本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > ロボ・ステーション

ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
「将来的にはQOLの観点から、新たなRTの利用を提案したいですね」〜短納期かつ低価格なカスタマイズロボットを提案〜【菱田伸鉄工業】

画像をクリックすると拡大表示します

菱田聡代表取締役社長

菱田伸鉄工業
代表取締役社長 菱田聡

〒592-8331
堺市西区築港新町2-7-2

大阪市生野区の脳神経外科病院で患者に優しく声を掛ける「見守りロボット」、大阪市福島区役所のマスコットボット「フッピィ」・・・・・。大阪にはユニークなロボットが点在する。いずれのロボットも、開発を手がけたのは地元大阪の「RooBOカスタマイズチーム」である。
  同チームは、本連載第1回で紹介した、東洋理機工業の細見成人さんを中心に結成された開発グループである。今回紹介する菱田伸鉄工業の菱田聡さんは、機構設計担当およびサブマネージャーとして活躍している。同チームでは、上記のロボットに加え、日本食研のキャラクターロボット「バンコロボット(*1)」や半製品のカスタマイズロボット「イージーオーダーロボット」を開発するなど、着実に実績を重ねている。

*1:「バンコロボット」には、アルプホルンから美しい音色を響かせる「ホルンバンコ」、来場者と注文での会話を楽しむことができる「ウェイターバンコ」、王様とお妃に扮したバンコが食事をしながら会話をする「ロイヤルバンコ」がある。イージーオーダーロボットの開発と同時期に製作した。日本食研(愛媛県今治市)KO宮殿工場内宮殿食文化博物館に展示されている。

2005年に脳神経外科に導入した、患者を優しく見守る「見守りロボット」。 大阪市福島区役所に設置されたマスコットロボット「フッピー」。 王様とお妃に扮したバンコが食事をしながら会話をする「ロイヤルバンコ」。

(左)2005年に脳神経外科に導入した、患者を優しく見守る「見守りロボット」。 (中大阪市福島区役所に設置されたマスコットロボット「フッピー」。 (右)王様とお妃に扮したバンコが食事をしながら会話をする「ロイヤルバンコ」。

伸鉄業からロボット開発へ

菱田伸鉄工業は、1920年に菱田さんの曾祖父が大阪市西区で鉄工所を創業したのがはじまりで、90年近くの歴史を持つ。当時は、ワッシャやレールをつなぐペーシ、家庭用扉のレールなどの製造を手がけていた。1950年に祖父が同社を設立し、鉄筋コンクリート用棒鋼の製造で生産量を拡大し、国内での伸鉄生産シェアの約10%を占めるに至った。
  ところが、社会インフラの整備が落ち着き始めると伸鉄業界の衰退が始まる。やがて、同社は1995年には伸鉄業から撤退して、倉庫業や不動産賃貸業、ソフトウエア開発などへと業態をシフトしていく。菱田さんが入社する1991年頃には、すでに伸鉄の減産に入っており、その対応に追われた。

一方、菱田さんは1981年に岡山大学 工学部 生産機械工学科に入学し、空気圧アクチュエータの研究で知られる則次俊郎教授(岡山大学 工学部 システム工学科)に師事した。卒論テーマには「視覚情報のマニピュレータ制御への応用」を、大学院では修士論文として「視覚情報によるマニピュレータの制御」をそれぞれまとめた。画像処理や自動制御をはじめ、ロボット開発に必要な知識を習得していたことが伺える。卒業後は、ダイキン工業の機械技術研究所にてファジィ制御や代替フロンなど当時、最先端の研究に携わり、さらにその知識を深めていく。が、家業を継ぐ事情から、約4年間の勤務の後、菱田伸鉄工業に入社し、1998年には代表取締役社長に就任する。

このように、同社としてはロボット開発に縁がなかったものの、菱田自身は十分な素養を備えており、開発への意欲を秘めていた。そして、2004年のロボット開発ネットワーク「RooBO」の結成、「ロボットラボラトリー」の設置を機に、その思いを強くする。
  「ただ、結成間もない頃のRooBOは、いまと違って、まさにロボット開発企業の集まりでした。ロボット開発に縁がない僕には、少々近寄りがたい存在だったんです・・・・」
  菱田さんは、当時のためらいをそう話す。
  「でも当時、窓口を担当されていた方から『ロボット開発に関わっていなくてもいいんですよ!』と、親切に言ってもらえて・・・」と厚意を受け、エントリーを果たす。さらに、東洋理機工業の細見さんとの出会いを機にRooBOカスタマイズチームに招かれ、ロボット開発に足を踏み入れることになる。

同チームには、計測・制御システムを中心にソフトウエア開発を手がけるパーソナル・テクノロジーの坂本俊雄さんも名を連ねている。
  「確かに、僕はロボット開発に必要な知識を備えていますが、細見さんにしても坂本さんにしても、自身の本業を生かして開発に臨まれています。まさしく“ホンマもん!なんです。なもんで、開発では僕の出番があんまりなくて、営業が中心になっています・・・」
  菱田さんは、そう冗談混じりに謙遜して話すが、言葉のニュアンスからはロボット開発に関わる喜びが伝わってくる。

自分たちが提案できる短納期かつ低価格なロボットを

RooBOカスタマイズチームが最初に手がけたのは、冒頭で紹介した、脳神経外科医に納品した患者見守りロボット(*2)である。2005年秋に開発した。
  同病院は脳疾患治療を専門としており、脳卒中や脳梗塞などの患者を多く抱える。こうした患者は運動障害や脳機能障害を伴うため、不用意な院外への外出は大きなリスクとなるが、病院の夜間出入り口は消防法により内部から外への施錠が禁止されており、入院患者の夜間の無断外出のおそれがある。それを効果的に防ぐことを狙って開発されたものである。

*2:「安心支援ロボットの見守り効果」実証実験を実施した後、納品した。実証実験実施期間は、2005年11月3日〜2006年2月1日、参加企業は、東洋理機工業(チームリーダー)、菱田伸鉄工業(リハビリ室担当)、北陽電機(センサ担当)、パーソナル・テクノロジー(システム・ハードウエア開発担当)。約3カ月に及ぶ実証実験の期間中、夜間のifbotの声掛けの回数は約2,700回にも上った。ほとんどが病院関係者と、緊急患者とその家族に対するものだったが、実際に外出しようとした入院患者を呼び止めた例が1件報告されている。

開発したシステムは、コミュニケーションロボット「ifbot(*3)」(ビジネスデザイン研究所)を中心に、患者の動きを検知する測域センサ(北陽電機)とネットワークカメラ、これらを管理する監視用パソコンから構成される。無断外出しようとする患者を測域センサが検出すると、ロボットが優しく声掛けをし、外出の防止あるいは足止めをする。同時に、監視用パソコンに警告を出す。さらに、ネットワークカメラにより外出者を撮影して監視用パソコンに画像を転送・表示・記録を行う。

*3:感性制御コンピュータを搭載し、きめ細かな瞼と目の動きとLED表示により「喜ぶ」「照れる」「怒る」「泣く」「がっかりする」「はしゃぐ」「ムっとする」「シュンとする」など40通りの感情を表現する。また、会話シーンは数万種類が用意されており、5歳児程度の会話ができる。ifbotはLinuxで動いており、システムをLinuxで構築したことから、親和性を考慮して採用したという。

見守りロボットのシステム構成。ifbotを中心に、患者の動きを検知する測域センサ(北陽電機)とネットワークカメラ、これらを管理する監視用パソコンから構成される。

見守りロボットのシステム構成。ifbotを中心に、患者の動きを検知する測域センサ(北陽電機)とネットワークカメラ、これらを管理する監視用パソコンから構成される。

システムは患者を見守り、患者を確実に発見し連れ戻すのは病院スタッフの役割という、人とロボットの適切な役割分担がなされている。設置後3年を経過して現在も活用されている。また、ロボット単体ではなくシステム全体として役立つことを意識した開発でも高い評価を得た。ところが・・・、
  「せっかく、自分たちがシステムを構築したのに、取り上げられたのはifbotばかりでした。『自分たちはいったい何をやってるんやろうか?』『ifbotの宣伝をしているのだろうか?』と、思い悩んだことを憶えています。市販ロボットを利用すると、どうしても、そのキャラクターばかりが目立つことを痛感しました」
  菱田さんはそう振り返る。

このような経験を踏まえて、システムとして提案でき、かつキャラクターも自由にデザインできるロボットとして開発したのがイージーオーダーロボットである。大阪市の「大阪発! 次世代ロボット実用化プロジェクト(*4)」の採択事業として取り組んだ。
  同ロボットは、ロボットの主要機能をモジュール化し半製品にしたものを、顧客ニーズに合わせてカスタマイズし販売するというものである。外装は自由に製作することができ、モジュール化された機能を任意に選択することができる。また、各種センサやカメラなど外部機器との連携を可能にする各種インターフェースや、音声認識・合成機能なども備える。コミュニケーションロボットに必至な機能をひと通り搭載している。2008年2月には外装デザインを一新した、イージーオーダーロボット「pul(*5)」を発売した。

*4:一般家庭やオフィス、事業所など日常において活躍が期待される次世代ロボットの実用化に向けた共同研究開発事業に対し、その開発にかかる経費の助成を行うプロジェクト。「大阪発」のオリジナルなRTにより市場創出を図っていくことを目的とした。平成18年度には、「イージーオーダーロボットの開発」のほか、「ロボットハートプロジェクト」(アールティメディア)、「生活空間におけるコミュニケーションするイノベーションロボットサービスの実用化開発」(レイトロン)、「運搬作業支援プラットフォーム『パワーローダー」の開発(アクティブリンク)が採択された(括弧内は代表企業)。

*5:イージーオーダーロボットの基本的なモジュールを搭載している。デザインでは、ロボットでもなく人でもない、男性でもなく女性でもない、人とモノの間に位置する新しいプロダクトとして、ニュートラルな親しみやすさを表現している。デザインはブリューナクが手がけた。

さまざまなイージーオーダーロボットの外装。同ロボットの試作として提示したピエロ(左上)、ブリキ風ロボット「ガラクタン」のモデル(右上)。今年2月に発売した「pul」(左下)、凸版印刷の電子折り込みサイト「Shufoo!」のキャラクターを扮したモデル(右下)。 来場者が商品番号を告げると、ロボットが音声認識をして該当する商品説明を行い、同時に、大型モニター上でも商品説明がなされる。

(左)さまざまなイージーオーダーロボットの外装。同ロボットの試作として提示したピエロ(左上)、ブリキ風ロボット「ガラクタン」のモデル(右上)。今年2月に発売した「pul」(左下)、凸版印刷の電子折り込みサイト「Shufoo!」のキャラクターを扮したモデル(右下)。 (右)来場者が商品番号を告げると、ロボットが音声認識をして該当する商品説明を行い、同時に、大型モニター上でも商品説明がなされる。

イージーオーダーロボットは、店舗や商業施設での集客ロボットや販促ロボットとして、また、展示施設やイベントでの案内ロボットや展示用ロボットとしてなど、多様な用途が見込まれる。
  しかしながら、「自分たちから使い方を提案していかないと、なかなか受注には至らない」ようで、パソコンとの連携によるアプリケーションなどを提示し始めている。昨年6〜8月開催の「大阪発GOODプロダクツ展“グッドデザイン”」では、来場者が商品番号を告げると、ロボットが音声認識をして該当する商品説明を行い、同時に、大型モニター上でも商品説明がなされる実験を行った(*6)。
  こうした活動の甲斐があってか、展示会での貸し出し機材の1つとしてレンタル企業から認知されつつあるとのことで、ここを突破口に普及が見込まれるようだ。

*6:ロボットラボラトリー実証実験プロジェクト「展示会用ロボットのコンテンツおよび外装開発に関する実証実験」の一環として実施。ロボットによる展示会場への誘導、展示商品の案内などの有効性を確認した。

介護支援の視点でRTの利用を考える

このようなカスタマイズチームとしての活動と併行して、菱田さん自身としても、いかにロボット開発に関わるべきかを考えているという。最近は、自身の介護経験を通じて「QOL(Quality of Life)」という言葉に触れ、その観点からRobot Technology(RT)の活用を模索している。

QOLとは、一般には「生活の質」と訳される。医療工程にとどまらず、心理・社会的な豊かさ、心の問題や高齢者の生き甲斐、住宅などの環境問題までを含む、患者や要介護者の活動支援の目安として用いられている。
  菱田さんは言う。
  「例えば寝たきりになると、話し相手は家族やホームヘルパーに限られ、社会との関わりが希薄になり認知症の進行が早まってしまうように感じます。反対に、積極的に外に出て行き、社会性が維持されると客観的な意識により症状が緩和され、より良い生活を送ることができると考えられます。ただし、家族だけで社会性を維持するのは困難です。また、家族の犠牲のもとに要介護者のQOLが維持されるというのもおかしな話で、家族を含むQOLの向上が重要です。
  家庭でも介護ができ、かつ快適に生活を過ごすことができる。それをRTによって実現するのが将来的な目標です」
  「『では、どうするのか?』と、突っ込まれると、うちはR&Dの「R」しかない企業なので、まだ何もないんですけど(笑)。ただ少なくとも、こうした観点から常にアンテナをはっておき、確実に開発に結び付けていきたいです」と、前向きに話す。

「家庭でも介護ができ、かつ快適に生活を過ごすことができる。それをRTによって実現するのが将来的な目標」と話す菱田さん。そうしたシステム開発を通じて、「いずれはロボット開発を事業の1つに育て上げたい」とも意欲的に話す。

「家庭でも介護ができ、かつ快適に生活を過ごすことができる。それをRTによって実現するのが将来的な目標」と話す菱田さん。そうしたシステム開発を通じて、「いずれはロボット開発を事業の1つに育て上げたい」とも意欲的に話す。

菱田さんはRTを大きな視点で捉え、社会に役立つシステム開発を通して「将来的には一事業に育て上げたい」という考えを抱いている。「カスタマイズチームをはじめ周囲には自分をサポートしてくれる人たちがいるので、自分なりにQOLの観点から開発に挑戦してみたい」という。
  そう意欲的に語りながらも、菱田さんは「細見さんをはじめ人との関わりの中で、これまでいろんな開発に携わることができましたから・・・・」と、周囲への感謝の気持ちを忘れない。
  このような謙虚であり他を思う気持ちが、上述のようなQOLを意識した考え方につながっているのではと、思わずにはいられない。そうした観点から、ぜひ新たなRTの利用を提示してほしいと思う。


掲載日:2008年10月28日

前の記事次の記事


このページの先頭へ