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ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
「市場を育てるためには、まず業界を育てること!」〜産業ロボット業界で培ってきたノウハウで、水底清掃ロボットの市場創出を目指す〜【ビー・エル・オートテック】

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ビー・エル・オートテック 安田正信さん

ビー・エル・オートテック
代表取締役社長 安田正信

〒652-0883
神戸市兵庫区明和通3-3-17
https://www.bl-autotec.co.jp/

「ニッチな市場でシェアを高めていくためには、まずは業界を育てることが必要です。特にロボットの場合、自分たちで市場をつくり上げるという姿勢が大切になると思っています」
 そう切り出すのは、ビー・エル・オートテック代表取締役社長の安田正信さんである。同社では、ニッチな分野ではあるが、水道水の水質維持に欠かせない水底清掃ロボット「スーパーマルチ」の開発を進めている。

水道水は、水源地で取水された後、浄水場で凝集剤を使ってゴミを沈殿させ、ろ過を繰り返して消毒し、配水池に蓄えられる。配水池に貯める水は浄化されているが、長い間に水中の埃が底に沈殿する。こうした沈殿物を「浮泥(ふでい)」と言い、数年に1度、配水池の水底を掃除して取り除かなければならない。水槽内の水を濁さずに、その吸引清掃が行えるのがスーパーマルチであり、安田さんは"水底清掃ロボット市場"を創出することにより、その普及を目指している。

水底清掃ロボット「スーパーマルチ」。清掃能力は1時間に120平方メートルで、電源はAC100Vを使用する。耐水性は15メートルで、10〜12メートルの水深で使用することができる。 無線リモコンで、タンク内を監視しながら操縦する。

(左)水底清掃ロボット「スーパーマルチ」。清掃能力は1時間に120平方メートルで、電源はAC100Vを使用する。耐水性は15メートルで、10〜12メートルの水深で使用することができる。(右)無線リモコンで、タンク内を監視しながら操縦する。


水底清掃ロボット市場の創出を図る

誰もが日常的に利用する水道水は、「水道法」により水質基準が定められている。2003年に厚生労働省が水質基準に関する省令を大幅に改正しており、また、2004年4月からは新しい水質基準が施行され、飲料水の安全性がより一層強く求められるようになった。
 中でも、配水池における水質の維持管理は厳格さが要求されている。配水池内部の点検を兼ねて周期的に清掃を実施し、また配水池の管理状況を把握して、安全で良質な水の供給に務めることになっている。2005年1月に日本水道協会が発刊した「水道事業ガイドライン」では3〜5年に1度、配水池の清掃状況を実績開示することを求めている。

一般に配水池の清掃は、おもに2つの方法でなされる。1つは、配水池の水を抜いて清掃する方法。もう1つはダイバーが潜水して清掃する方式である。ただし、それぞれに問題がある。
 配水池の水を抜くときは、担当区域内への配水を停止しなければならない。また、入れ替えにかかる水がムダに流されてしまう。ダイバーが潜水して清掃すれば、これらはクリアされるが、水底の浮泥が舞い上がって水質を低下させるうえ、配水池内には各種機器類が設置されており、その作業には危険を伴い、また衛生的にもよくない。それゆえに、こうした課題を解決するツールとして、スーパーマルチの注目度が高まっているのである。

スーパーマルチは、クローラで水底を移動しながら清掃を行う。前方バンパー内側に搭載した吸引機構により、沈殿物を吸引・除去していく。クローラ形状に独自のノウハウがあり、水底に沈殿した浮泥を巻き上げることなく走行することができる。
 チルト機構付きの照明と、光学10倍/デジタル4倍のCCDカメラを搭載しており、オペレータは、ロボットが捉えた映像を見ながら水槽内を監視し、無線式リモコンにより操縦する。清掃能力は1時間当たり120平方メートル程度。耐水性は15メートルあり、10〜12メートルの水深で使用することができる。

スーパーマルチの使用例。水深15メートル、ケーブル・ホース長さ50メートルの範囲で清掃が行える。

スーパーマルチの使用例。水深15メートル、ケーブル・ホース長さ50メートルの範囲で清掃が行える。


しかしながら、「配水池の管理事務所へ水底清掃ロボットを持ち込んで、清掃効果をアピールしてもなかなか導入には至らないのですよ・・・」。安田さんはそう話す。配水池の掃除は隔年に1度実施すればよい作業であり、それだけのために高価なロボットを導入するとは考えにくいからである。
 そこで同社は、配水池の清掃作業を手がける事業者から組織される「日本上水道配水池ロボット清掃協会」と、密接にやり取りをしながら開発を進めている。

同協会は、水中ロボットによる清掃技術の研鑽、ロボット工法の広報活動などを目的に結成された組織である。2001年11月に設立され、2008年9月現在30社が加盟している。同協会の会員から作業上の問題点や清掃機能の要望をこまかくヒアリングし、ロボットの開発や改善に反映している。安心安全な水を供給することに対して高い意識を持つ事業者と交流し、水底清掃ロボットへの理解を深めてもらうことで、ニッチな市場を創出することにつながることが期待される。
 息の長い活動に思われるが、「こうした市場創出のノウハウは、当社の企業文化として根付いているんですよ」。安田さんは、そう何事もないかのように話す。

ニッチなジャンルで高いシェアを誇る

説明が後になったが、ビー・エル・オートテックは1987年に創業した産業用ロボット周辺機器メーカーである。産業用ロボットの手に当たるエンドエフェクタの技術開発に強みを持つ。ハンドやツールを自動交換する「クイックチェンジ(エンドエフェクタ自動交換装置)」は、その利用により1台のロボットで複数作業をこなすことができ、自動車の製造分野で約9割のシェアを獲得している。

ハンドやツールを自動交換する「クイックチェンジ」は、その利用により1台のロボットで複数作業をこなすことができる。自動車の製造分野で約9割のシェアを獲得している。

ハンドやツールを自動交換する「クイックチェンジ」は、その利用により1台のロボットで複数作業をこなすことができる。自動車の製造分野で約9割のシェアを獲得している。


これほどの支持を得ている理由として、安田さんは「ユーザーに継続して製品を使ってもらうこと!」と説明する。
 同社では、営業がユーザーのもとに出向き、現場で困っている内容をニーズとして真摯に汲み取ってきた。信号線に埃が溜まりやすいと言われれば、その解決法を考え、ニーズに応えるかたちで製品を供給してきた。「カスタマイズを行うことにより、また次も相談してもらえるし、購入につながる」(安田さん)とのことで、「このような活動を通じてユーザーの囲い込みを行い」(同)、圧倒的なシェアの獲得につなげている。このような企業文化が根付いており、上述のようにスーパーマルチの開発でも実践している。

同社が産業用ロボットの周辺機器に加え、ロボット開発を検討し始めたのは2003年頃である。同年4月7日は鉄腕アトムの誕生日であり、ロボットへの期待が高まっていたが、そうした社会情勢を捉えての判断である。
 当時、自社の保有技術を洗い出したところ、メカトロニクス全般で高い技術を有していたが、「制御については十分なノウハウを有していないように感じられた」(安田さん)という。そのため、またRT(Robot Technology)の要素技術を習得するという意図から、神戸近郊のロボット技術者たちと共同で2足歩行ロボットの研究をスタートさせる。同社が拠点を置く神戸市が「神戸RT構想」を立ち上げたタイミングと重なり、同市と共同で観光案内チラシ配布ロボット「ロボッチII」を開発する。神戸をイメージした水兵さんの格好をしたロボットで、観光施設やイベントなどの案内で活躍している。
 その後、学習用ロボットキット「VariBo(ヴァリボ)」、さらに「VariBo−ND01(ヴァリボ エヌディゼロワン)」を開発した。後者は「2008年度グッドデザイン賞」を受賞している。

神戸をイメージして水兵さんをモチーフにした「ロボッチII」。観光施設やイベントなどの案内で活躍している。

神戸をイメージして水兵さんをモチーフにした「ロボッチII」。観光施設やイベントなどの案内で活躍している。


同社は2007年5月15日に設立20周年を迎えた。これを機に、第二創業の事業ドメインにサービスロボットを加え、開発したのがスーパーマルチであり、エンドエフェクタをはじめとするFA製品で培ってきた手法で、水底清掃ロボット市場の創出を図ろうとしている。


産業ロボとサービスロボ、それぞれの技術を融合した製品を

スーパーマルチは現在、日本上水道配水池ロボット清掃協会とともに、上水道をターゲットに開発を進めている。配水池を備えているのは上水道だけではなく、工業用水や生活用排水を再利用する中水の配水池もある。これらでの用途も期待することができ、「日本上水道配水池ロボット清掃協会のような組織を、中水や工業用水の分野でもつくりたい。業者の意識を高めることで、新たな市場を創出していきたい」と、安田さんは話す。
 ロボットによる清掃が、配水を停止することなく、かつ安全に清掃が可能であることが理解されれば、スーパーマルチの用途が広がることが期待される。
 「『水底清掃ロボットならスーパーマルチ!』と認識されるよう、ユーザーのニーズを取り込み、他社に先行していきたい」と、安田さんは意気込む。ニッチとはいえ「少なくとも、数億くらいのビジネスは期待できるでしょう」と続ける。

今後、スーパーマルチをはじめサービスロボット市場の拡大が期待される。ただ、わが国が競争力を持続的に確保していくためには、その技術的背景となる産業用ロボットの進化が欠かせないし、産業用およびサービスロボットが相互作用しながら発展していく必要がある。
 例えば、工場内で産業用ロボットが重量物を持ち上げて、人が位置を少し補正するなど、人とロボットが協働できるようになれば産業用ロボットは一段と進化する。こうした技術は、おのずと各種サービスロボットにも生かされるだろし、サービスロボットで培った技術を産業用途に生かすことも考えられる。
 それゆえ、「これらFAとサービスロボットの両面で技術を蓄積しつつ、これらを融合したビジネス展開を図りたい」と、安田さんは話す。さらに、「将来的には、サービスロボットなどの制御技術を実装した、産業用ロボット周辺装置を自社開発できれば」と、意欲的に話してくれた。


掲載日:2009年1月13日

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