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ロボ・ステーション


ロボットが拓く!あしたの農業
【技術動向編】拡大する“空間ロボット”「植物工場」とRTの融合を予測する!(1)

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「『野菜工場』、丸紅販売へ」。
6月26日付けの朝日新聞に掲載された、総合商社による植物工場への参入はテレビでも頻繁に取り上げられており、最近高まりつつあった植物工場への関心をより一層強くしている。

植物工場とは、この研究に長年携わる東京農業大学の高辻正基客員教授によると、「野菜や苗を中心とした作物を施設内で光、温湿度、CO2、培養液などの環境条件を人工的に制御し、季節に関係なく自動的に連続生産するシステム」と定義されている。植物工場には、後述する「太陽光利用型」と「完全制御型」があるが、低農薬または無農薬の高品質作物を、天候に左右されることなく、狭い土地利用で大量生産できることに特徴がある。

その一般的な構成は、おもに各種センサ、コントローラ、(簡易なアクチュエータを含む)栽培装置、栽培ノウハウ(栽培ソフト)、各種光源などから成る。見方によっては、センサ、コントローラ、アクチュエータのロボットの3要素を空間内に分散配置した“空間ロボット”と見ることができ、農業ロボットの分類に加えられることもある。今月は、空間ロボットの1つとして植物工場を取り上げ、その技術動向から、今後の植物工場とRobot Technology(RT)とのさらなる融合までを考察する。
 なお、本稿では最近の植物工場の動向を踏まえたうえで考察を行っているので、今後の植物工場とRTとの融合のみに関心のある方は、最終節を参照してほしい。

完全制御型植物工場のイメージ。サラダ菜換算で日産1,000株規模になる。栽培室のほか機械室や出荷・作業室などがある(イラスト提供:有機等利用植物工場研究会)。 完全制御型植物工場のイメージ。サラダ菜換算で日産1,000株規模になる。栽培室のほか機械室や出荷・作業室などがある(イラスト提供:有機等利用植物工場研究会)。
プレハブ式の完全制御型植物工場。発芽室、育苗室、培養室などとして利用することがきる。このような小規模なタイプの植物工場もある(写真提供:エスペックミック)。 プレハブ式の完全制御型植物工場。発芽室、育苗室、培養室などとして利用することがきる。このような小規模なタイプの植物工場もある(写真提供:エスペックミック)。

食の安全・安心で再び目覚める植物工場

植物工場への期待が高まっているのにはいくつかの理由があるが、代表的なものは「食の安全・安心」への志向と「食料安全保障」の問題である。
   前者は、2006年5月に施行された「残留農薬ポジティブリスト制」が深く関係している。これは、基準値以上の農薬が検出されるすべての食品の流通販売を原則禁止する制度で、安全・安心な食品の供給が義務化された。当然、生鮮食品にも適用されるものであり、急増する輸入野菜には逆風となるのに対し、完全無農薬で栽培できる(完全制御型)植物工場には追い風となっている。
 また、「食の安全・安心」の観点から、少々高価でも国産農作物に切り替える動きが、消費者レベルから食品加工工場レベルまで起きており、より強力な追い風にしている*1

*1:植物工場では生産工程の情報管理を行うことができるため、トレーサビリティが高まり、消費者に対してより多くの生産情報を開示することができる。食の安全・安心に寄与する。

後者は、作物の栽培が気象条件により収穫量が変動しやすいことなどが関係している。天候や土壌の影響を受けやすく、生産量が不安定になりがちな露地栽培を補う役目として、施設園芸が発展してきたが、夏場の温度管理が難しく周年での供給まではフォローできていない。しかも、大雨や渇水による被害、気温の上昇など、地球温暖化が関係していると思われる影響が現れてきており、食料自給率の低さ(カロリーベースで約39%)および輸入穀物の高騰も重なり、収穫の不安定さへの懸念がより一層高まっている。

植物工場は、特に完全制御型は立地条件が柔軟であり、植物の育成ラインを本棚のように縦方向積み重ねた立体的な構成をとることができる。単位面積当たりの生産性が非常に高い。蛍光灯やLEDといった熱放射の小さい光源が登場したことによるものだが、このような特徴により、わが国のような狭い土地でも、またビルや倉庫でも大量生産ができ、食料安定生産の補助的な役割を果たすことができる*2。また、いざというときの食料安全保障になる可能性も秘めており、その期待を高めている。

*2:安定生産ができるということは、知的営農によるビジネスモデルを構築する1つの要素になり、若年層に就農希望者を広げると期待されている。

植物工場が必要とされるおもな背景。 植物工場が必要とされるおもな背景。

これらに加え、高付加価値物質の安定生産・供給という要求も、植物工場への関心を高めている。 例えば、産業技術総合研究所などが生活習慣病の予防に役立つ高機能性物質入りイチゴ*3を、また、千葉大学などはイネ種子にて経口ワクチン(食べるワクチンコメ)を、植物工場で生産する研究にそれぞれ取り組んでいる。
 医薬品と試薬品としての遺伝子組み換え植物の安全性は担保されていないため、閉鎖環境にて物質の出入りを管理することが求められている。栽培工程から製剤化工程までを安全に管理し、かつ安定的に生産するための手段として、閉鎖型の植物工場が選択されている。

「アグロ・イノベーション2008」で展示された「完全閉鎖系栽培施設モデル展示」でのイチゴの栽培例(高機能イチゴではない)。
光源には蛍光ランプ〔HF((High Frequency)型(松下電工製)およびHEFL(Hybrid Electrode Fluorescent Lamp)型(ツジコー製)〕を採用して栽培している。実際の密閉型植物工場では、収量は1作で3.2kg/m2。年4作が可能で年間生産量は 12.8kg/m2になる。「アグロ・イノベーション2008」で展示された「完全閉鎖系栽培施設モデル展示」でのイチゴの栽培例(高機能イチゴではない)。
光源には蛍光ランプ〔HF((High Frequency)型(松下電工製)およびHEFL(Hybrid Electrode Fluorescent Lamp)型(ツジコー製)〕を採用して栽培している。実際の密閉型植物工場では、収量は1作で3.2kg/m2。年4作が可能で年間生産量は 12.8kg/m2になる。
「「アグロ・イノベーション2008」で展示された「完全閉鎖系栽培施設のモデル展示」でのイネの人工栽培例(ワクチン米ではない)。光源にはセラミックメタルハライドランプを使用している。実際の閉鎖型植物工場では、玄米600〜850g/m<sup>2</sup>を年4作できる。面積当たり水田の5〜6倍の収量があるという。「「アグロ・イノベーション2008」で展示された「完全閉鎖系栽培施設のモデル展示」でのイネの人工栽培例(ワクチン米ではない)。光源にはセラミックメタルハライドランプを使用している。実際の閉鎖型植物工場では、玄米600〜850g/m2を年4作できる。面積当たり水田の5〜6倍の収量があるという。

*3:完全に外界と隔離した人工環境下で種々の組み換え植物体を通年・安定的に育成し、実用化モデルとして実証することを目的に実施した取り組み。産総研のリリースによると、わが国で遺伝子組み換え植物を利用したものづくり産業が加速的に形成され、その市場規模は国内で300億円に及ぶ(2010年)との見通しがなされていた。


掲載日:2008年10月31日

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