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ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
「僕らの地道な活動を通じて、将来のエンジニアを輩出したいです」〜ロボット教材の開発販売、イベント開催により科学教育の普及を目指す〜【エスケイパン】

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エスケイパン 代表 増本圭吾さん

エスケイパン
代表 増本圭吾

〒670-0935
兵庫県姫路市北条口3丁目86
http://www.sk-pang.co.jp/

エスケイパン代表の増本圭吾さんは、高校時代に作曲コンテストで入賞した経験を持つ。ミュージシャンを志し、大学入学後は、音響設備の設計やプランニングを手がける会社でアルバイトを始め、そのまま本業とした。10年後には独立を果たし、音響業界でずっと活動を続けてきた。そんなロボットとは縁もゆかりもない業種から、2006年にロボット教材の開発販売、ロボット教室およびイベント運営を手がける同社を設立する。考えられないような経歴の持ち主である。
 が、「ミュージシャンを目指していた頃の夢が、いま形を変えて叶っているんですよ」。増本さんは何事もないように、さらりと話す。

アニメヒーローみたいな2足歩行ロボとの出会い

増本さんのロボットとの出会いは、共同経営者である、姫路ソフトワークスの中村素弘さんとの出会いでもある。2人が知り合ったのは、2002年に姫路獨協大学で開催されたIT系の勉強会である。参加者が持ち回りで講師を務めるというもので、増本さんは音響を講義した。
 一方、販売・生産管理システムなどのソフト開発を専業とする中村さんは、自作した2足歩行ロボットをテーマに話をした。増本さんが目の前で動く2足歩行ロボットを見たのは、このときが初めてだったという。
 「すごく、カッコ良かったんですよ。電源を切っているときはクタっとしているのに、電源を入れた途端、ググっと力強く立つところとかね」
 瞬く間にロボットに魅了された当時の思いを、そう振り返る。

共同経営者であり姫路ソフトワークス代表取締役である中村素弘さん。中村さんとの出会いにより、増本さんはロボット業界へ足を踏み入れるようになる。

共同経営者であり姫路ソフトワークス代表取締役である中村素弘さん。中村さんとの出会いにより、増本さんはロボット業界へ足を踏み入れるようになる。

中村さんは、2002年に開催された世界初の2足歩行ロボット格闘競技会「ROBO-ONE」開始以前より、2足歩行ロボットを開発していた。ただ、中村さんが「ROBO-ONE」開催を知ったのは、イベント当日夜のニュースだったため記念すべき第1回大会には参加していないという。
 いまでこそROBO-ONE出場ロボットの大型化が進んでいるが、当時、個人が製作するロボットは20〜40cmのサイズが主流だった。その中で、2002年の夏に第2回ROBO-ONE大会に出場した中村さんのロボット「HSWR-01」は身長が60cmと、ずば抜けて大きかった。
 HSWR-01は、アニメのヒーローロボットのようなスマートなデザインで、脚が細く身長が高いため実際以上に大きく見えた。歩行や屈伸はもちろん、人が投げたビーチボールをキャッチして投げ返すという、まだ誰も取り組んでいない自律制御を実装していた。上述のように、増本さんが魅了されたのが頷ける。

この勉強会をきっかけに、増本さんは中村さんのサポート役としてロボットのイベントに参加するようになった。HSWR-01のテーマソングを作曲し、ロボットの登場に合わせて曲を流したが、その反響は大きく、他の参加者からも作曲の依頼を受けることになる。また、その謝金で市販のロボットキットを購入し、キーボードを演奏する「メカボーナム」を製作。第7回ROBO-ONE大会に出場し、予選を通過して本戦への出場も果たす。

姫路科学館との連携でロボットを本業に!?

このように、ロボットはあくまで趣味としての取り組みだったが、2005年12月に姫路科学館で開催されたロボット競技会「姫路ロボ・チャレンジ」を機に、一気に事業化へ向かうことになる。
 同競技会は、「子供たちにロボットと玩具の違いを教えたい」という思いから企画されたものである。科学館に集まる子供たちの目の前で、ロボットが歩行スピードやバトルで性能を競う。増本さんは音響効果担当として参画した。

このようなイベント会場では、音響効果が与える影響は大きい。増本さんがこれまで携わってきた音楽の仕事も、例えば結婚式場のものでは花嫁が両親に宛てた手紙を読む場面などを音楽で盛り上げて、花嫁の父を落涙させ感動シーンを盛り上げてきた。音響効果を通じて、人に感動を与えることに手応えを感じていたが、「ロボットイベントの手応えは、格段に違っていた」という。ブライダルではあくまでスタッフの一員としての役割だったが、ロボットイベントでは企画の段階からコーディネートすることができる。ロボットの活躍を一心に応援する子供たちの反応が素直であり、好感触を得たことから、大きな手応えを感じていた。

また同大会では、中村さんが産官学共同で開発中だった学習教材用ロボット「VariBO (バリボ)」の試作展示も行った。数体の2足歩行ロボットで音楽隊を結成し、鉄琴やオルガン、ハンドベルの演奏をして踊るというものである。
 増本さんは、展示ロボット製作中にVariBOのパーツを組み合わせて、新しい構成のロボットをつくった。後に第1号商品として発売する、5軸の2足歩行ロボット「Gogic Five」の原型になるものである。イベントの開催後すぐに、その製品化を目指し、ロボット開発販売・イベント企画会社として同社を立ち上げる。

第1号商品として発売した「Gogic Five」。身長200mm、体重約850gの小型2足歩行ロボット。5つのサーボモータで上半身を左右に振って、重心移動しながら歩行する。

第1号商品として発売した「Gogic Five」。身長200mm、体重約850gの小型2足歩行ロボット。5つのサーボモータで上半身を左右に振って、重心移動しながら歩行する。

姫路科学館では、定期的にGogic Fiveを教材としたロボット教室を開催している。教室の参加者がフォローアップ教室を経て、姫路ロボ・チャレンジに出場するという流れがあり、同科学館との連携は同社の事業を後押ししている。
 「想定していなかったようなモーションをGogic Fiveにつくり込んだり、外装デザインを施したりしてイベントに参加してくれるんです。嬉しいですよねぇ」
 増本さんは、自社製品が受け入れられている喜びを、そう話すとともに、その連携がうまく機能していることを伺わせる。

ミュージシャンを目指していた頃、自分が作曲した音楽を多くの人に届けるのが夢だった。現在、増本さんはロボットをユーザーに届け、「ユーザーは、それぞれのアイデアを付加して応えてくれる」という。『ミュージシャンを目指していた頃の夢が、いま形を変えて叶っているんです』という冒頭の発言は、このように音楽の代わりにロボットがツールとなり、ユーザーとのコミュニケーションが成り立っているという意味なのである。

入門者に適したシンプルなロボット

開発したGogic Fiveは軸数が少なく構成がシンプルなので、入門者には特にお勧めと言える。市内の工業高校の非常勤講師として、それを利用したロボット教室も実施している。ところが、実際に教室を開くと、5軸のGogic Fiveでもまだまだ難しいという。そこで、現在は2個のサーボモータで動く虫型ロボット「Gogic M2(ムイムイ)」を新たに開発した。
 これは、中村さんが姫路科学館と共同開発した学習用虫型ロボット「ロボちゅう」をベースにしたものである。ロボちゅうが木製の3軸なのに対し、GobicM2はアルミ製の2軸構成にしている。センサを5つまで搭載することができ、自律運動させることもできる。ロボットの原理を学ぶことに主眼を置いたものとなっている。

新たに開発した、2個のサーボモータで動く虫型ロボット「Gogic M2」。サイズは、体長約21cm。テレビリモコンによる無線操作ができ、単三乾電池(エボルタ使用時)で約4時間の連続稼働が可能。

新たに開発した、2個のサーボモータで動く虫型ロボット「Gogic M2」。サイズは、体長約21cm。テレビリモコンによる無線操作ができ、単三乾電池(エボルタ使用時)で約4時間の連続稼働が可能。

Gogic M2のプログラミングは、中村さんが作成した開発環境「Gogic Basic」で行う。これには、技術者である中村さんの思いが込められているという。
 プログラムを初めて学ぶときに、言語の仕様と同時にWhile文やIF文といった制御構造の概念を理解するのはハードルが高すぎる。そこで、Gogic Basicは、GUI上でプログラミングを学習できるようにしている。スライドバーを動かして、ロボットのポーズをつくり、それを並べていくだけでプログラムが行える。タイマーやセンサの値による条件分岐、ループなど、ロボット制御に必要なプログラミングの要素はしっかり揃っている。

「Gogic Basic」のプログラム画面。右上ウィンドウのスライドバーを動かして、サーボモータの位置を決めてポーズを作成する。右下ウィンドウに作成したポーズを並べて実行すると、ロボットが動く。 スクリプトでプログラミングをすることもでき、習熟度に応じた学習が行える。

(左)「Gogic Basic」のプログラム画面。右上ウィンドウのスライドバーを動かして、サーボモータの位置を決めてポーズを作成する。右下ウィンドウに作成したポーズを並べて実行すると、ロボットが動く。(右)スクリプトでプログラミングをすることもでき、習熟度に応じた学習が行える。

本格的なプログラミング言語を学ぶ前に、GUI上でプログラミングを体験し、制御構造の概念をしっかり身につけることを狙いとしている。この学習ロボット「Gogic M2」でプログラミングを体験し、「マイコンの入出力により、ロボットが動いていることを実感して欲しい」と、中村さんは話す。

コントロールボード「Gogic Basic」。おもな仕様は次の通り。サイズ:48×48mm、マイコン用電源:直流9V(DC7V以上15V以下)、サーボモータ用電源:直流4.8Vから直流6Vまで、サーボモータ接続数:最大8、サーボモータ制御方式:PWM制御、センサ入力仕様:DC0〜5V入力8bit分解能AD。

コントロールボード「Gogic Basic」。おもな仕様は次の通り。サイズ:48×48mm、マイコン用電源:直流9V(DC7V以上15V以下)、サーボモータ用電源:直流4.8Vから直流6Vまで、サーボモータ接続数:最大8、サーボモータ制御方式:PWM制御、センサ入力仕様:DC0〜5V入力8bit分解能AD。

将来の技術者を輩出していきたい

同社がロボット教育のターゲットとしているのは子供だけではない。ロボット教育というと『理科離れが進む子供たちのために・・・』と言われることが多いが、中村さんは「子供は理科もロボットも好きですよ」と、異なる見解を示す。子供は目の前で機械が動いているのを見れば、「どうして動くの?」と仕組みに興味を持つ。が、そうした好奇心が学習意欲につながらないのは、「子供の疑問に答えられる大人が身近にいないからなのでは」と話す。

確かに、学校の先生でもコンピュータの仕組みを正しく理解したえうで、子供に教えられる人は非常に少ない。電子工作も同様で、中村さんが理科専科教員を対象にロボット教室を開催したときも、電動ドリルを安全に使えない先生や、ねじを回す方向がわからずに四苦八苦していた先生がいたという。自分で道具を使いモノをつくる楽しさを知らないのは、子供に限らないのだ。
 「学校の先生がそれでは、子供に電子工作やプログラミングの楽しさを教えられないです。なので、まずは先生方にロボットを実際につくり動かしてもらうことが大切」と、中村さんは話す。「自分がつくったロボットを学校に持って行き、子供たちを前に『これ、先生がつくったロボットだよ!』と自慢して欲しい」と続ける。
 先生自身がワクワクと楽しめば、子供たちにもロボットをつくって動かす楽しさが伝わる。「そこから始めないと、将来の技術者は育たないでしょう」と、中村さんは憂慮する。

とは言いながらも、最後に中村さんは、次のような前向きな話もしてくれた。
 「イベント会場に行くと『去年も、このロボットがバトルしてたよ〜』と覚えていてくれる子がいるんです。その子たちがもう少し大きくなったときに、Gogicシリーズでロボットの勉強を初めてくれたら嬉しいですね」。「なので、将来の技術者が誕生するまで、地道にコツコツやっていきますよ」。増本さんは、そう付け加えてくれた。


掲載日:2009年5月19日

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