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ロボ・ステーション


ロボットが拓く!あしたの農業
【技術動向編】拡大する“空間ロボット”「植物工場」とRTの融合を予測する!(4)

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現在植物工場が抱える課題、人件費の圧縮でロボットが必要?

前節での説明からわかるように、植物工場の市場、特に完全制御型では中心プレーヤーは中小・ベンチャーである。
 昨年、富士経済がまとめた「2007年版アグリビジネスの最前線と将来予測」 によると、(完全制御型を対象とした)2006年度の植物工場の市場はわずか13億円である。このような企業規模でないと成立しない市場になっており、丸紅のような総合商社の参入は、それだけインパクトが強いのである。その最大の原因は、ひとことで言えば「露地栽培に対して、コスト競争力で勝っているとは言い難いから*1」(東京農大 高辻客員教授)である。

*1:みらいやフェアリーエンジェルなどが経営的に成り立っているのは、「創業当初より販路を意識した取り組みがきちんとなされていたから」と指摘する声が多い。例えば、フェアリーエンジェルでは、自社の直営レストラン「天使のカフェ」 などで栽培した野菜を提供し、消費者の認知度高めたうえで販路の拡大を図っている。また、みらいは植物工場と一体となった野菜ショップ「グリーンフレーバー」にて、栽培した野菜を販売。新鮮かつ安全・安心であることをピーアールしている(同社では、野菜生産機能と店舗販売機能とを一体化させた「サービス業の農業」という新しい事業モデルを提案している)。

コストに占めるおもな項目は、償却費、電気代と冷房コストである。一般には10年間で採算がとれるよう計算がなされるが、この場合、「償却費が約 4割、電気代が約2割、人件費が約2割程度を占める」(エスペックミック中村部長)という。電気代のうち約7割を光源が占めており、これ以上電力代がかかると、経営的に成立させるのは困難だろう」(同)という。

2007年4月、植物工場へのLEDの導入を牽引してきたコスモプラントが資金繰り悪化のために事業停止に陥った。同社では、比較的安価な赤色LEDのみを利用し、それのみで育成できるリーフレタス、ルッコラ、小松菜などを栽培していた。それでも、LEDパネルのコストが設備コストの半分近くを占めていたとのことで、LED植物工場は照明設備コストが大きく、また、完全制御型植物工場は採算に乗せるのが容易ではないことを印象づけた。

現在、利用されている光源は、人間のための照明用途として最適化されており、植物の栽培に適した仕様にはなっていない。ゆえに、光の照射が最大のノウハウとなっており、光の照射、栽培する作物に適した照明の選定と組み合わせ、光の強度や波長、反射板の材質や形状などで差別化がなされている。
 光源をはじめ反射板など関連する部品や機材の開発が求められるが、最近になり、光強度の調整などの研究に加え、光質の測定やおよび調整方法の研究が盛んになっていることは、コストダウンに向けて明るい材料と言える。

HEFL 型蛍光灯とHL型蛍光灯の照射比較(日本アドバンスアグリ資料より)。独自のU字型反射板の設置により、平面に強い光を均一かつ近接での照射を可能にしている。管を減らしても明るさを向上できるという。同社では、EEFL(External Electrode Fluorescent Lamp)とCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)を総称してHEFLと表現している。いずれも液晶テレビのバックライトに利用されている。HEFL 型蛍光灯とHL型蛍光灯の照射比較(日本アドバンスアグリ資料より)。独自のU字型反射板の設置により、平面に強い光を均一かつ近接での照射を可能にしている。管を減らしても明るさを向上できるという。同社では、EEFL(External Electrode Fluorescent Lamp)とCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)を総称してHEFLと表現している。いずれも液晶テレビのバックライトに利用されている。
HEFL型蛍光灯とU字型反射板。中央に見えるのはインバータ。光源の選定、反射板の設計がノウハウとなっており、ここに省エネのポイントがある。HEFL型蛍光灯とU字型反射板。中央に見えるのはインバータ。光源の選定、反射板の設計がノウハウとなっており、ここに省エネのポイントがある。

人件費の圧縮については優先順位は若干低くなるが、ここにロボットを導入する余地があると考えられている。現在、栽培した作物の収穫や包装、苗の移植作業はほぼすべて手作業で行っている。植物工場で一般的な水耕栽培の場合、これらの作業は「簡易的なハンドリングロボットでも十分に行える*2」(高辻客員教授)という。
 「1日5,000株程度の生産量で、これらの作業に約40名の人員が必要になる」(同)とのことで、いくらアルバイトやパートでカバーしても、相当なコストになるという。まだまだ植物工場の施設数が少ないため、そうした用途はまだ注目されていないのだろうが、「一定程度の規模の植物工場であれば、ハンドリングをはじめとする自動化ツールは十分必要とされるだろう」(高辻客員教授)という見方があり、実際、「人件費削減を目的としたロボット化(自動化)は必要」(みらい関庄八マネージャー)という声がある。このような用途でまず、植物工場とロボティクスとの融合が図られるのかもしれない。

そのほか自動化を支えるツールとして、ムービングベンチやスペーシング装置など搬送装置がある。前者は搬送機能を備えたベンチで、後者は植物の生育に合わせて間隔を広げる搬送機構を備えた装置である。一部の植物工場にて利用されている。

搬送機能を備えるムービングベンチの例(写真提供:エスペックミック)。搬送装置の導入も人件費の圧縮には欠かせない。搬送機能を備えるムービングベンチの例(写真提供:エスペックミック)。搬送装置の導入も人件費の圧縮には欠かせない。
植物の生育に合わせて間隔を広げる搬送機構を備えるスペーシング装置(写真提供:エスペックミック)植物の生育に合わせて間隔を広げる搬送機構を備えるスペーシング装置(写真提供:エスペックミック)。

*2:上述の産総研などが進めている高機能性イチゴの生産では、先月紹介したイチゴ収穫ロボットの利用が考えられる。遺伝子組み換え体を封じ込めるために、動線を一方通行にするなど、作業員の行動を制限している。真空専用サーボモータを採用したり可動部を低発塵にしたりするといった手間があるが、必要とされている分野の1つと言える。

これからの植物工場とRTのさらなる融合はどこに

ここからが本特集の本題である、植物工場とRTとのさらなる融合の模索となるが、まずは今後の植物工場の発展から触れてみたい。

植物工場とロボットとの関連性に詳しい大阪府立大学大学院生命環境科学研究科の村瀬治比古教授は、完全制御型植物工場の有効性を指摘しつつも、「現時点では不完全な技術で成立させようとしているので経営的に苦しくなっている。そこに現在植物工場の苦しさがある」と話す。
 つまり、かつて1980年代に電力会社が植物工場の研究に着手したときは、電力を利用することを前提としたシステムが組まれていた。その技術を継承しているために、上述のように「いつまでもエネルギーコストの課題を抱え、結果、光源ばかりが議論されている」(同)というのである。

ゆえに、今後の植物工場の発展を図るうえで重要な取り組みとなるのは、「育種技術および栽培ノウハウの確立になるだろう」(同)と指摘する。
 植物工場に投入されるのは、おもにエネルギー(光源)、遺伝情報、水と栄養であり、これだけで生産が行える。このうち最も理解されていないのが遺伝情報であり、植物工場での栽培に適した遺伝子を持つ作物の育種技術(品種改良または遺伝子組み換え)が進んでいない。「結果、植物の特性に支配された経営になっている」というのが、村瀬教授の主張である。
 例えば、国内で栽培されるコメは、総じて「倒れにくい」という特性を備えるが、そればコンバインなどによる機械収穫に適した品種改良がなされたからである。同様に「密植型」「矮性型」「微量な光量」・・・で育つといった特性を持つコメを育種することができれば、エネルギーコストを格段に低減することができ、コメの栽培でも経営的に成立させることができる。今後の育種技術への取り組みにより、達成させる可能性は十分にある。

このように、植物工場に適した育種技術および栽培ノウハウが確立されると、「(完全制御型植物工場では外乱がないため)化学プラントと同様、プロセス制御による栽培が可能になり、品質管理という観点から、イメージセンサおよび画像処理技術が必須になるはず」と、村瀬教授は予測する。

今後の植物工場の発展とRTとの融合。今後の植物工場の発展とRTとの融合。

植物には、個体差や遺伝子の異常により、同じ環境で栽培した作物でも成長にバラツキが生じる。しかし、例えば栽培している作物の成長点の温度などをセンシングし、成長が遅れていると診断されば、重点的に栄養を補給したり別の場所に移動して成長を促進したりすれば、バラツキを低減して品質を均一に保つことができる。「非接触かつ3次元で情報が得られれば理想」(同)とのことだが、作物の状態を測定できるイメージセンサと画像処理技術を確立し、工場内に分散配置することにより工業製品と同様、一定の品質を確保することが可能になる*3

近い将来、植物工場は「センシング技術を中心としたロボティクスとの融合が図られることになる」。また、「こうした品質を議論できるレベルになってはじめて『植物工場』と表現するに値するものになるだろう」と、村瀬教授は話す。
 育種技術の開発はこれからであるが、その動向を睨みつつイメージセンサおよび画像処理技術を進めておくことにより、今後、より一層の拡大が期待される植物工場分野に進出する機会を得られる可能性は高い。ここに、農業分野でのビジネスチャンスの1つがあると言える。

*3:これに関連すると、電気学会にて農業センサの専門員会が立ち上げられた。2008年6月から2011年3月までの約3年にわたって議論がなされる。「農業分野のへの高度なセンサ類の導入を目指した取り組みとのことで、ロボット関連の研究者も多数参画することになる」(高辻客員教授)という。

(参考文献)
1)高辻正基:完全制御型植物工場、オーム社,2007.
2)澁澤ほか:精密農業の新たな展開,精密農業,pp.152-pp156,朝倉書店,2007.
3)星岳彦:UECSの特徴と現状,国際競争力を備えた環境制御システムに実現に向けて 〜施設園芸の競争力強化を狙って〜要旨集,2007.
(取材協力)
東京農業大学客員教授 高辻 正基さん
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科 教授 村瀬 治比古さん
エスペックミック 環境モニタリング事業部 部長 中村 謙治さん
農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 高収益施設野菜研究チーム チーム長 高市益行さん、同主任研究員 安場 健一郎さん
ランドマーク 代表取締役 岡崎聖一さん
みらい 総務部 マネージャー 関 庄八さん

掲載日:2008年10月31日

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