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ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
「ロボットを大阪発祥のキラーコンテンツに、そして地域の活性化につなげたい」〜ロボット×異業種を合い言葉に、ユーザー目線でロボットを提案〜【イーガー】

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黒木一成 取締役会長 兼 新規事業開発部 部長 山下 剛 新規事業開発部 企画課 リーダー
黒木一成 取締役会長 兼 新規事業開発部 部長 山下 剛 新規事業開発部 企画課 リーダー

株式会社イーガー

代表取締役社長 穴釜 敬志

〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4-14-3
http://www.eager.co.jp/index.html

「一般の方、特にロボットと馴染みの薄い女性の方にロボットを受け入れてもらうためには、身近でロボットが見られる機会をつくり、かつ感動を与えることが大切です。同時に、僕ら開発側だけではなく、いろんな業種の方たちと関わっていくことも必要だと考えているんです」
 「ロボット演劇」や「バーテンダーロボット」など、ロボットとは縁遠い分野とのコラボレーションと提案で注目を集めるイーガーの黒木一成取締役会長は、こう切り出す。また、このひと言に同社のロボット開発のこだわりが込められていることを伺わせる。

同社は、大手家電メーカー向け中心に、各種組込みシステムの開発を手がける企業である。中でも、各種センサをはじめとするハードウエアの特性を理解した実装や、ローエンドなマイコンでありながら、アセンブラにより実装するソフトウエアを極限まで切り詰めて性能を引き出す、“匠の技”と言うべき領域での開発に強みを持つ。また国内では少ない、「CMMI(Capability Maturity Models Integration)」の「レベル2(*1)」を取得していることでも知られている。

長く組込みシステム開発に携わってきた黒木さんにとって、ロボット開発は家電製品の延長線にある感覚という。そのためか、「ロボットは、TVや電子レンジなどに駆動系やセンサ類を搭載した、人に対して動的に働きかけるもの」と説明する。同社にとってロボットは特別なものではなく、冒頭の言葉のように、提案できる内容に相当なこだわりを持っているようだ。

*1:ソフトウエアを開発する組織能力を定量的に示す指標。米カーネギーメロン大学ソフトウエア工学研究所(SEI)が公表した、ソフトウエア開発プロセスの改善モデルおよびアセスメント手法である「CMM(Capability Maturity Model)」をベースに、有識者の意見やプロセス事例を反映させて拡張された。わが国では、一般に「能力成熟度モデル統合」と訳されている。
 CMMでは、組織の能力を5段階で評価している。「レベル1」は、ソフト開発のプロセスが組織として管理していない状態。「レベル2」は、基本的なプロジェクト管理を実施している反復可能な状態。「レベル3」は、開発プロセスが組織内で標準化され、安定的に一定水準の品質のソフトウエアが開発できる状態。レベル3を定量かして計測・評価が行える状態が「レベル4」。組織が自発的に開発行為などの改善を行える段階が「レベル5」となる。

ロボットとは馴染みの薄い女性を意識した提案

昨年、イーガーが発表したのは国際次世代ロボットフェア(ICRT2008)で出展した、世界一弱いロボット「紙マネキンロボット」とバーテンダーロボット「ARC(Agent Robot Counter、アーク)」、大阪大学で公演した「ロボット演劇」である。ARKは、2008年12月の「ネットワークロボット(*2)」の実証実験でも披露し、各マスメディアで取り上げられている。

*2:複数のロボットを協調・連携することにより複合的なサービスを提供する技術。「ビジブル型」「アンコンシャス型」「バーチャル型」の3タイプのロボットを、ネットワークを介して協調・連携することにより、ロボット単体ではできない機能の実現を目指している。ビジブル型とは目や腕、首などを持つヒューマノイドロボット、犬やアザラシなどのペット型ロボットのこと。アンコンシャス型は壁や天井に設置された据置き型カメラやセンサ、またはウェアラブルコンピュータを、バーチャル型はパソコンや携帯電話の中のキャラクターエージェントをそれぞれ指す。「ネットワークヒューマンインターフェースに関する総合的な研究開発(ネットワークロボット技術)」として進められている。

冒頭で紹介したように、黒木さんは女性にも受け入れられるロボット開発を目指している。その切り口の1つが、「既存のロボットが持つ『硬い』『怖い』『強い』というイメージの払拭」であり、結果、紙製ボディをまとった「紙マネキンロボット」の提案につながっている。
 確かに、紙マネキンロボットが動作するところを見ると、華奢に見えるものの、ロボットには見られないしなやかな振る舞いが表現される。「素材が段ボールなので、ロボットには思われない雰囲気が出ているでしょう」と、黒木さんは説明する。

国際次世代ロボットフェアに出品した「世界一弱いロボット」の紙マネキンロボット。異業種である城東紙器およびアキ工作社とのコラボレーションにより実現した。段ボール利用した外装の自由さとロボットならではのモーションにより新たな可能性を模索している。

国際次世代ロボットフェアに出品した「世界一弱いロボット」の紙マネキンロボット。異業種である城東紙器およびアキ工作社とのコラボレーションにより実現した。段ボール利用した外装の自由さとロボットならではのモーションにより新たな可能性を模索している。


また、“マネキン”という切り口も、ファッションに敏感な女性には馴染みやすい。しかも、3〜4カ月という短いスパンで変遷するこの業界において、低価格の紙マネキンロボットであれば、流行に合わせて仕様を変えて対応することができ、モノグラムを印刷して世界に一体だけのマネキンを製作することもできる。実用性が高い。加えて、リサイクル可能という点は環境への配慮をアピールでき、時流に合致している。

もう1つの提案であるロボット演劇は、紙マネキンロボットと同様、女性へのアピールを意識したものである。芝居やミュージカルなどの観客は圧倒的に女性が多く、親近感を抱きやすい切り口と言える。また、「擬似生活空間の中で現実のロボットを見せることにより、従来のロボットのイメージを変えられる」という黒木さんの強い思いも、取り組みの背景にある。
 このアイデアは、黒木さんの中で3年近く暖めていたもので、2006年に劇作家・演出家である平田オリザ氏の大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授の就任を機にスタート。同氏と石黒浩教授(大阪大学大学院工学研究知能・機能創成工学専攻)の協力を得て、昨年11月に、約20分の小作品として上演に至った。

ロボットと演劇とのコラボレーションとして取り組んだ「ロボット演劇」。“役者”には三菱重工業の「wakamaru」を起用した。2008年11月25日に「働く私」という演目で上演。将来的な人とロボットとの共生を見据えた、人とロボットとの関係性を考える機会を与えた。黒木さんはプロデューサーとして参加した。

ロボットと演劇とのコラボレーションとして取り組んだ「ロボット演劇」。“役者”には三菱重工業の「wakamaru」を起用した。2008年11月25日に「働く私」という演目で上演。将来的な人とロボットとの共生を見据えた、人とロボットとの関係性を考える機会を与えた。黒木さんはプロデューサーとして参加した。


演劇では、人とロボットのコミュニケーションという困難なテーマを扱い、会話の間合い言葉の抑揚といった微妙なニュアンスの表現にチャレンジした。これに関しては、平田オリザ氏が、多くの研究者らが取り組む認知コミュニケーション研究とは異なるアプローチで、また、芸術家特有のセンスにより違和感のない会話を示した。
 この取り組みに対し、「実証実験の場として有為」といった声があがったと同時に、演劇を通じて最先端の現実のロボットを見ることで、人とロボットの関係性を考察する良い機会となったとも評価された。

ロボットを介して人のコミュニケーションを

3つ目の提案であるバーテンダーロボット「ARC」は、小型多関節ロボットなどを用いて開発したものである。画面上のアバターのガイドに従ってタッチパネルを操作すると、多関節ロボットがカウンター越しに、注文したドリンクをゆっくり、かつ丁寧に運んでくれる。バーの一角にロボットを設置し、アミューズメント的な要素を加味した、いわば近未来的な飲食業を意図して提案した。
 「もともと回転寿司も、当初は機械の導入に反発があったでしょうから・・・」と、黒木さんは勢いを強調するが、技術的に見れば、バーチャルロボットと言えるアバターと実物のロボット(ビジブル型)との連携を意図した、有意な取り組みである。

それを発展させたのが、昨年末に参加したネットワークロボットの実証実験である。参加企業4社7体のロボットがネットワークサーバーで情報を共有し、連携を図りながらサービス提供を行った。「wakamaru」(三菱重工)と「ApriPoco」(東芝)を連携し、これらが紹介した店舗のクーポンをタッチパネルに表示し、ユーザーが選んだ方のクーポン券を差し出すというサービスを行った。

2008年12月に参加したネットワークロボットの実証実験での様子。「wakamaru」(三菱重工業)と「ApriPoco」(東芝)を連携し、これらが紹介した店舗のクーポンをタッチパネルに表示し、ユーザーが選んだ方のクーポン券を差し出すというサービスを行った。 国際次世代ロボットフェアに出展したときは、女性タイプのアバター(バーチャルロボット)が説明をしてくれた。アバターのガイドに従ってタッチパネルを操作すると、多関節ロボットがカウンター越しに注文したドリンクを運んだ。ロボットが給仕をしてくれたり話し相手になってくれたりするなどアミューズメントも加味した、近未来の新たな飲食店のかたちとして提案した。

(左)2008年12月に参加したネットワークロボットの実証実験での様子。「wakamaru」(三菱重工業)と「ApriPoco」(東芝)を連携し、これらが紹介した店舗のクーポンをタッチパネルに表示し、ユーザーが選んだ方のクーポン券を差し出すというサービスを行った。 (右)国際次世代ロボットフェアに出展したときは、女性タイプのアバター(バーチャルロボット)が説明をしてくれた。アバターのガイドに従ってタッチパネルを操作すると、多関節ロボットがカウンター越しに注文したドリンクを運んだ。ロボットが給仕をしてくれたり話し相手になってくれたりするなどアミューズメントも加味した、近未来の新たな飲食店のかたちとして提案した。

このネットワークロボットのプラットフォームを利用することにより、例えば、顧客の来店情報を蓄積し、これをもとに理解を深めることで顧客とバーチャルロボットと親しくなるという、人とロボットとの関係性の構築に役立つのではという。
 中でも、黒木さんがARKのターゲットとして着目しているのは若い世代だという。最近の一部の若者は、お酒を飲み交わして親交を深めていく“飲ミニュケーション”を嫌い、自室でバーチャルな世界に閉じこもりがちだという。あるテレビ番組で、このような実態を知ったことを機に、「バーチャルロボットとの対話を通じて、やがては外に出るようになれば・・・」と考えているという。
 もちろん、人同士のコミュニケーションを通じて現実社会へと出て行くのがベストだが、「コミュニケーションが苦手な人が慣れるためのツールとして利用してくれれば、そして、人とのつながりに興味を抱いてくれればよいのでは」と続ける。

「ロボット×異業種」を合い言葉に

このような同社の提案は奇抜さばかり注目されがちだが、冒頭で述べた通り、異業種との連携にポイントがある。すなわち、「ロボットと紙」、「ロボットと演劇」、「ロボットと飲食」である。
 ロボット開発は技術提案になりがちで、高度な技術が強調されるあまり、それとの関係性を見出しにくい。ユーザーは受け入れることができず、結果、ビジネスとして何も起きてこなかった。これらと一線を画すためには、ロボットとは馴染みがないような女性を納得させたり、イメージを喚起させたりする取り組みが求められる。ゆえに、異業種との連携というアプローチをとっていることが伺える。

まだ緒に付いたばかりの取り組みであり、時間を要するが、「やがては、全国各地から大阪へ遊びにきた人達が、ロボット演劇を楽しみ、夜はロボットのいるカウンターバーでくつろいでもらえれば・・・。そして、ロボットを大阪の文化として、大阪発祥のキラーコンテンツとして発信できればいいですね」と、黒木さんは夢を語る。

これらの発表後の反応を聞くと、すでに複数の問い合わせが同社に来ているという。例えば、紙マネキンロボットについては、美術館がデザイナーとコラボレーションして案内ロボットをつくりたいという案もある。他にも、黒木さんが想定していなかったようなアイデアもあるそうで、「発表したらきっと驚きますよ!」と、興味を抱かずにはいられないコメントで話しを締めくくってくれた。


掲載日:2009年2月17日

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