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ロボ・ステーション


新産業の創造に挑む!ロボット特区大集合
「医師として、医学・心理学の側面から捉えられるのが強みです」〜 生体信号を使った人と機械との新たな関係を模索 〜【バイオシグナル】

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得丸 智弘代表取締役

バイオシグナル(株)
代表取締役 得丸 智弘

〒531-0073
大阪市北区本庄西2-1-37
http://www.biosignal.co.jp/

『あなたは現役の医者だし、仕事も収入も安定している。なのに、なぜロボットビジネスを目指すのか? わざわざ参加しなくてもいいんじゃないのか・・・・?』
  「起業塾に参加して早々、塾長にそう言われて、カチンときたことを覚えています。いまから思えば、うまい具合に煽られたような気がしますけどね・・・」

そう起業の発端を語るのは、バイオシグナル 代表取締役の得丸智弘さんである。現役の心臓外科医でありながら、約2年前に、大阪市のロボットラボラトリーが主催する「ロボットビジネス起業塾」を経て起業した。大手電器メーカーの元社員である操田(ぐりた)浩之さんとともに立ち上げた。
  同じ頃に、大阪市の「大阪発!次世代ロボット実用化プロジェクト」に採択された「ロボットハートプロジェクト」に参加し、その成果の応用として、心電や筋電などを収集する「生体電気信号収集モジュール」を開発するに至っている。

現役の医師がロボットビジネスに飛び込んだことで注目されたが、そればかりではなく、医学および心理学の立場から、生体信号を利用したインターフェースの開発というユニークなポジショニングをとり、かつ強みとしていることで、大きな期待を集めている。

現役の医師だからこそ生体信号を応用できる

得丸さんは、大阪府内の医科大学に勤務する心臓外科医である。それを目指した理由は意外なもので、最先端の技術に興味があったからだという。
  「小さな頃から、機械工作や電子工作などが好きで、心臓外科手術に興味を抱いたのは、最先端のセンサ類や計測機器に囲まれて手術がなされるからなのです。大学では人の生体信号を利用した生命維持の研究に携わり、そのまま心臓外科医の道に進んだのです」
  また、医大生時代には「工学部で人工知能関連の研究を手伝っていた」とのことで、先端技術への探求心の深さが伺い知れる。そんな得丸さんのもとに、上述の「ロボットビジネス起業塾」開講の案内がなされ、それを目指したのは自然な流れだったのかもしれない。

起業塾への参加に当たり、得丸さんはロボットに対し、次のような考えを抱いていたという。
  「振り返ってみると、大学で研究していたことはロボットそのものだったのではないか? と思われたのです。つまり、ロボットは外界情報をセンシングしてコントローラにフィードバックし、適切にアクチュエータを駆動します。同様に、生命維持も生命が発する生体信号をセンシングして、その情報をもとに各種機器を動作させて行っている。だから、その知識や経験がロボット開発に役立つのではと考えていたのです」
  また、「ロボットは今後、優れたインターフェースの1つに、つまり"人に優しい機械"になると思っていました。擬人化しやすい要素を備えるがゆえに、機能的にはもちろん情緒的にも。そこに、自分がよく理解している生体信号を生かせるだろうと思っていたのです」。
  生体信号がロボットと結び付いた理由を、そう説明する。

生体信号波形の一例。

生体信号波形の一例。

加えて得丸さんは、そのような考えに至った背景に、生体信号の応用に問題意識を抱いていたことも明かす。
  これまで、生体信号は人体の健康および病気の診断を目的に、その計測技術の研究がなされ、おもに医療分野で発展してきた。ところが、その信頼性は100%であることが求められるがゆえ、医療用機器としての認可が必要になり、そこに膨大な開発コストがかかる。加えて、その信頼性の管理にも厳密さが求められ、「結果、生体信号の応用は医療分野以外では進んでいない」という(*1)。

しかし、医療分野以外での応用を考えれば絶対の信頼性が要求されないため、開発コストを大幅に低減することができる。
  「センシングの原理は違うものの、例えば任天堂の『Wii』の新しいインターフェースにはみんなが驚かされましたが、そこでは100%の動作信頼性は求められていません。医療分野以外に目を向ければ、同様に、生体信号を使って驚くようなインターフェースを提示できる可能性があるはずです。そして、現役の医師である自分だからこそ、それを提示できるのではないか!と考えていたのです」

*1:生体信号を利用した研究などは、癒しやリラクゼーション、見守りなどに応用されつつある。また、その研究も大企業から中小企業まで、さまざまなところでなされてている。ところが、医療機器業界は閉鎖的であり、そのような研究開発に対して門戸を開いていない。ゆえに、現役の医師が取り組むのは極めて異例と言える。

無意識の状況を読み取って制御に反映させる

説明は後になったが、生体信号とは心電図、脈波、筋電図、脳波などのかたちで収集される生命活動の情報である。これらは意識(随意)的に発しているものではない。
  その測定にはおもに、心電や筋電など生体自体を制御するために自ら発している信号を外部から観察する方法と、生体インピーダンス(抵抗)のように、生体情報を外部から働きかけて測定する方法がある。いずれの方法でも、生体の客観的な状態を外部から観察することができる。

仮に生体情報を観察し、それをもとにロボットを動作させるようにすると、操作者の無意識(不随意)の状況を制御に反映させることができる。つまり、プロポやマウス、キーボードなど機械的かつ物理的な入力による意識(随意)的な操作とは、まったく異なるインターフェースが生まれることになる。ここに、得丸さんが提案するインターフェースのポイントがある。
  「生体信号の応用により、いわば人とロボットがお互いに『感じ合える』『通じ合える』インターフェースになる可能性があるはずです」と、得丸さんはその意義を強調する。

意識(随意)と無意識(不随意)による入力と出力の違い。生体信号という無意識な状況による制御では予期せぬ反応があるものの、これを生かすことにより、人とロボットまたは機械とのコミュニケーションに新たな関係を与える可能性がある。

意識(随意)と無意識(不随意)による入力と出力の違い。生体信号という無意識な状況による制御では予期せぬ反応があるものの、これを生かすことにより、人とロボットまたは機械とのコミュニケーションに新たな関係を与える可能性がある。

また、その利用により「ロボット自身に人間を思わせる要素を与えられるのでは」と付け加える。例えば、「人とロボットが互いに『目が合った』ことを認識し、ロボットの顔が赤くなる」といったことである。操作者の無意識な状況をロボットに注入することにより、より人間らしく見せられる可能性もある。

このように、生体信号という無意識な状況による制御を生かすことにより、人とロボットまたは機械とのコミュニケーションに新たな関係を与えるのが、得丸さんの目標である。その第一歩として、随意的な操作系として取り組んだのが、既述の「ロボットハートプロジェクト」である。
  同プロジェクトは、人とロボットおよび空間ロボットのインターフェースとなるコアモジュールの開発を目的としたものである。開発したシステムは、リストバンド型センサや、バッテリーや無線装置、センサユニットを収納したポシェット、ベルトなどから構成される。身体に装着して操作を行う。
  リストバンドには電極が組み込まれており、これにより手のひらを握ったり離したりするときの筋肉の容積変化などを観察。また、搭載した3軸加速度センサにより体動を検知し、これらの情報をもとにロボットを操作する。ロボット格闘技「ROBO-ONE」にて、「マジンガーZ」のデザインを模したロボットをウエアラブルな装置で操作していた参加者がいたが、見た感じの操作は、それに近いと言える。

平成18年度「大阪発!次世代ロボット実用化プロジェクト」に採択された「ロボットハートプロジェクト」の概要

平成18年度「大阪発!次世代ロボット実用化プロジェクト」に採択された「ロボットハートプロジェクト」の概要

「ロボットハートプロジェクト」で開発したロボットコントロールのイメージ。リストバンド型センサ、バッテリーや無線装置、センサユニットを収納したポシェット、ベルトなどから構成される。

「ロボットハートプロジェクト」で開発したロボットコントロールのイメージ。リストバンド型センサ、バッテリーや無線装置、センサユニットを収納したポシェット、ベルトなどから構成される。

約2年にわたる同プロジェクトでは具体的な製品開発には至らなかったが、生体信号を介して自身の動作をロボットに再現させることに成功している。また、その応用として、冒頭で紹介した生体電気信号収集モジュールを開発している。これは、心電や筋電など微弱な電気信号をパソコンに入力することができる装置で、外部の受託研究企業と共同で研究所に向けた提供を始めている(*2)。

「ロボットハートプロジェクト」で開発したコアモジュールと、提供を始めている生体電気信号収集モジュール。

「ロボットハートプロジェクト」で開発したコアモジュールと、提供を始めている生体電気信号収集モジュール。

*2:同社は大阪府知事の認可を受け、医療機器の取り扱いのライセンスを取得している。同社が開発した機器に加え、電極などを含む消耗品などを取り扱うことができる。生体信号を用いた製品開発などを考えておられる企業などに、アドバイスや研究協力、機器提供などが行える。

工学に加えて医学・心理学の側面から捉える

現在、得丸さんは上述のモジュールを提供するかたわら、生体信号の幅広い応用を検討し始めている。例えば、医学教育や健康管理への啓蒙に寄与する、電子ブロックの要領で生体信号を学習できる教育教材の開発やゲームコントローラなどへの展開、さらにはアートとの融合を目指した取り組みにも意欲を示している。

アートとの融合は「現在、同社の生体信号機器開発を手がけている人との出会いがきっかけ」という。「彼は生体信号採取などの回路設計のエキスパートであり、現在も芸術家たちに自己表現としての生体信号アートの指導、その機器開発などを行いながら、当社のロボット技術開発も行っている」。
  その取り組みの詳細は、現時点では明らかにできないようだが、非常に興味深い取り組みに思われる。なぜなら、一般に工学の分野では(数値化しなければ設計ができないという事情によるが)定量評価しやすい事象を好む反面、美しいとか自然に感じるといった、対極にあるアートな領域は数値化が難しく、解釈論の問題から敬遠される、からである。

得丸さんは言う。
  「生体信号が持つ意味を、工学に加えて医学および心理学の側面から捉えて、応用できるのが僕らならではだと思っています。例えば、人の体調や精神の状態などを計測して制御に反映させ、ひいては、人と親和性の高い機械の開発に結び付けるという具合に・・・。アートとの融合は、そうした捉え方の一環なのです。また、そうした視点から、生体信号の応用を拡大していくことが目標の1つであり、僕らの役割だろうと思っているのです」

また、その応用の1つであり、目標の1つでもある人とロボットとのコミュニケーションについては、生体信号を介した「より良い関係を構築することができれば」と話す。上述のような、操作者の無意識な状況をロボットに注入することによる人間らしさに加え、「ロボットが自身の体調、すなわちバッテリー不足などちょっとした不調を操作者にフィードバックするような仕組みも整えたい」という。それが「人と共生できるロボットの創出につながるのでは」と強調する。

最後に、得丸さんは地元・大阪の気風も絡めて、次のような構想も明かしてくれた。
  「説明している不随意による制御の開発はこれからですが、将来的には、ナニワのノリというか、愛想が良く、親しみやすいロボットの開発につなげたいです。そんなアットホームなロボットがあってこそ、人と機械とのコミュニケーションや、つながりに好影響をもたらすでしょうから」


掲載日:2008年9月 9日

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