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ロボ・ステーション


ロボットが拓く!あしたの農業
【技術動向編】拡大する“空間ロボット”「植物工場」とRTの融合を予測する!(3)

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2008年の植物工場の動向と施設概要

既述のような植物工場への関心の高まりを受け、今年に入り、生産拡大が次々と発表されている。
 完全制御型植物工場を中心に見ていくと、「てんしの光やさい」というブランドにて葉野菜を生産するフェアリーエンジェルは8月より、福井県三方郡美浜市にて月産約35万袋の植物工場を稼働させる*1。同社は、京都市に月産約3,000袋と千葉県野田市に月産約14万袋の工場を有しており、これにより生産量は3倍以上になる。

また、野菜ブランド「ベジタス」を提供する野菜流通業の スプレッドは、2007年12月に京都府亀岡市で日産6000株、年産200万株の植物工場を稼働させ、3月より出荷を開始した。14ライン×12段で栽培しており、年間20回の収穫が可能。単位面積当たりの栽培効率は、20回転/年×12段=240回転になるという。2期工事の増設エリアがあり、2倍以上の生産能力も可能という。
  いずれの工場も蛍光灯による多段式水耕栽培方式を採用している。

*1:6 月には、三菱化学と植物工場における業務資本提携を発表している。植物育成および植物工場運営の省電力化・高効率化に向けた共同開発を行うほか、「てんしの光やさい」の物流および販売での相互協力、第三者割当増資の引き受けによる三菱化学の資本参加(2億5,000万円)について締結した。

同様の栽培方式を採用するみらいは、今年度に入り、水耕栽培システムと野菜栽培ノウハウの提供事業をスタートすることを明らかにした。自社製装置と専門スタッフを派遣し、栽培の技術指導を行う。外食チェーン、食品加工会社などをターゲットに初年度2、3件の販売を目指す。
 提供するのは、三波長タイプの蛍光灯を使った水耕栽培システムと、葉野菜の栽培ノウハウ。約60m2からの小規模スペースに対応するため、レストランの調理場内などでの栽培が可能。自社開発の栽培システムには安価な汎用機材を用いており、導入費用は建物改装や空調設備費を含めて2,000万円からと低コストに抑えている。
 また、みらいは2月より植物工場を南極昭和基地に設置し、遠隔制御により栽培実験を実施している。栽培データを取得し、日本から遠隔的に栽培コンサルティング行い、栽培の安定化に取り組んだ。

みらいの三波長タイプ蛍光灯を使った水耕栽培システム。水耕栽培システムと野菜栽培ノウハウの提供事業をスタートさせた。みらいの三波長タイプ蛍光灯を使った水耕栽培システム。水耕栽培システムと野菜栽培ノウハウの提供事業をスタートさせた。

各種電子機器の設計開発・製造を受託するランドマークは7月に、光源にLEDを利用した完全制御型植物工場の販売を発表している。
 水耕栽培方式を採用しており、換気扇により外部からCO2を取り込む。センサ情報に基づいて溶液やCO2濃度、温湿度などを最適化し、液体肥料と水を重力で循環させる。水量は露地栽培の1/10以下で済むという。

ランドマークが発表したLEDを利用した完全制御型植物工場のイメージ。図の通り、4段の栽培ラック6台を使用すると栽培面積は12.96m2となり、レタスの場合、月産960個になる。ランドマークが発表したLEDを利用した完全制御型植物工場のイメージ。図の通り、4段の栽培ラック6台を使用すると栽培面積は12.96m2となり、レタスの場合、月産960個になる。

光源となるLEDは48本を使用しており、発光面は約90cm。4段の栽培ラック6台を使用し、栽培面積は12.96m2。レタスを栽培した場合、月当たり960個生産することができる。設置面積は11.5m2で済むため、単位面積当たりで露地栽培の70倍以上の生産が行えるという。
 同植物工場は、1,000m2以上の大規模型にも対応できるとのことだが、「都市部などの大消費地の近くに小規模施設を点在させ、ネットワーク化*2させることが有効」(岡崎聖一社長)と捉えている。「携帯電話の基地局のようなイメージ」とのことで、これにより作物価格にかかる輸送費を低減することができ、かつCO2の削減につながると考えているという。

*2:遠隔制御によるモニタリングも可能で、これにより「自社がハブとして機能し、営農家同士の技術交流を深め、新たなイノベーションを興すことができれば」と、岡崎社長は話す。

また、冒頭で紹介した丸紅の取り組みは、「有機等利用植物工場研究会*3」の枠組みによるものであり、ここでは蛍光灯を主光源に赤色LEDを組み合わせた植物工場を提案している。赤色LEDを一定程度加えることにより生育が促進され(葉緑素は赤光を最も吸収する)、かつ甘くなることが知られているからである。
 最大の特徴は従来、まったく対照的な生産方式とされていた有機栽培と植物工場を組み合わせたことで、有機土壌および有機液肥料による栽培システムを採用している。因果関係はまだ明らかではないが、リーフレタスの栽培実験で、野菜のえぐみや苦みの原因になる硝酸態窒素*4が格段に少ない、完全無農薬野菜の栽培に成功したことが報告されている。

蛍光灯と赤色LEDを利用した栽培。波長660nmのLEDによる補光を行っている(エスペックミック実験プラント)。蛍光灯と赤色LEDを利用した栽培。波長660nmのLEDによる補光を行っている(エスペックミック実験プラント)。
蛍光灯と有機土壌による栽培例(エスペックミック実験プラント)蛍光灯と有機土壌による栽培例(エスペックミック実験プラント)

植物工場と有機利用植物工場の違い

植物工場(水耕栽培)有機利用植物工場
安心・安全無農薬・低菌栽培が可能硝酸態窒素が高くなる場合がある無農薬栽培、有機のみの生産可能
硝酸態窒素が低い(因果関係は解明中)
安定栽培天候リスクなし天候リスクなし
気候変動気候変動の影響なし気候変動の影響なし
栽培負荷廃液・培地処理に課題低負荷栽培
廃液処理、機材廃棄が不要
栽培作物葉野菜が中心根菜類も可能
大量生産完全制御システムにより安定した品質の野菜を生産試験プラントにて実証中(大量生産を想定)
生産性多段式栽培多段式栽培
経済性初期コスト大
ランニングコスト大
初期コスト大
ランニングコスト中(溶液・肥料交換の必要性が低)

(ヴェルデ資料をもとに本サイトにて作成)

現在は、栽培ノウハウに蓄積に取り組んでおり、「有機土壌や有機液肥を約半分ずつ投入して硝酸態窒素を抑えて美味しさを上げたり、LEDにより植物の活性化を変えてビタミンCの含有量を大きくしたりといった提案を行えるよう、各種パラメータの抽出作業に取り組んでいる」(エスペックミック環境モニタリング事業部の中村謙治部長)という。すでに秋にはある運送会社が、有機等利用植物工場を建設し、栽培に着手することが決定しているという。

*3:会長は東京農業大学の高辻正基客員教授が、副会長は大阪府立大学の村瀬治比古教授が務める。会員企業は、朝日工業社、エスペックミック、ヴェルデ、シリコンメディア、九州電力、丸紅の6社(2008年6月現在)。有機培地(ヴェルデナイト)はヴェルデが、光源はシリコンメディアが、各種栽培装置はエスペックミックが提供し、丸紅はこれらの販売を担うほか、栽培した作物の流通を担う。将来的には、丸紅自身が植物工場を運営することもあるという。

*4:硝酸態窒素とは、摂取されると体内で毒性の強い亜硝酸ナトリウムとなり、発ガン性の強いニトロソアミンを生成する。また、血液中のヘモグロビンと結合して酸素欠乏症を引き起こす。過剰の化学肥料を投入したり、光環境が弱くて十分な光合成が行われなかったりした場合に、葉に大量に残ることがある。植物工場では、光強度を高くし肥料を制御することで低下させることができるという。

植物工場では、後述するように、電気代の大半を占める光源が議論の中心となっているが、計測・制御システムの低コスト化にも取り組まれている。
 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所(愛知県武豊)高収益施設野菜研究チームでは、自律分散制御システムにより低コスト化を図った「ユビキタス環境制御システム(Ubiquitous Environmental Control System:UECS)」を利用した農業の自動化・高度化に取り組んでいる。
 小規模な施設園芸向けの情報化を促すことを目的に開発され、また「導入する施設は選ばない」(高市益行チーム長)ため、完全制御型でも太陽光利用型でも環境制御に利用することができる。

UECSでは、施設内の各種機器およびセンサに「ネット化マイコン」と呼ばれるマイコンボードを搭載し、LANを介して通信し、それぞれが自律的に協調しながら計測・制御を行う。UECSではネット化マイコンを搭載した装置を「ノード(node)」と表現している。
 node単体で動作する自律動作を重視した設計となっており、必要に応じて、nodeを追加してシステムアップすることができる。node単体では高度な制御は行えないが、LANにプログラム制御nodeやPCを接続すれば、群制御や複合環境制御など大規模な制御も自在に行える。同研究所では、下図に示すように、複数のnodeを開発し作動させている。
 また、自律分散制御であるため、万一故障が発生しても全体のシステムダウンを招くことがなく、自動的に切り替えて制御運転を継続することができる。挙動がおかしなnodeは容易に特定できるため、その交換によりすぐに修復することができる。

野菜茶業研究所の実証ハウスにおけるUECSのシステム構成。室内気象node、室外気象node、天窓node、カーテンnode、暖房機node、簡易コンソールnode、スイッチnodeなどから構成される。植物工場において、このような分散制御システムを用いた例はあまりないという(図提供;東海大学 星岳彦教授)。野菜茶業研究所の実証ハウスにおけるUECSのシステム構成。室内気象node、室外気象node、天窓node、カーテンnode、暖房機node、簡易コンソールnode、スイッチnodeなどから構成される。植物工場において、このような分散制御システムを用いた例はあまりないという(図提供;東海大学 星岳彦教授)。
ネット化マイコン基板。サイズは90×110mm。各種機器およびセンサにこれを内蔵し、LANを介して通信し、それぞれが自律的に協調しながら計測・制御を行う(写真提供:東海大学 星岳彦教授)。ネット化マイコン基板。サイズは90×110mm。各種機器およびセンサにこれを内蔵し、LANを介して通信し、それぞれが自律的に協調しながら計測・制御を行う(写真提供:東海大学 星岳彦教授)。

従来、集中型の制御方式では1個所の温室コンピュータに施設内すべての機器とセンサを接続する必要があるうえ、配線の電気信号規格はバラバラで、配線および設置工事が複雑だった。しかも、汎用性を高めるために入出力点数や制御機能が、導入可能な園芸施設に設置される全機器の上限仕様に合わせて設計されており、オーバースペックになるきらいがあった。
 UECSでは、複数台のnodeを設置する必要があるが、1つのnodeがカバーする計測・制御が簡素であり、マイコンボードも簡略化できるため、nodeを100個程度設置した場合でも、集中型システムと比較すると6〜7割程度の初期コストで済むという。

従来の集中制御型システムの構成(図提供:東海大学 星岳彦教授)。従来の集中制御型システムの構成(図提供:東海大学 星岳彦教授)。
UECSを利用した自律分散システムの構成(図提供:東海大学 星岳彦教授)。UECSを利用した自律分散システムの構成(図提供:東海大学 星岳彦教授)。

UECSではUDP(User Datagram Protocol)などインターネットで使用される標準プロトコルに準拠しており、携帯用ゲーム機や携帯電話機のWebブラウザ上から各nodeを遠隔操作・計測を行うことができる。
 また、「nodeの出口であるLANの通信規格のみを共通化している」(同チーム安場健一郎主任研究員)ため、各種機器やセンサは各ベンダーが自由に開発することができ、ネット化マイコンを付与するだけで、既存製品でもnodeとして容易に製品化することができる。
 いまはエヌアイシステム1社が基板や開発環境およびミドルウエアを整理している状況だが、「さらなるベンダーの参入により、また共通基板の量産効果により、現在1万2,000円強するネット化マイコンの価格をさらに低減できる」(安場主任研究員)と見ている。

UECSを設置したモデルハウス。 UECSを設置したモデルハウス。
天窓に設置したnodeの一例。他nodeからの温度や湿度などの情報をもとに、モータを駆動して天窓を開閉する。 天窓に設置したnodeの一例。他nodeからの温度や湿度などの情報をもとに、モータを駆動して天窓を開閉する。
室内気温・湿度nodeの一例。室内気温・湿度nodeの一例。
「ニンテンドーDS」上からも各nodeを遠隔操作・計測が行える。「ニンテンドーDS」上からも各nodeを遠隔操作・計測が行える。
野菜茶業研究所が開発したUECS用温室モニタソフト(図提供:東海大学 星岳彦教授)。野菜茶業研究所が開発したUECS用温室モニタソフト(図提供:東海大学 星岳彦教授)。

掲載日:2008年10月31日

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