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ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
特殊用途に向けたモータ開発技術を基盤に、新たな用途・市場を開拓したい〜モータ設計・製作からロボット台車の開発へ〜【津川製作所】

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津川製作所 津川樹弥夫さん

(株)津川製作所
代表取締役社長 津川樹弥夫

〒557-0063
大阪市西成区南津守4-4-12
http://www.tsugawa.co.jp/

「これまで自社で培ってきたモータ技術を生かして、例えば農業用搬送台車など、新たな用途や市場を創出していきたいですね。できれば工場内での用途ではなく屋外用途などで・・・」
 津川製作所は昨年11月、遠隔操作走行台車(ロボット台車)の試作機を発表した。この応用展開について、開発を担当した津川礼至常務取締役は淡々とした口調で、そう切り出す。

試作した遠隔操作走行台車。本体サイズは120cm(全長)×70cm(幅)。車輪直径は40cm。重量40kg。積載可能重量は1t。農業をはじめ屋外での搬送用途に向けて試作した。

試作した遠隔操作走行台車。本体サイズは120cm(全長)×70cm(幅)。車輪直径は40cm。重量40kg。積載可能重量は1t。農業をはじめ屋外での搬送用途に向けて試作した。

同社は、アクチュエータ(電磁モータ)の設計・製作を本業とする企業である。減速機などの設計・製作などもこなせるほか、パワーエレクトロニクス関連技術も有している。用途に合わせて最適化したモータを設計・製造できる点に強み持つ。
 また、漁業や農業など屋外用途に向けた供給が多く、ある書籍では『特定モータで世界一』の企業とまで紹介されている。モータメーカーから秘かに設計依頼が寄せられるなど、同社の開発力には定評がある。

そんな同社のモータ開発において、津川さんが重視している工程の1つが巻線技術(*)だという。
 「あくまで私見ですけど、モータの固有の技術は巻線にあると考えています。実際、銅損をはじめモータ特性は巻線に左右され、出力が変わります。また、巻線技術がなければ、特殊用途モータのオーダーにきめ細かく対応することができません。だから、他工程を外注に頼むことがあっても、これだけは当社の固有技術として、その技術開発に力を入れているんです」
 このような姿勢が、上述のような開発を可能にし、高い評価につながっているようだ。

*:永久磁石モータにネオジ磁石が実用化された際、モータの性能の向上に加え、生産技術を含めた効率向上を促す契機になった。巻線に関しては単に集中巻線とするのではなく、巻線をすき間なく整列して巻くことができれば銅損の低減を可能にできるということで、整列した巻線でモータ・ステータを生産する技術開発がなされた。これにより、従来モータと比較して同一体格で2倍程度の出力まで性能改善がなされ、さらに高効率のステータ構造が開発された。その代表として、直線に開いたステータ構造に、整列巻線を施した後に、ステータを同芯状に成形する生産方式が考案された。

特殊用途に向けた開発の延長線上として

既述の通り、同社のモータは漁業や農業など屋外用途での利用が多い。例えば、漁業では漁労機やアンカー(錨)ウィンチなどに向けて、農業では田植機の無段変速機などに向けて供給している。同社が設計・製作するモータのうち、前者が約4割を、後者が約2割を占める。

同社の事務所には、数多くの特注モータ製品が所狭しと並んでいる。 リアニアクチュエータの設計・製作も多く手がける。各種機械・機構の直動部分や自動開閉扉、搬送台車などの姿勢制御などに活用することができる。 同社では搬送台車の駆動用モータの設計・製作も多く手がけている。

(左)同社の事務所には、数多くの特注モータ製品が所狭しと並んでいる。 (中)リアニアクチュエータの設計・製作も多く手がける。各種機械・機構の直動部分や自動開閉扉、搬送台車などの姿勢制御などに活用することができる。 (右)同社では搬送台車の駆動用モータの設計・製作も多く手がけている。

これらの用途で用いられるモータには特殊なものが多く、中には、レンコンの収穫用途で用いる電動ウィンチの開発も手がけている。レンコンの収穫は、沼地での作業となるうえ相当な力作業になる。にもかかわらず、レンコンを途中で折ってしまうと商品価値が下がる、非常に厄介な作業である。そこで、軽トラなどに設置したウィンチが収穫に要する力作業を担うことで、農家はレンコンが途中で折れないように調整する作業に専念できるようにしている。
 製作台数は少ないものの、このような特殊用途への対応は同社の開発力があってこそのものであり、今回のロボット台車の開発も、この延長線上にある。

もともと同社では、工場内の搬送台車やAGVに向けて駆動用モータを提供していた。工場内の搬送台車はいくつかの企業が量産しており市場が形成されているが、漁業や農業に向けた搬送台車は非常に少ない。これらの用途ではニーズも使用環境も多種多様であり、一品一様の開発になるからであるが、現場作業者は「これを確実に必要としている」という。
 「当社は特殊品の開発を得意としており、また、開発企業も非常に少ないです。こうした用途に向けて特殊台車を提供することができれば・・・。そんな考えからロボット台車の開発に取り組んだのです」。津川さんは開発の経緯を、そう明かす。また、この判断は自社の強みをよく理解したものとも言える。

ニーズに応じたつくり込みが可能なロボット台車

試作したロボット台車のサイズは、全長120cm×幅70cm、重量約40kgと、かなり大型ものである。前方にカメラを1台搭載し、TCP/IPにより遠隔操作が行える。駆動用モータには300Wのモータを後輪に2個搭載しており、4輪すべてに駆動力を伝達することで、その場でターンができるなど小回りが効くようにしている。
 また、農作業での利用を想定した場合、例えば収穫用のロボットハンドを搭載すると数百kgの荷重がかかることから、1tの積載量に耐えるように設計している。

自社工場の近くで遠隔操作走行台車を試験走行したときの様子。外装を取り外している。 最大速度は約10km/hだが、実験では安全を考慮して4km/h以下で走行させた。姿勢制御機能を搭載するタイプの開発も進めている。

(左)自社工場の近くで遠隔操作走行台車を試験走行したときの様子。外装を取り外している。 (右)最大速度は約10km/hだが、実験では安全を考慮して4km/h以下で走行させた。姿勢制御機能を搭載するタイプの開発も進めている。

現段階のロボット台車は、あくまで"試作機の試作機"として開発したものであり、寄せられた具体的なニーズに応じてつくり込み、供給することを想定している。極めてシンプルな外観から、それを読み取ることができる。とはいえ、「漁業での用途には適さないですし、足場の悪い林業では使えないようでしょうから、結果、おもに農業分野に向けて展開していくことになるでしょう」と、津川さんは推測する。

それを踏まえ「次は、姿勢制御機能の搭載が次の開発課題になる」と、津川さんは続ける。試作したロボット台車では不整地走行は可能であるが、水平に姿勢を維持することができず、積載した荷物を落とす可能性がある。これでは農地での使用は難しい。「現状では魅力のある台車とは言い難いですので、サスペンション機能の付加などにより傾斜地や凹凸にも対応できるものへと進化させる予定」という。
 すでに試作機の開発を進めており、3月〜4月の間には姿勢制御機能を実装したタイプを完成させるという。

さらに、今後の開発に言及しておくと、最終目標は人工知能の搭載により経路判断をしながら走行できるもので、関連する研究室との共同開発を予定している。同社のモータ開発では、関西ではトップクラスと称される大阪府立大学大学院工学研究科の森本茂雄教授のアドバイスを受けており、常に最新技術を投入できる体制を築いている。人工知能の開発に関しても、「同様の体制で研究開発を進めていくことで、最終目標に到達したい」と、津川さんは意気込む。

あくまで新たな用途、市場を開拓していきたい

試作したロボット台車はすでにいくつかの展示会で披露しており、昨年11月26日〜28日開催の「国際次世代ロボットフェア ICRT JAPAN2008」に出展した。今後の開発を方向付けるような、農業用途での意見が寄せられることを期待したが、展示会の性格上ロボット関連企業やロボットに関心のある来場者ばかりで、期待したようなニーズは挙がってこなかった。

寄せられたニーズで多かったのは工場内での搬送用途で、しかも「他社よりも低価格で供給してほしいという声だった」という。中には、他社の半値での提供を依頼されることもあった。
 同社の開発力であれば十分可能な案件であるが、今後を考えると、薄利多売となるのは好ましいとは言えない。何より、搬送台車の開発企業に向けて、同社のモータを多く供給していることを考えると、これまでに築き上げてきた開発企業との関係性を崩すことになりかねない。
 津川さんは言う。
 「もちろん、工場用途の搬送台車市場に打って出るつもりはないですし、当社が目指すべき市場ではないと考えています。これまで屋外用途で、しかも特殊用途に向けて多くのモータおよびモータ応用製品を供給してきましたから、やはり屋外用途で、かつ新規性のあるものを目指すべきと考えています」

すでに大型の試作機を開発しており、近々、姿勢制御を搭載したタイプも完成することから、「これら2つを見せることで、幅広い用途への対応が可能であることを示すつもりでいます。これを通じて、当社ならではの特殊用途での開発力を生かしつつ、用途開拓を進めていくのが2009年度の活動目標になるでしょう」
 津川さんは直近の目標をそう語り、話を締めくくってくれた。

冒頭で紹介したように、同社は特定用途モータの開発に定評がある。モータ設計・製作を自社で行い、関連するノウハウを蓄積しているからで、漁業および農業分野への製品供給を可能にしている。
 これらの分野でも、古くからロボットの研究開発がなされているが、他の市場と比較すると、提案されているシステムには汎用的なものは少ない。特殊な機能、構造を備えたロボットが目立つ。ゆえに同社のように、細かいオーダーに応じて設計・製作できる企業の方が開発力を発揮しやすい分野と言え、新たな用途や市場を切り開くのではと感じられた。


掲載日:2009年3月 3日

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