深い活動であることが理解される。近い将来には、サービス起点からロボットビジネスの構築・開発がなされるという理想型を提示してもらいたい。

■参考文献
1)椋木,小林,奥川,"自己復元機構を有する倒立振子型移動ロボットにおける姿勢角の推定",第9回システムインテグレーション部門講演会(SI2009),pp.2104-2107,2009.

掲載日:2010年6月15日

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