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ロボ・ステーション


ロボットメーカーの開発戦略 次の一手はこれだ
床下点検ロボットを軸に事業化に向けた活動を展開しています【三洋電機】

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寺崎 肇部長

寺崎 肇 Terasaki Hajime

研究開発本部ヒューマンエコロジー研究所メカトロシステム研究部 部長。工学博士。
1983年、京都大学工学部精密工学科卒。同年、三洋電機に入社。筑波研究所にて知能ロボットの研究に従事する。1997年10月から2000年7月まで米国シリコンバレーに駐在。 2000年8月より、ハイパーメディア研究所にて、米国ベンチャー企業と共同でウェアラブル機器の開発に携わる。2004年4月よりメカトロシステムの研究開発を担当し、現在に至る。1988年に計測自動制御学会論文賞を、1991年には日本ロボット学会研究奨励賞をそれぞれ受賞。2005〜06年度にかけて日本ロボット学会理事を務める。

床下点検ロボットは現在、市場の立ち上げが最も期待されている分野の1つである。三洋電機は、今後の床下点検サービスの活性化を睨み、実用に耐える床下点検ロボットを発表した。すでに事業化に向けた活動を展開しているという。
 同社メカトロシステム研究部の寺崎肇部長に、開発したロボットの特徴、顧客満足の創出を意識したシステムのつくり込みなどを聞いた。

活性化が期待される床下点検サービス

今回、発表した戸建て住宅向け床下点検ロボットの開発を始めたのは、2004年の秋頃からです。それ以前からも、民生用ロボットの開発を行っており、家庭用掃除ロボットや業務用掃除ロボット、国の委託を受けて取り組んだ身障者の移載装置などを開発しました。約20年前からロボット開発を行っています。

今もそうですが、ロボットへの期待は非常に高く、要求される技術レベルは高いです。ですので、ロボットという具体的なシステムとしてまとめ上げるよりむしろ、各種要素技術の向上に主眼を置いて研究開発を続けてきました。
 具体的には、ロボットにはインテリジェンスが要求されることから、自律性を確保するための各種センシング技術やリアルタイム制御技術の開発に取り組みました。前者には画像処理技術も含まれています。そのほか、自律移動に欠かせない移動機構の研究にも取り組んできました。
 このように、各種要素技術を開発し確保していたからこそ、床下点検ロボットという1つのシステムとして、すぐにマーケットに提示することができたのです。

住宅点検というマーケットに目を向けると、「センチュリーハウジングシステム*1」認定住宅の点検作業が始まる頃だと言われています。これは 100年間快適に住める耐久年数の長い住宅を供給するシステムのことで、住宅部品などの点検や取り替えをしやすくすることを前提に設計されています。そして、そろそろ迎えつつある10年目の点検作業には、点検項目として床下点検が加えられると聞いています。

*1:1980年に建設省が推進した住宅システム。100年間快適に住める耐久年数の長い住宅を供給するシステムのことを指す。モジュラーコーディネーションを取り入れ、設計・生産・維持管理にわたるトータルなシステムで耐用年数の長期化を図っている。頭文字をとって「CHS」と略される。

床下点検は、おもに壁面のクラックや断熱材の剥がれ、配管の水漏れ、蟻道(シロアリなどの移動跡)にポイントを置いてなされています。
 ただし、戸建て住宅の床下は、高さ30〜40cmという狭いスペースであるため作業者への負担は大きく、調査に時間がかかります。しかも、実際に点検をして、上記のような異常が発見されないケースが多いようで、作業効率に課題があります。また、作業者による点検作業では、家主さんが点検の様子を確認することができません。点検作業の透明性という課題もあります。

したがって、床下点検にロボットは必要とされていると言えますし、また、マーケットの動向を見据えた結果、床下点検ロボットを開発したのです。

開発した床下点検ロボット。

開発した床下点検ロボット。本体寸法420mm(長さ)×260mm(幅)×200mm(高さ)。重量9.6kg(バッテリー含む)。乗り越え可能段差高さ85mm。連続使用時間は140分。なお、赤線で囲んだパーツは今後の機能拡張に重要なものだという。


高い操作性とリアルタイム表示が特徴

発表した床下点検ロボットは、複数の住宅メーカーさんのニーズを直接聞きながら開発したものです。必要な機能を整理するところから取り組みました。

大きな特徴は、障害物回避機能などを備えることにより、簡単な遠隔操作を実現していることです。カメラの両脇に設置した距離センサで障害物との距離を計測することにより、ロボット自身が前後の障害物を自動的に回避します。また、壁際に沿った前後走行もでき、ロボットの幅ぎりぎりの狭いスペースでも走行することができます。
 ロボットが捉えた画像をもとに、マウスやジョイパッドで遠隔操作を行いますが、これだけの情報では安定した走行をさせるのは容易ではありません。この機能を備えることにより、細かな操作をしなくても、狭い通路でも安定して走行することができます。
 加えて、画像処理技術により通気口の位置を自動で認識できるため、「通気口通過」ボタンをクリックするだけで、自動的に通気口を通過して次の区画に移動することができます。

距離センサにより障害物との距離を計測して自動的に回避する。また、狭い通路も通り抜けることができる。画像処理技術により通気口の位置を自動的に認識し、「通気口通過」ボタンをクリックするだけで自動的に通過できる。

距離センサにより障害物との距離を計測して自動的に回避する。また、狭い通路も通り抜けることができる。(左)
画像処理技術により通気口の位置を自動的に認識し、「通気口通過」ボタンをクリックするだけで自動的に通過できる。(右)


前進ボタンを押すだけで狭い通路でも安定して通り抜けることができる。

前進ボタンを押すだけで狭い通路でも安定して通り抜けることができる。


前進ボタンを押すだけで狭い通路でも安定して通り抜けることができる。
前進ボタンを押すだけで狭い通路でも安定して通り抜けることができる。

またリアルタイムで、かつわかりやすく点検作業を画面表示できることも、大きな特徴です。
 映像スケール表示機能を備えており、拡大表示の際には縮尺を表示して、実際の大きさをイメージしやすくしています。仮に壁面に汚れやクラックが見つかったとしても、わきで点検の様子を眺めている家主さんに必要以上に不安を与える心配がありません。また、画面下部に周囲の映像を表示するサブ映像ウィンドウが設けてあり、家主さんに、どの区画で何を点検しているのかも容易にわかるようになっています*2

*2:点検前には、対象となる住宅の図面をスキャナーやデジカメで読み込み、それにスケールを入力しておく。これにより床下点検ロボットが現在、どこにいて、どの方向を向いているのかがわかる。通常、住宅メーカーに地図が保存されているため、地図生成機能は持たせていない。

マウスで2点を指定することにより2点間の距離を測定できる。クラックなどのサイズを正確に把握できる。 メイン画面を切り替えることにより、あらかじめ取り込んだ図面上に走行軌跡を表示する。

マウスで2点を指定することにより2点間の距離を測定できる。クラックなどのサイズを正確に把握できる。(左)
メイン画面を切り替えることにより、あらかじめ取り込んだ図面上に走行軌跡を表示する。拡大表示の際には、画面下部にズーム前の周辺映像を表示し、どこを点検しているのかがわかる。ズームは、閲覧したいエリアをマウスで指定するだけで行える。ズームは26倍まで可能。(右)

さらに、床下地図上に点検個所と写真や点検結果を関連づけて簡単に記録できるなど、その場で点検結果をレポート作成できる機能も備えています。従来は点検後、オフィスに結果を持ち帰って編集作業を行い、後日家主さんに手渡す作業が必要でした。そうした手間がなくなり、家主さんへの負担軽減が期待されます。

点検結果をその場でレポート出力できる。床下地図上に点検個所と写真や点検結果(クラックのレベルなど)を関連づけて記録できる。定期的に実施した点検結果を履歴情報として保存できる。

点検結果をその場でレポート出力できる。床下地図上に点検個所と写真や点検結果(クラックのレベルなど)を関連づけて記録できる。定期的に実施した点検結果を履歴情報として保存できる。


開発を始めた当初は、点検作業の品質および効率の向上を中心に住宅メーカーさんと議論していました。作業品質の向上とは、例えば目視では確認できないような個所も確認できることや、作業員の経験に左右されない安定した点検などを指します。ロボットを利用する住宅メーカーさんの視点で議論していたと言えるでしょう。
 しかし途中からは、顧客である家主さんの視点で、つまりCS (Customer Satisfaction)を重視して議論をするようになりました。その結果、上述のような画面表示やレポート作成機能の開発につながっています*3

*3:同社が開発したシステムは、サービスにおけるフロントステージとバックステージを意識したものになっていると言える。前者は、顧客との関係を構築する役割を担う作業プロセス。後者は、顧客との接点がない作業プロセスであり、肉体労働が中心となる。床下点検ロボットによる点検作業は作業品質の向上を可能にし、結果、顧客満足度の向上につながるが、顧客との関係の構築という点ではやや弱い。したがって、家主にもわかりやすい画面表示機能により、顧客に信頼感・安心感を与えることを狙っている点はフロントステージを意識したものと言える。住宅メーカーにとっては非常に魅力的なシステムに見えると思われる。

メンテナンスが必要な個所を伝えることも大事ですが、それ以上に、一緒に点検の様子を見ている家主さんにメンテナンスが不要であることを伝え、安心感を与えたいという意向を、住宅メーカーさんは持っておられるようです。それが顧客満足の創出につながるようで、上述のような特徴を持つ当社の床下点検ロボットは、それに寄与できると言えます。

床下点検ロボットの普及に追い風

開発した床下点検ロボットは現在、複数の住宅メーカーさんに評価をしてもらっています。評価結果をもとに最終仕様の検討に入り、2008年の秋頃にはテスト販売に漕ぎ着けることができればと考えています。もちろん、評価してもらっている住宅メーカーさんのほか、床下点検ロボットを導入する意向を持つ住宅メーカーさんなどにも提供するつもりです。

ただし、すでに生活家電事業部にて事業化に向けた活動に入っているので、具体的な販売時期や販売台数などは、事業部の判断に委ねられることになります。操作マニュアルの作成やメンテナンス体制の構築なども求められますが、これらも視野に入れた検討がなされています。

今後の開発に関しては、まずは実使用に耐える信頼性と耐久性を持たせることを目指しています。ひとことで言えば、より完成度を高めるということです。また、より一層の操作性の向上も目指す予定です。
 それ以外に関しては、現段階では明言できないことが多いですが、強いて言えば、バリエーション展開の検討が考えられると思います。5年目点検と10年目点検とでは点検内容は異なりますし、床下の状態も大きく違うはずです。ですので、比較的単純な点検作業ができるタイプや、古い住宅向けの複雑な点検作業ができるタイプなどを提供することが考えられると思います。今回発表したものが基本プラットフォームとなるのか、あるいは、もっと機能を絞り込んだものが、逆に付加したものがそれになるのかという議論も含めて、住宅メーカーさんの評価をもとに、今後の検討課題を抽出したいです。

最近は、大手の住宅メーカーさんの新築住宅では、定期的に点検を行う長期保証システムが当然のように用意されています。今後は中堅の住宅メーカーさんも、この動きに追随することが予想されています。
 また、国政レベルで中古住宅の流通が検討されていると聞いています。それを活性化させるためには、家の築年数や間取りなどの基本的な情報に加え、床下点検を含む住宅点検作業の履歴情報も必要になるはずです。
 これらは、当社の床下点検ロボットの普及にとって大きな追い風になるはずですし、その普及を通じて、床下点検サービスの信頼性の向上につながることを期待しています。 (談)

企業データ

三洋電機株式会社

〒570-8677 大阪府守口市京阪本通2-5-5


掲載日:2008年2月12日

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