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ロボ・ステーション


ロボットが拓く!あしたの農業
クリーン農業の支援が期待されるアイガモロボット【岐阜県情報技術研究所】

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岐阜県情報技術研究所 メカトロ研究部 光井輝彰 主任研究員

岐阜県情報技術研究所 メカトロ研究部
光井輝彰 主任研究員

2006年末の「有機農業推進法」の成立や、食の安心・安全への意識の高まりを受け、安全かつ環境負荷の少ないクリーンな農業が期待されている。水稲栽培においても有機栽培への取り組みが求められるようになっており、実際、有機栽培された米は慣行栽培の数倍の高値で取引されることがある。ところが、有機栽培にかかる除草作業は、米の栽培にかかる直接労働の3割程度を占め、慣行栽培と比較すると約6倍もの手間がかかるとされる。

以前より、除草剤の使用を控えつつ除草作業の負荷を軽減する方法は模索されており、水田除草機などによる機械除草や日光を遮断する被覆栽培などが取り組まれてきた。水田にアイガモを放ち、除草や害虫の駆除などの効果を期待する「アイガモ農法」は、その代表的な手段の1つであり、現在も各地で取り組まれている。しかしながら、飼育に手間がかかるうえ水田を万遍なく回ってくれないといった問題がある。他の除草方法と同様、安価かつ容易に取り組めるものではない。
 岐阜県情報技術研究所では手間がかからず、かつ安いアイガモ農法を実現すべく、水田用小型除草ロボット「アイガモロボット」の開発を進めている。2007年には、岐阜県内の個所の試験圃場にて除草実験を行い、残草量の低減を確認している。そして、2008年には「地域イノベーション創出研究開発事業(*1)」(経済産業省)に採択され、実用化に向けた開発を加速している。

岐阜県情報技術研究が開発を進めている水田用小型除草ロボット。通称「アイガモロボット」。写真は2007年の試作モデル。サイズは、1,000mm(長さ)×400mm(幅)×370mm(高さ)。重量4.5kg。本体の左右に搭載したクローラにより、条間の雑草を踏み潰したり、また、水を濁らせて雑草の光合成を阻害したり雑草や種に土をかぶせて生育・発芽を抑制したりすることで除草効果を得る。

岐阜県情報技術研究が開発を進めている水田用小型除草ロボット。通称「アイガモロボット」。写真は2007年の試作モデル。サイズは、1,000mm(長さ)×400mm(幅)×370mm(高さ)。重量4.5kg。本体の左右に搭載したクローラにより、条間の雑草を踏み潰したり、また、水を濁らせて雑草の光合成を阻害したり雑草や種に土をかぶせて生育・発芽を抑制したりすることで除草効果を得る。


*1:地域において産学官連携による、事業化に直結する実用化技術の開発により新産業・新事業を創出し、地域経済の活性化を図ることを目的とした事業。最先端の技術シーズをもとにした実用化技術の研究開発を実施する。「一般枠」に加え、農林水産業の振興や農林漁村市域の活性化に寄与する研究開発テーマを対象にした「農商工連携枠」も設置しており、アイガモロボットなどが採択されている。平成20年度予算(予算額:74.7億円)では、一般枠は89件、農商工連携枠は29件をそれぞれ採択した。

稲列をまたいで除草作業を行うシンプルさを追求

同研究所が提案するアイガモロボットは、稲列をまたいで走行することで除草作業を行うというシンプルなものである。本体の左右に搭載した幅90mmのクローラで「稲と稲の間(条間:約30cm)の雑草を踏み潰す」「水を濁らせ、雑草の光合成を阻害する」「雑草や種に土をかぶせて生育・発芽を阻害する」ことにより除草効果を得る。
 田植え後の苗が活着する約1週間後から、成長して雑草による影響が小さくなる約7週間後までの利用を想定している。

アイガモロボットの走行位置の例。幅90mmのクローラで、幅300mmの条間を踏み潰す。ロボットの走行回数が多く、条間の端から端まで走行すると除草効果が高い。

アイガモロボットの走行位置の例。幅90mmのクローラで、幅300mmの条間を踏み潰す。ロボットの走行回数が多く、条間の端から端まで走行すると除草効果が高い。


 研究当初より自動化に向けた検討を行っており、2007年に開発した試作機では測距センサで得た情報をもとに走行制御を行っていた。
 具体的には、本体の左右対称に設置した測距センサ(シャープ製「GP2D12」)で稲を挟み込むように計測し、左右のセンサの計測波形をほぼ同じになるように走行制御を行う。ほぼ同様の計測波形が得られることは、稲列のほぼ中央をまたいでいる状態であり、稲列に沿って走行していると判断されるわけである。ここでもシンプルさにこだわっている。
 本体の前後方向に大きく突き出したバランサー機構を搭載しているが、人の足跡など深みにはまっても転倒しないよう設けたものである。

2007年には、この試作モデルを用いて寒冷地と、平野部、中山間地の環境の異なる3個所の圃場で除草実験を行っている(*2)。
 一例を紹介すると、平野部での実験では除草作業を週1回、2回、3回の頻度で行う試験圃場を用意し、アイガモロボットの除草効果を検証する試験を行った。結果、残草量はロボットの走行回数が多いほど減少する傾向にあり、特に週3回の除草作業を行った圃場では良好な除草効果が確認されたうえ、除草剤を使用した慣行農業と同等の収量が得られたという。

アイガモロボットが走行した領域と走行していない領域。走行した領域は、明らかに残草が少ないことがわかる。

アイガモロボットが走行した領域と走行していない領域。走行した領域は、明らかに残草が少ないことがわかる。


シンプルな方法および機構であるにもかかわらず、このように除草効果が高いのがアイガモロボットの特徴であり、これが実用化を期待する大きな理由となっているのである。

*2:実験では、除草効果を確認するために、無線操縦による走行制御を行った。測距センサを利用した自律走行は、室内に設置した模擬稲を用いて検証を行っている。

2010年にはモニター販売用モデルを開発

冒頭で紹介したように、2008年度からは地域イノベーション創出研究開発事業の枠組み(*3)で開発を加速している。シンプルな構成を継承しつつも機構の見直しを進めている。

*3:「水田用小型除草ロボット(アイガモロボット)の開発」として取り組んでいる。除草機構の開発は、みのる産業を共同で、自律走行制御システムの開発は常磐電機と共同で、それぞれ取り組む。また、2009年度の検証実験は、岐阜大学および岐阜県中山間農業研究所と共同で取り組み、除草効果や制御システムの動作検証を行う。

1つは除草を担うクローラの改良である。2007年の試作モデルでは、市販のラジコンの雪上車のものを流用していた。軽量かつ泥が付着しにくいという利点から採用したが、より大きな除草効果を得るためには、条間の水および泥をかき混ぜるような作用が必要である。クローラ幅を拡大し、かつ凸形状を付与したものを製作しており、すでに完成しつつあるという。幅120mmと150mmの2タイプを用意しているとのことで、「2007年のときと同様の除草実験にて、それぞれの効果を検証する予定でいる」と、開発を担当するメカトロ研究部の光井輝彰主任研究員は意気込む。

もう1つは走行制御に関するもので、測距センサに代わり画像処理およびジャイロセンサなどにより稲の位置および自己位置を推定することを検討している。稲列やアゼを形として認識し、圃場の端でターンすることを考慮したものである。画像処理の場合、日光の変化をはじめとする外乱への対策が求められるが、「僕らが取り組む場合、研究要素としての意味合いもありますから」と、光井主任研究員は前向きに話す。今春には新たな試作機を完成し、田植え後の除草作業で検証するという。

「地域イノベーション創出研究開発事業」に申請したときのアイガモロボットのイメージ。環境へのさらなる配慮を考慮して太陽電池を搭載している。

「地域イノベーション創出研究開発事業」に申請したときのアイガモロボットのイメージ。環境へのさらなる配慮を考慮して太陽電池を搭載している。


また併せて、アイガモロボットを使いこなすための運用モデルの検討にも取り組む。圃場に大きなスタック(凹凸)があったり、圃場の端までびっしりと苗が受け付けられたりすると安定した走行が難しいからで、使用回数や除草効果との関係性を考慮しつつ、アイガモロボットの利用に適した圃場条件を整理する。
計画では、アイガモロボットの目標販売価格は30万円程度という低価格に設定しており、圃場条件の敷居を下げない限りは、容易に達成されるものではない。その意味でも、重要な取り組みになると言える。

同事業は2年間の取り組みとなっており、終了後の2010年度には実地試験およびモニター販売に踏み切ることを予定している。試験やモニター販売の結果をフィードバックし、その翌年以降の量産モデルの販売につなげる。
 量産化すれば20万円レベルのよい一層の低価格化が期待されるが、「まずは狙い通りに30万円を割る価格帯になるかどうかが普及のカギとなる」(光井主任研究員)。「有機栽培に取り組む営農家には、一時的に人を雇用してまでも手作業で除草作業を行う人がいます。若干とはいえ、投資できる余裕があるので、このような価格帯で、きちんと効果を示していきたい」と、今後の目標を語ってくれた。

有機栽培による米は高値で取引がなされ、中には、慣行栽培の数倍にもなるようなものもあるという。米をつくってもなかなか儲からないために農家を志す人が年々減少しているとされるが、アイガモロボットの利用は有機栽培を可能にするばかりか、儲かる農業につながる可能性も秘めている。ここにアイガモロボットの開発にチャレンジする重要な意味があるように感じられた。


掲載日:2009年2月26日

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