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ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
「不景気なときにこそ、マーケティング情報の獲得にRTを役立てていきたい」〜希有なSIerとして、RooBOカスタマイズチームとして活動〜【パーソナル・テクノロジー】

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坂本一雄代表取締役

パーソナル・テクノロジー
代表取締役 坂本一雄

〒665-0051
兵庫県宝塚市高司3-8-29
http://www.pti.co.jp/

ここ最近、ロボット業界におけるシステムインテグレータ(SIer)の重要性が認識され始めている。例えば、富士経済研究所が発表した「2008ワールドワイドFAロボット/RT関連市場の現状と将来展望」では、新規分野における需要創出にはSIerとの連携・協業が重要になることが指摘されている。また、昨年12月に経済産業省が公表した「ロボット産業政策研究会・中間整理」では、わが国のロボット産業を海外展開するためには、SIerへの支援がポイントになることが明記されている。

このような指摘がなされる以前より、関西地区でSIerとして活躍しているのがパーソナル・テクノロジーの坂本俊雄さんである。本連載で何度か紹介した「RooBOカスタマイズチーム」の一員として、脳神経外科医に納品した「患者見守りロボットシステム」や日本食研の「バンコロボ」などのシステム開発を手がけている。最近では、安川電機の双腕ロボットを用いて開発した「お好み焼きロボット」で話題となった。常時、何らかのロボットシステムの開発を行っているといってよいほど、精力的に活動している。

「僕らの場合、ロボット単体ではなく、他のシステムとの連携を考慮したロボットシステムの開発を多く手がけています。ですので、ロボット開発企業さんと比較して、相談をしたり開発案件を持ち込んだりしやすいのかもしれません。
  ただし、そのためでしょうか?変わり種の開発案件が持ち込まれることも多いですけどね」(笑)
  坂本さんは、こう冗談交じりに説明するが、それだけRooBOカスタマイズチームも、SIerとして活動できる坂本さん自身も重宝される存在であることを示しているように思われる。

大阪市福島区役所に設置されたマスコットロボット「フッピー」。BGMを流しながら頭や手、足をゆっくりと動作させる。 王様とお妃に扮したバンコが食事をしながら会話をする「ロイヤルバンコ」。日本食研の「KO宮殿工場 宮殿食文化博物館」に展示されている。 ICRT2008に出展した「お好み焼きロボット」。音声認識・合成機能も実装しており、客から注文や好みの調味料を聞いたり、リクエストに応えて歌を唄ったりすることもできる。

(左)大阪市福島区役所に設置されたマスコットロボット「フッピー」。BGMを流しながら頭や手、足をゆっくりと動作させる。 (中)王様とお妃に扮したバンコが食事をしながら会話をする「ロイヤルバンコ」。日本食研の「KO宮殿工場 宮殿食文化博物館」に展示されている。 (右)ICRT2008に出展した「お好み焼きロボット」。音声認識・合成機能も実装しており、客から注文や好みの調味料を聞いたり、リクエストに応えて歌を唄ったりすることもできる。

独立する以前より個人として活動

パーソナル・テクノロジーは、坂本さんが28歳のとき(1994年10月)に立ち上げた企業である。おもに通信・情報処理・制御に関するシステム機器の設計開発を手がけている。
  起業する以前は、ダムや河川用水門や水処理設備などのシステム開発を行う企業に所属し、水門の自動制御の開発などを手がけていた。大学では電子制御の研究室に所属していたが、『電気屋が電気屋に進んでも、おもしろくないぞ!』という担当教員の勧めもあり、あえてこのような異業種に就職したという。その後、この業種の流れで水量計センサなどを取り扱う企業に移籍し、自社のセンサを利用したシステム開発および提案を経験する。これらの経験が現在の業務に生かされることになる。

また、センサメーカーの業務では、単身で営業から開発までを行うなど、ほとんど個人で活動をしていた。ある大手電機メーカーに「ほとんど社員のように常駐」しては、エアコンの連続稼働時の温度や風量などをモニタリングする計測システムをはじめ多くのシステム開発を手がけた。開発を通じて、『メカもハードもソフトもわかる人材』として広く知られるようになり、坂本さん自身も個人として活動できることに自信を深めることで、その若さで同社を立ち上げることになる。
  加えて、「もともと独立志向があり、30歳までには果たしたいと考えていました。当時(90年代)であれば、仮に事業で失敗をしても再就職できるだろうと思っていましたし・・・」と、坂本さんは起業の理由を付け加える。

 独立して以降は、さらに幅広くシステム開発を手がる。レーザマーカ制御装置や美術館向け収蔵品管理システム、水道用自動検針システムなど多岐に渡る。上述の通り、メカ・ハード・ソフトを理解しており、PLCでは困難な演算処理をパソコン側で行うといった機能分離や、装置間での適切なインターフェースの決定といった擦り合わせが行えるからである。
  特にFA分野では、このようなトータルでシステム提案ができる人材が不足しており、「ここに私の存在価値があるのかもしれませんね」と、坂本さんは自身の強みを、そう説明する。

半ば強引!?に誘われてロボット開発へ

坂本さんがロボット開発に関わるようになったのは、本連載「第1回」で紹介した東洋理機工業の細見成人社長の勧誘によるものである。『次世代ロボット、やらへん?(開発してみない?)』という具合に。2005年頃のことである。
  それ以前の2002年頃にレーザマーカ制御装置の開発で、細見さんとは付き合いがあったが、その後は、「たまに電話でパソコンの操作などで相談を受けるくらい・・・」の仲だった。それだけに突然の勧誘だったという。

 坂本さんは当初、「次世代ロボット」と聞かされて「ASIMOみたいなもんでもつくるのかな〜?」という曖昧なイメージだったという。しかし少なくとも、次世代ロボットの開発にはシステム構築が必要であり「本来業務の延長線上に位置づけられるはず」と考え直し、快諾した。
  また、誘いを受けた開発は、中小企業整備基盤機構が推進する「新連携事業」だったが(新連携の認定は受けていない)、『RooBOに入っておく方が身動きが取りやすいやろうから!』(細見さん)との理由で、ほぼ同時にRooBOに加盟することになる。「"ついでに入っておけ!"と言わんばかりに、半ば強引に加盟することになりましたよ」(笑)と、坂本さんは、当時のいきさつを振り返る。
  その後、菱田伸鉄工業の菱田聡社長を迎え、RooBOマスタマイズチームが結成されることになるのである。

2005年に脳神経外科に導入した、患者を優しく見守る「見守りロボット」。無断で外出しようとする患者を測域センサが検出すると、ロボットが優しく声掛けをして外出の防止あるいは足止めをし、同時に、監視用パソコンに警告を出す。さらに、ネットワークカメラにより外出社を撮影して監視用パソコンに画像を転送・表示・記録を行う。RooBOカスタマイズチームとして初めての開発実績となる。 見守りロボットのシステム構成。ifbotを中心に、患者の動きを検知する測域センサとネットワークカメラ、これらを管理する監視用パソコンから構成される。当時のifbotはLinuxで稼働しており、全体のシステムをLinuxで構築したことから、親和性を考慮してifbotを採用した。システムの設計・開発は、坂本さんが手がけた。

(左)2005年に脳神経外科に導入した、患者を優しく見守る「見守りロボット」。無断で外出しようとする患者を測域センサが検出すると、ロボットが優しく声掛けをして外出の防止あるいは足止めをし、同時に、監視用パソコンに警告を出す。さらに、ネットワークカメラにより外出社を撮影して監視用パソコンに画像を転送・表示・記録を行う。RooBOカスタマイズチームとして初めての開発実績となる。 (右)見守りロボットのシステム構成。ifbotを中心に、患者の動きを検知する測域センサとネットワークカメラ、これらを管理する監視用パソコンから構成される。当時のifbotはLinuxで稼働しており、全体のシステムをLinuxで構築したことから、親和性を考慮してifbotを採用した。システムの設計・開発は、坂本さんが手がけた。

同チームの開発実績は、すでに本連載第1回と第11回で紹介した通りであり、坂本さんは、おもにシステムおよびハードウエア開発を担当している。冒頭で紹介したロボットをはじめ多くのロボットシステムを開発してきたが、集大成の1つとして、2007年には「イージーオーダーロボット」(*1)を、2008年には同ロボットの外装デザインを一新した「pul」をそれぞれ発表している。
  これらはロボットの主要機能をモジュール化し半製品にしたものを、顧客ニーズに合わせてカスタマイズし、販売するというものである。各種センサやカメラなど外部機器との連携を可能にする各種インターフェースや、音声認識・合成機能などをも備えている。コミュニケーションロボットに必要な機能をほぼ一通り搭載している。

*1:大阪市の「大阪発! 次世代ロボット実用化プロジェクト」の採択事業として取り組んだ。一般家庭やオフィス、事業所など日常において活躍が期待される次世代ロボットの実用化に向けた共同研究開発事業に対し、その開発にかかる経費の助成を行うもので、「大阪発」のオリジナルなRT(Roboto Technology)により市場創出を図っていくことを目的とした。「イージーオーダーロボットの開発」(東洋理機工業)のほか、「ロボットハートプロジェクト」(アールティメディア)、「生活空間におけるコミュニケーションするイノベーションロボットサービスの実用化開発」(レイトロン)、「運搬作業支援プラットフォーム『パワーローダー」の開発(アクティブリンク)が採択された(括弧内は代表企業)。

当初は、その名の通りカスタマイズの容易さを生かした提案を行っていたが、最近はpulのアイキャッチの高さを生かした、展示会でのPR用途での提案を行っている。pulとパソコン、大型モニターとの連携により、来場者が商品番号を告げるとpulが音声認識をして該当する商品説明を行い、同時に大型モニター上で商品説明が表示されるというデモをよく実施している。
  それ以外にも、エレクトロニクス商社の展示ブースでは、QRコードリーダとの連携により来場者のQRコードを読み取って挨拶をしたり、計測システム企業の展示ブースにて、共連れ検知機能(*2)との連携により音声での認証や共連れ検知を知らせたりするデモを行っている。

*2:レーザ測域センサをベースに、人検知アルゴリズムを組み合わせて開発したシステム。入場権限のある人に続いて、一緒に入場してしまう「共連れ」を検出する。既存の入退室システムに追加・設置して利用することができる。最近は、多くのオフィスビルでICカード認証システムが採用されているが、共連れの防止までは保証できていないため、セキュリティ業界では注目度が高い。

来場者が商品番号を告げると、ロボットが音声認識をして該当する商品説明を行い、同時に大型モニター上でも商品説明がなされる。展示施設やイベントでの案内ロボットとしての用途が見込まれている。

来場者が商品番号を告げると、ロボットが音声認識をして該当する商品説明を行い、同時に大型モニター上でも商品説明がなされる。展示施設やイベントでの案内ロボットとしての用途が見込まれている。

坂本さんは言う。
  「現在のロボットビジネスに共通して言えますが、ロボットを開発しても、どのような顧客に持ち込めばよいのか、また、顧客もどう使えばよいのかがわかりません。イージーオーダーロボットを開発して、それを強く感じました。
  でも、ロボットは何だかんだ言っても、よく目立ちますし話題性もあります。イベントなどでのPR用途が適しているのではと思い、いろんな場で提案してきました。商品のPRに寄与していますし、"こんなやり方があるんやなあ〜"と感じているところです」
  徐々にではあるが、こうした用途に自信を深めつつあることを感じさせた。

こんなご時世だからこそマーケティング用途で役立つ

上述のイベントでの用途について、坂本さんには「本当は、取り組みたいアイデアがある!」という。が、本業の開発案件を抱え、また開発から営業まで1人でこなさなければならないという事情があり、それとマスタマイズチームでの開発との「バランスを図るが難しい・・・」と漏らす。加えて、経済危機の影響により補助金をはじめ開発予算が付きにくい状況下にあり、「こうした中で、いかに金銭的な融通を図るかも厳しく問われている」。

それでも、坂本さん個人としては、少なくとも次の2つの開発には取り組みたいという。
  1つは、自前での音声認識・合成技術の提供である。具体的には、奈良先端科学技術大学院大学の鹿野清宏教授が提供するフリーの音声認識・合成技術をマイコンボードに実装して提供することを検討している。
  過去に紹介した清掃ロボット「LadyBird」(*3)や、福島区のマスコットロボット「フッピィ」をはじめ音声対話システムを必要とするロボットが多いが、pulに搭載している音声認識・合成機能は、専門のボードメーカーに実装を依存している。そうした開発に即座に応えられるよう、坂本さん自身の独自技術として確保しておくことを目指している。

*3:西日本高速道路メンテナンス関西(NEXCOメンテナンス関西)が、高速道路のサービスエリアやパーキングエリアでのトイレの床面清掃に向けて導入しようとしている清掃ロボット。水や洗浄水を排出してブラシで床面を磨きながらゴミをかき取り、たまった汚水をバキュームで吸い上げる。2007年11月に公開した試作機は、床面用掃除機の機能をベースに開発した。

もう1つは、pulなどの展示会でのPR用途からマーケティング用途への拡張である。pulはコミュニケーションを行うことができ、センサシステムとの連携により、それを通じて顧客の情報を自然に獲得することができる。先に紹介した、来場者のQRコードを読み取ることで挨拶をする試みは、その一端である。単なるpulの提供ではなく、顧客情報の収集・分析までの一連のサービスとしての提供を目指している。

ここ1年ほどは、各種センサを実装するロボットシステムをマーケティング用途に活用する考えが広がっており、ロボットを動作させるために開発した「環境情報構造化」(*4)を、この用途に役立てようとする動きがある。これに沿う考えであり、「ユーザーが簡単に扱える、もっとシンプルなシステムおよびサービスとして提供できれば」と、坂本さんは話す。
  また、「経済危機の中、モノが売れなくなってきています。こんな厳しい時代からこそ、どの企業さんもマーケティング情報、つまり顧客情報を欲しがっていると思います。また、これは今後、ロボットの重要な用途の1つになると感じているんです」。坂本さんは、そう期待を込める。このような柔軟な提案が行えるのは、やはりシステムインテグレータという立場にあるからと言えよう。

 繰り返し述べてきたように、坂本さんが強みとするところはシステムインテグレートを行えるところにある。自動車などに代表される、わが国が得意とする「擦り合わせ技術(*5)」に通じるところである。ただし、これは俯瞰的エンジニアリングであり、コア技術やブラックボックス化できる技術を有している方がより望ましいという指摘がなされている。
  坂本さんは、SIerとしての取り組みに加え、音声認識・合成技術を自身の独自技術として確保することを目指している。この方向性は、そうした見方を踏まえたものと言え、今後より一層の活躍が期待されるSIerであると、改めて感じさせられた。

*4:ITやユビキタスコンピューティング、ネットワーク通信技術、GPS、RFIDタグなどのセンシング技術と連携して、ロボットが動きやすいように環境側を整備する取り組み。空間や人の行動に関する意味情報を「環境情報」として環境に埋め込む(構造化)べく、2006年7月より内閣府のプロジェクトとして取り組まれた。「場の計測」「モノの計測」「人の計測」の3つの観点から開発された。環境側から環境情報を与えることにより、ロボットがサービス提供を行いやすくすることを狙って研究開発されていたが、特に人の計測では、人の行動パターンや場所特有の統計および履歴情報が得られることから、有力なマーケティング・ツールになると認識され始めている。

*5:製品やシステムのアーキテクチャの基本タイプは、大きくは「擦り合わせ型」(インテグラル)と「組み合わせ型」(モジュラー)に分けられる。前者は、ある製品のために特別に最適設計がなされた部品を微妙に相互調整しなければトータルなシステムとしての性能が発揮されないような製品を指す。具体的には、自動車や家電製品、精密機械、ゲームソフトや組込みソフトが該当する。後者は、すでに設計された有りもの部品を巧みに寄せ集めることで最終製品を完成できるタイプの製品を指す。インターフェース(メカニカルおよび通信、ソフトを含む)が標準化されており、部品そのものも機能的に完結している。パソコンや自転車などが代表的な製品。戦後、日本企業の多くが「ツーカーの関係」「あうんの呼吸」に象徴される「まとめ能力」「チーム力」「統合力」などを営々と蓄積してきたことから、わが国は擦り合わせが要求される製品開発を得意とすることが、東京大学の藤本隆宏教授より指摘されている。


掲載日:2009年5月 8日

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