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ロボ・ステーション


ロボットメーカーの開発戦略 次の一手はこれだ
受託R&Dを軸に"松下の子会社らしく"大きく成長していきたい【アクティブリンク】

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藤本 弘道代表取締役社長

藤本 弘道 Fujimoto Hiromichi

代表取締役社長
1970年7月生まれ。大阪大学大学院工学研究科修了。1997年、松下電器産業に入社。同社モータ社に配属となり、モータおよびモータ用磁石の開発に携わる。2002年、「パナソニック・スピンアップ・ファンド」に応募し、2003年6月に同社を設立、代表取締役社長に就任する。




城垣内 剛代表取締役

城垣内 剛 Shirogauchi Go

代表取締役
1967年7月生まれ。大阪産業大学 工学部電気電子工学科卒。1991年、松下電器産業に入社。同年、松下電子工業(現半導体社)に配属となり、LSIの自動設計システムの開発に携わる。その後、カスタムLSI(ASIC)設計部門に転属。自ら開発に携わったシステムでLSIを設計。2002年、「パナソニック・スピンアップ・ファンド」に応募。藤本社長とともに、2003年6月に同社を設立し、代表取締役に就任する。


松下電器の社内ベンチャーとして、また上肢リハビリアシストスーツの開発企業として知られるアクティブリンク。現在は、医療機器の認可を視野に入れた活動を展開しつつ、作業現場で利用できるパワーアシストの開発にも力を注いでいる。「パワーアシスト」という切り口から事業展開を図る、同社の活動状況および今後の事業拡大に向けた取り組みについて、藤本社長と城垣内取締役に聞いた。また、同社の起業の経緯およびビジネスモデルについても説明してもらった。

事業になりそうなニオイを見せる

当社は、2001年4月〜2004年3月まで運用された、社内ベンチャー支援制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」(PSUF)*1を活用して設立した企業です。2002年に応募し、約1年間の検討期間を経て、2003年6月に起業しました。
 主に企業からの委託によるR&Dサービス(受託R&Dサービス)を本業としており、現在は、脳卒中患者用上肢リハビリアシストスーツをはじめとするパワーアシスト機器の研究開発が事業の中心になっています。受託開発したものが商品となり、そこからロイヤリティ収入を得る、というビジネスモデルを掲げています*2

*1:2001年4月から2004年3月まで運用。年3回募集した。「本体への将来的な貢献度」「社外で取り組む有効性」「事業規模」「独自性と市場性」や、提案者自身の「経営者としての適正」などをポイントに、外部機関の支援を得て事業のブラッシュアップと審査を実施して選定された。3年目で単年度黒字、5年目で累損解消をすることが事業継続の見極めとなっている。出資比率は、松下電器が51%以上、提案者本人が30%以下、外部30%以下。アクティブリンクでは、松下電器が99%、藤本社長が0.5%、城垣内取締役が0.5%だった。

*2:アクティブリンクでは、産学連携で国や地方の研究助成、研究助成事業に積極的に申請を行うことで、経営リスクを低減している。また、商品化する企業単独での研究補助事業への申請についてもコンサルティングを行うことで、委託企業の経営リスクも軽減している。

パワーアシスト機器の開発企業として知られるようになっていますが、PSUFに応募した当初は、異なる事業を提案していました。藤本社長はパワーアシスト向けセンサの開発プロジェクトを、城垣内取締役はLSI設計システムの開発プロジェクトをそれぞれ提示していました(最初の企画は2001年9月に提出)。
 当時、社内ベンチャーを志す社員は、研修期間として都内で寮生活をしながら鍛え上げられていくシステムになっていました。そこで互いに知り合うことになり、2人の企画を融合した結果、上述のビジネスモデルになるわけです。そのときから、すでに上肢リハビリアシストスーツの企画を提示していました。

最終的には、実際に装着して体感できるものを提示できたので、われわれの事業を理解してもらえましたが、このようなハイペースな試作機の開発を通じて、2人の提案力にも納得してもらえました。それが、事業化を承認されるポイントの一つになったと思います。当時、一緒に取り組んだ試作メーカーさんとは現在も付き合っており、当社のビジネスモデルを支えています。
 また、試作機の開発では、機能を見せることはもちろん将来、収益につながることを見せることに腐心しました。すなわち"事業になりそうなニオイ"を見せるということです。社内ベンチャーとはいえ、そうした雰囲気を経営側に見せることは非常に重要であり、うまく伝えられたからこそ、起業に至ったと考えています。

上肢リハビリアシストスーツの提供は未定

すでに発表している上肢リハビリアシストスーツは、脳卒中患者のリハビリ用として開発しています。半身麻痺の患者さんが装着して使用し、麻痺のない腕の動きに合わせて麻痺した腕を動作させます*3
 現在、兵庫県立総合リハビリテーションセンターにて実証実験を行っており、そこでは、どのような動作が効果的なのか、また正しい動作なのか、といった内容を検証しています。併せて、脳に与える影響なども評価しています*4

*3:上肢リハビリアシストスーツの安全に関連すると、アクティブリンクでは松下電器の安全基準に従って、また、同社の安全の専門家を交えて、安全のつくり込みを行っている。家電を対象にした内容であり、相当細かく規定されているという。
 なお、アシスト力は、万一システムが暴走しても関節に影響を及ぼさないよう、また、関節の力で戻せるよう低く設定しているという。

*4:脳卒中のリハビリについては、脳に対して、どの程度のリハビリ効果があるのかは不明なことが多い。また、どの程度、腕を動かせば脳機能の回復に効果が得られるか、といったことも解明されていないという。こうした現状も踏まえて検証を行っている。

上肢リハビリアシストスーツで使用している空気圧式ゴム人工筋。コンプレッサーから空気を送り込んで伸縮させる。「マッキベン型人工筋」とも呼ばれる。マッキベン型人工筋は、ゴムチューブとその周りを被覆する網目状のスリーブから構成され、ゴムチューブに空気を入れると円周方向に膨張し、かつスリーブの拘束力により軸方法に収縮することで力が得られる。

上肢リハビリアシストスーツで使用している空気圧式ゴム人工筋。コンプレッサーから空気を送り込んで伸縮させる。「マッキベン型人工筋」とも呼ばれる。マッキベン型人工筋は、ゴムチューブとその周りを被覆する網目状のスリーブから構成され、ゴムチューブに空気を入れると円周方向に膨張し、かつスリーブの拘束力により軸方法に収縮することで力が得られる。

本来は、上肢リハビリアシストスーツについて説明したいことが多々ありますが、医療機器・医療用具の許認可の都合上、現時点では情報は開示できません。
 ただし明確に言えることは、当社は受託R&Dが本業ですので、当社でビジネスを展開するのではなく、事業パートナーに対して技術移転を行い、そこで製造販売してもらうということです。実証実験が終了し、かつ技術移転がなされたら、商品化の時期など詳細を話すことができると思います。

製造現場に向けたパワー増幅システムの提供

上述の上肢リハビリアシストスーツの開発と併行して、パワー増幅システムの研究開発も進めています。
 1つは、「岐阜・大垣ロボティック先端医療クラスター*5」の支援を受けて開発した、下肢パワーを増幅する「パワーペダル」です。立命館大学 金岡克弥先生との共同研究でもあります。
 力覚センサにより脚力の大きさと方向を検出し、その情報をもとに関節駆動力を算出してパワー増幅を行います*6。下肢パワーを直感的に増幅することにより、下肢機能が不自由な人でも歩行できることを目指しています。

*5:ロボット技術やVR技術、ITなど地域の研究を核に、域内外の関連企業が参加・結集して、医学教育から臨床現場の応用、福祉介護の現場への適応に至るシステムの開発を行っている。具体的には、「低侵襲微細手術支援・教育訓練システムの開発」、「医療診断支援システム」、「医療介護支援システムの開発」の3テーマを柱とした研究開発事業を展開し、同地域に「ロボティック先端医療クラスター」の形成を目指している。

*6:「仮想パワーリミッタシステム」の導入により、安定したパワーアシストを可能にしている。同システムは、ロボットから人に流入するパワーを適切に制限することにより、ロボットからの力学的な作用により人に危害が及ぶことを防ぐもの。具体的には、人とロボットとの力学的な相互作用を常にモニタリングし、ロボットから人へ過大なパワーの流入を検知すると、それを抑えるよう制御に介入する。パワーの流れから、人が主体にロボットを動かしているのかどうかを判断することで、システムの安定性を保証している。力覚センサで検知した情報をもとにPC上で処理していることから、「仮想」という名称が付けられている。

立命館大学 理工学部 ロボティクス学科と共同開発している下肢パワー増幅システム「パワーペダル」。福祉用途での利用を目指している。

立命館大学 理工学部 ロボティクス学科と共同開発している下肢パワー増幅システム「パワーペダル」。福祉用途での利用を目指している。

もう1つは、エアハンマー鍛造作業者のパワーアシストに向けた開発です。岐阜県のまこと工業さんと共同開発を進めています*7
エアハンマー作業は、ハンマーで加熱した金属材料を叩いて成形しながら強くする工程です。ワークが柔らかいため、また、ハンマーが上がるタイミングに合わせた、金型間でのワークの移乗が難しいため自動化が難しく、熟練作業者がワークのハンドリングを行っています*8。ハンマーが落ちる瞬間に、ワークの把持を少し緩めるなど微妙な調整が要求されるようで、このような熟練技能にかかる作業負担の軽減を目指しています。
 こうしたモノづくりの現場ではタクトタイムが厳しく問われるので、細かい作業改善に苦慮していますが、少子高齢化という世の中の流れに合致した開発だと思います。

*7:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」(中小ものづくり高度化法)に基づく「特定研究開発等計画」の認定を受けている。「エアハンマー鍛造作業者の熟練技能者継承のための作業負担軽減パワーアシストシステムの開発」として進められている。  同法律は、中小企業のものづくり基盤技術の高度化を支援することにより、わが国製造業の国際競争力の強化および新たな事業の創出を図ることを目的としたもの。2006年6月13日に施行された。自動車産業、情報産業等の川下産業のニーズを踏まえた、鋳造やめっきなど特定ものづくり基盤技術に関する研究開発などの計画を作成することで、経済産業大臣(経済産業局長)の認定を受けることができた。認定件数は、金型技術分野で60件、切削加工技術分野で48件、金属プレス加工技術分野で34件など、全国で399件、対象となる中小企業は708社。

*8:3つの金型を用いて成形している。左右に粗成形型、中央に仕上げ型を配置しており、ワークは、これらの間を移動させる。導入企業では、ロボットアームによるワークのハンドリングを検討したが、ワークが柔らかいために型から離れないことが間々あり、型の上下動によりアームが損傷することが想定された。ゆえに、ロボットアームでの対応は不可能と判断し、パワーアシストによる対応を考えたという。

これ以外にも、さまざまな作業現場を見て回り、パワー増幅システムを導入できるような場を模索しています。ただ、現状の技術レベルではなかなか難しいです。しかも、どのような切り口で提案するかも重要です。
 例えば、建設作業の現場にパワー増幅システムの導入を提案したとします。すると従来、人が持ち運べるサイズにカットしていた鋼材などを、より一層の作業効率の向上を図るべく、より大きなサイズにカットしよう、という話しになるはずです。そうなると、そのサイズに対応できるパワー増幅システムへの変更が求められることになります。パワー増幅に限らず、ロボット開発では、このような"卵が先か鶏が先か"という類の話にぶつかりがちです。

とはいえ、コストダウンにつながる提案ができれば、また、経営効率への寄与度を提示することができれば、導入につながるはずです。開発機器の機能を押さえつつ経営効率を考慮した開発は重要であり、これを当社の開発戦略にしています。

パワーアシストという切り口で事業拡大を

以前、当社では「ソフトメカトロニクス」という概念を提唱していました。「生体との親和性を医学的および工学的見地から考慮したメカトロニクス」というものです。最近は、これに代わり、当社の技術を総称する表現として、「Mechanical Direct Force Feedback System」(MDFFS)を利用し始めています。
 当社のシステムには、すべて人が介在しています。人のアクションをシステム側が感知し、感知した動作を人にフィードバックすることで成立しています。ここにポイントがあるわけで、それを表現したのがMDFFSになりますす。当社のコアコンピタンスに据えています。

一方、松下電器では、ロボット開発のコンセプトとしてこれまで「MECHANORG」(Mechano+Organism)を提唱しています。汎用的なロボットではなく、機能を限定した真に役立つロボット、つまり道具としてロボットを捉えていることを表現したものです*9。当社の経営はわれわれの裁量に任されていますが、こうした松下電器のロボット戦略からは外れないようにしています。

*9:松下電器では、人と共存するロボットのコンセプトとして「安心」「安全」「アシスト」を掲げている。また、汎用的な作業を行うロボットではなく、機能を限定した真に役立つようなロボットが必要と考えている。このような"道具型ロボット"のことをヒューマノイドに対し、メカノーグ(MECHANORG)と定義している。このような考えに照らし合わせると、2足歩行ロボットは真に役立つものと考えられないため、松下電器では2足歩行ロボットを開発しいていないのだという。

「試作機の開発では、機能をきちんと見せることはもちろん将来、収益につながることを見せることにも腐心した」と、話す藤本社長。現在、進めている上肢リハビリアシストスーツの開発については、「実証実験を滞りなく進め、早々に提供できるようにしたい」と話す。 「エアハンマー鍛造での応用は、思いも寄らぬニーズだった」と、話す城垣内取締役。熟練作業者の技能継承という目的があるが、「タクトタイムが厳しく問われるため、その導入には苦慮している」と話す。

「試作機の開発では、機能をきちんと見せることはもちろん将来、収益につながることを見せることにも腐心した」と、話す藤本社長。現在、進めている上肢リハビリアシストスーツの開発については、「実証実験を滞りなく進め、早々に提供できるようにしたい」と話す。(左)
「エアハンマー鍛造での応用は、思いも寄らぬニーズだった」と、話す城垣内取締役。熟練作業者の技能継承という目的があるが、「タクトタイムが厳しく問われるため、その導入には苦慮している」と話す。(右)

また、強く意識していることは、『○○ロボット』という名称で販売しなければならないものでは売れないということです。
 極端な例を挙げると、最近の松下電器のエアコンは「掃除ロボット」と「気流ロボット」の搭載をウリにしていますが、既存のエアコンの付加価値としてロボットを捉えているからこそ成功しているのだと思います。逆に、ロボットの付加価値としてエアコンを搭載すれば、間違いなく売れないでしょう。それが持つ機能や、人との関係性が見えてこないからです。
 すでに紹介した、上肢アシストスーツもロボットではなく、リハビリ機器としてイメージが伝われば、売れるものになるはずと考えています。それはユーザーがロボットを所有したいのではなく、効果的なリハビリをしたいと考えているはずだからです。

これらを念頭におきつつ、パワーアシストおよびMDFFSという切り口に合致するニーズをうまく拾い上げて、新たな製品を提案し、うまく売上げにつなげていきたいです。そして、"松下電器の子会社っぽく"事業を拡大していきたいです。  (談)


掲載日:2008年3月18日

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