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ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
「僕らが開発した直感的な操作系をさまざまな分野に提案したいですね」〜FST(フレキシブル・センサ・チューブ)で広がるセンサ活用の可能性〜【旭光電機】

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旭光電機 畠田 忠彦さん

旭光電機
取締役技術部長 和田 貴志

〒650-0022
神戸市中央区元町通5-7-20
http://www.kyokko.co.jp/

旭光電機は、わが国で初めて自動ドア用コントローラを開発した企業である。センサ・コントローラ分野では、国内トップクラスの技術力を誇る。安全が保証されなければならない新幹線やリニアモーターカの自動ドアなどに同社の技術が活用されている。また最近は、義足にセンサを組み込んだ「インテリジェント義足」など、福祉分野にも技術応用を進めている。

そんな同社が、4年ほど前からロボット関連に向けた技術開発を始めた。「これまでに培ってきたノウハウを生かして、新たな分野に取り組んでいきたい!という思いがあったんです」。取締役技術部長の和田貴志さんは言う。パートナー企業や大学研究室と研究開発をしているのが、次世代センサの1つとして注目を集めている「FST(フレキシブル・センサ・チューブ)である。

10月開催の「ROBO_JAPAN2008」で公開した、人体の動きを遠隔操作で伝えるマスタ・スレーブ・ウェアラブルコントローラースーツ「FST(Flexible Sensor Tube)」。 10月開催の「ROBO_JAPAN2008」で公開した、人体の動きを遠隔操作で伝えるマスタ・スレーブ・ウェアラブルコントローラースーツ「FST(Flexible Sensor Tube)」。

10月開催の「ROBO_JAPAN2008」で公開した、人体の動きを遠隔操作で伝えるマスタ・スレーブ・ウェアラブルコントローラースーツ「FST(Flexible Sensor Tube)」。

FSTの研究は、「大都市大震災軽減化特別プロジェクト(通称「大大特」)(*)」にて、神戸大学工学部大須賀教授と瓦礫内で要救助者を探索するロボット開発がきっかけになっている。大須賀教授は、上下同じ方向に動くクローラで周囲の瓦礫をかき分けて走行し、熱線センサなどで要救助者を発見するヘビ型ロボット「MOIRA」を開発した。
 ところが、瓦礫の下に潜ったMOIRAの位置を外部から同定できないという問題に直面した。それを解決するために生まれたのがFSTなのである。

*:文部科学省が2002年から5カ年計画で開始した研究開発委託事業の1つ。大震災時に人命救助等の緊急災害対応のための人体検索、情報収集および配信などを支援することを目的とした。

小型・軽量でフレキシブルに使えるチューブ型センサ

FSTは、長さ5cmの関節を交互配置した、クネクネと曲がりやすいチューブ状をしている。1mの長さに19個所の自由関節があり、それぞれに回転角度を検出するポテンショメータを搭載している。MOIRAがFSTを引きずって移動すれば、FSTの関節角度を計算することにより、例えば『東北の方向へ5m、深さ4m地点でMOIRAが要救助者を発見した!』という具合に、特定することができる。
 このMOIRAとFSTは、2005年の「愛・地球博」で一般公開されたので、中には、憶えている人がいるのではないだろうか?

このような経緯で開発されたFSTに対し、和田さんは「先端位置がわかるのであれば、マスター・スレーブシステムとしても使えるのではないか? というアイデアを神戸大学大須賀教授と共同で育てたんです」と、当時を振り返る。
 その象徴的な例として、10月11日〜13日に開催された「ROBO_JAPAN2008」にて、FSTを使ってコミュニケーション・ロボット「wakamaru(ワカマル)」の操縦体験を実施した。
 オペレータの両手首に、先端にジョイスティックを取り付けた長さ1m程度のFSTを固定すると、ジョイスティックでwakamaruの移動系を制御し、前後移動や回転、斜めなど自在に動かすことができる。また、オペレータが腕を上げて大きく手を振ると、FSTによりwakamaruの腕がオペレータと同じように動作する、という体験ができた。

「ROBO_JAPAN2008」では三菱重工業のブースにて、FSTを装着して動作すると、その動きにwakamaruが連動する操作体験ができた。

「ROBO_JAPAN2008」では三菱重工業のブースにて、FSTを装着して動作すると、その動きにwakamaruが連動する操作体験ができた。

こうした経験を経て、和田さんは「FSTをマスター・スレーブシステムに応用して、改めてわかった利点がいくつもあります」と語る。
 従来のマスター・スレーブシステムは、オペレータがフルプロテクトのマスター側に入る方式のため、ユーザーの体型が限定されてしまう。大人サイズのマスターシステムは、子供には扱えず、体験することも叶わない。これに対し、FSTはフレキシブルな形状であるため、マスターシステムとして活用すれば、子供も大人も体型に関係なく同様に扱うことができる。

また、身長や腕の長さの違いは、簡単な操作で初期設定できるようにもしている。FSTを身に付けて、手をまっすぐ前に伸ばしてジョイスティックのボタンを押す。次に、気をつけの姿勢で両手を下げて再びボタンを押す。これだけのティーチング(教示)でユーザーの腕が稼働する範囲を設定することができ、体格に関係なく自由自在にスレーブの制御が行える。
 加えて、「wakamaruの体験操縦のように、精密な制御を必要としない場合は、ティーチングなしで動かすことができます」と、和田さんは説明する。
 このように、誰でも容易に扱うことができ、かつ小型・軽量という利点を生かした活用方法をパートナー企業や大学研究室と共同で研究開発を進めている。

FSTの活用で産業用ロボットの普及促進を促す

和田さんは、「FSTのおもな応用分野には3つほどあります」と話す。その1つが産業用ロボットのティーチングへの利用である。
 説明が後になったが、ティーチングとは、産業用ロボットなどに作業の手順や作業位置などを教え込むことで、プレイバックロボットや数値制御ロボットに対して行われる。
 生産工場で稼働している多関節ロボットは、複数の関節を同時に動かして目的の動作をする。こうした3次元の複雑な動きをプログラミングするのは非常に難しい。専門的なスキルを積んだ専門技術者が、ティーチング・ペンダントと呼ばれる操作盤を使って、実際にロボットを見ながら、それぞれの関節角度を設定するのが一般的である。

ただし業種によっては、このような専門家を常時抱えるのは難しい。自動車のように価格帯が高いものを生産しているのであれば、ティーチングの専門職を養成することが可能だが、化粧品や食品といった単価が低い製品の生産では、専門職の配置は厳しいという。しかも、日用品の生産現場では、同じラインを使って少量多品種で生産するため、煩雑なプログラム作成を頻繁に行わなければならない。そのような障壁があり、「産業ロボットの活用は限定的になっているのが実情」(和田さん)である。

しかし、FSTを利用すれば、自分の腕を動かすだけで容易にティーチングが行える。もちろん、人の動作では手ぶれをはじめ無駄な動作が生じるため、フィルタリングにより、それを除去するといった微調整が必要になるが、大幅な省力化が期待できる。
 FSTのマスターシステムへの応用は、コストや人員の問題で扱えなかった現場への産業ロボットの導入を促すことが期待される。 「これは大きな需要が見込める分野のはずです」。和田さんは、そう力強く語る。

FSTで操作者の動きをトレースすることにより、多関節ロボットの制御プログラムを容易に作成することができる。ティーチィングの専門職がいないような生産現場にも、多関節ロボットを導入できることが期待される。

FSTで操作者の動きをトレースすることにより、多関節ロボットの制御プログラムを容易に作成することができる。ティーチィングの専門職がいないような生産現場にも、多関節ロボットを導入できることが期待される。

より小型化することで、さらなる応用範囲の拡大が期待

2つ目の応用として、災害現場の救助だけでなく探索用途としての適用も神戸大学と共同で進めている。例えば、水道やガスなど地中にある管の内部を探索し、亀裂を発見して位置を同定するシステムである。
 そして、3つ目には、モーションセンサとしての活用を考えている。通常のモーションキャプチャーは、スペース確保などの費用も含めると数千万円も要するという。そのうえ使用する条件も限られている。FSTであれば場所を選ばずに、それこそ運動中でもリアルタイムにモーションキャプチャーが可能になる。

「FSTの特性を生かしたユニークなアイデアで現在、社会問題になっている高額医療費の軽減にも寄与しようとしているんですよ」と、和田さんは明かす。
 例えば、高齢者が外出時に転倒して大腿骨などを骨折したとする。その場合、長期入院となり、それが痴呆症のきっかけになることもある。結果、医療費がかさむことになる。
 その解決方法として、転倒時にエアバッグなどで衝撃を吸収してケガをしなければいいのでは? というアイデアがある。ユーザーの身体にFSTを取り付け、重心の傾きをリアルタイムで検知することで、転倒時に腰などに仕込んでおいたエアバッグを膨らませようというものである。この研究は、神戸大学の羅教授らが中心になって2007年度から開発を始めており、近い将来には実用へと踏み出す予定という。
 普段着として違和感なく身に付けるためにはFSTの直径を3〜5mm程度にまで小型化することが要求されるが、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)により、その実現が見えているという。

FSTを用いて重心の傾きをリアルタイムで検知することで、転倒時に腰などに仕込んでおいたエアバッグを膨らませようというアイデアもある(写真は、転倒の直前に身体が傾いているイメージ)。違和感なく身に付けられるようMEMSによる小型化を進めているという。

FSTを用いて重心の傾きをリアルタイムで検知することで、転倒時に腰などに仕込んでおいたエアバッグを膨らませようというアイデアもある(写真は、転倒の直前に身体が傾いているイメージ)。違和感なく身に付けられるようMEMSによる小型化を進めているという。

これに関連して、「FSTが細くなることで、応用範囲の可能性はもっと広くなります」と、和田さんは言う。例えば、航空機などの燃料パイプの検査に工業用内視鏡が用いられるが、亀裂などを発見しても、どの場所の同定が難しい。FSTであれば可能であり、そのような用途での利用が期待されている。
 このようにFSTの応用は、ビジネスとして期待できる分野がいくつもある。
 「でも、私は個人としては、もっと他のジャンルにFSTを使いたいんです」
 ちょっと秘密めいた表情で、和田さんは言う。

「もうちょっとしたら、お話できるんですが・・・」と前置きしつつ、和田さんは「大型ロボットのマスターとしてFSTを使いたいんです」漏らす。例えば、FSTを応用した次世代建機として、人が見たら、「こんなところに使うの?」と、驚くような画期的な用途をめざして開発しているそうだ。
 2009年度には、FSTを使ったアプリケーションがいくつかリリース発表されるという。次世代センサが、今後どのような可能性を示してくれるのか、大いに期待したい。


掲載日:2009年1月20日

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