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ロボ・ステーション


中小モノづくり企業が挑む!新ロボ技術−ものづくり補助金事業から要注目技術を紹介
「飛行船とは思えない!"超"安定制御が可能な目視検査用ロボ飛行船を提案」菱田伸鉄工業・菱田聡さん

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菱田聡代表取締役社長

菱田伸鉄工業
代表取締役社長 菱田 聡

〒592-8331
堺市西区築港新町2-7-2
http://www.i-hishida.com/

工場プラントの配管点検や、コンクリート壁や橋梁など各種インフラの目視点検などの高所点検は、広範囲に足場を設置したうえでなされ、高所点検に相当な時間およびコストがかかる原因となっている。専用の高所作業車を用いて実施されることもあるが、点検個所に沿って少しずつ移動する面倒な作業となり、決して効率的とは言えない。各種インフラの老朽化が進む中、高所点検の重要性は以前にも増しているが、効果的な点検方法やツールが見あたらないのが実状である。

こうした現状に向け、ロボット飛行船による目視検査の提案を試みるのが、菱田伸鉄工業の菱田聡さんである。「伸鉄工業」という社名だが、これは創業時の業態の名残であり、いまは倉庫およびマンションの不動産賃貸業と次世代ロボットシステムの開発を手がけている。

提案するロボット飛行船は、風などの外乱下でも安定した機体制御が行えるのが特徴で、ラジコン用プロポを操作して、検査したい個所の撮影や目視検査を手軽かつ正確に行える(写真1)。一般に飛行船は流体(ここでは空気)を介して推力を発生するため応答性が悪く、風などの影響(外乱)に非常に弱い。目標軌道に沿って制御するのは絶望的に難しい。
 菱田さんがこうした課題をクリアした秘訣は、立命館大学の金岡克弥チェアプロフェッサーの特許技術「推力伝達ゲートシステム(TTGS)」の利用にある。

写真1:「中小企業総合展 2010 in Kansai」で披露した目視検査用ロボット浮遊カメラの試作機。

写真1:「中小企業総合展 2010 in Kansai」で披露した目視検査用ロボット浮遊カメラの試作機。

本体部を外乱などから分離したのがミソ

金岡チェアプロフェッサーの特許技術は、飛行船などの浮遊移動体を、推力を受ける「本体部」と推力を発生する「効果器部」(スラスタ)に分離し、かつ、その結合部に「推力伝達ゲート」を設けることで、効果器部から本体部に作用するすべての推力を推定できる構成(図1)、とすることに特徴がある。これにより本体部を風などの外乱や流体の非線形ダイナミクスなど扱いが厄介な要素から隔離できる。同時に、本体部は推力伝達ゲートのみから推力(力およびトルク)が加えられるようになるため、どの程度の推力を発生すれば推進できるかを確実に推定することができる。

図1:推力伝達ゲートの概念図。飛行船などの浮遊移動体を、推力を受ける「本体部」と推力を発生する「効果器部」(スラスタ)に分離し、その結合部に「推力伝達ゲート」を設けることで、効果器部から本体部に作用するすべての推力を推定できる構成としている。

図1:推力伝達ゲートの概念図。飛行船などの浮遊移動体を、推力を受ける「本体部」と推力を発生する「効果器部」(スラスタ)に分離し、その結合部に「推力伝達ゲート」を設けることで、効果器部から本体部に作用するすべての推力を推定できる構成としている。

推力伝達ゲートにおける制御ソフトウエアは、目標軌道を実現するために本体部が受けるべき推力を計算・指令する「推力計画部」と、推力伝達ゲートで推定した推力をスラスタにフィードバックして推力計画にもとづく指令推力を実現する「推力制御部」から構成される。効果器部は、外乱や流体の非線形ダイナミクスの影響を受けるが、このように力を直接フィードバックして指令推力を即座に発生するため高速な応答が可能になり、外乱に強い機体制御となっている。

飛行船などの浮遊移動体の制御は、一般には位置や速度センサの情報をフィードバックし、スラスタを駆動して行う。外乱の影響で目標軌道から外れたとき、誤差を修正するようにスラスタを制御するが、そもそも位置誤差や速度誤差のセンシングに時間がかかる。また、スラスタは流体を利用して推力を発生するため、指令推力と実際に出力した推力との間には、流体の非線形ダイナミクスが存在し、制御性能に悪影響を及ぼす。これでは外乱に対抗するために発生した推力が、新たな外乱を起こしてしまう可能性が高い。

これに対し、同技術における推力伝達ゲートによる分離は、機械的もしくは計算上のどちらでもよいが、それにより本体部の運動方程式が簡素となり、制御しやすくしている。また、発生した推力を直接フィードバックしてスラスタを指令しているため高速な応答が可能となり、外乱下でも高精度の制御が行えるのである。

老朽化した道路梁への適用も視野に

5月26~28日開催の「中小企業総合展 2010 in Kansai」では、「目視検査用ロボット浮遊カメラ」という製品名で試作機を公開した。ヘリウムバルーンとワイヤレスカメラや電動スラスタ、各種制御ボード、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)などから構成され、これらをカーボンフレームで囲んでいる。ワイヤレスカメラが捉えた画像をHMDによってリアルタイムで閲覧することで、ロボット浮遊カメラの視点で操作および目視検査が行える(図2)。
 制御の要となる、上述の推力伝達ゲートを実装するコンピュータには3軸角速度計と3軸加速度計を搭載するワイズラブの制御ボード「MAVC 1」を設置しており、3軸加速度計によりスラスタ推力を推定している。

図2:目視検査用ロボット浮遊カメラのシステム構成図。ロボット側のワイヤレスカメラが捉えた画像をHMDによってリアルタイムで閲覧することにより、ロボット浮遊カメラの視点で操作や目視検査ができる。 写真2:推力伝達ゲートを実装するコンピュータ部と電動スラスタ。3軸角速度計と3軸加速度計を搭載する制御ボードを設置しており、3軸加速度計によりスラスタ推力を推定している。電動スラスタには右回転と左回転の2種類、2基ずつ計4基を使用しており、機体下部の四隅に配置している。

(左)図2:目視検査用ロボット浮遊カメラのシステム構成図。ロボット側のワイヤレスカメラが捉えた画像をHMDによってリアルタイムで閲覧することにより、ロボット浮遊カメラの視点で操作や目視検査ができる。 (右)写真2:推力伝達ゲートを実装するコンピュータ部と電動スラスタ。3軸角速度計と3軸加速度計を搭載する制御ボードを設置しており、3軸加速度計によりスラスタ推力を推定している。電動スラスタには右回転と左回転の2種類、2基ずつ計4基を使用しており、機体下部の四隅に配置している。

また、電動スラスタの配置などにも工夫を凝らしている。右回転と左回転の2種類、2基ずつ計4基を機体下部の四隅に配置しており、これらの回転力を調整することでXYZ方向に加え、ヨー方向の制御も可能にしている(写真2)。例えば、各電動スラスタの回転数を同じにしたときは、それぞれの回転力で発生した反力を相殺して向きを固定するが、右回転を大きくすれば左方向に、左回転を大きくすれば右方向にという具合に、スラスタの方向を変えなくても、機体の向きを任意に変更できる。よく考えられた設計だ。

写真1のように独特の縦長の形状になっているのは、菱田さんの経験から、まずは倉庫内の各種点検作業に向けた提案を検討しているからである。成人男性とほぼ同サイズになっており現在、人が行っている目視検査にそのまま適用することができる。

菱田さんが、もう1つターゲットに定めているのが、老朽化した橋梁の損傷や修繕の確認作業である。
 国土交通省によると、地方公共団体が管理する橋梁の老朽化が進展し、建設後50年以上になる橋梁は、2016年には2万8,4000橋と約20%(全橋梁数は約14万橋)を占め、2026年には6万6,300橋と47%にも上ると試算している(「長寿命化修繕計画策定事業費補助制度」資料より)。現在、その長寿命化に向けた事業が展開されているが、橋梁の目視検査に有効なツールが存在しない。腐食や孔食が進行した部分を1つひとつデジタルカメラで撮影し、記録・分析している。これでは時間もコストもかかるため、ロボット浮遊カメラは、こうした現状に一石を投じるものになるだろう。

ただし、いまはまだ試作1号機を製作したばかりであり、どの程度、特許技術の性能を発揮できるのかは検証段階にある。7月開催の「ROBOTECH 次世代ロボット製造技術展」では飛行デモの実施を予定しており、それまでには検証を済ませ、出展後には拡販を図りたいと意気込んでいる。

■参考文献
1)金岡克弥,川村貞夫,"ダイバーロボットの実現に向けて",日本ロボット学会誌,Vol.22,No.6, pp732―737,2004.

掲載日:2010年6月 1日

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