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ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
倉庫管理以外にも、いろんな用途に拡大できればいいですね〜屋内自律飛行船ロボットによる倉庫管理システムを提案〜【ワイズ・ラブ】

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ワイズ・ラブ 内橋義人さん

ワイズ・ラブ
代表取締役 内橋 義人

〒591-8025
堺市北区長曽根町130-42
http://www.yslab.co.jp/

ワイズ・ラブは、2006年3月に国内初のUHF帯対応無線ICタグ(*1)を利用した在庫管理システムの構築で注目されたベンチャーである。省力化生地(綿織物)の製造・販売などを手がける植山織物が導入し、製品単位である生地反物の出荷検品、倉庫の入出荷検品、棚卸に適用した。
 「このシステムを植山織物さんに納入したところ従来、約15名で2日程度を要していた棚卸が、たった1人の作業者で半日程度で済むようになったと聞いています」
 ワイズ・ラブの内橋義人社長は、その効果を説明する。
 「でもいまは、より一層の効率化を狙ったシステム開発を進めています。すなわち、屋内自律飛行船ロボットを活用した倉庫管理システムで、実用化に向けた活動を展開しているところなんです」と続ける。

*:UHF帯ICタグの国際規格「EPC global Class-1 Generation-2」に準拠したICタグによる商用運用としては国内初の事例とされている。

大阪府立大学と連携して開発した屋内自律飛行船ロボット。すでに高さ2mの試作機を完成しており、人と同等サイズを目指して小型化などに取り組んでいる。

UHF帯ICタグの実用化で、棚卸作業を高効率化

同社の事業の柱は、ICタグソリューションの提供や組込みシステム開発などである。大手電機メーカーに勤めていた内橋さん1989年にスピンアウトし、1995年に法人化した。法人成立10年目となる2005年に、現在の堺市に事業所を移している。以後、これまでの受託開発に加え、ユビキタスネットワーク時代に対応したオリジナル商品の開発を目指し、リアルとバーチャルの融合を切り口に、各種ITソリューションの提供を目指してきた。その1つが上述の在庫管理システムである。

導入した植山織物では常時、約4,000種類・約5万本の生地反物を管理している。従来、目視による管理を行っていたが、生地反物にICタグラベルを貼り付けて、検反工場の出荷から物流倉庫の入出荷、棚卸までコンピュータで一元管理するように改めた。
利用したUHF帯タグは、7〜8m離れた距離でも情報を読み取ることができる(1Wの高出力型を使用)うえ、この帯域の電波は物体の背面にも回り込む特性を持つ。パレットに積載したままでも、また立体ラックに保管したままでも、リーダにより一括で読み取ることができる。例えば棚卸は、台車に載せたICタグリーダを棚の前を通過させるだけで行えるようになり、冒頭で紹介したような劇的な効率化を生み出した。

このような作業の自動化および管理精度の向上が評価され、「第8回自動認識システム大賞」で優秀賞を受賞し、全国からシステムの視察が相次いだ。これに屋内自律飛行船ロボットを組み合わせようというのが、現在の内橋さんの取り組みである。

植山織物に導入した反物在庫管理システムの概要。検反工場では、ICタグラベル発行と出荷管理を、倉庫では生地反物の入出荷管理と棚卸管理を行っている。 織物生地反物の管理に利用しているCIG2規格のICタグ。サトー製ICタグラベルプリンターを用いて発行する。タグへの目視情報のプリントとICへのデータ書き込みが同時に行える。

(左)植山織物に導入した反物在庫管理システムの概要。検反工場では、ICタグラベル発行と出荷管理を、倉庫では生地反物の入出荷管理と棚卸管理を行っている。 (右)織物生地反物の管理に利用しているCIG2規格のICタグ。サトー製ICタグラベルプリンターを用いて発行する。タグへの目視情報のプリントとICへのデータ書き込みが同時に行える。

地域連携から屋内自律飛行船ロボの開発へ

この開発の発端は、2004年に堺工業技術研究会の設立50周年イベントして取り組んだ、倒れにくい自転車「Smart Cycle(スマートサイクル)」の企画に遡る。
 スマートサイクルは、不安定な走行を検知したときのみ、ハンドル操作をアシストする自転車である。姿勢角センサや速度センサ、マイコンなどを実装した制御ボックスをハンドル前部に搭載しており、これらのセンサが転倒などの危険を検知すると、マイコンが実験で得た各種データを参照し、転倒しないようにアクチュエータを制御してハンドル操作をアシストする。
 大阪府立大学工学部航空宇宙工学科の砂田茂助教授と得竹浩助手が中心となって取り組み、航空機分野の制御理論の応用により「こけにくい自転車」を実現した。内橋さんは制御部の開発担当として参加した。

スマートサイクルそのものは、安全性や耐久性などの問題から商品化は叶わなかったが、その後、この制御部を取り出して、小型無人航空機用の汎用制御基板として「MAVC1」を、さらに、より汎用的な制御基板として「同2」(*2)を開発するに至る。これらは飛行制御に必要なセンサ類を実装したもので、屋内自律飛行船ロボット「YasBee~」は、同2を採用して開発を進めている。

*2:小型無人航空機用の汎用制御基板。サイズは40mm×35mmと小型・軽量ながら、2軸角速度計と3軸加速度計、方位計、モータアンプに加え、各種センサやサーボモータなどのインターフェースを実装している。また、GPSアンテナや気圧高度計の接続も容易という特徴を備えており、飛行制御に必要なセンサを基板上に実装している。

超小型汎用制御基板「MAVC2」。2軸の角速度計と3軸の加速度計、方位計などのセンサに加え、GPSアンテナや気圧高度計との接続が行えるなど、飛行制御に必要なポートを備えている。

超小型汎用制御基板「MAVC2」。2軸の角速度計と3軸の加速度計、方位計などのセンサに加え、GPSアンテナや気圧高度計との接続が行えるなど、飛行制御に必要なポートを備えている。

試作したYasBee~は、ヘリウムガス風船に推進用プロペラ、超小型カメラ、RFタグリーダなどを搭載したゴンドラを搭載したものである。位置推定用のRFタグとトレースラインを読み取ることで、倉庫内を自在に移動することができる。物品管理用のRFタグで読み取った情報は、ZigBeeで送信する。
 ゆっくりと移動するため正確な一括読み取りが行えるうえ、AGVなどのように、自律移動にかかる大がかりな環境整備はほぼ不要という特徴を持つ。

屋内自律飛行船ロボット「YasBee~」の概念図と、植山織物の倉庫内で運用したときの様子。位置測定用のRFタグを頼りに自律移動を行う。

屋内自律飛行船ロボット「YasBee~」の概念図と、植山織物の倉庫内で運用したときの様子。位置測定用のRFタグを頼りに自律移動を行う。

YasBee~を導入すれば、上述の棚卸作業は半日どころか、夜中に飛行船ロボットを稼働すれば無人で行えるようになる。在庫管理のより一層の省力化が見込まれる。
また、ピッキング作業の効率化も期待される。大型倉庫の場合、天井付近まで商品が積み上げられており、該当商品を搬出するときは、それがあると思われるところに目星をつけて行っている。効率的とは言え難い作業になっている。飛行船ロボットにより事前に該当商品の位置を特定しておけば、ピンポイントでのピッキングが可能になるわけである。

なお、YasBee~の開発は、平成19年度にJST(科学技術振興機構)の研究成果実用化検討課題に採択され、大阪府立大学、大阪産業技術総合研究所と連携して進めている。2008年3月に1号機を発表している。続けて、「地域イノベーション創出総合支援事業重点地域研究開発プログラム」の平成20年度「地域ニーズ即応型」の参画企業として採択され、開発を継続している。

用途の拡大に大きな期待

「YasBee~のシステム構成などを説明すると、興味を持ってくれる企業さんが非常に多いです」
 内橋さんは、YasBee~への期待を伺わせる。
 デモ用の動画では、丸い風船が縦に2個つながった形のYasBee~が、フワフワと漂いながら指定したコースを辿り、オペレータの元へ帰ってくる様子が映し出されている。「ロボット」という名称には似つかわしくない、ほのぼのとした印象を与える。「簡素な構造なので、きっと低価格で導入できると思って下さるのでしょう。ゆえに、強い興味を惹いているのかもしれませんね」。内橋さんは、そう説明を続ける。

しかしながら、商品化に向けた課題がいくつか残されている。例えば、空調など外乱に左右されないような姿勢制御や、通路のコーナーを正確に曲がるための制御技術、ヘリウムガスの減少に伴う浮力の調整および正確な高度の維持である。加えて、倉庫内の動線に合うよう、現在2m程度のサイズを人と同等サイズにまで小型化することも求められる。これらの課題をクリアして、3月には2号機のテストを開始。2010年には商品化することを予定している。

在庫管理システムを開発した経緯から、現在はおもに倉庫管理に向けた応用展開を進めているが、それ以外にも用途が考えられる。例えば、中古車や中古ピアノなどを取り扱う大規模倉庫での該当商品の探索や、ビルや工場での警備・監視、トンネル内壁の検査、室内環境の計測、イベント会場や空港での来場者の誘導などである。
 「ゆっくり推進する飛行船ロボットに案内されて目的地に辿り着くのは、案内される方もきっと楽しいかもしれませんよね。そんな体験ができるという点でも、ユニークなシステムではないでしょうか。とにかく、実用的なシステムとして提案していきたいです」
 内橋さんは用途の広がりについて、そう期待を込めるとともに、意欲的に開発に取り組むことを示してくれた。


掲載日:2009年3月17日

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