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ロボ・ステーション


ロボットビジネス勝利の方程式を探る!
「人材確保に結び付けた『ムラタセイサク君&セイコちゃんプロジェクト』」〜ぶれないコンセプトと共感を得る仕掛けにポイント〜【村田製作所】

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(株)村田製作所

広報部 企業広報課ほか

〒617-8555
京都府長岡京市東神足1丁目10番1号
http://www.murata.co.jp/

第1回に引き続き、ロボットの特徴をうまく生かしたロボットビジネスとして、村田製作所(以下ムラタ)の「ムラタセイサク君&ムラタセイコちゃんプロジェクト」を紹介する。

同プロジェクトは、ロボットを"動的媒体"と見立て、自社の電子部品および技術力・モノづくり力をPRする取り組みである。開発部ではなく広報部が主体となって活動している点がユニークである。

新モデルとなるムラタセイコちゃんの09年モデルは、半径75cm(最小で約50cm)でのカーブ走行や幅2cmの平均台走行が可能になったが、その実現にはムラタの電子デバイスが寄与している。詳細を説明すると、従来のピッチ方向とロール方向の傾きに加え、ヨー方向を検出するジャイロセンサを搭載。検出した角速度から進行方向の回転角度を推定し、腹部に追加装備した重量約1kgの「方向円板」の反力トルクを利用して進行方向を変更する。右にカーブしたいときは方向円板を左向きに、左にカーブしたいときは右向きに、1周カーブしたいときは360度回転するという具合に、任意の方向および角度でカーブ走行ができる。

また、本体前方の下部には足元を捉えるカメラを追加。平均台上面とタイヤを捉えた画像から進行方向を推定し、方向円板で進行方向を微妙に調整することで平均台走行を可能にしている。これらの様子は以下の動画で確認してほしい。

ムラタセイコちゃんのカーブ走行の動画    ムラタセイコちゃんの平均台走行の動画

そのほか、障害物までの距離を測定するための超音波センサ(送信用受信用で1対)や、携帯情報端末やパソコンとのデータの送受信を行う2.45GHz帯Bluetooth通信モジュール、バッテリーからの電気エネルギーを変換して各制御回路に供給するDC-DCコンバータなどムラタが取り扱う各種電子部品を実装している。

従来、展示会における電子部品などの要素部品の展示は、姿やカタチを見せるだけの"静的"なものだった。展示パネルには仕様や用途例をはじめ詳細な説明がされているが、わかりやすいとは言い難く、PRも不足している。これに対し、ムラタセイサク君&セイコちゃんを利用した動的な電子部品のPRは、その機能が直感的にわかるうえインパクトが絶大である。同プロジェクトで筐体設計などをプロデュースしたロボットコンサルタントの小西康晴氏は、従来の『形態展示』に対し『行動展示』と表現している。

また、2005年開催の「CEATEC JAPAN 2005」にムラタセイサク君をお披露目して以来、バージョンアップを繰り返しつつ同展でのPRを継続しているが、この継続力が来場者の関心を喚起し、ムラタセイサク君&セイコちゃんによるPRをより一層強力なものにしている。

そのほか同プロジェクトには、技術的チャレンジを見せることで顧客や社員、子供たちの期待に応えることや、これによりムラタ社内のモチベーションを向上するという狙いもある。

図1 ムラタセイサク君&セイコちゃんプロジェクトの目的

図1 ムラタセイサク君&セイコちゃんプロジェクトの目的

共感を得るための取り組みが徹底

ムラタセイサク君&セイコちゃんプロジェクトの成功を受け、最近はロボットを活用した要素部品のPRが散見されるようになっている。が、顧客や社員、子供たちから共感を得て、さらには企業イメージの向上につなげようとする同プロジェクトは突出している。

例えば、「CEATEC JAPAN 2008」ではデモを開始する前に開発スタッフのこだわりや思い(抜擢された女性デザイナーの生の声など)をビデオ映像で繰り返し伝えていたが、このように開発に込められているストーリーやこだわりを可視化(見える化)することで、大人から子供まで幅広い層に受け入れられる雰囲気をつくり上げている。
 またデモでは、ムラタセイサク君&セイコちゃんは失敗するときもあるが、あえてそれも見せるようにしている。七転び八起きしながらもデモにチャレンジする姿を介して、開発スタッフのひたむきさを感じさせる狙いもあるのだろうが、結果、展示会の来場者から共感を得ることにつなげている。

併せて、ムラタではCSR活動にも取り組んでおり、2006年からは全国の小中学校を訪問して理科学習を行う「出前授業」を開催している。ムラタセイサク君&セイコちゃんを用いて、その開発秘話から性能、実装している電子部品の機能を説明するとともに、理科のおもしろさを伝えている。このように、ムラタセイサク君&セイコちゃんを利用した活動の甲斐があり、例えば、2006年度の日経企業イメージ調査『技術力がある企業』の一般個人の部門で24位にランクインしている。電子部品メーカーとしては異例の高順位の獲得につなげている。

図2 ムラタセイサク君&セイコちゃんプロジェクトのおもな特徴

図2 ムラタセイサク君&セイコちゃんプロジェクトのおもな特徴

イベントでは、顧客や来場者との距離を縮めるために「ムラタセイサク君の科学」をはじめ各種コミュニケーショングッズを多数用意しているが、ここでもひと工夫をしている。展示会に足を運ぶか、ムラタ社員を介してしか入手できないようにしており、ムラタの社員は社外から入手を依頼されることがあるという。これを通じて、ムラタセイサク君&セイコちゃんの人気の高さを知ると同時に、ムラタへの帰属意識および愛社精神の向上につながるわけで、こうした仕掛けも組み込んでいることにも感心させられる。

人材確保が最大の成果!?

同プロジェクトは上述のような成果を得ているが、実は最大の成果は人材確保にあると言われている。
 例えば、2006年度の新卒者の応募者数は、好景気により技術系の採用が激化する中、前年比60%増を達成し、大手セットメーカーに流れる新卒者の抑制に成功した。最近の「マイコミ」による就職意識調査によると、学生が就職時に重視するのは「1位:自分のやりたい仕事ができる」「2位:安定している」「3位:働きがいのある」...となっている。前節で紹介した共感を得る仕掛けを通じて、ムラタからこれらを感じ取った結果なのかもしれない。

また同時に、人事労務にかかる経費削減にもつながっている。ムラタのような要素部品メーカーは、セットメーカーと比較すると、学生からの注目度は高いとは言い難い。人事担当者が各大学の就職課に足繁く通って製品や技術をPRしても、就職希望者を紹介してもらったり応募者数が増加したりするという成果につながりにくい。しかし、ムラタでは上述のように応募者数が飛躍的に増加し、以前のように、大学への頻繁な訪問が不要になっているようで、出張旅費をはじめ人事労務にかかる経費の大幅な圧縮を達成している。

手段と目的を違えないことが大切

話は少々反れるが、ここ数年、各地でロボット開発を切り口にした地域振興策が展開されている。新産業の創出、地域経済の活性化がおもな目的だが、その先に、モノづくり人材の環流を目指そうとする強い意図が垣間見える。地域の工業高校や高専、大学を卒業しても、地元企業への就職を希望してくれる学生が少ないという背景があるからで、先端技術と言えるロボット開発を通じて、彼らに地元企業の技術力や魅力を伝えようとする意気込みが感じられる。しかし、成功事例はほとんど聞かれない。
 開発そのものがうまく進展していないこともあるが、手段であるはずのロボット開発が目的と化し、本来の人材の還流という目的に向けた取り組みが展開されていないことに原因の1つがある。1体のロボット開発だけで地元企業の魅力を伝えるのは困難だろうし、次代のモノづくり人材から共感を得るのも難しいだろう。これに対し、ムラタでは「電子部品PR用ロボット」というコンセプトからぶれず、継続的な活動を通じて上述のような成果を得ている。

ムラタの取り組みは、単なる電子部品のPRにロボットを活用したと見られがちだが、PR効果を最大限にする共感を得る仕掛けを併せて実行し、かつPRという目的に適した組織(広報部)が裁量権を持って持続的な取り組みとしている。ここに重要なポイントがある。さらには、人材確保という重要な成果を得るに至っている。

ロボット開発は、世間一般や地域の関心を惹くには有効な手段になる。が、新産業の創出や地域経済の活性化の先の結果として、人材の確保につなげるためには共感を得るための仕掛けが必須である。加えて、目的に合致した能力を持つ組織が担う、または関わることも必要だろう。人材確保という視点で見ても、ムラタセイサク君&セイコちゃんプロジェクトには様々なヒントが込められているのである。

(解説:ロボナブル編集部)


掲載日:2010年1月26日

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