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ロボ・ステーション


ロボットメーカーの開発戦略 次の一手はこれだ
2008年度は、床下点検ロボット市場にとって重要な1年になるはず【トピー工業】

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園田 徹

園田 徹 Sonoda Tohru

新事業開発部 部長
1950年3月生まれ。1972年3月、新潟大学 理学部 物理学科卒。同年4月、トピー工業に入社。2001に技術統括部 技術研究所 副所長に就任。2006年4月には新事業開発部長に就任し、現在に至る。




津久井 慎吾

津久井 慎吾 Tsukui Shingo

新事業開発部 主査
1970年3月生まれ。1993年3月、神奈川工科大学 工学部 機械システム工学科卒。同年4月、トピー工業に入社。社内製品〔ホイール、建設機械用履帯(クローラ)〕の加工・検査設備の開発に携わる。2002年10月からクローラロボットの開発に携わり、現在に至る。

トピー工業は、建設機械用クローラのトップメーカーという強みを生かし、レスキュー分野などに向けて各種クローラロボットおよびモジュールを提供している。また、最終製品として床下点検ロボット「Anie」(エニー)も開発し、すでに住宅メーカーへの導入実績を有している。
 2008年度は床下点検ロボット市場の立ち上げに重要な1年になることが予想されることを受け、今回はAnieを中心に話しを聞いた。新事業開発部の園田部長津久井主査に、Anieのシステム概要から、住宅メーカーに向けた提案活動までを語ってもらった。

シーズ発信型としてロボットに取り組む

クローラロボットの開発は、新事業の一環として新事業開発部で取り組んでいます。当社での新事業の開発は、モノづくり企業ということもあり、「シーズ発信型」のアプローチで臨んでいます。シーズ発信型とは、全国の各大学が保有する研究シーズの中から、当社の技術基盤を活用することで事業化の可能性が高い、優れたテーマを探し出し、共同研究あるいは受託研究により事業に結び付ける、ということです。リサーチした結果、選択したのがクローラロボットでした。もちろん、当社は建設機械用クローラのトップメーカーであり、その強みを生かせるという判断もありました。

開発は、レスキューロボットの研究で著名な東京工業大学の広瀬茂男教授と共同で取り組みました。新事業開発部の創設は2005年11月ですが、それ以前より進めています。2002年10月に、津久井主査を受託研究員として派遣し、クローラ部分を中心に共同研究をしました。その甲斐あり、後述する当社特有のクローラの開発に至ります。

現在、事業はおもに2つの方向性で展開しています。クローラロボットの特徴は移動機構にあるので、その特色を生かした販売展開あるいは共同開発が1つです。もう1つは、その過程で、当社の技術力で最終製品にできるアプリケーションは製品化していくことです。後で紹介する床下点検ロボット「Anie」は、その一例です。

(a)「S-92」は、小型モジュールをベースに左右独立作動のフリッパーアームを装着したタイプ。フリッパーアームを段差に引っ掛けることで、より高い段差乗り換えを可能にしている。最大乗り越え段差150mm。

(a)「S-92」は、小型モジュールをベースに左右独立作動のフリッパーアームを装着したタイプ。フリッパーアームを段差に引っ掛けることで、より高い段差乗り換えを可能にしている。最大乗り越え段差150mm。

(b)「T-01」は、人が接近困難な被災現場に到達できる走破力と高段差乗り越えを備えたタイプ。4つのネットワークカメラの画像を表示する専用コントローラを用いて、周辺状況を確認しながら目標地点に到達する。操縦は、無線LAN方式と、300m光ファイバーを内蔵した有線コントロール方式を併用している。最大乗り越え段差は180mm。最大階段降角は45°。総務省消防庁から東京消防庁のハイパーレスキューに試験配備されている。

(b)「T-01」は、人が接近困難な被災現場に到達できる走破力と高段差乗り越えを備えたタイプ。4つのネットワークカメラの画像を表示する専用コントローラを用いて、周辺状況を確認しながら目標地点に到達する。操縦は、無線LAN方式と、300m光ファイバーを内蔵した有線コントロール方式を併用している。最大乗り越え段差は180mm。最大階段降角は45°。総務省消防庁から東京消防庁のハイパーレスキューに試験配備されている。

(c)「H-80」は、高機動力とパワーが要求されるロボットの足回りとして開発した大型・高出力タイプ。移動プラットフォームとして幅広く活用できる。H-80のみ走行モジュールとして提供している。

(c)「H-80」は、高機動力とパワーが要求されるロボットの足回りとして開発した大型・高出力タイプ。移動プラットフォームとして幅広く活用できる。H-80のみ走行モジュールとして提供している。
(a)〜(c)クローラロボットは、床下点検ロボット「Anie」を含め計4タイプをラインアップしている。

ただし、レスキューを含め非産業分野のロボット市場は、いまだ形成されているとは言い難いです。実用的な製品が供給される段階ではなく、まだまだ研究開発の段階にあるように感じられます*1。ゆえに、上述のような事業展開を行っているわけです。

*1:完成品であるクローラロボットのほか、クローラモジュールの提供も行っている。その提供は、大学をはじめとする研究機関向けが多数を占める。これまでに数十台を納品しているという。

もともと、レスキューという切り口から取り組んでいますが、それ以外にも、顧客価値の高い分野に提案していくつもりです。「人が入れない」「人が入りたがらない」などが、キーワードになると考えています。

高い段差乗り越え機能

開発したクローラロボットの最大の特徴は、クローラ単体での段差乗り越え性能が高いことにあります。堅いラグと柔らかいラグの2種類のラグを組み合わせた独特の構造により、クローラ半径の約1.3倍の段差乗り越えを可能にしています。

一般的なクローラは、堅いラグが連続した構造になっています。このような構造では、段差側面に十分に近づくことができないため、クローラ半径以上の段差を乗り越えるのは困難です。これに対し、当社のクローラモジュールは、柔らかいラグが折れ曲がって段差側面に接近できるため、クローラ半径よりも30%程度高い位置でラグを引っ掛けることができます。柔らかいラグは断面形状を「へ」の字に成形しているため、折れ曲がりながらもラジアル(垂直)方向の荷重をしっかり受けることができ、十分な駆動力を有しています。
 また、クローラ表面のゴムベルトをスチールベルトに被覆した構造にすることで、軽量かつ高強度という特徴も備えています。
 これらは広瀬教授との共同開発によるものです。

(a)一般的なラグ。ラグが段差断面に十分に近づけないため、高い段差を乗り越えるのが難しい。

(a)一般的なラグ。ラグが段差断面に十分に近づけないため、高い段差を乗り越えるのが難しい。

(b)開発したラグ。ラグが折れ曲がって段差側面に近づけるため、クローラ半径よりも30%高い位置でラグが引っ掛かる。

(b)開発したラグ。ラグが折れ曲がって段差側面に近づけるため、クローラ半径よりも30%高い位置でラグが引っ掛かる。
(a)〜(b)堅いラグと柔らかいラグの2種類のラグを組み合わせた独特の構造により、クローラ半径の約1.3倍の段差乗り越えを可能にしている。

操作性にも特徴があり、素人でも扱える容易なインターフェースにしています。障害物に接近するとアラーム表示をするなど、非常にわかりやすいです。展示会などでは、来場者の方にも操作してもらうことが多いですが、その操作性の良さを高く評価してもらっています。
 とはいえ、このようなタイプのロボットを現場でうまく操作するには、ある程度の慣れが必要になるだろうと思っています。

ひと口に「操作性」といっても、視野が効いた環境での操作と、視野が限られた環境での操作とでは大きく異なります。前者では、総合的に判断することで直感的に操作ができるの対し、後者では限られた情報から判断しなければならないため、直感的な操作は困難です。送信されるカメラ画像を頼りに遠隔操作するクローラロボットは後者に該当します。

遠隔操作ではありませんが、例えば、クルマの運転でも後方や足下など死角が多く存在します。しかし、ある程度運転に慣れると、ルームミラーやドアミラーなどの限られた情報から、クルマの位置や状態を感覚的に把握できるようになります。当社のクローラロボットは、人が操作することを前提に開発しているので、操作性が良いものを提供することが大前提ですが、やはり同様に慣れてもらうことで、感覚的に操作できるようになると考えています。

ただし、点検をはじめとする作業効率の向上を図るためには、自律制御が求められるところもあります。まだ実装していませんが、今後は、この研究を進めていく予定です。

すでに導入実績のある床下点検ロボット「Anie」

上述のクローラロボットと併行して、最終製品として床下点検ロボット「Anie」の展開も始めています。
 床下の狭い空間に進入できるよう、サイズは380mm(全長)×220mm(幅)×220mm(高さ)と、小さくまとめ上げています。また、上述の高い段差乗り越え機能はそのままに、パン(水平可動)340°・チルト(垂直可動)90°の可動式カメラおよび高輝度LED照明を搭載し、暗い場所でも鮮明な画像を収集することができます。オプションで、地面より約150mmの高さ、周囲240°の障害物を検知する障害物センサを搭載することができます。

住宅床下点検ロボット「Anie」。サイズは、380mm(全長)×220mm(全高)×220mm(全幅)。最大乗り越え段差は84.5mm。2m離れていても壁面の亀裂などを識別可能な高輝度LEDを標準装備し、IP54レベルの防水・防塵性能を有する。オプションで障害物センサを搭載できる。 住宅床下点検ロボット「Anie」。サイズは、380mm(全長)×220mm(全高)×220mm(全幅)。最大乗り越え段差は84.5mm。2m離れていても壁面の亀裂などを識別可能な高輝度LEDを標準装備し、IP54レベルの防水・防塵性能を有する。オプションで障害物センサを搭載できる。

住宅床下点検ロボット「Anie」。サイズは、380mm(全長)×220mm(全高)×220mm(全幅)。最大乗り越え段差は84.5mm。2m離れていても壁面の亀裂などを識別可能な高輝度LEDを標準装備し、IP54レベルの防水・防塵性能を有する。オプションで障害物センサを搭載できる。

無線LANによる遠隔操作は、コントロール画面を見ながらジョイスティックで行います。画面には、床下のリアルタイム映像に加え、あらかじめスキャナーで取り込んだ図面上にAnieの現在位置および走行軌跡を表示します。家主さんに説明しやすいインターフェースになっています。
 また、撮影した写真を床下の位置とリンクしたかたちで保存でき、カメラ画像およびコントロール画面全体を記録することもできます。情報の共有化や報告書の作成も容易に行えます。

「Anie S-90」の操作画面。カメラの動きに合わせて床下の映像をリアルタイムに表示する。スキャナーで取り込んだ図面上にAnieの現在位置と走行軌跡も表示する。カーナビのように自己位置、向き、走行軌跡をわかりやすく表示できるため、家主への説明がしやすい。家主の安心感や信頼感を得ることを意識したインターフェースになっている。

「Anie S-90」の操作画面。カメラの動きに合わせて床下の映像をリアルタイムに表示する。スキャナーで取り込んだ図面上にAnieの現在位置と走行軌跡も表示する。カーナビのように自己位置、向き、走行軌跡をわかりやすく表示できるため、家主への説明がしやすい。家主の安心感や信頼感を得ることを意識したインターフェースになっている。

当社の開発では、特定の住宅メーカーさんと協業しているわけではありません。さまざまな住宅メーカーさんなどに提案を行い、そこから得たニーズを反映した結果、上述のようなシステムを開発しました。
 Anie単体ではなく、床下点検というソリューション群として提案しているのが、大きな特徴と言えるでしょう。

ただ、これまでの提案を通じて感じたのですが、床下点検の必要性を感じているメーカーさんと、そうでないメーカーさんとの間で温度差があります。中には、『床下点検は不要!」と言い切られるところもありました。家は経年による反りや歪みが発生するものなので、定期的な点検は欠かせないと思われるのですが・・・。
 しかし、大手の住宅メーカーさんに導入してもらうことができれば、そうした状況は一変するでしょうし、そうなるよう提案をしていく予定です。

提案に当たっては、価格が大きなポイントになると思います。単に床下点検が行えるだけでは、価格の低減が強く求められてしまいます。ですので、床下点検ロボットの利用により「点検精度が向上する」「点検にかかる作業プロセスが集約される」「メンテナンスの施工精度が向上する」、さらには、「点検作業が疲れない」といった価値を、住宅メーカーさんのビジネスモデルに組み込むことが必要ですし、これによってはじめて、提案する価値とロボットの価格とを一致できると思います。現在、そのような価値を整理しているところです。

また、住宅メーカーさんが利用イメージを膨らませられる素材の提示も重要になると考えています。
 実は、すでにある住宅メーカーさんにAnieを利用してもらっていますが、提案した際に、Anieを活用した床下点検サービス、つまり簡単なビジネスモデルも提示しました。家主さんが実際の点検の様子をリアルタイムに参照できて感動されたといったストーリーを絡めつつ、住宅メーカーさんが提供するカスタマーサービスの価値が向上することを示しました。
 当社が考えたストーリーなので、必ずしも実際の業務と整合性がとれてはいませんでしたが、それが起点となって、住宅メーカーさん自身で利用イメージを膨らませて下さいました。また、導入に向けて非常に前向きになられました。
 この経験から、ロボットを導入してもらうためには、ロボットに加え、このような素材の提示が必要なのではないかと感じされせらました*2

*2:一般に製品開発では、プロタイプ製作を通じてイメージを膨らませることで、顧客が共感してくれる機能などを検証する。同社の例では、ロボットをサービス分野に適用する場合は、ロボット本体に加えてサービスプロセスなどを含むプロタイプを提示することで初めて、顧客が共感してくれる機能やサービスの構築がイメージでき、導入に至ることを示したように感じられる。

2008年度は床下点検ロボットにとって重要な1年に

床下点検ロボット「Anie」を開発し、導入を果たしましたが、当社の事業のコアはクローラロボットおよび同モジュールの販売・共同開発にあります。さまざまな機器の足回りとして利用してもらうことを狙っています。
 さまざまな引き合いがあり、展示会に出展にするたびに新たな要望が寄せられます。潜在的なニーズは大きいと実感しています。しかしながら、当社だけで応えるのは困難ですので、作業アームや各種カメラを製造する専用メーカー、あるいはユーザー企業と連携を図りながら、1つひとつのニーズに応えていきたいです。

商品化に当たっては、安全面には万全を尽くしたいです。現在は、社内のリスクアセスメントの手法に沿って設計しています。非常停止ボタンを、ジョイパッドおよびロボット本体の押しやすいところに配置したり、産業機械と同様、2アクションにより操作意思を確認するような操作系*3を採用したりしています。また、クローラへの指の挟み込みや巻き込みがないよう、可能な限り隙間を小さくしています。Anieについては特にそうです。
 安全のつくり込みについては、すでにPL保険関連のコンサルタントの方に指導してもらっていますが、今後は、外部の専門家を交えて取り組むことを考えています。具体的には、安全工学研究所*4さんの安全鑑定を受けることを視野に入れていますし、鑑定を受けられるレベルにまで安全をつくり込みたいと考えています。

*3:産業機械の場合、オペレータによる起動操作の意思をいったん確認する目的として、スイッチガードのカバーを除去してから押す「スイッチガード付き押しボタン」などが用いられる。簡単な例だが、このような2アクションの操作をさせることで、誤操作を防止する対策がなされている。

*4:長岡技術科学大学の杉本旭教授が理事長を務める。安全鑑定を実施しており、これまでに三菱重工業の「wakamaru」や富士通の「enon」、松下電工の「HOSPI」などの安全鑑定を行っている。あくまで鑑定であり、第三者認証ではない。鑑定では、本質安全設計の考え方を求め、想定される危険源に対し、安全設計により十分リスクが低減できているかどうかを評価している。また、設計だけでは低減できない残留リスクについては、設計により可能な限り低減することを求め、ユーザーに説明責任を果たすことを求めている。鑑定は、残留リスクによりどのようなことが発生するのか、また、どのレベルであれば許容されるのかなどを考慮して行っている。

最後に、床下点検ロボットに言及しますと、2008年度は、同市場にとって重要な1年になると考えています。
 Anieを含め、現在提案されている住宅床下点検ロボットの多くは、レスキュー分野に向けて開発されていたものがベースになっています。災害は発生が予測できないものであり、民間用途との共用により成果を広げていくという考えから、1つの用途として床下点検に焦点が当てられています。
 2008年度は、複数のメーカーより床下点検ロボットが提供されると聞いています。ですので、普段は床下点検で使用しつつ不測の事態には利用する、という仕組みをつくるには良いタイミングですし、そうなるようにAnieの普及に努めたいです。今、その仕組みをつくる入り口にいるのではないかと感じています。


掲載日:2008年3月25日

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