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ロボ・ステーション


ロボットビジネス勝利の方程式を探る!
「持続的なビジネス展開を可能にした『HAL福祉用』の販売」〜設計・運用・保険の3段構えで安全性を確保〜【サイバーダイン&大和ハウス工業】

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サイバーダイン(株)
CEO 山海 嘉之

〒305-0818
茨城県つくば市学園南D25街区1
http://www.cyberdyne.jp/index.html


大和ハウス工業(株)
ロボット事業推進室

〒530-8241
大阪市北区梅田3丁目3番5号
http://www.daiwahouse.co.jp/robot/index.html


2009年度から5年間の大型プロジェクトとして「生活支援ロボット実用化プロジェクト」がスタートした。生活分野での実用化が期待されるロボットを対象に、安全性の評価手法や検証システムを構築・開発するもので、プロジェクトの進展に伴い、ロボットの安全への関心が高まっている。第3回は、この観点から見ると先進的な取り組みと言える、サイバーダイン大和ハウス工業によるロボットスーツ「HAL福祉用」の販売を取り上げる。

HAL福祉用は、介護・福祉施設向けに開発した下半身タイプのもので、立ち座りや歩行、階段の昇降などの動作をアシストする。「単脚型」と「両脚型」の2タイプがあり、バッテリーを除く重量は、単脚型が約6kg、両脚型が約10kg(バッテリー重量は約1kg)。サイズは、身長150cm以下の「Sサイズ」と身長150〜165cmの「Mサイズ」、身長165〜180cmの「Lサイズ」の3種類があり、バッテリー駆動で約1時間利用することができる。

契約は、おおよそ次のような流れで進められる。まずユーザーは大和ハウスに申し込みをし、リース会社とリース契約を、サイバーダインと保守契約をそれぞれ締結。申し込み後1〜2カ月程度で納品され、最後に大和ハウスのサービススタッフによる取り扱い説明を受ける。説明を受けることではじめて利用できるようにしている。リース料は保守料を含め、両脚タイプが月当たり22万円、単脚タイプが同15万円。リース期間は5年間で、リース満了後にサイバーダインが回収を行う(2008年10月発表時)。

図1 HAL福祉用の概要と契約までの流れ

図1 HAL福祉用の概要と契約までの流れ

設計・運用・保険の3段構えで安全性を確保

HAL福祉用の販売で注目されるのは、該当する安全規格がない中で考えられ得る安全方策を採っていることである。

HALをはじめとするアシストスーツに関して、国際安全規格では能力を補助する装置「Compensation(能力補償)」と増大する装置「Augmentation(能力増大)」に分けて議論されている。
 前者は、ユーザーが本来有している最大筋力を上限にアシストを行う装置を指す。例えば、20kg程度のモノを持ち運ぶことができる人に対して5kgの力をアシストする場合、仮にアシストスーツが暴走しても、本来有している筋力により耐えられる。ゆえに、「最大筋力を上限にアシストを行うのが、アシストスーツにおける本質安全設計の考え方の1つになる」との見方が機械安全の専門家の間でなされている。
 これに対し、後者はアシストスーツが暴走するとケガを負わせるリスクが高くなるため、何らかの方策が求められる。例えば機械の安全設計でなされている、稼働範囲や方向、角度、速度、空間などを機械的に制限するといった方策である。

HAL福祉用は介護・福祉施設の現場で立ち座りや歩行、階段の昇降などの動作のアシストを目的としており、能力補償の範疇に入る、小さなアシスト力しか発生していない。上述の考え方に従えば、本質安全設計(*1)を達成していると言えよう。

*1:HAL福祉用がこのような設計アプローチをとったのには、サイバーダインも参画した「人間支援型ロボット実用化プロジェクト」(NEDO、2005〜07年)が関係していると言われている。同プロジェクトでは、プロジェクト推進委員を務めた長岡技術科学大学の杉本旭教授らが安全技術を指導したが、杉本教授はサービスロボットの安全鑑定を行うNPO安全工学研究所の理事長を務めることで知られる。同NPOでは、機能安全規格「IEC 61508」の認証にかかる膨大な期間や費用(最低でも3年以上、1,000万円以上)を考慮し、本質安全設計を達成しているか否かで安全鑑定を行っている。推測になるが、HAL福祉用が能力補償という設計アプローチをとったのは、杉本先生の考えが少なからず反映された結果であり、また、このようなアプローチであるからこそ上市できると判断したのかもしれない。

図2 HAL福祉用リース販売の特徴

図2 HAL福祉用リース販売の特徴

また、上述の設計で対応しきれなかった残留リスクは、運用による工夫で低減を図っている。提供先は介護・福祉施設に限定しており、現時点では、個人向けへの提供は行っていない。しかも、各施設の担当医(理学療法士など)が使用を許可し、かつ取り扱い説明をきちんと受けた人のみに提供することにしている。つまり、必ず担当医がいるところでの利用環境に限定し、かつ使用できるユーザーの絞り込みをし(*2)、説明責任も果たしている。さらに、複数の既存商品を組み合わせた保険も用意しており、これは月々のリース料に包含している。

*2:ISO 14121-1/JIS B 9702が規定するリスクアセスメント(RA)の手順では、ロボットの仕様および使用条件を明確にすることが定められている。一般に制限を強くすると想定される危険源および危険事象は多くなり、制限を弱くすると少なくなる。本稿では、わかりやすくするために「設計」と「運用」を分けて紹介しているが、使用条件を制限したからこそ、設計による安全性確保のハードルを低くすることができ、妥当な価格帯でのリース販売を可能にしたと言える。

このように「設計」「運用」「保険」という3段構えで安全を保証しており、ユーザーに安心感を与えられる販売方法をつくり上げている。つまり、持続的に製造・販売が行える体制を整えており、ここにHAL福祉用のリース販売のポイントがある。2008年10月のリース販売の開始から1年以上が経過したが、トラブル例が一度も報告されていないのは、こうした販売によるものと言えよう。

ユーザー・理学療法士・経営者の3者の一致が必須

開発元のサイバーダインによると、HAL福祉用は、山口県の昭和病院での導入を皮切りに、松山市の「HAL」プロジェクト(松山市役所、愛媛大学)、茨城県の社会福祉法人 樅山会および阿見第一クリニックで導入されている(そのほかの導入先の詳細はこちらを参照)。導入施設数を伸ばしているが、その動きは緩やかである(当初の年間販売目標は500台)。

その理由は、施設向けへの提供に限定した結果、導入までの意志決定に異なる立場の人間が介在することにある。つまり、ユーザーとなる高齢者や身障者、運用や指導を担当する理学療法士、導入を最終決定する施設経営者の3者の思いが、HAL福祉用の利用という目標に"ピッシッ"と向かうことが求められることである。これら3者に納得してもらい、同様に「利用したい!」という強い思いを抱いてもらうのは、そう容易なことではない。

また、HAL福祉用が製品としての歴史が浅く、"発展段階"にあることもある。
 HALは、筋肉を動かそうとする脳からの生体電位信号を生体電位センサで検出・増幅し、それをもとにパワーユニットを制御(これは随意制御の場合。これに基本動作をパターン化し、それに合わせて制御を行う自律制御を組み合わせている)している。単脚型と両脚型の2タイプがあるHAL福祉用では、それぞれ9個と18個の生体電位センサを特定筋の皮膚表面に貼り付けて使用している(両脚型では、もう片方の脚の同じ位置に貼り付けて使用するため計18個)。
 適切に制御し、かつ汎用的に使えるようにするためには、例えば、複数筋の混合信号から意図した筋肉の信号のみを抽出するアルゴリズムの開発および、それに適した生体電位センサの配置、さらには、ユーザーの個人差に対応する自動キャリブレーションソフトなどの開発が求められよう。これらの技術的なハードルは非常に高いが、その達成により汎用性がさらに増し、さらなる普及につながるはずである。

とはいえ、HAL福祉用の販売は先に紹介した仕組みにより安全性を確保し、持続的に展開できるものとなっている。製品として、巷に溢れる製品と同レベルの成熟度に至るには、もう少し時間を要するかもしれないが、このような販売方法を採っているからこそ、そこに到達できる可能性が十分ある(*3)と言える。

*3:HALを含むアシストスーツ市場は、富士経済によると、2008年(見込み)が5億円、2009年は26億円、2010年には37億円、そして、2011年には45億円に拡大すると予測している。高齢者や身障者がリハビリや自立支援を目的に使用したり、健常者が介護や重労働の作業負担の軽減を目的に利用したりするなど幅広い利用が見込まれるうえ、近い将来、トヨタやホンダなどの参入も予測されていることを根拠にしている(「2008ワールドワイドFAロボット/RT関連市場の現状と将来展望」より)。

(解説:ロボナブル編集部)


掲載日:2010年2月 2日

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