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ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
「身近なところで生まれたアイデアを商品化し、大きく育てたい」〜庭に侵入する猫を検知する「フィールド用近接検知センサ」を開発〜【アイデアフォレスト】

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アイデアフォレスト 代表 渡辺秀夫さん

アイデアフォレスト
代表 渡辺秀夫

〒651-1133
神戸市北区鳴子2-6-1
http://idforest.com/

「自分が『欲しい』と思うモノを新商品として世の中に出したいです。アイデアが『種』なら、商品は『木』。便利な商品を世の中に出し、やがては『大きな森』へと育てていきたいですよね」
 神戸発のベンチャー・アイデアフォレストの渡辺秀夫代表は社名に込めた思いを、そう説明する。

同社のWebサイトには、ギターダコやギターコード変換カード、月時計など"アイデア商品"的なものが並んでいる。その傍らで、平成20年度神戸RT事業開発補助金に採択された「フィールド用近接検知センサ」の研究開発も手がけている。庭に進入する猫を的確に検知することを目的としたもので、猫を追い払うシステムへと発展させることを視野に入れている。まさに"生活視点"のアイデアから取り組まれている開発であり、便利な商品として上市されることが期待されている。

渡辺さんが開発した静電容量センサ。静電容量の変化を頼りに猫の接近を検知する。サイズは120×40×25mm、重量100g。アンテナ長さは0.5〜3mに設定することができ、送信距離は50m。今年度にはセンサ単体で商品化も検討している。 渡辺さんが開発した静電容量センサ。静電容量の変化を頼りに猫の接近を検知する。サイズは120×40×25mm、重量100g。アンテナ長さは0.5〜3mに設定することができ、送信距離は50m。今年度にはセンサ単体で商品化も検討している。

渡辺さんが開発した静電容量センサ。静電容量の変化を頼りに猫の接近を検知する。サイズは120×40×25mm、重量100g。アンテナ長さは0.5〜3mに設定することができ、送信距離は50m。今年度にはセンサ単体で商品化も検討している。

身近なところで生まれるアイデアを商品化

「アイデア商品ばかりを手がけているように思われるでしょうが、もともとは電気・電子分野を専門としているんですよ」
 そう切り出す渡辺さんは、カーナビをはじめとするカーエレクトロニクスの開発で知られる富士通テンに1979年に入社し、自動車向けミリ波レーダなどの開発に従事した。当時の研究は製品レベルには至らなかったが、いまではミリ波レーダはクルマの走行安全支援に必須の要素技術となっている。同社はいち早くトヨタやホンダなどに提供を始めており、当時からの研究の蓄積があったからと言えよう。そのほか、ABS(Antilock Brake System)の開発から量産化、自動車用盗難防止装置などの開発に携わった。このような経歴を聞かされると、現在、センサの研究開発に取り組んでいることに納得させられる。

富士通テンに在籍した当時から、「自分のアイデアをカタチにするのが好きだった」ようで、「100程度のアイデアを出し、特許の取得に至ったものが多くある」という。その反面、業種の枠組みに縛られるために、発表できないアイデアも多々あった。
 2000年には品質保証部へと異動し、開発の前線から遠のくことになる。製品の安全および品質を担保する重要なセクションであり、仕事にやりがいがあったものの、「技術者である以上、生活に身近なアイデア商品を手がけたい」という思いがくすぶっていた。そこで、2002年に早期退職し、現在のような生活視点の商品開発を始めるようになる。

現在、同社が扱っているギターダコやギターコード変換表は、いずれも渡辺さんの趣味から生まれた商品である。学生時代は、頻繁にギターを弾いており指にタコができるので、長い時間でも演奏ができた。しかし、社会人となり演奏する機会が減ると、少し演奏するだけでも指が痛くなってしまう。「装着できるタコがあればいいのでは・・・」との考えから生まれたのがギターダコである。また、ギターコード変換表は、自分が不得意なコードがある曲を「簡単に移調して弾けるようにしよう」という発想から考案したものである。

渡辺さんは言う。
 「いずれも、自分が欲しいと思うモノがなかったので、開発しただけのことです。単純な考え方かもしれませんが、自分が必要とする物に対し、同じように"必要"と感じてくれる他人は必ずいるでしょうし、商品化すれば売れるんじゃないかと思っているんです」
 これらの商品は同社のWebサイト上で紹介しているだけだが、それでもコンスタントに販売できているという。

いくつもの失敗を経て自作センサの開発へ

現在、もっとも力を入れているフィールド用近接検知センサの研究開発は、同様に「自分が欲しいモノを・・・」という思いから始めた。
 「わが家の庭は、猫の通り道なのかしれませんが、よく入り込むんですよ。遊びに来てくれるだけならいいんですが、"落とし物"をされると臭うんで非常に困りまして・・・。市販の猫避けをいくつも試しましたが、あまり効果がなく、自作を決意したんです」
 渡辺さんは開発の経緯をそう説明する。

とはいえ、いままで手がけたことのない開発であり、そう簡単には進まなかった。当初は、猫がやってきたら、RCカーのようなものを操作して追い払うことを検討したが、「あまり効果がなく、猫が驚いて逃げることがなかった・・・」。他にもいくつかの失敗談があるという。
 そんな試行錯誤をしている頃、技術的な勉強も兼ねて参加した「神戸RTセミナー」から開発の方向性を変更することになる。
 『ロボットの形態にとらわれずに、センサをはじめとするRT(Robot Technology)要素技術をうまく利用してベネフィットを提供することにより、ビジネスにしていくことが大切』
 講師を務めた、ロボットビジネス推進協議会の石黒周幹事の言葉を受け、センサを利用した猫避けシステムの開発を目指すことになる。

まず試作したのが、センサで猫の接近を検知すると、散水して追い出すというものだった。『猫は水を嫌う性質がある』という話を聞いて開発したものだが、「おいしそうに飲んでいただけだった・・・」という。より勢い良く散水するスプリンクラーを利用したところ多少効果が上がったが、水道代が格段に高くなるという問題があった。このとき利用していた市販のセンサは検知範囲が広く、家の前をクルマが通過するだけも散水してしまうことに原因があったという。
 その後、渡辺さんは焦電センサや画像センサ、赤外線センサ、超音波センサなど各種センサを検証してみるが、温度の影響で感度差があったり太陽光の影響があったり、または設置方向が困難だったり対象物により検知距離が変化したりと、猫の検知に用いるには一長一短があるものばかりだった。こうした試行錯誤を経て、フィールド用近接検知センサの研究開発に至るのである。

検知原理 問題点
焦電センサ 温度差の動きを検出
  • 検地エリアの限定難
  • 温度などで感度差
画像センサ カメラ画像を解析
  • 太陽光、影が影響
  • 高価
赤外線センサ 赤外線の遮断を検出
  • 設置方法が難しい
  • 枯葉対策が必要
超音波センサ 超音波の反射時間を測定
  • 対象物により検知距離が変化

屋外で使用できるセンサ類を調査・分析した結果。焦電センサや画像センサ、赤外線センサ、超音波センサを検証した結果、それぞれに一長一短があることがわかり、静電容量センサの自作を決意することになる。

単純だが設計の柔軟性に優れるセンサ

渡辺さんが研究開発したセンサは、猫が導体であることに着目し、静電容量の変化を頼りに検知するというものである。地上から数十cmのところに導体となるアンテナを設置しておき、静電容量の変化を見るだけで、猫が通過アンテナの下を通過したかどうか、つまり庭に侵入したかどうかを検知することができる。

渡辺さんの自宅玄関に設置している静電容量センサとアンテナ。対象物に合わせてアンテナの設置位置を柔軟に変更したりフィールドに合わせて検知範囲を設定することができる。

(左)渡辺さんの自宅玄関に設置している静電容量センサとアンテナ。対象物に合わせてアンテナの設置位置を柔軟に変更したりフィールドに合わせて検知範囲を設定することができる。 (右)自宅で検証した際のシステム概要。猫の進入を的確に検知できたことが報告されている。

原理は極めて単純だが、対象物に合わせてアンテナの設置位置を柔軟に変更したり、使用したいフィールドに合わせて検知範囲を設定することができるという特徴がある。例えば農場など、より大きな動物を検知したい場合は、アンテナの設置位置を高くし、かつアンテナを太くすればよい。またアンテナを網状のものにすれば、平面方向には感度を高く、垂直方向には感度を低くすることもできる。
 すでに1つの応用例として、工事現場などで用いるカラーコーンの間にアンテナを設置することで、対人用近接センサとして利用できるものを試作している。工事現場に限らず、イベント会場などでの立ち入り禁止区間に設置すれば、音声やブザーにより注意を促すことができる。センサの設計に柔軟性があり、さまざまな応用が期待される。

カラーコーンの間にアンテナを設置することで対人用近接センサに展開した例。工事現場に限らず、イベント会場などでの立ち入り禁止区間に設置すれば、音声やブザーにより注意を促すことができる。

カラーコーンの間にアンテナを設置することで対人用近接センサに展開した例。工事現場に限らず、イベント会場などでの立ち入り禁止区間に設置すれば、音声やブザーにより注意を促すことができる。

センサそのものの開発については、基本設計を完成したことから、現在は猫を追い払う方法の検討に入っている。兵庫県森林動物研究センターの助言などを受けながら、いくつかの方法を検討しており、犬の声で追い払う試作機を開発している。猫を追い払うのにはやはり『犬の声は効果がある』という指導を受けてのことで、「実際に犬の声が最もよいのか、ほかに猫が嫌がる音があるのか、最適な音を探していきたい」と渡辺さんは話す。センサの研究開発から始まった猫を避けるシステムの開発は、いよいよ出口を迎えそうだ。

完成した後は、家庭用の「猫侵入検知センサ」としての販売を予定しているが、実際に使ってくれる「生活者の声や意見を採り入れつつ、より使いたいと思わせるものにしていきたい」と渡辺さんは話す。生活視点のアイデアから生まれたセンサではあり、今後のブラッシュアップもその視点で臨むようである。そんな開発姿勢が、社名に込めたように、『種』だったアイデアをやがては生活に役立つ商品として『大きな森』へと育て上げていくのだろうと感じられた。


掲載日:2009年6月 2日

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