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ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
「ユーザーから"使いたい"と言ってもらえるロボットシステムを目指しています」〜NEDOのステージゲートを通過・全方向移動自律搬送ロボット「MKR-003」を開発〜【村田機械】

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大町雅彦 取締役 京都R&Dセンター所長(左)、森口智規 課長(右)
大町雅彦 取締役 京都R&Dセンター所長(左)、森口智規 課長(右)

村田機械(株)

代表取締役社長 村田大介

〒612-8686
京都市伏見区竹田向代町136
http://www.muratec.jp/

「単に高度なロボットを開発しただけでは、現場で利用してもらうことにつながりません。ロボットがきちんと現場で受け入れてもらうためには、現場の人に『使いたい』という気持ちを持ってもらうことと、そのための時間が大切になると考えています」
 全方向移動自律搬送ロボット「MKR-003」のプロジェクト責任者である、村田機械の森口智規課長は、サービスロボットの実用化に向けた課題について、開口一番そう語る。

MKR-003は、自動地図生成機能と自己位置認識機能を持ち、エリア内の目的地まで最適なルートを自分で判断して障害物を回避しながら移動できる搬送ロボットである。後部に連結した台車には30kgまでの荷物を搭載できる。また、人とすれ違う際は、音声とジェスチャーで自身の進行方向を伝えながら、全方位移動可能な車輪を用いてスムースにすれ違える。慶應義塾大学、産業技術総合研究所とともに開発を進めている。
 今年2月には、「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」(NEDO)のステージゲート(絞り込み)を通過し、後半の「ステージ2」への移行が決定した。2010年までに実用化レベルまでつくり込みを行う。

車椅子の衝突回避運動。ステレオカメラ、レーザレンジセンサ、超音波センサで検知した情報をもとに、安全に障害物を回避しながら走行できる。 車椅子の衝突回避運動。ステレオカメラ、レーザレンジセンサ、超音波センサで検知した情報をもとに、安全に障害物を回避しながら走行できる。

車椅子の衝突回避運動。ステレオカメラ、レーザレンジセンサ、超音波センサで検知した情報をもとに、安全に障害物を回避しながら走行できる。

これまでに、2008年4月から12月にかけて9回にわたり、京都第二赤十字病院で走行実験を行ってきた。
 「実験を始めた頃と比べると、看護師さんに随分受け入れられたと思いますよ!」
 森口さんは、開発が着実に進んでいることを、そう表現する。

搬送システムのRT化で、さらなる自動化・省力化を目指す

村田機械は、FAおよびオフィスオートメーションを総合的に手がける企業である。おもにクリーンルーム搬送システム、情報機器、板金加工機械、工作機械、繊維機械、ロジスティクス/FAシステムの6つのビジネスフィールドを展開している。
 古くから、先進的な開発には定評があり、例えば繊維機械の分野では、「マッハスプライサー」(空気の力で結び目なしに糸と糸をつなぐ装置)の開発は繊維製品の高品質化に寄与したことで知られる。森口さんらが所属する京都R&Dセンターが、このような開発の中核を担っている。

同センターが、非産業用途に向けたロボット開発に着手したのは2002年頃である。上述のビジネスフィールドのキーワードである「自動化」および「省力化」技術の発展を目的としたものであり、最新技術の獲得を図るべく取り組んだのが「ロボカップ」中型リーグへの参戦である。
 森口さんを中心とする有志により、3年間にわたって出場したが、優勝を収めることは叶わなかった。しかしながら、「参戦を通じて自律移動をはじめ関連技術を蓄積できたのではないでしょうか」と、森口さんは当時を振り返る。

社内的には一定程度の成果を得たという判断から、「いま一度社内に目を向け、今後の開発に役立つ技術を洗い出す」(大町所長)ことに取り組み始めていたが、ロボカップで交流があった慶應義塾大学の故吉田和夫先生(理工学部 システムデザイン工学科)より開発の相談が舞い込むことになる。すなわち、三田キャンパス 入学センター内で案内を行うロボットの開発であり、上述のMKR-003につながるものである。

開発した案内ロボット「KEITA(慶大)」は、入学センターに訪問した人を感知すると自ら近づき、音声とジェスチャーで資料棚に案内する自律型ロボットである。約2,500語を理解し、画像処理と各種センサで周囲の状況を把握しながら、全方向移動の車輪でスムースに移動する。
 KEITAが稼働する入学センターは、全面ガラス張りで西日が強く差し込む、画像処理には厳しい環境だが、全方位カメラの画像を用いたロバストな自己位置推定方法やレーザレンジセンサなどにより円滑な案内を可能にしている。2005年10月に開発したものだが、いまも案内業務に励んでいるという。

開発を通じて、同社では障害物回避やジェスチャーが人に与える影響、人とのすれ違いを含む障害物回避などの要素技術を蓄積できた。また、これをきっかけに、現在のように慶應大学と共同でロボット開発に取り組む関係が構築されることになる。
 翌年度よりスタートした、NEDOのプロジェクトでは『サービスロボット分野・ロボット搬送システム』が開発項目として挙げられており、KEITAの移動技術を活用できること、同社の物流オートメーション技術との親和性が高いことから同プロジェクトに参画することになるのである。

業務システム全体を見直し、ロボット導入のメリットを提示する

冒頭で紹介した通り、MKR-003の開発は過去3年の開発成果が評価され、ステージゲートの通過を果たしている。大きな特徴は、環境整備(=環境構造化または環境情報構造化)をはじめとする導入にかかる負荷が極めて小さいことである。
 導入時にかかる作業は、ゲーム用コントローラを用いて施設内を周回させて、自動地図生成機能(*)により環境マップを作成するだけである。あとはスタート地点とゴール地点を指定すれば、ロボット自身が最短経路を計算し、頭部のステレオカメラと本体下部のレーザレンジセンサ、胴体周囲に付加した超音波センサの情報を頼りに、人や障害物を避けながら自律移動が行える。実用的な技術が重視されるNEDOのプロジェクトで、ステージゲートを通過したのがうなずける。

*:基本的には、「SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」を搭載している。SLAMとは、各種センサから取得した情報から自己位置推定と地図生成を同時に行う手法で、レーザレンジセンサから得た情報をもとに行っている。

操作パネル上からの操作により環境マップなどの作成が行える。搬送のスタート地点とゴール視点を指示すれば自律搬送が行える。 京都R&Dセンターでの自律搬送の様子。すでに地図情報を有しているため、スタート地点とゴール地点を指示するだけで自律搬送ができる。

(左)操作パネル上からの操作により環境マップなどの作成が行える。搬送のスタート地点とゴール視点を指示すれば自律搬送が行える。(右)京都R&Dセンターでの自律搬送の様子。すでに地図情報を有しているため、スタート地点とゴール地点を指示するだけで自律搬送ができる。

今後は、NEDOのプロジェクトを通じて、病院内での移動を前提に安全確保のための技術開発に取り組む予定だが、これに加え、ユーザー側、「つまり病院側の"受け入れ度"も考慮した開発も求められる」と、森口さんは話す。
 「技術的に実用レベルに到達していても現場ですぐに使えるわけではない・・・」との指摘を、京都第二赤十字病院の田中聖人医師(消化器科副部長)より受けたことがきっかけになったとのことで、こうした開発は、現在の院内サービスおよびサービスプロセスを考慮したシステムの提案と、言い換えられるだろう。走行試験などととともに「すでに看護師さんらの業務分析にも取り組んでいる」ことを、森口さんは明かす。

MKR-003が担うのはおもに搬送業務になるが、看護師が扱う搬送物には、薬剤をはじめ生命に関わるものから、補充品などの緊急性の低いものまである。緊急性が低いとはいえ日常的に補充するために、それにかかる搬送作業は非常に多い。また、搬送業務とは直接関係がないかもしれないが、日中は看護師や介護助手をはじめ多数のスタッフがいるが、夜間は少数のスタッフで対応するため、仮に複数の病室よりナースコールが鳴らされればナースセンターが不在になることがある。
 このように、ちょっとした搬送作業や呼び出しに伴い職場を離れ、患者との接点が離れてしまうこと(院内サービスの低下)に対し、ストレスを感じている看護師は多いという。ヒアリングなどの結果、このような現場のニーズが見えてきたという。
 そこで、患者さんと向き合う看護師のフロントステージの業務を、バックステージ側でロボットがサポートし、看護師の業務にゆとりをつくる。その結果、院内サービスの品質を向上させ、ひいては病院経営に寄与する――。MKR-003を軸に、このようなシステムを共同で構築することが求められるだろうし、その検討を進めつつあるという。

京都第二赤十字病院で実施したMKR-003の走行実験。治療に必要な薬剤や補充品などを搬送する。これまでの実験では最大24kgの重量物を搬送している。

京都第二赤十字病院で実施したMKR-003の走行実験。治療に必要な薬剤や補充品などを搬送する。これまでの実験では最大24kgの重量物を搬送している。

森口さんは言う。
 「ロボットの導入メリットは、世間で言われるように、単純に人件費との比較で換算されるものではありません。バックステージに当たるような業務をロボットが担うことで、看護師さんが患者さんに向き合って業務に専念できるような仕組みをつくることが大切であり、業務プロセスを見直すような取り組みに発展させていくことが大切でしょう」
 こうした開発にサービスロボット導入の難しさがあると同時に、その重要性を伺わせてくれる。
 最後に森口さんは今後の市場化に向け、次のように語ってくれた。
 「まずは、現場で働く人たちの声をうまく反映させることで、"このロボットを使いたいよね"という気持ちになっていただくことが大事です。ですので、実証実験を通じてロボットが搬送してくれて良かったという気持ちを抱いてもらいつつ、3年後を目標に病院での受け入れ体制を共同で整えていきたいです」

2008年12月19日には、京都第二赤十字病院で看護学生とのクリスマス・キャロルイベントを実施している。看護学生が笑顔でMKR-003を囲んでいる写真が印象的である。MKR-003を受け入れてもらうための活動の一環なのだろうが、サービスロボットを実用化するためには、こうした活動も求められるのだと、同社の活動から感じさせられた。

2008年12月19日に開催した、京都第二赤十字看護学生とのクリスマス・キャロルイベントの様子。

2008年12月19日に開催した、京都第二赤十字看護学生とのクリスマス・キャロルイベントの様子。


掲載日:2009年4月21日

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