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ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記
トータルプロデュースが、私のロボットビジネスのスタイルです【RTソリューション】

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玉井 竜士代表取締役社長

玉井 竜士 Tamai Ryoji

代表取締役社長
2003年5月、人材派遣会社を設立する。2005年10月、NPO法人国際レスキューシステム研究機構(IRS) 神戸ラボラトリーの研究開発事業化アドバイザーに就任。2006年4月、IRSとの協力体制のもとRTソリューションを設立する。同年8月には、経済産業省の「サービスロボット創出市場支援事業」としてアサンテが行っているシロアリ防除ロボット開発プロジェクトに事業トータルプロデュース担当して参加する。また、2007年8月にはIRSとともに「サービスロボット初級安全技術者育成プログラム」を企画する。

今春、2006年度からの2カ年事業として展開されている、経済産業省による支援事業「サービスロボット市場創出支援事業」が終了する。ロボットメーカーとサービスプロバイダー、想定されるユーザーがチームを組み、実際の現場で使えるロボットの開発を目指すというものである。計9つのプロジェクトが採択され、取り組まれている。

その1つであり本連載でも扱った、アサンテによる「シロアリ防除ロボットプロジェクト」は、示唆に富む取り組みとして注目を集めている。具体的には、サービスにおけるフロントステージとバックステージの両方を意識したシステム構築*1や、各種RT(Robot Technology)の導入に伴うサービスプロセスの再設計*2といった取り組みである。

シロアリ防除ロボットプロジェクトで開発した床下調査ロボット。シロアリ防除ロボットプロジェクトで開発した床下調査ロボット。

シロアリ防除ロボットプロジェクトで開発した床下調査ロボット。搭載したカメラで周辺状況を捉え、その画像データをパソコン上に映し出す。右の写真は、2007年に鎌倉宮で実施した実証実験の様子

*1:シロアリ防除サービスは、顧客の目に見えない個所の被害や施工効果を納得させられなければ成約に至らない。加えて昨今は、一部悪徳業者の詐欺行為により、業界全体が好意的に見られていない。そこで、アサンテでは調査・提案の時点で、床下点検ロボットと連動した映像通信システムを使用することにより、被害状況を顧客や、遠隔地に住む顧客の家族にも映像配信をしたり、本部にいる専門家とやり取りしたりすることで、説得力のある営業を始めようとしている。顧客の安心感や信頼感を獲得して、営業効率の向上に結び付けることを目指している。

*2:アサンテでは、シロアリ防除ロボット開発のプロジェクトメンバーとともに、一連のサービスプロセスを洗い出し、収益の向上につながるプロセスを抽出して、その変革を図ろうとしている。プロセス全体の再構成を睨みつつ、各種RTをどのようなタイミングで導入すれば変革を達成できるのかを検討して進めている。

また、アサンテのほか計8つもの企業と団体が参画していることでも注目されている*3。ロボット本体の製造やカメラ関連部品の開発、安全認証指導など役割分担が細かくなされ、個性的な参加者が名を連ねている。
 そして、これらを束ねる役として参加しているのが、RTソリューションの玉井竜士さんである。

*3:経済産業省とアサンテが事業委託契約し、さらに同社がアサヒ電子研究所をはじめとした機器メーカー、アドバイザー、コンサルタント、研究者、NPO 法人などへ再委託するかたちで事業を推進している。参加企業・団体は以下の通り。アサヒ電子研究所(通信システム開発)、NPO法人国際レスキューシステム研究機構、(ロボットシステム研究開発)、RTソリューション(プロジェクト総括・ロボット製造責任者)、HIソリューションテクノロジーズ(カメラ関連部品製造)、スリーディーデータ(各種計測システムの導入検討・性能試験)、NPO法人安全工学研究所(安全工学に基づく安全認証指導)。さらに、以下はアサヒ電子研究所と再々委託というかたちで参画している。ナカタテクスタ(ロボット本体製造)、スリーS電器製作所(制御部品製造)。

同社は、RTを用いたコンサルティングや、RTに関連する企画立案や運営を手がける企業である。また、安全コンサルティング事業も始めている。「コンサル」と言っても、玉井さんは文系出身であるため、実際に行っているのは専門家の派遣、安全検証業務受託などである。シロアリ防除ロボットプロジェクトでは、アサンテへの企画提示や各参加者との調整などを行っている。玉井さんは自身を「トータルプロデューサー」と表現している。

アサンテでは、受託した支援事業をきっかけに今後10年間にわたる事業プランを策定し、経営革新につなげるという意向を示している。このような長期的な活動計画を立てられるのは、企画・運営に長ける玉井さんの存在があるからであろう。

ロボット業界に慣れる期間

玉井さんは起業する以前、大阪市で人材派遣会社を経営していた。神戸の震災時に親族の建設業を手伝ったことをきっかけに始めたもので、おもに建設現場や機械製造工場が顧客であった。ここで、クライアントおよび登録した人材への連絡や調整などマネジメントに関する基本を習得する。
 「派遣対象や知識レベルは相当違いますが、仕事の進め方は現在のものとさほどかわらないのでは・・・」と、振り返る。

その後、2005年10月に人材派遣会社を運営する傍ら、NPO法人国際レスキューシステム研究機構(IRS)神戸ラボラトリーの事業化アドバイザーに就任する。ここでは、IRSの研究内容を発信したり事業計画書などを作成したりするなど、事業化に向けた活動を支援した(アドバイザーとしては、 2008年3月まで活動する予定)。また、ロボット業界の研究者と知り合ったり関連する要素技術を理解したりする機会も得た。

そもそも、アドバイザーに就任したのは、“ロボット業界に慣れる期間”として勧められたからだった。ロボットラボラトリーが運営する「ロボットビジネス起業塾*4」への応募時に、そのような助言を受けたという。ここでの経験は、現在の玉井さんの業務に大きな効果をもたらすことになる。

*4:ロボットテクノロジー(RT)を使った新たなビジネスモデルを構想し、それを事業化できる人材の育成を目的としたアフタースクール。同塾から5社が起業している。

「人脈づくりを意識して活動していたわけでありませんが、結果として、各分野の先生方や開発企業さんと知り合うことができました。すでに、いくつかのプロジェクトを立ち上げていますが、こうした知識がなければ不可能だったでしょう。ここでの経験は現在の業務に不可欠だったと言えます」
 玉井さんは、そう振り返る。
 そして、ここでの約半年間の経験を経て、2006年4月、同社の設立に至るのである。

なお、同社は、IRSとの協力体制によるレスキューロボット関連技術の事業化を主目的に設立しており、上述のシロアリ防除ロボットプロジェクトは、その一環としての企画し参加したものである。同年8月から加わっている。

住宅検査ロボットにも意欲

上記のプロジェクトのほかに、玉井さんはすでに複数のプロジェクトを立ち上げ、事業化に取り組んでいる。
 既述の通り、玉井さんは技術系ではないため、具体的なシステム開発を行っているわけではない。プロジェクトに応じて必要な要素技術や製造技術を持つ企業や団体と連携し、自身は企画・運営担当として推進している。これが玉井さんのビジネススタイルである。
 その1つとして現在、住宅検査ロボットの開発に力を注いでいる。

これは、床下に敷設した軌道レールに沿って移動し、点検を行うというものである。基礎のクラックや断熱材の剥がれ、配管の水漏れ、シロアリの発生などを確認する。また点検内容は、顧客満足度を考慮して、家主もリアルタイムで確認できるようにしている。開発は、防犯カメラや各種ロボットなどの開発を手がける明興産業が担当している。

玉井さんが提案する住宅点検ロボットのイメージ

玉井さんが提案する住宅点検ロボットのイメージ。軌道レースに沿って移動して点検を行う。複雑な操作は不要であるうえ、天井裏にレールを敷設しておけば、天井の点検も実施できる。


住宅検査ロボットと言えば高機能なタイプが多い。レスキューロボットの応用として開発されているからだが、住宅点検の実施回数を考慮すると、より簡易なシステム構成でなければ開発投資の回収は難しいのではないかと危惧される。

玉井さんが提案するタイプは、新築時に軌道レールを敷設する手間があるが、複雑な制御は不要なためロボットの本体価格を抑えられる。また、軌道レール上を移動するので、複雑な操作は一切不要である。加えて、天井裏にレールを敷設しておけば、天井の点検を実施することもできる。
 中古住宅の点検には、シロアリ防除ロボットを流用するという棲み分けがなされているため、このようなシステムを構想したわけである。

また、同ロボットは移動性という特徴を持つことから、防犯への展開も構想している。大規模工場や商業施設への販売を想定しており、固定カメラでは死角になる部分のセキュリティー向上を目指しているという。

期待されるサービスロボット初級安全技術者認定

また玉井さんは、住宅点検ロボットと併行して、「サービスロボット初級安全技術者認定講座」の実施にも力を入れている。

これは、PLP(製造物責任予防*5)の理念を踏まえた、国際的に通用する安全技術者の育成を目指すというものである。国際安全規格ISO12100に基づく安全の基礎や原理、サービスロボットの基礎技術、リスクアセスメントの実施方法などを講義する。実習を交えたカリキュラムを実施し、最終日には試験をして認定(任意認定)を与える。IRSやNPO安全工学研究所*6をはじめ国内の安全の専門家とともに取り組んでいる。1月には第1回の講義を実施した。

*5:正当な手続き(インフォーム)によって許諾(コンセント)される事故は免責されるという考え。安全の認証を示すCEマーキングによって設計者が事前に安全の責任を果たす。製造物責任(PL)に対して、PLPと呼ばれている。PLPは、EC市場統合の準備として計画され、EUの発足とともに実行に移されている。ゆえに、国際規格(ISOおよびIEC)は、PLPの体系を継承していることになる。

*6:長岡技術科学大学の杉本旭教授が理事長を務める。安全鑑定を実施しており、これまでに三菱重工業の「wakamaru」や富士通の「enon」、松下電工の「HOSPI」などの安全鑑定を行っている。あくまで鑑定であり、第三者認証ではない。
 本質安全設計の考え方を求め、想定される危険源に対し、安全設計により十分リスクが低減できているかどうかを評価している。また、設計だけでは低減できない残留リスクについては、設計により可能な限り低減することを求め、ユーザーに説明責任を果たすことを求めている。鑑定は、残留リスクによりどのようなことが発生するのか、また、どのレベルであれば許容されるのかなどを考慮して行っている。

安全技術に関心を抱いた経緯について、玉井さんはこう説明する。
 「サービスロボット市場創出支援事業では、ロボットの安全を確保するための手法の開発も求めています。そこで、シロアリ防除ロボットの開発には安全工学研究所さんにも参加いただきましたが、その先生方との議論を通じて、わが国では安全に関する知識が不足していることに気づきました」

「また、その頃は、瞬間湯沸かし器によるCO中毒事故など製品事故が相次いで発生し、経済産業省の政策が消費者保護に軸足を起きつつあるように感じられました。消費生活用製品安全法の施行は、その一例と言えます。こうした事情から、安全技術という切り口で企業をサポートできるのではないかと考え始めたのです」

リスクアセスメントを実施している様子各種試験を実施している様子

安全コンサルティングでは、コンサルタントを交えての講習や打ち合わせ、リスクアセスメントなどを行う。写真は、リスクアセスメント(左)と各種試験(右)を実施している様子。

こうした思いが、安全コンサルティング事業に結び付くのである。同講座は、その第一弾の取り組みとして開講するものであり、これを通じて安全の専門家を輩出し、かつ認定を受けたエンジニアと連携、各種企業から安全プロジェクトを受託しこの事業を拡大していくことを考えているという。
 来年以降には中級および上級の安全技術者認定試験の実施を考えているという。また、3月には安全技術に関する専門のWebサイトを長岡技術大学発のベンチャー企業と共同事業で立ち上げる。

私見ではあるがと前置きしつつも、玉井さんは言う。
 「現在、どの企業でも、決算時など経理関係は外部の専門家に会計監査などを委託して、監査報告書や決算書作成の補助を行っています。同様に、リスクアセスメントシートや安全検証も各企業が独自の手法を用いて単独で作成するのではなく、外部の安全の専門家の協力を得て作成するようになると思うんです。さらには、外部の安全の専門家とタイアップしながら製品安全をつくり込む時代になると考えています。今回、講座に応募された方の多くは、それを意識されているように感じているんです」
 そう安全技術の重要性を語るとともに、事業に対する自信を覗かせてくれた。

「外部の安全の専門家とタイアップしながら製品安全をつくり込む時代になる」と、玉井さんは安全コンサルティング事業への期待を語る。

「外部の安全の専門家とタイアップしながら製品安全をつくり込む時代になる」と、玉井さんは安全コンサルティング事業への期待を語る。また、1月に実施した「サービスロボット初級安全技術者認定講座」には多くのエンジニアが参加しており、この事業への自信を深めつつあるあるという。


上記のいずれの事業は緒に付いたばかりであり、玉井さん自身「これらをいかにリフトオフさせるかが今年の課題」と話す。としつつも、「いずれの事業もより大きな視野で臨み、さまざまな分野にインパクトを与えられるようなものへと育て上げたい」と、最後に語ってくれた。

ここ数年、ロボットという切り口で起業を考える人や事業拡大を考える企業が多い。特に、地域のモノづくり企業が連携して開発に取り組む例が目立つ。ところが、きちんとしたビジネスの絵を描けていなかったり、プロジェクトマネジメントがなされていなかったりして、なかなか事業化には至っていない。開発メーカーばかりが集まっているため、そのような結果になっているのかもしれない。

玉井さんの事業も軌道に乗るかどうかは今後の取り組み次第ではあるが、シロアリ防除ロボットプロジェクトを見ていると、玉井さんの存在が、その推進に大きく寄与している。このようなプロデューサーという人材が、現在のロボット業界には求められているように感じられた。


掲載日:2008年1月29日

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