本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > ロボ・ステーション

ロボ・ステーション


ロボットビジネス勝利の方程式を探る!
「自走式ミュージックプレーヤーを利用した『音楽レコメンドサービス』」〜ハードウエアを普及させるためのサービスを提案〜【ゼットエムピー】

画像をクリックすると拡大表示します

自走式ミュージックプレーヤー「miuro(ミューロ)」
自走式ミュージックプレーヤー「miuro(ミューロ)」

(株)ゼットエムピー

代表取締役社長 谷口 恒

〒112-0002
東京都文京区小石川5-41-10
http://www.zmp.co.jp/

第1回と第2回は、ロボットの特徴をうまく生かしたロボットビジネスを解説する。まず紹介するのは、ロボットベンチャー・ゼットエムピー(ZMP)が提案する「音楽レコメンドサービス」である。

同サービスは、首都大学東京と共同開発したレコメンドエンジン(テレビ番組推薦技術をベース)により、同社の自走式ミュージックプレーヤー「miuro(ミューロ)」を介して好みの楽曲を提供するものである。ユーザーサイドにあるmiuroは再生履歴や好みを収集する役割を、レコメンドエンジンを実装したサーバーサイドでは収集した情報をデータベース化し、音楽レコメンドを行う役割をそれぞれ担う。ロボティクスとWebインテリジェンスを組み合わせたサービスと言える。

同サービスでは、各種RT要素を実装するmiuroの活用により従来にない音楽レコメンドサービスの提供が可能になる。通常、パソコンや携帯電話で音楽を楽しむためには、音楽配信サイトにアクセスして選曲や転送を行うといった操作が必要になる。また、選曲時にはユーザー自身が好みを選択したり楽曲の分類にタグを付与したりするといった煩雑さもある。
 これに対し、同サービスではmiuro自身からユーザーに働きかけるため自然に音楽を楽しむきかっけづくりがなされ、かつユーザーの音楽再生履歴が自動的に蓄積される。すなわち、音楽を楽しむプロセスが自動化される。また、音楽の好みはmiuroのタッチセンサ(タッチインターフェース)を利用することにより、「好き」な場合は撫でる、「嫌い」な場合は叩くという簡単な操作で選択・反映することができる。
 さらに、miuroの自律移動とビーコンにより、家の中にいる場所や時間に応じて楽曲にタグが付与され、生活シーンやシチュエーションでのタギングも可能になる。

エンドユーザーへのサービス提供は、音楽配信会社や通信会社などを通じてなされることが計画されている。ZMPは、miuroおよび「miuro SDK(Software Development Kit)」を音楽配信会社や通信会社に供給(または受託開発したうえで供給)し、これらが、例えば光インターネットによる定額制音楽配信サービスとして、miuroとセットでユーザーに提供する。月額数千円程度と低価格での提供が見込まれている。

図1 ZMPが提案した音楽レコメンドサービスの概要

図1 ZMPが提案した音楽レコメンドサービスの概要

生活シーンという新たな切り口のレコメンドが可能

音楽レコメンドサービスで注目されるのは、日中でのリビングでの好みの曲や夜間の寝室での好みの曲など家の中にいる場所と時間、つまり生活シーンやシチュエーションを加味した音楽レコメンドを提供できることである。しかも、「撫でる」「叩く」という簡単な操作で行える。
 ZMPの谷口恒社長によると、もともとの着想は世界有数のソーシャル・ミュージック・プラットフォーム「Last.FM」にあったという。Last.FMでは「Bedroom」「Desk」「Workout」など生活シーンやシチュエーションをもとに、有志がタグ付けを行っている。これら一連の作業を、miuroの利用により完全自動化したと言える。

音楽レコメンドサービスそのものはすでに複数企業により展開されているが、パソコンを操作して楽曲を選択したりタグを設定したりする作業を伴うため、「家の中で、パソコンで音楽を聴く行為は優先順位が低い」(谷口社長)。また、通信会社はトラフィック(通信料)を増やすことで、音楽配信会社は音楽コンテンツを購入してもらうことで収益を得る構造になっているが、そのためには魅力あるサービス提供が求められる。このような課題に対し、同サービスは1つの解を与えるものと言える。

図2 音楽レコメンドサービスの注目点

図2 音楽レコメンドサービスの注目点

また、「ライフログ(*)元年!」(2009年)と言われる時流に合致していることでも注目される。サーバを運営する音楽配信会社や通信会社は、同サービスを介してユーザーの好みの楽曲を、生活情報と組み合わせながら獲得することができる。マーケティングに役立てられるうえ、統計情報(個人情報を秘匿した状態)として音楽制作会社に提供することも考えられる。『リビングで聞きたい音楽!』『寝室で聞きたい音楽!』など、従来にないレーベルが創出されることが十分考えられる。

*:ライフログとは、パソコンでWebサイトを閲覧したり電車やクルマなどで移動したりといった人の生活全体のログを記録し、それをもとに、その人の行動パターンや好みを分析し、マーケティングなどに活用すること。従来はWebサイトが第一の情報収集経路だったが、ICカードやGPS機能付きの携帯電話機などが普及し、それが第二の経路として機能することで生活全体のログの記録を可能にしつつある。

加えて、「マイ・テーマソング」を好むとされる日本人の習性に合致するという特徴も挙げられる。日本人は「無意識のうちに生活シーンの劇場化を好む」きらいがあるようで、平凡な暮らしの中で自分をドラマやアニメの世界の主人公に置き換えて、シーンに応じて音楽を持ち運ぶ文化があるとの指摘がなされている(例えばアーサー・D・リトル ジャパンの川口盛之助氏)。生活シーンやシチュエーションに応じた音楽がレコメンドされるというのは、このような習性や文化にジャストフィットしていると言えよう。

ベンチャーの販売力の弱さを克服

ロボットビジネスという観点から見ても、同サービスはロボットベンチャーが一様に抱える、販売力の弱さを克服できる可能性があることで注目される。

miuroのエンドユーザーへの提供は音楽配信会社および通信会社が担い、ZMPはこれらに納品をするだけで済む(SDKとセットで納品、または開発を受託する場合もある)。ロット単位で納品するため、生産台数の確保および生産コストの低減を図ることができる。
 また、エンドユーザーは月額数千円程度で同サービスが受けられるため、miuroへの初期投資が小さくて済む。ZMPは音楽配信会社および通信会社にはある程度の納品価格(販売価格は税込みで10万8,800円)を維持しながらも、エンドユーザーには低価格で提供することができ、ZMP自身の販売力とは関係なしにmiuroを普及させることができる。もちろん、このような仕組みは同サービスが魅力的なものであるからこそ、音楽配信会社および通信会社が高い関心を抱き、可能になることは言うまでもない。

図3 ZMPにとっての利点。魅力あるサービス提案によりベンチャーの販売力の弱さを克服

図3 ZMPにとっての利点。魅力あるサービス提案によりベンチャーの販売力の弱さを克服

ただし、2008年秋以降の景気後退の影響などがあり、同サービスの展開は遅れ気味となっている。そこで、ZMPでは2009年末より、同様にmiuroを活用した高齢者見守りサービスを提案している。
 SIMカードの挿入によりハンズフリーの電話として利用したり、カメラ機能を利用して生活情報を記録(ライフログを取得)したりすることができ、高齢者のQOLの向上や常時の状況確認に役立つ。すでに複数の通信会社や警備会社に向けた提案を始めている。こちらも、miuroの自律性や大型スピーカを備えるといった特徴を高齢者サービスにうまく合致させたサービスと言えよう。

ZMPでは、2007年よりmiuroを販売し(2006年8月にテスト販売)、初回ロットとなる500台を完売している。次のステップ(ステップ2)として発表したのが音楽レコメンドサービスであり、さらなるステップ(ステップ3)として、さまざまなアプリケーションの音楽プラットフォームなどとしてmiuroの展開を予定している。上述の高齢者向けサービスは、その1つと言える。また、miuroというハードウエアの普及に向け、その特徴を捉えたサービス開発・提案に腐心している。

2000年以降「サービスロボット」の必要性が叫ばれたわりには、肝心のロボットを介したサービス内容はあまり議論されていない。いまもサービスロボットというハードウエアの開発ばかりが先行している。ハードウエアを普及するためにサービス開発および提案に力を入れるZMPの取り組みは、こうした状況に一石を投じるものと言える。

(解説:ロボナブル編集部)


掲載日:2010年1月19日

前の記事次の記事


このページの先頭へ