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ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
「みんなでコンセプトを創出する"ロボット・イマジニア"を普及させたい」〜造形師の目線からロボット開発のあるべき姿を模索〜【造形工房ヒムカ】

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造形工房ヒムカ 上野 信幸さん

造形工房ヒムカ
代表 上野信幸

〒530-0015
大阪市北区中津5-4-24

造形工房ヒムカの代表の上野信幸さんは、キャラクター人形やフィギュアの試作の原型を製作する造形師である。原型師としてフリーで活躍しているのは日本でも数少ない。そんな上野さんが、2月10日に紹介したブリューナクに出会い、代表の波多野裕典氏が描いたデザインをもとにコミュニケーションロボット「pul(プル)」の外装を製作した。

「ものすごいタイトなスケジュールで依頼されたため徹夜の連続でした。正味4日間で仕上げたんじゃないかと思います・・・。
 最も難しかったのは、波多野氏のこだわりをどのように形に落とし込むかでした。pulのコンセプトである"ニュートラル"を表現するアールなどを、美しく表出するのには本当に苦労しました」
 上野さんは、そんな苦労話を穏やかな口調で振り返る。

上野さんが多く手がけるキャラクターの造形では、版権元の担当者との簡易的なやり取りはあるものの、綿密な打ち合わせをしながらつくり上げるわけではない。そのためか、タイトなスケジュールを強いられたにもかかわらず、波多野氏と互いのこだわりをぶつけ合った創作作業は「すごく楽しかった!」と話す。そして、「pulの製作では、デザイナーなどとのコラボレーションを通じて、モノづくりの楽しさを改めて実感することができた」と強調する。

波多野氏が描いたイージーオーダーロボット「pul」のデザイン画。このデザイン画をもとに、上野さんが外装を製作した。「ニュートラル」というコンセプトを表現する、滑らかな曲線やアールの表出に苦労させられた反面、上野さんの腕の見せどころでもあった(図提供:ブリューナク 波多野裕典氏) 上野さんが外装製作を担当したイージーオーダーロボット「pul」。ロボットの主要機能をモジュール化しており、顧客の注文に応じて組み合わせて開発し、販売する。

(左)波多野氏が描いたイージーオーダーロボット「pul」のデザイン画。このデザイン画をもとに、上野さんが外装を製作した。「ニュートラル」というコンセプトを表現する、滑らかな曲線やアールの表出に苦労させられた反面、上野さんの腕の見せどころでもあった(図提供:ブリューナク 波多野裕典氏)(右)上野さんが外装製作を担当したイージーオーダーロボット「pul」。ロボットの主要機能をモジュール化しており、顧客の注文に応じて組み合わせて開発し、販売する。

ロボットに関わる人たちすべては「ロボット・イマジニア」

pulの外装製作などを機に、ロボットビジネスにも踏み込んだ上野さんは、自身のことを「ロボット・イマジニア」という聞き慣れない肩書きで表現する。
 イマジニアとは「Imagination(創造力)」と「Engineer(技術者)」を組み合わせた造語で、「創造を形に変える者」を意味する。テーマパークなどで活躍する造形師やCGデザイナーなどがその代表で、米国ではエンターテイメントに関わる人たちを、そう総称しているという。

上野さんが同社を立ち上げる以前、特撮映像作品や関東・関西のテーマパークなどで活動していた。キャラクターをはじめ、撮影用の小道具や建物(=「プロップス」)の造形・補修・保全といったメンテナンスなどを、装飾担当の1人担当者として行った。テーマパークの世界観の構築やエンターテイメント性の創出を下支えした。
 このようなテーマパークの仕事やキャラクターものの仕事は通常、クリエイターは別として、著作権の絡みや守秘義務などから各担当者の仕事が表に出ることはない。それでも、それに関わる人たちは「イマジニア」と称し、誇りを持って仕事に臨んでいる。

「ロボット開発では、デザインや設計、製造など業務が細分化されており、それぞれがロボット開発にどのように関わっているのかを主張しづらいです。それならば、この世界と同様、ロボット開発に関わる人たちを「ロボット・イマジニア」と総称するのがよいのではと考え、この肩書きを好んで使っているんです」
 また、「ロボット・イマジニアと名乗ることで、次に、具体的に何を担当しているのかという説明もしやすいと思うんです。『デザインを担当しました!』『機構設計を担当しました!』という具合に。もちろん、守秘義務などに関わらない範囲での説明が求められますが、このような抽象的な表現を用いることで、具体的な説明がしやすいという利点があるとも考えているんです」。
 加えて、「ロボットという世界観をみんなで創造し、それに向かっているという意識を共有したい」という思いも、この言葉には込められているという。

だから、「僕だけの肩書きではなく、ロボット産業に関わる人たちすべてが使ってほしいです。そして、技術ばかりではなく、もっとコンセプチュアルなところで議論をし、みんなで形にしていく活動を展開したい」と、自身の姿勢を話す。
 このような議論は、現在のロボット開発ではなされているとは言い難く、造形師である上野さんらしい視点と言えるかもしれない。

上野さんの仕事場の風景。現在、製作を手がけている、新たな外装の型が所狭しと並んでいる。守秘義務の関係上、製作している作品名は

上野さんの仕事場の風景。現在、製作を手がけている、新たな外装の型が所狭しと並んでいる。守秘義務の関係上、製作している作品名は"秘密"である。

人とモノとの関係性を担うプロダクトデザイン

これまで上野さんは、キャラクターものの造形に関わっていたことから、キャラクター性を前面に出したロボットの製作は楽しいという。その一方で、「ヒューマノイドは必ずしも必要ではない」。「人とロボットの関係性をもっと丁寧に見るべきでは」と、強く言う。

「わが国では、特にキャラクター性を備えるロボットは、いわば"お友だち"のような感覚でつくられています。海外のロボットにも人とのコミュニケーションを想定したロボットが見られますが、彼らはあくまで"機械"と見なしています。日本のアニメに登場するロボットには、故障すると包帯が巻かれているものが見られますが、これに象徴されるように、擬人化したがるのがわが国の特徴であり、ヒューマノイドに如実に表れていると思います。
 私の場合、機械として見るスタンスを取っていますが、この方が人とロボットとの適切な関係性を考えられるのではないかと思うんです」

それに関連して、上野さんは最良のロボットシステムはヒューマノイドではなく、映画「2001年宇宙の旅」に登場する、宇宙船や乗組員などを管理するコンピュータ「HAL9000」という。
 この機能を現代社会に当てはめると、人が家の中にいるときは、空間ロボット化した家によって守られ、外出するときはロボット化した車同士で、または社会全体を管理するコンピュータと通信し、追突しないように車間距離を維持したり、目的地までにかかる時間を算出したりするといった感じである。街全体、社会全体がロボット化したようなイメージだ。

上野さんは、説明を続ける。
 「例えば街全体がロボット化し、その一部として視覚センサが機能している場合、人を撮影していること、見ていることがわかる形であるべきです。逆に、家全体がロボット化しているのであれば、くつろげるような形、デザインであるべきです。人とロボットとの関係性から適切な形を備えるべきです。
 必ずしも、ヒューマノイドであったり擬人化したりする必要はなくて、むしろ、そのような捉え方をしない方が適切な関係性を、形として表現できると思うんです」。
 そして、「僕らが取り組む造形のようなコンセプチュアルな取り組みが重要になるのではないでしょう」とも話す。

明瞭なコンセプトを示すべきだし、コラボしてつくり上げたい

また、上野さんは現在のロボット開発のあり方に対し、別の視点から問題を指摘する。誤解を恐れずに言うと、「ロボットをつくっている人たちは"貧乏性"になっていないか・・・」と。

ここで言う貧乏性とは、使いもしないような機能をてんこ盛りに実装してしまう、欲張りな開発を意味している。通話機能に加え、メールやインターネット、ワンセグ、オサイフ機能などなど、使いこなすのが困難なほどの機能が実装されている携帯電話をイメージするとわかりやすい。
 「同様にロボットの開発でも、音声認識や音声合成、画像認識・・・など、いったい何をウリにしたいのか、何を狙って開発したのかがわからないようなものを開発されることがあます。例えば、自社で開発している人感センサを見せたいのであれば、水飲み鳥に実装し、手をさしのべると動きを止めるという表現でよいはずです。
 端的に説明ができて、かつビジュアル的に効果があるような見せ方を心がけるべきであり、そのためには、コンセプトを明瞭にしておくことが大切になるはずです。そうした意識が希薄な結果、"貧乏性"になっているように感じられてしまうんです」
 そうした意味では、アニメで描かれているロボットなどは世界観がきちんと描かれており、コンセプトが明確と言えるかもしれない。

「僕らのような造形師は、コンセプトを形へと変えていくような作業は得意としているので、エンジニアの方たちとぜひコラボレートしたい」と話す上野さん。このようなImaginationとEngineerの融合が今後、ロボット開発、ロボットビジネスの展開において重要性を増すかもしれない。

「僕らのような造形師は、コンセプトを形へと変えていくような作業は得意としているので、エンジニアの方たちとぜひコラボレートしたい」と話す上野さん。このようなImaginationとEngineerの融合が今後、ロボット開発、ロボットビジネスの展開において重要性を増すかもしれない。


ただ、エンジニアは定量的な捉え方は得意とする反面、コンセプトを描くのは得意であるとは言い難い。特にロボットのように要素技術の集合体では、なおさら難しくさせる。
 上野さんは言う。
 「そう強いことを言っていますけど、私は造形師ですから、エンジニアの方のように技術に明るいわけではありません。でも、コンセプトを形へと変えていくような創造的な作業は得意なわけで、そんなときにコラボレーションができればといいと思うんです。
 先に述べました、ImaginationとEngineerを融合したロボット・イマジニアという言葉の重要性が増すのではないでしょうか」。そして、「コラボレーションを前提としたロボットビジネスを展開することができれば」と、今後の展開に言及してくれた。

このようなコンセプトの話題に関して、上野さんは最後に、地元・大阪のロボット産業への取り組みについても語ってくれた。コンセプチュアルな領域での議論を大切にする、上野さんらしいコメントと言える。
 「2005年のロボカップ世界大会の開催を機に、大阪ではロボット開発に対するさまざまな助成がなされています。ユニークかつ興味深い取り組みがなされている反面、どこに向かっているのかがイマイチわかりづらいです。きっとコンセプトが不明瞭だからだと思います。
 例えば、『食いだおれ太郎」をロボット化するのでもよいですし、一見ロボットには見えないような実用的なものを開発するのでも構いません。『大阪のロボット』を表すコンセプトを早々に示すべきですし、不況の今だからこそ、その重要性が増していると言えるのではないでしょうか」


掲載日:2009年2月24日

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