本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > ロボ・ステーション

ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
「手作業の提供により製造業、サービス業に革新をもたらしたい」〜柔らかさと巧みさを備え、様々な業種で使えるロボットハンドを開発〜【スキューズ】

画像をクリックすると拡大表示します

スキューズ 清水 三希夫さん
スキューズ 清水 三希夫さん

スキューズ(株)
代表取締役 清水 三希夫

〒604-8381
京都市中京区西ノ京職司町67-21
http://www.squse.co.jp/

6月9日〜12日開催の「FOOMA JAPAN2009 国際食品工業展」にて、器用なロボットハンドが登場して大きな話題になった。スキューズが開発した、人間の手を模したロボットハンドがそれで、握り寿司(*1)やバウムクーヘンを柔らかく把持できる様子を披露した。
 このような柔軟物は、機械設計の世界では「難供給ワーク」(*2)と呼ばれ、専用治具を用意したりワークに何らかの作用を与えたりするといった工夫により安定させる。また、機械設計者にとっては腕の見せどころとなる。同社のロボットハンドは、こうした創意工夫を不要にしてしまう可能性を示しているのだから、話題になるのは当然と言えよう。

「FOOMA JAPAN 2009」にて馬場鐵工所内のブースで披露した、ロボットハンドを利用した「すしロボット」(写真左)と「パティシエロボット」(写真右)。柔軟物でも優しく把持できるうえ、同一制御プログラムでも様々なワークをハンドリングできることを示した。ロボットハンドの位置決めは、接続するロボットアームの位置決め精度と画像処理によって行える。また、同社のロボットハンドは他のロボットハンドと異なり、触覚センサなどを搭載していない。10万円以下での提供を目指しており、その達成が十分に見込まれる構成になっている。
「FOOMA JAPAN 2009」にて馬場鐵工所内のブースで披露した、ロボットハンドを利用した「すしロボット」(写真左)と「パティシエロボット」(写真右)。柔軟物でも優しく把持できるうえ、同一制御プログラムでも様々なワークをハンドリングできることを示した。ロボットハンドの位置決めは、接続するロボットアームの位置決め精度と画像処理によって行える。また、同社のロボットハンドは他のロボットハンドと異なり、触覚センサなどを搭載していない。10万円以下での提供を目指しており、その達成が十分に見込まれる構成になっている。

「FOOMA JAPAN 2009」にて馬場鐵工所内のブースで披露した、ロボットハンドを利用した「すしロボット」(写真左)と「パティシエロボット」(写真右)。柔軟物でも優しく把持できるうえ、同一制御プログラムでも様々なワークをハンドリングできることを示した。
ロボットハンドの位置決めは、接続するロボットアームの位置決め精度と画像処理によって行える。また、同社のロボットハンドは他のロボットハンドと異なり、触覚センサなどを搭載していない。10万円以下での提供を目指しており、その達成が十分に見込まれる構成になっている。

ところが同社は、これにとどまらず、その提供によりドラスティックな変革をもたらすことを目指している。「ピック&プレースを中心に手作業を担えるロボットハンドを提供し、手作業に取って代わること」である。清水三希夫社長は同社のターゲットを、そう強調する。

製造業でもサービス業でも、いまだに多くの工程が手作業によって支えられている。若年労働人口の減少という問題に直面しながらも、生産性の向上と品質向上の両立という課題が課せられており、現状のままでは、これらの現場はいずれ危機的状況を迎えると言われている。これに対し、手作業の提供というかたちでソリューションを示す同社の取り組みに、業種の枠を超えて大きな注目が集まっている。

*1:FOOMA JAPAN2009では衛生問題上、実際の握り寿司を使用できず、代わりに蝋細工の握り寿司を用いてデモを実施した。実際には、本物の柔らかい握り寿司もハンドリングできる。

*2:1996年5月に、NPO法人自動化推進協会内に「柔軟物自動化研究会」が設立されている。研究会の初代会長は、スカラロボットの開発で知られる山梨大学名誉教授の牧野洋氏が務めた。

"究極の自動機"としての手作業にニーズがある

スキューズは、設備制御・計装の自動省力化機械制御プログラム開発を中心に、画像処理システムの構築や産業用ロボットのティーチングなどを手がける企業である。「制御」という切り口から、自動車や電気電子、食品など様々な業種で、また加工や組立、検査などの各工程で生産設備の連携および自動化に携わり、独立系のシステムインテグレータとして知られるようになっている。

同社が会社法人化したのは2002年4月(創業は1997年)であり、FA業界では新興企業に当たる。それでも、多くの開発実績を上げているのは顧客サイドに立った提案力にあり、顧客ニーズに応じて最適なFA機器を選定し、連携を図っている。三菱電機や安川電機など、あらゆるメーカーの機器に対応しており、これを可能にしているのは独立系であり、また制御開発に特化しているからこそと言える。
 また、単なる制御ソフトの制作や設備の立ち上げだけではなく、機器メーカーや協力企業の設計・製造技術を包含したソリューション型の請負体制を敷いている。このような体制が同社の提案をより魅力あるものにしている。

同社が新たな展開として、ロボットハンドの開発を検討したのはFA事業での取り組みが関係している。様々な業種の自動化を推進してきたにもかかわらず、いまだに多くの工程が人による手作業で支えられていることに気づいたのである。しかも付加価値を伴わないような、単純なピック&プレースでさえ、多くが手作業でなされている。このような実態を目の当たりにし、「今後は、手作業を提供できるような"究極の自動機"にニーズが寄せられる」(清水さん)ことを確信する。同時に、「こうした単純で非人間的な作業から解放されることが求められるはず」(同)との思いも強くする。
 その後、これを実現するための基本的なアイデアを特許申請するとともに、新たに招いたプロデューサーのもと研究機関との連携を図ることで、ロボットハンドの具現化に取り組むことになる(*3)。

また、ロボットハンドの開発を目指した背景には「FA事業だけではさらなる飛躍を望むのは厳しい」という清水さんの読みもある。FA事業との相乗効果を考え、その開発を選択した。FA事業で手がけているロボット制御や画像処理により、ロボットハンドの位置決め精度を確保しているのは、その一例である。

*3:清水さんは特許出願後、すぐにロボットハンドの開発に着手するのではなく、新たな事業をかたちにするため、また、それを実現するための人脈を形成するために、半年間で2,000名に会うという活動を展開している。ここでの活動がプロデューサーの獲得と、ロボットハンドに関連する技術を有する大学との連携につながっている。回り道をしているように思われるが、むしろロボットハンドの開発を加速させることになった。

人手作業を提供するからこそ人間の手を目指す

開発したロボットハンドは、人間の手の骨格筋を模した構造で、大小計22個の低圧駆動型の空気圧アクチュエータ(人工筋肉)により5本の指を動作する。指全体で包み込むようにワークを支えるため、掴む・握る・つまむといった動作が行える。以下の動画で確認することができる。

動画はこちら

また、空気圧アクチュエータの特徴を生かした柔らか(コンプライアンス)な動作が行えるうえ、指の先端には爪が付加してあり、巧みさも併せ持つ(*4)。ワークへのアプローチを変更することにより、柔軟物から綿棒のような極細の物まで把持することができる。加えて、これらをセンサレスで行えるのも大きな特徴である。

*4:巧みさとパワーを備えるヒューマノイドロボット「TWENDY-ONE」を開発する早稲田大学の菅野重樹教授は、人間の巧みさの源泉は「爪や指尖、指頭、指側面から構成される指先形状にある」と指摘している。そして、「人間とほぼ同様の形状や柔らかさを備えることにより、ストローなどの把持を可能にした」ことを明かしている。

同社が開発を始めた頃は、ロボットハンドにはサーボモータ(電磁モータ)を駆動源とするGifu Handのほか、導電性高分子ポリピロールやワイヤを駆動源するものがすでに提案されていた。
 清水さんが特許申請した基本技術(*5)は、アクチュエータ自身の弾性力で湾曲した形状になり、物体を把持し続けるというもので、これにより安全性を確保することを狙っていた。そのような弾性力を備えていたのが空気圧アクチュエータであり、数ある駆動源の中から選定した大きな理由になっている。また、人間と共存環境での利用を想定し、「柔らかいこと」「金属レスであること」「人に衝突したときは壊れること」「コスト的に安いこと」、そして「交換の容易さ」を条件に挙げていたことも、選定した理由になっている。

*5:一部を引用すると、『チューブに液体を供給しない場合は、作動体自体の弾性力により作動体は全体が湾曲した形状になり物体を把持する。チューブに液体を供給した場合、チューブが直線状に変形し、作動体はチューブの変形に追従して直線状態へ作動変形し物体を解放する』(各個所を示す番号は削除している)と説明されている(特許登録番号090193より)。

また構造に言及すると、便利さや高度な作業性を追求するのであれば、例えば6指や7指など、より多指である方がよいとする意見があると想像される。
 しかし、製造業でもサービス業でも現場で求められているのは「ロボットハンドではなく手作業」(清水さん)であり、その提供を可能にするためには人間の手の骨格筋構造に倣うのが理にかなっている。細部に至るまで研究し模倣した結果、上述のような様々な特徴を持たせることに成功している。

そのほか、同一制御プログラムで様々なワークに対応できるという特徴も備えている。生産ラインの早期立ち上げに寄与し、現在の多品種少量生産に合致している。このような特徴は、同社のロボットハンドの魅力をより一層高めている。

手作業へのニーズは確実に高まっている

スキューズではロボットハンドの提供に先駆けて、構成する要素部品の販売を始めている。今年5月には、空気圧アクチュエータに続き、ピストン式エアコンプレッサの発売を開始した。サイズは82×37×65mm、本体質量194gと小型・軽量なため可搬性に優れ、かつ各種装置への組み込みも容易に行える。介護・福祉機器や衛生機器などの分野に加え、大型コンプレッサを利用している製造ラインなどからも引き合いが多い。
 また、これらの提供を通じてロボットハンドの認知度が高まるという効果を生み出しているという。

ロボットハンドの駆動源である空気圧アクチュエータ。伸縮部の最大長で、おもに18mm型と30mm型、40mm型があり、最大牽引力は18mm型が10N、30mm型が11.5N、40mm型が12N。定格空気圧力は0.2MPaで、定格圧力以下で約4万回収縮することができる。おもに教育機関や医療機器メーカーなどで利用実績がある。 小型・軽量のピストン式エアコンプレッサ「MP-2-C」。本体質量194g、サイズは82×37×65mmと小型・軽量のため、可搬性に優れるうえ、持ち運びする機器や装置への組み込みが行える。圧縮性能は最大0.4MPaで、タンクなしでも0.2MPaをオンデマンド供給できる。本体質量220g、サイズ82×37×65mmの「MP-2-CBL」もある。

(左)ロボットハンドの駆動源である空気圧アクチュエータ。伸縮部の最大長で、おもに18mm型と30mm型、40mm型があり、最大牽引力は18mm型が10N、30mm型が11.5N、40mm型が12N。定格空気圧力は0.2MPaで、定格圧力以下で約4万回収縮することができる。おもに教育機関や医療機器メーカーなどで利用実績がある。 (右)小型・軽量のピストン式エアコンプレッサ「MP-2-C」。本体質量194g、サイズは82×37×65mmと小型・軽量のため、可搬性に優れるうえ、持ち運びする機器や装置への組み込みが行える。圧縮性能は最大0.4MPaで、タンクなしでも0.2MPaをオンデマンド供給できる。本体質量220g、サイズ82×37×65mmの「MP-2-CBL」もある。

一方、ロボットハンドの開発は5年近くが経過しており、あとは耐久性をクリアすれば実用化できるレベルに到達している。もう一歩のところまで来ているが、「開発のピッチを上げなければならない」と、清水さんは強調する。

従来、不況下では次回の好況に備え、CAD/CAM/CAEをはじめとする設計・生産設備のリプレースが当然のようになされていた。今回の経済危機下では、こうした動きがほとんど見られず、これを嘆く機械系商社は非常に多い。
 かたや同社には、様々な業種からFA事業を含むロボットハンドへの問い合わせやニーズが多く寄せられている(*6)。その理由は、「既存設備のリプレースではなく、より革新的なソリューションが求められているから」。そして、「(ピック&プレースを中心とした)手作業の提供という従来にない価値をロボットハンドが有しており、かつ手作業そのものへのニーズが高まっているから」と、清水さんは分析する。それだけ、ロボットハンドに追い風が吹いていると言え、この機を逃さないためにも早期の実用化が求められているのである。

*6例えば、医療の分野では鉗子の安定した保持、飲食関係では寿司ネタのピック&プレース、農業分野では遠隔操作による果実の収穫など、さまざまな業種から多種多様なニーズが寄せられている。

また、このような追い風が吹いている理由には、冒頭で紹介したドラスティックな変革を目指していることも挙げられる。
 同社では、ロボットハンドにより手作業の置き換えを図り、単純作業からの作業者の解放、より付加価値の高い作業へのシフトを促すことを提案している。例えば、介護・福祉の現場では人材不足が指摘されながらも、本来、人が担うべき作業が多くある。「当社のロボットハンドが生産現場におけるピック&プレスース作業に取って代わることで、強く言えば就業機会を奪い取ることで、介護・福祉現場に人材が流れるようにすべき」とも、清水さんは言い切る。このような考えは冒頭で示した課題に対応するものであり、業種の枠を超えて期待されるのは当然と言える。

「手作業に取って代わるロボットハンドの提供により、苦痛を伴う単純作業からの作業者の解放、付加価値が高い作業への人員のシフトを促したい」と話す清水さん。若年労働人口の減少という問題を抱えながらも、生産性の向上と品質確保の両立が求められている製造業およびサービス業のニーズに応えることが期待される。また、生産現場での用途に耐えるロボットハンドへとブラッシュアップすることで、知的能動義手へと進化させることも目指しており、「世界一のインテリジェントな義手メーカーになることが究極の目標」とも話す。

「手作業に取って代わるロボットハンドの提供により、苦痛を伴う単純作業からの作業者の解放、付加価値が高い作業への人員のシフトを促したい」と話す清水さん。若年労働人口の減少という問題を抱えながらも、生産性の向上と品質確保の両立が求められている製造業およびサービス業のニーズに応えることが期待される。また、生産現場での用途に耐えるロボットハンドへとブラッシュアップすることで、知的能動義手へと進化させることも目指しており、「世界一のインテリジェントな義手メーカーになることが究極の目標」とも話す。

加えて、生産現場での用途に耐えるものになったあかつきには、生活に役立つ義手を提供することを志しており、社会貢献を意識した姿勢が、それへの支持を強くしている。「究極の目標は、世界一の義手メーカー」としながらも、「まずは生産現場などでの用途に耐えるものに仕上げることが大切。日々ブラッシュアップを重ねることで、早々に実用化につなげたい」。
 最後に、清水さんはそう語ってくれた。

これまでサービスロボットを中心に次世代ロボットが提案されてきた。人と接するフロントステージに向けた提案が多く、技術的に困難であるばかりか、ロボットが担うべき作業と思われず、ロボット開発に対して疑念を抱かせた。これに対し、スキューズのロボットハンドは、製造業およびサービス業でのバックステージの効率化を促し、同時にフロントステージへの人員の配置を促す。これにより生産性の向上と品質向上の両立がもたらされる姿が見えるし(*7)、彼ら自身そう主張している。
 本来、次世代ロボットの開発はこのような変革を追求すべきであり、同社の提案は、それが目指すべき姿の1つに思われた。

*7:産業技術総合研究所 サービス工学研究センターの内藤耕センター次長は、フロントエンドを支援するバックヤード側の肉体的負担を軽減するために行えることは多く、「機械(ロボット)化・IT化の余地は多くある」。その際、「フロントエンドを支える構造を構築したうえで、バックヤードのどの部分をロボット化(機械化)していくのかを考えることが重要」と話す。しかし、現在のロボット開発では、「フロントエンドをどう支援するのかという視点が欠落しているため、バックヤードのロボット化(機械化)によりフロントエンドの従業員に余裕ができ、もっと接客に専念できる、といった議論ができていない」と指摘している。


掲載日:2009年7月23日

前の記事次の記事


このページの先頭へ