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ロボ・ステーション


ロボットビジネス勝利の方程式を探る!
次世代シロアリ防除サービス業へと経営革新を目指す 〜フロントステージとバックステージを捉えたRT導入〜【アサンテ】

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(株)アサンテ
代表取締役 宗政 誠

〒160-0022
東京都新宿区新宿1-33-15
http://www.asante.co.jp/


ロボットメーカーあるいはRT(Robot Technology)要素開発企業によるサービスロボットの提案が目立つ中、現時点では珍しい、サービス事業者自身によるRTを活用した業務革新を紹介する。取り上げるのは、シロアリ業界第2位のアサンテが挑む『次世代シロアリ防除サービス業』(*1)に向けた活動である。

一般に、シロアリ防除サービスはすべてのプロセスを人が担っており、投入する人員がサービス品質および売り上げに影響を与える。通常は、社内トレーニング(人材教育)によりこれらの向上が図られるが、それだけでは飛躍的に向上することは難しい。また、そうした取り組みがコストアップにつながるという側面もある。

そこで、アサンテではRTの積極活用により現在のサービスプロセスを革新しようとしている。顧客価値を捉えた各種RTの導入や、サービスプロセスのリエンジニアリング(再設計)を視野に入れた活動など、示唆に富む取り組みで注目を集めている。

*1:明確に定義されているわけではないが、飯柴正美常務取締役は、2008年2月19日に大阪市の四天王寺四天王寺聖霊院(しょうろういん)で、開発中のシロアリ防除ロボット「ミルボ3」の公開デモを実施した際、「(シロアリ防除ばかりではなく)木造の戸建住宅を総合的にメンテナンスできるようなサービス体系をイメージしている」と説明していた。

 

プロセス全体のリエンジニアリングを目指す

同社のシロアリ防除サービスは、大きくは営業スタッフ、技術スタッフ、アフタサービス担当(CS担当)の3部隊によって提供されている。おおまかな流れを説明すると次のように整理される。

【1】営業部隊が一般家庭に訪問し、自社の事業PRや床下点検を勧めることから始まる。営業は飛び込みが多くを占める。
  【2】興味を持った相手には床下点検を実施し、家屋の状況報告と併せて改善に必要な処置と費用などを説明。希望があれば見積もりを行う。契約に至れば、建物構造や被害状況などの詳細を技術スタッフに申し送る。
  【3】技術スタッフは、班長とサブスタッフの2人1組で訪問し、施工(防除作業)の準備に取りかかる。再度、被害状況や家の間取りなどを確認して営業スタッフから得た情報との誤差を修正し、必要な薬剤散布量などを算出する。
  【4】木部処理(穿穴処理・散布処理)、土壌処理を実施し、玄関や風呂場など床下に潜れない個所は、部屋の中から処理作業を行う(*2)。一連の作業が終了すれば、班長が床下の状況や処理方法などを家主に説明。施工確認書に確認印をもらって作業は終了する。
  【5】あとは、CS担当が引き続き(*3)、保証期間である5年間は、施工を実施した前後1カ月に訪問して保守点検を行う。万一被害があれば、その場で再度施工を行う。技術スタッフによる施工後、計4回訪問する。
  【6】最終年となる5年目の点検時に再度、処理の継続を提案。保証機関の満了を迎えて、一連のシロアリ防除サービスは終了する。

なお、実際の防除サービスは、さらに細かく、かつ複雑なサブプロセスから構成されることを断っておく。

*2:木部処理では、まず班長が床下に潜って木部に穴を開け(穿穴処理)、サブスタッフが薬剤を持って追跡し、穴に薬剤を散布する(散布処理)。土壌処理ではサブが床下に潜って行い、併行して、班長が部屋の中から処理を行う。

*3:施工終了1週間後に挨拶を兼ねて、営業や技術スタッフの対応に不備がないかどうかを、アンケート調査を通じて確認している。

アサンテでは、シロアリ防除ロボットおよびRT開発のプロジェクトメンバー(*4)とともに、このような一連のサービスプロセスを洗い出し、収益向上につながるプロセスを押さえたうえで作業の再編成を図ろうとしている。プロセス全体のリエンジニアリングを睨みつつ、各種RTをどのようなタイミングで導入すればリエンジニアリングが達成できるのかを検討している。

これまでに開発したシステムの一例を紹介すると、以下の通りである。

床下作業ロボット「ミルボ1」。作業員との協調作業を前提に開発している。

床下作業ロボット「ミルボ1」。作業員との協調作業を前提に開発している。

カメラを搭載する協働ロボット。約40〜200cmの範囲で、手動で伸縮できる。

カメラを搭載する協働ロボット。約40〜200cmの範囲で、手動で伸縮できる。

壁内作業ロボット。ライン端子接続により家庭用TVに映像を映すことも可能。

壁内作業ロボット。ライン端子接続により家庭用TVに映像を映すことも可能。

ミルボ1のコントローラ。ディスプレイユニットとコントロールユニットから構成。

ミルボ1のコントローラ。ディスプレイユニットとコントロールユニットから構成。

「ミルボ3」は作業者の代替を目的としており、床下点検と薬剤噴霧の両機能を搭載する。

「ミルボ3」は作業者の代替を目的としており、床下点検と薬剤噴霧の両機能を搭載する。

ミルボ3のコントローラ。ミルボ1のものと同様2本のレバーで操作できる。中央の赤いボタンは非常停止ボタン

ミルボ3のコントローラ。ミルボ1のものと同様2本のレバーで操作できる。中央の赤いボタンは非常停止ボタン

システムの核となる床下点検ロボット「ミルボ1号」「同3号」は、テレビなどに点検内容を表示する映像配信システムと連動しており、家主がつぶさに確認できるようにしている。また、床下点検ロボットは薬剤ノズルと搭載し処理させることにより、技術スタッフの手が届かないような遠い個所や手が入らないような狭所でも散布作業が行える。施工精度の大幅な向上が期待される。

上述の通り、同社では施工後5年間は年1回の定期点検を無料で行うことを保証しており、万一、保証期間内にシロアリの発生が確認された場合は、無料で再処理を実施している。ゆえに、施工精度の向上は再処理の実施回数の低減につながり、収益の改善につながることが見込まれる。

*4:「サービスロボット市場創出支援事業」(経産省、2006〜07年度)での参加企業・団体は次の通り。アサンテ(受託事業者)、アサヒ電子研究所(通信システム開発)、国際レスキューシステム研究機構(ロボットシステム研究開発)、RTソリューション(プロジェクト総括・ロボット製造責任者)、MHIソリューションテクノロジーズ(カメラ関連部品製造)、スリーディーデータ(各種計測システムの導入検討・性能試験)、安全工学研究所(安全工学に基づく安全認証指導)。さらに、以下はアサヒ電子研究所と再々委託というかたちで参画している。ナカタテクスタ(ロボット本体製造)、スリーS電器製作所(制御部品製造)。現在は、新たな企業や研究機関の参加を含め、開発グループの再編成を進めている。

フロントステージとバックステージを見据える

システムの導入により施工精度の向上、すなわちサービス品質の向上が見込まれることを述べたが、実は、同社が最も重要視しているのは、映像配信システムにより家主の安心感や信頼感を獲得することである。この「フロントステージ」へのRTの導入にこそ顧客価値の向上、ひいては収益向上につながるポイントがあると捉えている。

一般に、サービスプロセスは、大きくは「フロントステージ(フロントオフィス)」と「バックステージ(バックオフィス)」に分けられる。前者は、顧客との関係を構築する役割を担うのに対し、後者は、顧客との接点がないため作業をルーチン化しやすい。製造業の生産現場と大差がないため、作業分析を行うことで自動化あるいはRTに置き換えられる作業を抽出することができる。また、コストセンターと化しているため、できるだけ効率化したいというニーズがある。

しかしながら、こうした特徴を持つがゆえ顧客価値の創出につながらないし、直接利益を生み出すことはない(サービス業態により、そう言い切れないところもある)。アサンテのようなシロアリ防除サービス業も例外ではない。しかも、シロアリ防除業界は、一部悪徳業の詐欺行為により業界全体が好意的に見られているわけではないため、成約に至る確率が非常に低いと言われている。

そこで、床下点検ロボットと連動した映像通信システムが威力を発揮する。特に営業部隊による営業やサービス提案時に活用することで、被害状況を家主や遠隔地に住む家主の家族に映像配信をしたり、本部にいる専門スタッフとやり取りしたりすることで説得力のある営業が可能になる。家主の安心感や信頼感を得ることができ、営業効率の大幅な向上が見込まれる。さらには、顧客との信頼関係の構築にもつながり、将来、施工が必要なときに再度、アサンテを選択してくれることも期待される。

図1 サービスプロセスのフロントステージとバックステージを整理したうえで、顧客価値の創出につながるプロセスを捉えている。さらに、サービスプロセスの再構成を視野に入れた取り組みを展開している。

図1 サービスプロセスのフロントステージとバックステージを整理したうえで、顧客価値の創出につながるプロセスを捉えている。さらに、サービスプロセスの再構成を視野に入れた取り組みを展開している。

一般に、サービス業へのRTシステムの導入は、産業用ロボットにおけるそれと同様、バックステージにおける作業効率および品質の向上ばかりがイメージされる。アサンテの取り組みにもそうした側面があるが、家主との関係性を構築するフロントステージの強化にこそ、RTを導入しようとする意図がある。

このように、サービスプロセスにおけるフロントステージとバックステージの特徴を見極めたうえでRTの開発および導入、それを起点としたサービスのリエンジニアリングに取り組もうとしているところに、アサンテの活動が注目される理由がある。

サービス革新に向けては技術的な課題も

現在、アサンテでは顧客価値の向上に寄与するプロセスと、作業効率および品質の向上につながるプロセスの両方にRTを導入し、そのうえで、これらを導入したプロセスへと革新することを検討している。2010年度中に段階的に現場で稼働することを予定していたが、少々先送りになる可能性があるという。

おもに技術的な課題に起因するもので、1つは操作性の問題である。現在のシステムでは、1人の作業者で床下点検ロボットを操作しつつ、顧客に説明をするのが難しい。技術スタッフは2人1組で行動するため問題はないが、1人で行動する営業スタッフが利用するのには負担が大きい。これでは、期待される営業の効率化を難しくすることが懸念される。

もう1つは、建物の図面や間取り情報を保有していないことである。住宅メーカーなどが導入しようとする床下点検ロボットを利用した作業では、彼ら自身が図面を保有しているので問題にはならないが、新規顧客にサービス提案をするアサンテの場合、自分たちで図面化する手間がある。

現在の図面化の作業は、まず営業スタッフが営業時に建物のおおよその図面を描く。その情報を技術スタッフが引き継いで詳細に図面化。最後に、CS担当では点検時に増改築の情報を添記する、という手順で進められる。営業段階では各部屋に入ることは難しいため、施工時に技術スタッフが間取り情報の詳細を収集している。

詳細な図面がないために、営業段階での床下点検ロボットの運用を難しくしている。また、部屋の間取り情報とロボットが捉えた映像、点検内容をリンクして履歴情報として残すことも困難にしている。

ミルボ3が撮影した映像を表示しながら床下の状況を説明(2008年7月)。このときは営業スタッフが作成した図面を技術スタッフが詳細化し、これを頼りに走行させた。

ミルボ3が撮影した映像を表示しながら床下の状況を説明(2008年7月)。このときは営業スタッフが作成した図面を技術スタッフが詳細化し、これを頼りに走行させた。

ミルボ3が捉えた床下の映像。きれいな映像で顧客には好評だった。ただし地図情報が同時に表示されないため、家のどの位置の映像なのかがわかりにくい。

ミルボ3が捉えた床下の映像。きれいな映像で顧客には好評だった。ただし地図情報が同時に表示されないため、家のどの位置の映像なのかがわかりにくい。

このように技術的な課題があり、また、10年がかりのプロジェクトとして取り組んでおり、次世代シロアリ防除サービス業への道のりは遠い。が、フロントステージとバックステージをきちんと捉えたRTの導入や、サービスプロセスのリエンジニアリングを視野に入れた段階的な活動など示唆に富む内容が多く、サービス事業者自身によるロボットおよびRT導入の先行事例として参考になる取り組みと言える。

(解説:ロボナブル編集部)


掲載日:2010年2月23日

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