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ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
「プロダクトデザイナーが、ユーザーとつくり手をつなげる役目を担うと思うんです」〜デザインで人とロボットとの関係性、物語を表現〜【ブリューナク】

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ブリューナク 波多野 裕典さん

ブリューナク
代表取締役 波多野 裕典

〒530-0015
大阪市北区中崎西3-2-17
http://brionac.jp/

「イージーオーダーロボット『pul(プル)』のデザインは、僕の方から売り込んで担当させてもらったんです。ロボットラボラトリー(ロボラボ)からRooBOカスタマイズチームを紹介してもらって引き受けることになったのですが、はじめはロボラボもカスタマイズチームも僕の力量に半信半疑だったように思います。ロボット分野でのデザイン経験がまだなかったので・・・。ですので、短期間で、プロトタイプを見せたときには非常に驚かれていましたし、『どうだっ!』と心の中で叫んだのは、いまでもよく憶えています」

そう威勢良く切り出すのは、ブリューナクの波多野裕典さんである。
 同社はデザインのほか、ライティングやパブリシティの3部門から構成され、波多野さんはデザイン部門の代表を務める。本連載「第11回」でも紹介したイージーオーダーロボット「pul」のデザインを担当したほか、昨年11月末開催の「国際次世代ロボットフェア ICRT2008」では、食住遊をテーマに近未来の生活空間をプロデュースした。いまでは関西で活躍する、有力なロボット分野のデザイナーの1人に数えられるようになっている。
 加えて、昨年12月末に発売され、話題になった「大阪版モノポリー」のデザインを手がけたことでも知られている。

波多野さんがデザインを担当したイージーオーダーロボット「pul」。ロボットの主要機能をモジュール(複合部品)化しており、半完成品状態にしたものを顧客の注文に応じて組み合わせて販売する。展示場の受付け案内や、医療・福祉分野などでの用途を見込んで発売した。

波多野さんがデザインを担当したイージーオーダーロボット「pul」。ロボットの主要機能をモジュール(複合部品)化しており、半完成品状態にしたものを顧客の注文に応じて組み合わせて販売する。展示場の受付け案内や、医療・福祉分野などでの用途を見込んで発売した。


異業種が集結することで、お互いに高め合う関係性を構築

波多野さんは同社を立ち上げる以前、ダイハツ工業のデザイン部門に在籍し、複数の車種の外装デザインに携わった。ここで「基本的なデザインの作法を習得することができたはず」と振り返る。その後、独立を果たし、2005年に同社を立ち上げる。
 「24歳でダイハツに入ったのですが、30歳になるまでにどのように振る舞うのかを考えようと思っていたんです。ダイハツに居続けることにメリットがあることかどうかと・・・。
 僕が所属していたデザイン部は仕事量が多く、ものすごくハードでした。考えている余裕がなかったのですが、ある日突然、開発の大きな谷がやってきたんです。これまでには考えられないような状況だったので、これは『辞めるときが来た!』と思い、独立を決意したんです」
 波多野さんは若くして独立した経緯を、そう話す。

冒頭で紹介したように、設立した同社はデザイン部門に加え、ライティングおよびパブリシティ部門も備える、独特な事業体となっている。ダイハツを辞してから、それぞれの専門家と知り合い、共同で設立したからであるが、「独立後の経験から、このような事業体が適切と考えたからでもある」と、波多野さんは説明する。

「退社した頃は仕事がなく、自分から精力的に活動して仕事を受託しました。携帯電話用の壁紙や、パンフレットやポスターなどのデザインも手がけました。自分でも思い出せないぐらいの仕事量をこなしました。
 いろんなデザインの仕事を経験しているうちに、製品を公知するためには、プロダクトデザインだけでは不足しているように思われたのです。ポスターやパンフレット、それに付けるキャッチコピーが必要ですし、リリースの発行など広報的な活動も求められます。これらをトータルで行う方が効果的なプロモーションになり得ますし、トータルで任せてもらえれば、責任とやりがいを持って取り組めるはずです。これを具体化したのが現在の業態なのです」

さらに、このような業態であれば異なる業種の人と一緒に仕事に取り組むことができ、「お互いに刺激し合ったり、視野が広がって能力を高めたりすることができるから」という理由もあるという。お互いの業務を知っているようで知らないところがあるがゆえ、客観的な立場で意見を出し合えるという絶妙な関係が構築できるようで、「うまい具合に切磋琢磨できていますよ」と、波多野さんは説明を続ける。

ターゲットがないことを、そのままコンセプトに

冒頭の波多野さんの言葉の通り、pulのデザインはかなりタイトなスケジュールの中で取り組んだ。デザインを引き受けて1カ月足らずの2007年10月末に大阪市の「この街のクリエイター博覧会2007」に出展。その後、何段階かのブラッシュアップを経て翌年2月に、カスタマイズチームより正式にリリース発表がなされた。

pulのデザインコンセプトには「ニュートラル」を掲げている。デザインを引き受けた当初、"展示会で利用できるコミュニケーションロボ"というアイデアが示されていたが、それ以外にコンセプトに成り得る考えが提示されなかった。それを逆手にとって打ち出したが、ニュートラルだという。
 「最初、『具体的なアイデアが特にない』と聞かされたときは少々悩みました・・・。すなわちターゲットもニーズも不明であり、市場が見えてないことを示しているからです。
 でも、ここで見方を変えてみたんです。ターゲットがないということは、男性女性にかかわらず誰にでも見てもらえる、コミュニケーションをとってもらえる可能性があるのでは? また、インタラクションをしてもらうことで、結果、具体的なニーズや市場が見えてくるのでは? と。そう考えたときにニュートラルという言葉が浮かび、コンセプトになるのではと思ったのです」

また、「現在のロボット市場を見渡すと、人間もしくは動物を擬態化したものが目立ちます。その中で新しさを打ち出すためには、人間にも動物にも、また、一見するとロボットにも見えないような、微妙な立ち位置の存在がよいと判断されました。だから、ニュートラルをそのままコンセプトにしたんです」と、説明を付け加える。

イージーオーダーロボット「pul」のデザイン画。「ニュートラル」というコンセプトを表現できるよう、試行錯誤を経て現在のデザインになったことがわかる。

イージーオーダーロボット「pul」のデザイン画。「ニュートラル」というコンセプトを表現できるよう、試行錯誤を経て現在のデザインになったことがわかる。


 pulのデザインでは、それを表現するテクニックが随所に盛り込まれている。わかりやすい例を挙げると、胴体部は中性的な印象を与える回転体で構成し、さらに、女性的な柔和さを表現するブルーの曲線部に、鋭いエッジを立てて男性的な強さを加えることで、その印象を強くしている。また、目は1つ目に横方向のラインを加えた異質なカタチにすることで、人にも動物にも見えない不思議な存在感を醸し出している。結果、中性的なイメージを与えている。とても、2週間程度で取り組んだとは思われないような、巧みなつくり込みがなされている。
 なお、pulはイージーオーダーロボットのベースデザインとして製作されており、汎用性を持たせるうえで、このようなデザインがなされたことを付け加えておく。

ユーザーとつくり手とをつなげる存在でいられるはず

現在pulについては、カスタマイズチームとともに量産化に向けた検討を始めているという。ベースデザインとして製作したものの、波多野さん自身としては「さらにベースとなる、いわば『タイプゼロ』的なものをつくりたい!」と意気込む。
 上述のように、デザインとしてはかなりつくり込まれている。ところが、そのためにカスタマイズが容易とは言い難く、また、ユーザーが具体的な用途を考える際に制約を与えてしまう可能性もある。ゆえに、「みんながもっと想像力が膨らむような『タイプゼロ』を製作し、その『1つの用途としてpulがある』ことを示せれば」と話す。

今後のロボット分野での活動については、「人とロボットとの関係性や物語を示せるところに取り組んでみたい」との意向を示す。
 波多野さんは言う。
 「現在、ロボット業界ではおもにモノづくり系の企業が活動しています。ところが、技術力があるために、つくり手側のマインドが強すぎて、ロボットとユーザーとの関係性をうまく表現できていないように感じます。結果、ユーザーが自分の生活にロボットを引き寄せてくれていません。
 でも、ユーザーとつくり手の両方の視点をもって適切に臨めば、人とロボットとをつなげることができると考えているんです」

波多野さんがプロデュースした「国際次世代ロボットフェア ICRT2008」での近未来の生活空間。入口では、波多野さんがデザインをしたpulが出迎えてくれる。 日常的な生活空間にテムザックの「ROBORIOR」を配置している。

(左)波多野さんがプロデュースした「国際次世代ロボットフェア ICRT2008」での近未来の生活空間。入口では、波多野さんがデザインをしたpulが出迎えてくれる。(右)日常的な生活空間にテムザックの「ROBORIOR」を配置している。日常的に目にする家電製品、例えばデジタルテレビを購入する際、「この黒を基調としたデザインはワシの書斎にぴったりや!」「この薄型デザインはリビングに置けるわ!」・・・といった具合に、日常生活と関連づけながらイメージを膨らませることができる。これに対しロボットの場合は、人とロボットとの関係性が不明なため、こうした会話がなされない。来場者が日常生活と関連づけられるよう、イメージを膨らませられる空間をつくり上げた。

また、「このような役割はプロダクトデザイナーが担っていると考えているから」と、続ける。
 一般にデザイナーは、製品が備える機能だけでなく、ユーザーが製品を使っているときの楽しさや快適さ、使い終わったあとの余韻などを、使用している空間を加味しつつ表現することが求められる。つまり、モノづくりに加え、ユーザーをきちんと理解することも要求される。ゆえに「僕らは中間的な立ち位置にあると言え、その時々に応じてモノづくり側にブレたりユーザー側にブレたりすることができます。両者の間にうまく立つことができるはずなのです」。
 特に、「僕が経験したクルマのデザインでは、ユーザーとクルマとの関係性および、その背景からコンセプトを見出し、それを造形に埋め込んでテーマを提示するという独特の世界でした。こうした行為を経験しているからこそ、人とロボットとをつなげることができるじゃないかと、考えているんです」
 波多野さんは、そのような熱心な語り口で話を締めくくってくれた。

近年、ロボット技術(RTまたはロボテク)が格段に進化し、高機能なロボットが相次いで発表されている。ところが、「このロボットって生活でどう役立つの?」と、悩まされてしまうものが多い。その最大の原因は、人とロボットとの「関係性」、生活者との「関係性」が議論されていないことにあると指摘される。それを表現する有効なツールとなるのがデザインであるが、人とロボットとの関係性という深遠なテーマに前向きな波多野さんが、自身の技量をもってどのように表現してくるのだろうか――。そんな期待を抱かずにはいられない彼の話しぶりが印象的だった。


掲載日:2009年2月10日

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