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ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
「ロボットにより親しみを持ってもらえればと思うんです」〜上半身のみのロボット・インファノイドの精力的な提示に腐心〜【国際バイタルディバイス】

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植田高年代表取締役

国際バイタルディバイス(有)
代表取締役 植田高年

〒537-0014
大阪市東成区大今里西1-12-7-103
http://www.kaigisho.com/idm

ロボットと聞くと、「AIBO」のようなペット型や「ASIMO」のようなヒューマノドを想像しがちだが、それだけがロボットではない。使用目的や動作環境に合わせて、それぞれが最適なカタチでつくられている。
  今回、紹介する研究用ヒューマノイド「インファノイド」は、人間のコミュニケーション能力の発現を研究することを目的に開発された、上半身だけのロボットである。表情を交えた滑らかな動作に特徴がある。国際バイタルディバイスの植田高年さんと情報通信研究機構(National Institute of Information and Communications Technology:NiCT)の共同製作により誕生した。すでに開発プラットフォームやレンタルでの提供などを始めている。

ヒューマノイドの開発には莫大なコストを要する。しかし、インファノイドを開発プラットフォームとして利用することで、大幅なコストダウンを図ることができる。レンタルも行っており、企業PRをはじめ各種イベントでの利用も見込まれる。その幅広い用途が期待されている。
  また最近は、さまざまなイベントでその姿を見かけるようになり、地元・大阪を代表する1つのロボットとして認知されつつある。

植田さんが製作した上半身のみのヒューマノイド「インファノイド」。指先に至るまで滑らかな動作をするのが特徴である。

植田さんが製作した上半身のみのヒューマノイド「インファノイド」。指先に至るまで滑らかな動作をするのが特徴である。

設計者から洋裁・デザインへ、再び設計者に

植田さんは、大阪市の下町・今里のマンションの一室にオフィスを構えている。そこで設計から組立までの作業のすべてを完結させている。
  もともとは岡山県の出身で、学校を卒業した後、マシニングセンタなどを開発する地元の工作機械メーカー・安田工業に就職した。キャリアを積み重ねていくことで、その開発を一通り経験したが、「何か別の新しいことに取り組みたい!」という意欲が沸き、まったく異分野となる繊維関係の仕事を目指して大阪に来ることになる。

「工作機械の開発は、確かに好きな分野であり楽しかったです・・・。マシニングセンタはベッドやテーブル、コラム、サドル、スピンドルヘッドなどの要素を備え、これに各部を正確に移動し、かつ位置決めするボールねじや駆動モータ、位置測定装置などから構成されます。剛性を確保しつつ、できるだけ狭いスペースで目的とする機構を収める、軽量化を図る、周辺部との干渉を避ける、というのは大変でしたが、おもしろかったです・・・。
  けれども、自分で何かを始めたいという思いが強くなり、実家が繊維関係の仕事をしていたこともあって、縫製業を目指してここ(大阪)にやってきたのです」
  植田さんは、大阪にやって来た意外な理由を、そう説明する。

大阪にやってきてからは、昼は縫製工場で働き、夜は大阪モード学園で洋裁とデザインを勉強する慌ただしい日々を過ごした。ところが、ほどなくして機械設計関係の仕事に戻ることになる。設計事務所で自動組立機などの設計を経験した後、1986年に独立することになる。
  紆余曲折があったが結局は、自身が好きでもあり得意とする分野に身をおさめることになったわけである。

1986年に設計事務所を開業した後は、各種機械設備の設計請負一筋で取り組んできた。小型モータの自動組立装置や照明ランプの製造装置、1mm程度の極小部品の選別装置、キッチン用ミキサーの組立装置、半導体製造装置など、さまざまな設計を手がけてきた。
  10年ほど前にインファノイドの前身である、ロボットの眼球部の製作依頼があってからは、設計のみの業態から製作も行うようになった。

その製作から始まったインファノイドは、年ごとに顔や口、胴体、腕、手、眉の追加という具合に機能追加および改良が繰り返され、冒頭で紹介したカタチへと進化したのである。

インファノイドの原型となる眼球ユニット。相手の視線を追って相手の見ている対象を見る「共同注意」を再現することによりコミュニケーションの発現を研究する素材として開発した。

インファノイドの原型となる眼球ユニット。相手の視線を追って相手の見ている対象を見る「共同注意」を再現することによりコミュニケーションの発現を研究する素材として開発した。

滑らかな駆動により喜怒哀楽を表現

NiCTと共同製作したインファノイドは身長60cm、体重16kg、関節自由度は29。関節は人間と同じ可動部および稼働範囲を有している。
  関節の駆動にはワイヤー駆動を採用しており、アクチュエータは部位によって、減速ギヤ一体のMAXONモータ、あるいは「ハーモニック・ドライブ(波動歯車減速装置)」一体モータを使い分けている。眉や指などの一部はRCサーボにより駆動している。
  ハーモニック・ドライブはASIMOの駆動部でも利用され、そのスムーズな動きを支えていることで知られているが、ワイヤー駆動との相乗効果によりバックラッシのない、滑らかな動作を実現している。眼球に内蔵したCCDカメラ画像などで感知した外界情報に基づいて、眉や眼、唇で表情をつくり出しているが、指先に至るまでその動きは実にスムーズである。

インファノイドの手部。指を駆動している白いワイヤーが見える。眼球のみ、腕のみ、手のみ、頭のみ、など部分ユニットでも販売している。 インファノイドの肩部。肩には太いワイヤーを利用していることがわかる。 インファノイドで利用しているモータユニットの一例。エンコーダ付きのハーモニック・ドライブ一体型モータを採用している。

(左)インファノイドの手部。指を駆動している白いワイヤーが見える。眼球のみ、腕のみ、手のみ、頭のみ、など部分ユニットでも販売している。 (中)インファノイドの肩部。肩には太いワイヤーを利用していることがわかる。 (右)インファノイドで利用しているモータユニットの一例。エンコーダ付きのハーモニック・ドライブ一体型モータを採用している。

また、インファノイドは遊びの機能を有しており、視線で人や物を追尾したり頭を上下左右に動かしたりして「あっち向いてホイ!」などの動作が行える。そのときは、勝てば「やったー」と、負ければ「負けちゃったー」と、喜怒哀楽を表現することができるが、そのためか、最近では『あっち向いてホイロボット』として知られるようになっている。

インファノイドは、人間のコミュニケーション能力の発現・発達を観察し、研究することを目的にNiCTで企画されたもので、もともとはCCDカメラ内蔵の眼球ユニットとして作成された。NiCTでは対面した人間とのアイコンタクトや「共同注意(*)」の動作を、眼球ユニットで再現することにより、その研究を進めていた。
  「人間の眼の動きは非常に素早く、『それを同じ動作と速度を再現したい』ということで、滑らかに動作し、かつバックラッシがないワイヤー駆動方式が採用されたのだと思います」と、植田さんは、その設計のポイントを説明する。

また、「人間のコミュニケーションは眼の動きだけでなく、表情や身振り手振りを伴います。眼球だけではコミュニケーション上役不足であり、上半身をまるごと製作したのは自然な流れだったと思います」。現在のインファノイドに至った背景を、そう明かす。
  基本設計はNiCTが行い、構造や機構など詳細設計は植田さんが担当したが、年度ごとのバージョンアップで「現在の形になるまでに約7年の年月を要した」とのことで、長年にわたる開発の成果であることを強調した。

デモルームの設置も検討

冒頭で触れたように現在、植田さんはインファノイドの販売、レンタルを行っている。人工知能をはじめとする研究用途や企業の製品販促イベント、地域イベントなどに向けた需要が見込まれる。

研究用途では、ソフトウエアを追加することにより、さまざまな動作が行え、かつイチからロボットを開発する労力とコストを省くことができる。さらには、研究目的に合わせたカスタムメイドも可能である。
  レンタル用途では、持ちネタで楽しませてくれるため集客が期待される。実際、すでに『あっち向いてホイ』の機能で有名になっており、関西方面で開催されるロボットやモノづくり関連のイベントでは人気を博している。また、インファノイドは内部構造が見え、動作の仕組みをよく理解できることから、"メカ好き"の興味を惹き付けることも期待される。実際、イベントではその構造に関心を持った子供が側から離れないことがあるという。

さらには今後の取り組みとしてオフィスの一部に常設のデモルームを設け、そこでいつでもインファノイドを見学できるようにするプランがあるという。
  モノづくり関連のイベントだけでなく地域の小さなイベントでも、インファノイドとともに植田さんの姿をよく見かけるが、そうしたPR活動により一層精力的に取り組む考えのようだ。

現在の事務所デモルームを設け、インファノイドのデモを実施するプランがあることを明かす植田さん。各種イベントでの精力的な展示の甲斐があり、その存在は多くの人が知るところとなっている。「ASIMO」を管理運営している会社から、イベントでのMCの依頼があったが、現状機能ではそれはできないため断ったというエピソードも披露してくれた。

現在の事務所デモルームを設け、インファノイドのデモを実施するプランがあることを明かす植田さん。各種イベントでの精力的な展示の甲斐があり、その存在は多くの人が知るところとなっている。「ASIMO」を管理運営している会社から、イベントでのMCの依頼があったが、現状機能ではそれはできないため断ったというエピソードも披露してくれた。

その理由に関連して、植田さんは次のような話をする。
  「僕らの世代は、ヒューマノイドと言えば『鉄腕アトム』でした。アトムはアニメの世界にしか存在しませんでしたが、今ではアトムの一部機能は具現化しており、今後、増えていくと思われます。
  ロボットをつくる立場の僕たちは、要素技術を積み上げていくことでロボットを進歩させていきますが、今後、どのようなロボットが普及しているのかまでは予想はつきません。肉体的にも精神的にも優しい、人の負担を軽減するロボットを実現できればという思いは抱いていますが・・・。
  そうした考えがありますが、やがて訪れるであろうロボット社会に向けて、ロボットに親しみを持ってもらえるきっかけを提供できればと思うんです」

インファノイドの販売やレンタル業はこれから本格化していくことになるが、精力的なイベントでのデモの実施により、今では地元・大阪を代表するロボットの1つになっている。子供たちとあちらこちらで「あっち向いてホイ」をこなしている。「ロボットに親しみを持ってもらえれば・・・・」という控えめなコメントだったが、すでに達成しているように感じられた。

*:共同注意とは、相手の視線を追って相手の見ている対象を見ること。ある物を他の物に方向付けるような操作をしたとき、相手の確認を求めるような視線を送ることで、さまざまな対象を周囲の他者(幼児に対する養育者など)と共有する行動として知られており、社会的参照のための重要な技能とされている。また、母子間のやり取りを支える最も基本的なデバイスと言われ、これによって赤ちゃんと養育者は、互いの注意と情動を時間的・空間的に結び付け、その場の楽しさや驚き、不満などを共有している。すべてのコミュニケーションはこのような〈共有〉から始まると考えられている。NiCTでは共同注意の計算モデルの構築を目指している。


掲載日:2008年9月30日

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