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ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
「顧客の収益に直結する提案で、自社センサの応用範囲を広げたいです」〜レーザ測域センサの開発販売から、応用システムを手がける〜【北陽電機】

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事業推進室の嶋地直広室長(右)と天谷知世さん(左)
事業推進室の嶋地直広室長(右)と天谷知世さん(左)

北陽電機

代表取締役 尾崎仁志

〒532-0033
大阪市中央区常磐町2-2-5
http://www.hokuyo-aut.co.jp/

搬送ロボットをはじめとする各種サービスロボットが自律移動を行うためには、ロボットの"目"となるセンサが欠かせない。周囲の環境を認識して自身の走行経路を見つけ、人や物との衝突を確実に回避しなければならないからである。
 このロボットの"目"の提供で、高い実績を誇るのが北陽電機である。開発した測域センサ「URGシリーズ」は各種移動ロボットなどに向け、すでに1万3,000個以上を売り上げている。「今年のロボット」大賞2006(経済産業省主催)において、「中小企業・ベンチャー部門」で「優秀賞」を獲得したことは記憶に新しい。

同社は電子カウンタや光電センサなどの開発も手がけているが、ここ数年の取り組みで注目されるのは、各種センサ技術を活用したシステムおよびソリューションの展開である。測域センサを活用した「共連れ検知システム」や「入退室・人数カウントシステム」の開発に加え、デジタルサイネージ・ツールを組み合わせた「観客動向自動集計システム」を提案している。集客力の向上に加え、行動分析も行える有効なシステムとして注目を集めている。

自律移動ロボットの"目"としてベストセラーに

北陽電機が、測域センサの開発を手がけたのは、「AMHS(Automated Material Handling System):自動搬送システム」向けの光センサ(LEDタイプ)を製作し、ロボット関連技術の展示会「ROBOTREX2002」(「ロボカップ福岡大会」併催イベント)に出展したことが契機となっている。当時、半導体のウエハサイズが300mmに移行したのに伴い、AMHSには高度な搬送能力が求められ、光センサには高分解能が要求されていた。自律移動を行うサービスロボットのセンサにも同様の要求がなされており、これがROBOTREXで注目を集めることになった。
 その後、平成15年〜17年度に実施された「戦略的基盤技術力強化事業」(中小企業基盤整備機構)にて、自律移動ロボットの研究を手がける筑波大学や、自律巡回ロボットを開発するテムザックや綜合警備保障などとコンソーシアムを組み、開発に取り組むことになる。そして、2004年の「ロボティクス・メカトロニクス講演会」(ROBOMEC2004)で発表し、翌2005年にURGシリーズとして製品化する。

開発したURGシリーズは、2次元走査式のレーザ式距離センサで、レーザ光を照射し、物体からの反射光をもとに距離を算出する。空間を面で切り取るようなかたちで物体との距離情報が得られ、環境情報の認識および自己位置の推定に役立てることができる。検出角度は240°、距離精度は±10mm、分解能は0.36でありながら、小型・軽量、省電力という特徴を持つ。

「今年のロボット」大賞2006にて「優秀賞」を獲得した測域センサ。小型軽量ながら高分解能である点が評価された。左は「UGB-04LX-F01」、右は「URG-04LX」で、いずれも検出角度は240°、距離精度±10mm、分解能は0.36°。 測域センサで空間を検出した様子。空間を面で切り取るようなかたちで物体との距離情報が得られる。移動ロボットの環境情報の認識および自己位置の推定に役立てることができる。

(左)「今年のロボット」大賞2006にて「優秀賞」を獲得した測域センサ。小型軽量ながら高分解能である点が評価された。左は「UGB-04LX-F01」、右は「URG-04LX」で、いずれも検出角度は240°、距離精度±10mm、分解能は0.36°。(右)測域センサで空間を検出した様子。空間を面で切り取るようなかたちで物体との距離情報が得られる。移動ロボットの環境情報の認識および自己位置の推定に役立てることができる。

同社がレーザ式測域センサを開発したのは初めてだったが、光センサの開発で培った測域技術を活用できると見込んでいた。しかしながら、当時の技術レベルの問題などがあって「効果的に役立てることができず、ゼロベースでの開発になった・・・」と、事業推進室の嶋地直広室長は当時を振り返る。
 一例を挙げると、当初は測距方式に位相差測距方式を採用し、ミキサー回路を用いたアナログ検波を予定していたが、そのアナログ回路のIC化が難しく、フーリエ変換によるデジタル検波に取り組むことになったことがある。最終的には同検波方式を確立しIC化を実現することで、URGシリーズを完成した。

このような苦労を伴ったものの、コンソーシアムを組んだ開発だったため、ユーザー要求を十二分に満足するものを完成することができた。2005年の「愛・地球博」では、会場内での実証実験に取り組んだ多数の移動ロボットに採用され、上述の「今年のロボット」大賞での優秀賞の獲得につながる。いまでは移動ロボットには当然のように採用される、ベストセラー商品となっている。

測域センサを活用した応用システムを展開するが・・・

同社では、単なる要素技術の提供にとどまらず。開発した測域センサを活用した応用展開にも取り組んでいる。その1つがセキュリティ分野であり、「入退室・人数カウントシステム」や「共連れ検知センサシステム」などを提案している。
 前者は、測域センサを組み込んだセンサポールを出入り口付近に設置し、2次元走査を行うことで人の出入りなどの行動を検知する。人の動きを予測して検知できるようなアルゴリズムを組んでいるうえ、日光や床面の光沢などの外乱に強く、高精度な人流の計数が行えるという特徴を持つ。
 また、「監視カメラをはじめとする光学カメラのような監視されている印象を与えない外観に特徴」(嶋地室長)があり、セキュリティ性を確保しつつスムーズな入退室を促すことができる。個人情報を扱うような金融機関を中心に導入実績がある。

「入退室・人数カウントシステム」のイメージ(同社ホームページより)。測域センサを組み込んだセンサポールを玄関付近に設置して使用する。オクリュージョン領域を発生しないよう通常は、複数台を設置する。 付属の「行動追跡ソフトウエア」で捉えた、入退室をはじめとする人の行動追跡の結果。同時に最大50人まで検出した順に自動でIDを割り当てて追跡することができる。2月には、大阪産業創造館にて入退場者の流量計測の実証実験を実施した。

(左)「入退室・人数カウントシステム」のイメージ(同社ホームページより)。測域センサを組み込んだセンサポールを玄関付近に設置して使用する。オクリュージョン領域を発生しないよう通常は、複数台を設置する。(右)付属の「行動追跡ソフトウエア」で捉えた、入退室をはじめとする人の行動追跡の結果。同時に最大50人まで検出した順に自動でIDを割り当てて追跡することができる。2月には、大阪産業創造館にて入退場者の流量計測の実証実験を実施した。

後者は、独自の人検知アルゴリズムを組み合わせて開発したシステムで、入場権限のある人に続いて、一緒に入場してしまう「共連れ」を検出する。既存の入退室システムに追加・設置して利用する。最近は、多くのオフィスビルでICカード認証システムが採用されているが、共連れの防止までは保証できていない。それだけにセキュリティ業界では注目度は高い。

しかしながら、「実際には、なかなか導入には至っていないのですよ・・・」と、嶋地室長は吐露する。
 「ここ数年、SECURITY SHOWなどで共連れ検知システムに回転式ゲートを組み合わせた展示を提案しました。注目度は高く、見積もりまでは商談が進むのですが、ユーザー企業様での予算の獲得および導入までには、なかなか至りません・・・。
 すでに入退室システムが多くの現場で導入されており、セキュリティレベルが高いエリアに付加的に設置するシステムとして捉えられ、利用シーンが限定されているからでしょう。また、もともと各種FAセンサシステムの開発を得意とする企業であり、セキュリティ分野での導入実績が乏しいことも挙げられます」
 嶋地室長は、その原因をこう分析する。

そこで、2009年に入って新たに提案しているのが、デジタルサイネージを組み合わせた「観客動向自動集計システム」である。「集客力の向上をはじめユーザー企業の売り上げに直結する、マーケティングに寄与する提案が必須」(嶋地室長)と、考えを改めたすえに考案したものである。

AIDMAの把握に寄与するユニークなシステム

開発したシステムは、入退室・人数カウントシステムに、デジタルサイネージ・ツールを組み合わせたものである。ディスプレイの両側に設置した測域センサで捉えることで、オクリュージョン領域を発生させることなく来場者の検出、人数カウントおよび行動追跡が行える。
 デジタルサイネージ・ツールには、九州のベンチャー・しくみデザインの「KAGURA」を応用した。インタラクティブコンテンツを提供するミドルウエアで、カメラやマイクなどのセンサの入力と映像および音声の出力、動きやモノの検出、映像や音のエフェクトなどの機能を組み合わせることができる。この利用により、例えばカメラで捉えた来場者をディスプレイ上に映し出し、来場者にCG画像のキャラクターを配置して変身させたり、表示した広告映像に音やエフェクトを加えることで臨場感を演出したりすることができる。
 立ち止まった来場者に広告を閲覧させる効果が非常に高く、3月3日〜6日開催の「SECURITY SHOW2009」では、その楽しい演出でひときわ注目を集めた。

「SECURITY SHOW2009」に出展した「観客動向自動集計システム」。入退室・人数カウントシステムに、デジタルサイネージ・ツールを組み合わせた。ディスプレイの両側に設置した測域センサにより来場者の検出、人数カウントおよび行動追跡を行う。時刻と位置をログとして記録することができる。行動分析に役立てることができる。

「SECURITY SHOW2009」に出展した「観客動向自動集計システム」。入退室・人数カウントシステムに、デジタルサイネージ・ツールを組み合わせた。ディスプレイの両側に設置した測域センサにより来場者の検出、人数カウントおよび行動追跡を行う。時刻と位置をログとして記録することができる。行動分析に役立てることができる。


デジタルサイネージ・ツールには、しくみデザインの「KAGURA」を利用。カメラで捉えた来場者をディスプレイ上に映し出し、来場者をキャラクターに変身させて、変身した映像の上下に広告映像を表示したり、変身映像を切り替えて広告映像を表示したりすることができる。来場者に広告を閲覧させる効果が非常に高い。写真は、SECURITY SHOW2009での展示の様子。

デジタルサイネージ・ツールには、しくみデザインの「KAGURA」を利用。カメラで捉えた来場者をディスプレイ上に映し出し、来場者をキャラクターに変身させて、変身した映像の上下に広告映像を表示したり、変身映像を切り替えて広告映像を表示したりすることができる。来場者に広告を閲覧させる効果が非常に高い。写真は、SECURITY SHOW2009での展示の様子。


顧客動向自動集計システムでは、広告を閲覧した後の来場者の行動追跡が行えるため、ログ解析やデータマイニングにより、顧客がある商品を知って購入に至るまでの「AIDMA(アイドマ)(*1)」の把握に役立てたり、店舗内の動線の設計に役立てたりすることができるが期待される。「デジタルサイネージ市場が立ち上がる中で、商業施設や駅のコンコース、レジャー施設などに向け、こうした提案をしていきたい」と、嶋地室長は期待を込める。

*1:マーケティングでは、消費者がある商品を知ってから購入に至るまでに、次の5段階を乗り越えなければならないという考えがある。すなわち「(1)Attention(注意)」「(2)Interest(関心)」「(3)Desire(欲求)」「(4)Memory(記憶)」「(5)Action(行動)」であり、これらを総称して「AIDMA」と表現している。

実は、このようにセンサ技術を活用して顧客行動の計測や評価に役立てる研究は最近、ホットな話題となっている。
 例えば、東京大学人工物工学研究センター サービス工学研究部門では今後、サービスを適切に設計していくためには、ユーザーがサービスに満足しているかどうかを常に計測・評価し、対応するシステムが必要とし、センサを中心とするロボットテクノロジーによる達成されるとの見方を示している。
 開発したシステムの着想について、「ここ数年の世の中の変化および流れを見てきた結果」と、嶋地室長は説明するが、その見方に合致する提案と言える。また、マーケティング分野に限らず、センサを潤沢に実装するロボットにより各種情報を取得することの重要性が意識され始めており(*2)、そうした流れにも合致する。それだけに期待が大きい。

*2:例えば、精密農業における第3世代農業ロボットが該当する。農業ロボットには各種センサに加え、多様なアクチュエータを有しており、センシングやハンドリングを通じて、作物や土壌の状態をはじめとする生産情報や作業規範(プロトコル)を取得することができる。センシングおよびハンドリング機能、大容量のメモリを生かして大量の情報を蓄積し、事実として提供するツールを農業ロボットと定義し直している。
 これに伴い、「第1世代農業ロボット」は、ロボット工学の農業への応用、あるいは植物の物理特性に基づいて、既存の産業用ロボットの適用がなされたものを、「第2世代農業ロボット」は、園芸学的アプローチと工学的アプローチとの融合を図り、作業者と協調可能なロボットなど新たな農業生産システムを構築したものと、それぞれ定義している。

新年度となる4月からは、新製品として車両検出に使える測域センサの販売を予定している。クルマのサイズの測定や駐車場での入庫状態の確認、高速道路での逆走の検知などの用途に向けたもので、「この用途開発と、集客動向自動集計システムの展開が2009年度の事業目標。これら両面から、自社のセンサシステムを幅広く提案していきたいです」と、最後に、嶋地さんはそう意気込みを語ってくれた。
 セキュリティ分野に向けた提案では必ずしも満足の行く結果が得られなかったが、このようなマーケティングに向けた提案が、新たな応用展開として華開くことを期待したい。


掲載日:2009年3月24日

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