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ロボ・ステーション


ロボットメーカーの開発戦略 次の一手はこれだ
ロボットを所有する喜びを味わってほしいです【タカラトミー】

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渡辺 公貴

渡辺 公貴 Watanabe Kimitaka

マーケティング統括本部 戦略開発室 シーズ開発グループ グループリーダー
1960年生まれ。1984年3月、同志社大学 工学部 機械工学科卒。同年4月、精工舎(現セイコーホールディングス)に入社。設計部、海外事業推進部などに在籍したほか、技術部 技術課 マネージャーを務める。1996年、ハスブロージャパンに入社。1999年、トミーに入社し、ハスブロー事業本部に在籍する。2001年よりグローバル事業本部 グローバル企画グループにて、また05年よりインターナショナル事業本部 シーズ開発グループにて、グループリーダーを歴任。06年3月、合併に伴いタカラトミーへと社名変更し、5月には戦略開発室 戦略開発グループ グループリーダーに就任。翌6月より現職に就く。また、同志社大学にてプロジェクト科目「玩具の企画開発」で専任講師を務める。

タカラトミーは、量産型では世界最小となるヒューマノイドロボット「i-SOBOT」を開発した。特筆すべき点は、3万円以下という低価格でありながら、サーボモータを17個搭載し、さまざまなアクションを可能にした点である。10万円程度する、既存の2足歩行ホビーロボットを凌ぐ機能を実現している。
 玩具メーカーである同社が、このようなロボットを開発した背景について、マーケティング統括本部 戦略開発室 シーズ開発グループの渡辺公貴グループマネージャーに聞いた。また、i-SOBOTを通じて伝えたい思いなども語ってもらった。

「小さく」という切り口から企画

2007年10月、量産型では世界最小となるヒューマノイドロボット「Omnibot 17μ i-SOBOT*1」(以下i-SOBOT)を発売しました。サーボモータユニットを17個、ジャイロセンサをそれぞれ搭載し、バランスをとりながらの多彩な動作を可能にしつつ、価格を2万9,800円(税別)に抑えたことなどで注目されています。

*1:i-SOBOTは、「世界で最も小さな量産されている人型ロボット(The smallest humanoid robot in production)」として、ギネスに認定されている。サイズは165mm(全高)×100mm(全幅)×67mm(奥行き)、重量約350g。「Omnibot」は、同社が「家庭にロボットがやってくる」というコンセプトのもとに開発したロボットシリーズの総称。1984年より展開している。

国内版は白と青のカラー。陽気なキャラクター設定にしている。話す言葉は約180。行動パターンは約200種類。効果音は約90種類。音楽を5曲演奏できる。国内での販売目標は、初年度が5万台。
デザインについては、サーボユニットμをフレームでつなぎ合わせたフレーム構造を採用している。外装カバーを付加することで格好良い外観をもたせることも考えられるが、「動きが制約され、外観がもつ雰囲気と動作性が乖離してしまう」(渡辺さん)といった理由もあり、このようなデザインになったという。
北米版はブラックのカラーで販売。その渋い外観から、国内版と比較してかっこいいキャラクター設定にしている。ワールドワイドでの初年度の販売目標は、国内販売を含め30万台を掲げている。

当社では、旧トミー時代の2002年に、これも世界最小となる動物型ロボット「マイクロペット」を発売しています。ワールドワイドで約1,000万個を販売できました。これを企画した後、マイクロペットをはじめとする「Micro Entertainment」という開発ロードマップを作成しました。「小さく」という切り口から、縦軸に「機能」を、横軸に「価格」をとり、開発テーマを整理したものです。i-SOBOTは、このロードマップ上で構想した小型2足歩行ロボットとして開発しました。
 このロードマップは、2002年の秋から翌2003年の春頃にかけて構想し、小型2足歩行ロボットについては4年後ぐらいをメドに開発することを考えていました*2。世界最小の無線操縦ヘリコプター「ヘリQ」を含め、ここで考えた企画の9割はすでに商品化しています。

*2:i-SOBOTの開発プロジェクトは、正式には2004年11月からスタートしている。翌年1月の企画会では設計担当の米田陽亮氏による試作機を提示したが、技術的にもコスト的に厳しいのではという否定的な意見があがり、1年ほどプロジェクトを中断したという。合併した2006年3月より再スタートしている。

2006年5月に発表したi-SOBOTの前身となる試作機「マイクロマシン」。このときはまだ配線は外側に出ていた。サイズは15cm程度で重量は約300g。関節自由度が17軸、ジャイロセンサを1個搭載している点は変わらない。

また玩具の企画では、当社の「トミカ」に代表されるように、実際には大きな製品を小さなスケールにして提供する案が、当然のように提示されます。
 2000年に、本田技研工業さんが初代「ASIMO」を発表されて以来、2足歩行ロボットの人気が急速に高まっていました。このようなロボットを小さなスケールにして提供したいという思いが自然に沸き上がってきました。これも開発の背景にあったと言えます。

ただし、ヒューマノイドロボットを目指す以上、きちんと歩行できるものを開発することを条件としていました。
 ASIMOが発表された後、複数の玩具メーカーさんよりヒューマノイドロボットが販売されました。ヒューマノイドと言っても、すり足で歩行するものばかりでした。聞くところによると、いずれも売れ行きは芳しくなったようで、きちんと歩行できるものでないと評価されないことを感じていました。したがって、きちんとした歩行を可能にする機能のつくり込みには注力しなければならないと考えました*3。それが後述する、独自のサーボモータユニット「サーボユニットμ」の開発につながるわけです。

*3:開発チーム内には、2足歩行ロボットの開発はレベルが高いため、それを避けようとする声があがったようだが、製品が与えるインパクトを考慮し、2足歩行にこだわって開発したという。ただし、短い開発期間などを考慮して、静歩行を採用している。また、動歩行を採用することでフットプリントが大きくなることを避けたいという判断もある。

なお今回、i-SOBOTを発表しましたが、当社ではヒューマノイドばかりを「ロボット」と捉えているわけではありません。上述のマイクロペットは動物型ですし、1984年より展開している「Omnibot」シリーズと91年に発売したラジコンロボット「TXR」は車輪で駆動しました。ほかにも、ユニークな商品を販売していますが、広い概念でロボットを捉えて開発に臨んでいるのが当社のスタンスです。

評価が高いサーボユニットμ

i-SOBOTを高機能ながら低価格で提供できた最大の要因は、サーボユニットμの独自開発にあります。

当社に入社する以前、精工舎(現セイコーホールディングス)に在籍し、「セイコー」ブランドの置き時計や掛け時計の開発に従事していました。開発したサーボユニットμで使用した歯車と同程度の精密部品を数多く扱っていた経験から*4、自分なりにその具現性を確信し、i-SOBOTを企画したという経緯があります。

*4:「i-SOBOTの生産については、通常の玩具の生産技術のレベルでは対応することは難しいが、自身がバックグランドとしてもっている生産技術と同等のレベルだったこともあり、うまく製品設計から量産設計に橋渡しすることができたのでは」と、渡辺さんは振り返る。

ところが、当社では初めてサーボモータを開発するということもあり、実際に取り組むと技術的なハードルが非常に高かったです。各構成部品のつくり込みには、相当な時間と労力を費やしており、例えば、モータの選定だけでも7、8回程度変更していますし、使用した歯車の金型も何度かつくり直しています。搭載したばねに至っては、その製作が難しく、複数の専門メーカーから開発を断られてしまったほどです。

開発したサーボモータユニット「サーボユニットμ」。サイズは25.5mm(高)×23mm(幅)×8.5mm(奥行)。最大稼動角度約220°。クラッチも内蔵している。サーボを同時に動かす2足歩行ロボットでは瞬間的に大電流が必要になることなどを考慮して、電源には三洋電機の「eneloop」を採用している。

技術の詳細はあまり明かせませんが、開発したサーボユニットμの構成を見ると、モータメーカーさんがホビーショップで販売された場合、3,000〜5,000円程度になると予想されます。ゆえに、独自開発により低価格化を図ったことは、全体コストの低減に大きく寄与したと言えるでしょう。

また、その設計についても高い評価を受けています。国内有数の歯車メーカーさんからは「非常に効率よく設計されていますね!」というコメントをもらっています。大手精密機器メーカーさんや、競合するホビーロボットメーカーさんからも、外販を求める声が寄せられているほどです。どうやら、サーボユニットμの完成度が高いために、i-SOBOTを部品のように捉えている方が多いようです。

ただし、i-SOBOTは完成体として販売*5していることを考慮して、幾分か動きを抑えています。ホビーロボットであれば、歯車などに破損が発生した場合、ユーザー側で交換すればよいでしょうが、完成体であるi-SOBOTでは、そのような対応を求めるわけにはいきません。歯車などにかかる負荷とスムーズなアクションを両立できるレベルで、動作速度などをバランス良く調整しています。

*5:i-SOBOTの組立は、ベルトコンベヤ方式で生産している。同社では、幼児向けのロボットの組立ではセル生産方式を採用しているが、i-SOBOTに関しては技能の習熟度が要求され、また、それを組み立てられるレベルの多能工を育成できていないという事情から、その方式を採用しているという。また、生産台数が多いという理由もある。ただし、完全なベルトコンベヤ方式ではなく、多少は変更を加えているという。開発段階で組立性などに配慮した設計を行っているため、容易に組み立てられるという。なお、サーボユニットμなど主力部品は国内で調達しているという。

ロボットを所有する喜びを与えたい

i-SOBOTの機能に関して、よく既存の2足歩行ホビーロボットなどと比較されますが、私個人としては、比較対象になるようなものはないと考えています。
 専用コントローラで直接操作できるうえ、これで作成したプログラムや、あらかじめ設定されたプログラムでも楽しむことができます。さらに、音声で命令することもできます。音声認識*6は、ほかのホビーロボットでは見られない機能です。
 当社は玩具メーカーですので、i-SOBOTを“自分の友達”と感じてもらえるものにしたいと考えていました。そのためにはコミュニケーションをとれることが必要であり、音声認識は不可欠だったと言えます。友達であることを強調できるよう、陽気なキャラクター設定(国内版のみ)にしています。

*6:10種類の言葉によりロボットに命令が出せる。「ぜんしん」、「こうたい」、「ひだりせんかい」、「みぎせんかい」、「アクション、スタート」、「こんにちは」、「かっこいいね」、「あぶない」「なにかおもしろいことして」、「あいそぼっと」。音声認識マイクは首の横に搭載している。

また、i-SOBOTを通じて「ロボットを所有する喜び」を感じてもらいたいです。かつては想像の中だけのものであったり高価なものであったりしたロボットが身近な存在になり、かつ手に取れるようになったことを実感してほしいです。
 こうした考えがあり、購入層には“ロボット好き”の30代や40代の方を中心に、初代の「鉄腕アトム」をリアルタイムでご覧になっていた50代の方などを想定していました。
 ところが、それ以上の60代の方にも楽しんでもらっているようで、おじいさんのプレゼントとして購入された方がいたという話を耳にしています。i-SOBOTを購入されたお父さんと子どもが親子2代で楽しんでもらうことを想定していましたが、どうやら親子3代で所有する喜びを感じもらえているようです。

今後の展開については、現段階では話しづらいですが、さまざまなアイデアがあることは確かです。キャラクター設定を変更したものを発表するかもしれませんし、より運動性能を向上したものを出すかもしれません。また、小さいサイズのロボットがつくれると、大きなサイズのものを開発できることが分かりましたので、大きなサイズのロボットを発表するかもしれません。少なくとも、みなさんが容易に想像できるようなものを発表することはないでしょう。

上述の通り、i-SOBOTは所有の喜びを与えるロボット玩具として提供しています。ただ、最近のわが国の情勢を見ると、「理科離れ」が進み、理工系大学の志願者が減少しています。将来、ロボットの設計・開発に携わるであろう人たちが少なくなっています。若い人たちがi-SOBOTの所有を通じてロボットに興味を抱き、理工系に進むことを考えてくれるとうれしいです。i-SOBOTの提供が、そのような方の増加につながることを願っています。

企業データ

タカラトミー

〒124-8511 東京都葛飾区立石7-9-10

参考Webサイト

i-SOBOT公式ページ


掲載日:2008年2月26日

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