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ロボ・ステーション


ロボットが拓く!あしたの農業
巧みな木登りで枝打ちを行う『WOODY-1』【早稲田大学WABOTO-HOUSE研究所】

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早稲田大学WABOTO-HOUSE研究所 櫛橋康博 副所長

早稲田大学WABOTO-HOUSE研究所
櫛橋康博 副所長

テレビの映像で、枝打ち職人がヒノキに素早くよじ登って枝処理をし、作業を終えると華麗に逆さにすべり降りるシーンを見たことはないだろうか?
 そんな枝打ち職人とまではいかないが、同じように、木によじ登って枝処理を行うロボットがいる。岐阜県各務原の早稲田大学WABOT-HOUSE研究所 櫛橋康博副所長などが研究開発する木登り・枝打ちロボット「WOODY-1」がそれである。上下2対のアームを有しており、一方のアームが幹を把持している間に、もう一方を上下させることで木登りを行う。その動きは、まるで尺取り虫のようだ。
 わが国の林業従事者は減少傾向にあり、また、危険を伴う作業であることから、以前より自動化が強く求められてきた。それに寄与するシステムとして、関係者の間で期待を集めている。

木登り枝打ちロボット「WOODY-1」。尺取り虫のような昇降動作で木によじ登って枝打ちを行う。

木登り枝打ちロボット「WOODY-1」。尺取り虫のような昇降動作で木によじ登って枝打ちを行う。


わが国林業の再生を願って

わが国の森林面積は約2,500万haあり、うち約4割を人工林が占めると言われている。人工林は枝打ちや間伐をはじめ人による適切な管理がなされて成立するものだが、林業従事者の減少や高齢化などの影響により管理が滞り、過密状態になっている。結果、森林の健康が保たれず、木材の価格低下や、土砂崩れや水量供給の不安定などを招いている。『木の国・山の国』と称される岐阜県は面積の約82%を森林が占めており、少なからず、同様の事態を招いている。

そのような状況を踏まえ、これまでにも森林管理における作業の軽労化・自動化に向けた取り組みは模索されてきた。すでに海外では大型の林業機械の導入により林業の自動化が進んでいる。しかし、わが国では平均斜度25°という急峻かつ複雑な地形ため、導入にかかる路網の整備を困難にしている。また個人所有の山林が多く、伐採して得られる木材に限りがあるため、コストメリットを得るのは難しい。
 こうした事情を踏まえ、わが国のような地形でも活用でき、かつ可搬性に富む自動化ツールとして研究開発しているのがWOODY-1である。またこの開発は、わが国林業の再生の一助となることや、岐阜県下における新たな産業創出への寄与という側面も持つ。

冒頭で紹介したように、WOODY-1は上下2対のアームを用いて昇降動作を行う。一方のアームが幹を把持している間に、もう一方のアームをボールねじで上下させて行う。多様な幹の断面形状や湾曲に対するロバスト性を持たせるために、このような移動方法を採用している。
 各アームは、太い幹も把持できるよう3節リンクから成る多関節機構を採用している。アームを貫通して張った布ベルトの張力を利用して駆動するようにしており、本体側に搭載した1モータで開閉動作が行える。軽量化とともに、柔軟かつ簡素な把持を可能にしている。また、アームの各部には旋回用ローラを付加しており、本体の旋回駆動輪を回転させることで、幹の周方向に旋回移動できるようにしている。

アームの開閉動作と昇降動作の概要。一方のアームが幹を把持している間に、もう一方のアームをボールねじで上下させて昇降する。 本体の旋回駆動輪を回転させることにより、幹の周方向に旋回移動できるようにしている。

(左)アームの開閉動作と昇降動作の概要。一方のアームが幹を把持している間に、もう一方のアームをボールねじで上下させて昇降する。 (右)本体の旋回駆動輪を回転させることにより、幹の周方向に旋回移動できるようにしている。

このような昇降動作を行うユニットを「木登りモジュール」とし、各種作業ユニットを搭載する「機能モジュール」と明確に分離することで、各種作業に対応できるようにしている。枝打ちを行うモジュールのほか、環境のモニタリングに役立つカメラモジュールも開発している。

WOODY-1は、2005年にはほぼ現在のかたちに完成しており、同年開催の「愛・地球博」では「プロトタイプロボット展」(NEDO主催)にてデモを行っている。このときは、木登りモジュール頂部に枝打ちモジュールを、背面にはカメラモジュールを搭載して、その動作状況を来場者に見やすいようにした。会期中は1日平均5〜6名の方から切実な悩みをぶつけられたようで、「高齢による作業の危険性を訴える方以外に、DIY(Do It Yourself)的な林業にてニーズがあり、枝処理作業をしなければならない方が多いことに気付かされた」(櫛橋副所長)という。反応は上々だったようだ。
 ただし、実用面で課題はある。WOODY-1のサイズは全長約900mm、重量13.8kgもある。チャーンソーのような可搬性を確保するためには、一層の軽量化が求められる。現在システムは試作であり、量産を見込むことができれば、樹脂部品の採用により自ずと軽量化を図ることができる。「まずは各地の林業組合にてレンタルにて利用してもらい、徐々に普及していくことができれば・・・」と、櫛橋副所長は話す。

森林環境のIT化へとシフト

現在、WOODY-1は早稲田大学の本部との間を行き来しながら改良がなされている。その一方で、櫛橋副所長は森林環境の保全という観点から、新たに「フィールドアシストロボット」という研究に取り組み始めている。
 同ロボットは、森林内に無線LANの中継ユニットを配置してユビキタスネットワークを構築した、いわゆる“空間ロボット”である。作業者同士がハンズフリーで音声会話をしたり互いの位置情報を確認したりできるようにすることを手始めに、各種林業機械の情報取得による生産管理や輸送管理などに役立てることを構想している。
 さらに、流通を含めた情報化により、木材のトレーサビリティを完成させることも視野に入れている。生育環境などの情報を付加した「情報付き木材」として流通することができれば、付加価値につながる可能性がある。

上述の通り、これまでは森林作業の自動化、森林環境の保全という観点からWOODY-1の開発を進めてきた。ところが、実際の作業現場では、まともにIT化すら取り組まれておらず、いつまでも非効率かつ危険を伴う作業となっていた。こうした背景から掲げたテーマであり、まずは林業作業者の支援を目指したIT化に意欲を示している。ハンズフリーによる音声対話や位置情報の確認は、その一例である。

この研究により「WOODY-1の実用化に向けた取り組みはやや停滞するかもしれない」としつつも、「労働者のためにまず成すべきこと、林業のためにまず成すべきことを素直に目指した結果」と、櫛橋副所長は前向きに話す。
 また見方によっては、将来的にWOODY-1のようなインテリジェンスなシステムを導入するために必要な技術を1つずつ積み重ねている、と言えるかもしれない。フィールドロボットにより、WOODY-1の位置情報や稼働情報が収集できるなど、その導入を容易にすることが見込まれるからである。
 今後の展開に向けて、櫛橋副所長は次のように話してくれた。
 「WOODY-1にしても、フィールドアシストロボットにしても、まだまだ完成系ではないこともあり、提示をするたびに厳しい意見をもらいます。でも、現場作業者がまだ気付いていないようなことをシステムとして示さなければ、林業作業における“真のニーズ”をつくることは難しいわけで、粘り強く見せていくことを当面の目標にしています」

農業におけるロボット化が進展していない中、より過酷な環境となる林業へのロボットの導入は容易ではない。とはいえ、いきなりWOODY-1のようなインテリジェンスなロボットを持ち込むのではなく、林業のIT化という、先に取り組むべき課題に気付いたことは、これらの研究に重要な意味を持つと思われる。
 フィールドアシストロボットを実現した先に、WOODY-1の活躍があることがイメージしやすいし、そのときに日本の林業が変革しているのだろうと期待される。


掲載日:2008年11月27日

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