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ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記
人と機械との新しい関係構築のため、熟練作業者のスキルを活かす道具としてMMSEを普及させたい【マンマシンシナジーエフェクタズ】

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金岡 克弥代表取締役社長

金岡 克弥 Kanaoka Katsuya

代表取締役社長
立命館大学理工学部講師、工学博士。1971年7月31日生まれ。2002年、京都大学大学院工学研究科博士後期課程研究指導認定。同年、立命館大学理工学部ロボティクス学科助手に、03年には同学科講師になる。2007年、同大学発のベンチャーとしてマンマシンシナジーエフェクタズを設立。マンマシンシナジーエフェクタの啓蒙・普及に努める傍ら、パワー増幅ロボットや空中・水中ロボット、歩行ロボットなどの研究に従事する。日本ロボット学会、日本機械学会の会員。少林寺拳法の有段者(四段)でもある。

「一見すると、われわれの研究はパワーアシストスーツと同じように見えるかもしれません。確かにそうした側面もありますが、われわれが重視するのは人間と機械の力学的な相乗効果です。機械が自動的に人をサポートするのではなく、熟練作業者のスキルを直接、力学的にロボットに反映させることにより従来、機械単独ではできなかったような新たな相乗効果を生み出すことに価値を置いています。誰が使っても同じ効果が得られるようなシステムをつくろうとしているのではないのです」

そう明瞭に話すのは、立命館大学 理工学部の講師であり、同大学発のベンチャー・マンマシンシナジーエフェクタズ*1社長の金岡克弥さんである。
 「マンマシンシナジーエフェクタ(MMSE)」とは、「人間のみ、あるいは機械のみでは実現できない高度な機能を、人間と機械の相乗効果(マンマシンシナジー)によって実現する効果器」の概念および総称である*2。金岡さんが独自に提唱した。

*1:同社は、金岡さんが大学の研究者として開発した制御技術を啓蒙・普及する窓口として機能している。

*2:MMSEの概念について、金岡氏は日本ロボット工業会発行の「ロボット」2005年1月号で、次のように記述している。「ウェアラブルロボットのウェアラブルという制約を緩和することにより、搭乗型ロボットに匹敵するパワーを発揮することが可能になったロボットである。また、搭乗型ロボットにおける人間との力学的相互作用をより密接にすることによって、操作する人間がより直感的に高いスキルを発揮することが可能になったロボットである」。

すでに試作機として、指のパワーを増幅する「パワーフィンガー」、上肢のパワーを増幅する「パワーエフェクタ」、下肢のパワー増幅により歩行を実現する「パワーペダル」を発表している*3。いずれも力覚センサ*4により力の大きさと方向を検出し、その情報をもとに関節駆動力を算出し、高い増幅率での安定した人間パワー増幅を可能にしている。

パワーペダル

パワーペダル。両脚のパワーを最大7倍にまで増幅することができる。スキーのように靴を金具にはめけてサドルに腰掛け、そっと立ち上がるだけで歩行ができる。下肢パワーアシスト、リハビリ、2足歩行ロボットなどの研究用途に向け販売している。本体、制御器、制御ソフトウエア一式で2,000万円。また、人が制御しやすくなるようオートバランス機能などを搭載することを検討しているという。


パワーペダルのモータユニット部

パワーペダルのモータユニット部。力覚センサで検出した脚力の大きさと方向をもとに、モータを駆動してパワー増幅を行っている。


パワーエフェクタ

パワーエフェクタ。右腕のパワーを最大1,000倍まで増幅できる。マシュマロを摘む程度の力で缶を潰したり、重量物を移動したりすることができる。上肢パワーアシスト、リハビリ、マンマシンインタラクションなどに研究用途に向け販売している。本体、制御器、制御ソフトウエア一式で2,000万円。


*3:これらのシステムは、松下電器の社内ベンチャーであるアクティブリンク(京都府精華町)と共同開発した。

*4:例えばパワーペダルでは、脚力の大きさと方向を検出し、その情報をもとに脚の前後・左右・上下の動きを計算してモータを駆動し、増幅を行っている。

ここ数年、身体に装着して人の動作を支援するパワーアシストスーツに注目が集まっている。おもに身障者の補助を目的としており、誰でも同じように扱え、かつ同じような効果が発揮されるシステムが目標とされている。また人間の逐次動作に追従できるよう、身体と一体化させた構成が考えられている。これらのパワーアシストスーツで理想とされるのは、ロボットの力学的な特性を感じないこと、すなわち“まるで着ていないかのような感覚"であろう。

これに対しMMSEでは、自分のパワーが増幅される感覚やロボットの力学的な特性を感じながら、熟練作業者が高度なパワーとスキルを発揮することを想定している。また、人とロボットそれぞれの力学的な特性が十分に引き出されるように、装着というよりはむしろ、持つ・操る・乗るなど、身体との一体化を緩和したシステム構成となっている。

モノづくりの現場でも伝統工芸の世界でも、熟練作業者は道具の特性を巧みに使いこなすことで、素晴らしい仕事を成し遂げている。そして、彼らが持つ高度なスキルは評価されている。
 MMSEは、これに通じるところがある。彼らが持つスキルを尊重しており、それが存分に発揮させることを優先したシステムを目指している。ゆえに、扱う作業者の習熟度に応じて、発揮される能力に差が生じることを「よし」としている。一般に想像されるパワーアシストスーツとは大きく異なる哲学を持ったシステムと言える。

このように、MMSEは従来にない概念を提示し、新たなポジションをとる技術であることから、注目されつつある。

力制御ベースで熟練技能をさらに拡張

金岡さんは、2002年より立命館大学に赴任し、03年からは講師を務めている。それ以前に、京都大学大学院での博士課程学生の頃からマニピュレータに関する学術論文・学会発表を行なってきた。これらの研究がやがてMMSEに結び付くことになる。

その概念を明確に提示するようになったのは2005年頃からである。前年にコア技術となる「仮想パワーリミッタシステム*5」を完成し、特許出願を行っていることによる。

*5:正式には、「仮想パワーモニタを備えることにより制御対象の安定性を評価解析する機能を備えた制御システム」と呼ばれている。制御システムにおいて、フィードバック制御系の挙動を監視し、不安定な挙動を検知した場合、制御を遮断することなく不安定な挙動を抑制する。いわばソフトウエアリミッタシステムと言えるものである。対象となる機械システムやそれが置かれる環境、ユーザーが使用する制御則がどのようなものであっても、ユーザー制御システムの出力の安定性を保証できる。  なお、同システムは2006年度の「渡辺三彦賞」を受賞している。「渡辺三彦発明賞」とは、立命館大学理工学部出身で渡辺国際特許事務所所長である渡辺三彦弁理士の支援によって2000年度より設けられた賞。理工学部と情報理工学部における優秀な発明に対して表彰している。

同システムは、ロボットから人に流入するパワーを適切に制限することにより、ロボットからの力学的な作用により人に危害が及ぶことを防ぐものである。
 具体的には、人とロボットとの力学的な相互作用を常にモニタリングし、ロボットから人へ過大なパワーの流入を検知すると、それを抑えるよう制御に介入する。パワーの流れから、人が主体にロボットを動かしているのかどうかを判断することで、システムの安定性を保証している。
 これらは、力覚センサで検知した情報をもとにPC上で処理していることから、「仮想」という名称が付けられている。

MMSEの要となる力覚センサ

MMSEの要となる力覚センサ。ニッタ製のものを利用している。


「一般に、人の力を増幅するロボットシステムでは、増幅率と安定性はトレードオフの関係にあり、パワー増幅を大きくするほど安定性は低下します*6。これはパワー増幅のジレンマであり、力制御ベースのアシストシステムの開発を難しくさせています。また、あらかじめ教示された動きをプレイバックする位置制御(モーション)ベースのロボットが主流になっている理由でもあります。しかし、同システムの導入により増幅率と安定性の両立が達成されるのです」
 金岡さんは、同システムの意義を、そう強調する。

*6:不安定になるメカニズムを簡単に説明すると、例えば、人の力を10倍に増幅するシステムの場合、人がプラス側に動かすと、システムはプラス側に10倍に増幅して動かす。このとき人はプラス側に押された感じになるため、これを緩和するためにマイナス側に動かすと、システムはマイナス側に10倍に増幅して動かすことになり、今度はマイナス側に引き戻された感じになる。このような動作を繰り返すことによりプラス側とマイナス側の両方への増幅が繰り返され、安定性が低下する。

「一般に、人のパワーを増幅するロボットシステムでは、増幅率と安定性はトレードオフの関係にあり、パワー増幅率を大きくするほど安定性は低下します*6。これはパワー増幅のジレンマであり、力制御ベースのアシストシステムの開発を難しくさせています。また、あらかじめ教示された動きをプレイバックする位置制御(モーション)ベースのロボットが主流になっている理由でもあります。しかし、同システムの導入により増幅率と安定性の両立が達成されるのです」
 金岡さんは、同システムの意義を、そう強調する。

また、力制御ベースのパワー増幅によってもたらされる利点について、こう説明する。
 「物体に触っている感触(触覚)は、基本的には力を通じて得ています。したがって、力制御ベースのパワー増幅の導入は、すなわち対象物の感触を確かめながらの作業を可能にすることになります。このような直感的な作業の多くは、今も熟練作業者に依存しており、ここにロボットシステムを導入する可能性を提示できたと考えています」

実際、既述のパワーエフェクタは、缶を潰すような高出力の動きから生卵を持つような繊細な動きまで行うことができる。人の直感的な作業を可能にするというこれらの特徴が、冒頭で紹介したMMSEの構築に結実するのである。

モノづくりの現場では、すでに数多くのロボットシステムが導入されているが、多くは比較的単純な作業工程に適用されている。より複雑かつ高度な作業工程への適用が期待され、それに向けた研究開発がなされているが、MMSEはそれを可能にする、新たな技術として期待されている。

応用分野に適した形態で提供

現在、金岡さんはMMSEの実用化に向けた活動を展開している。将来的な用途として、工場内外や工事現場などでの重労働を想定したシステムがイラストで提示されているが、早くも「それに近いシステムができつつある」ことを明かす。

2010年前後に向けた取り組みとして、金岡さんは次のような構想を話す。
 「MMSEの概念を表現する手段として、上述の3つの試作機を開発しました。力覚センサや角度センサなど汎用的な要素部品から構成されており、どのような分野にも応用展開ができます。ですので、それぞれの作業に適した形態に絞り込み、道具として提供することをイメージしています」
 同社は、「技術の提供のみに徹し、応用分野それぞれのニーズに合わせてアライアンスをみ、製品開発を行うことを想定している」という。

災害救助や工場内外、工事現場などの重作業での応用を視野に入れている。 災害救助や工場内外、工事現場などの重作業での応用を視野に入れている。

災害救助や工場内外、工事現場などの重作業での応用を視野に入れている。すでに、これらのイラストの中のいずれかに類似したシステムを開発しているという。イラストは、T-D-Fの園山隆輔氏によるもの。

また、金岡さんは医療福祉分野への応用も視野を入れていることも明かす。
 パワーペダルは「岐阜・大垣ロボティック先端医療クラスター*7」による支援を受けて開発しているもので、下パワーを直感的に増幅することにより、下肢機能が不自由な人でも歩行できることを目指している。

*7:ロボット技術やVR技術、ITなど地域の研究を核に、域内外の関連企業が参加・結集して、医学教育から臨床現場の応用、福祉介護の現場への適応に至るシステムの開発を行っている。具体的には、「低侵襲微細手術支援・教育訓練システムの開発」、「医療診断支援システム」、「医療介護支援システムの開発」の3テーマを柱とした研究開発事業を展開し、同地域に「ロボティック先端医療クラスター」の形成を目指している。

この分野への取り組みについては、次のような考えを示す。
 「力制御ベースであるMMSEは、人が力を入れないと作動しないので、身体機能の低下に対して効果的な対策になります。短期的には、これを1つの提供方法として考えています。
 長中期的には、熟練作業者が60代、70代という高齢になっても、そのまま使い続けてくれるようなシステムを提供することを考えています。すでに歩行できなくなってしまった人を歩行できるようにすることも長期的には目指しますが、その難しさも十分理解しています。まずは段階を踏み、現役世代のうちにMMSEという道具に慣れて頂き、MMSEを使い続けることで、現役で居続ける期間を飛躍的に伸ばすのです。労働力不足の問題解決に寄与できますし、大きな市場が期待できます」

ただし今後数年間は、「起業した以上、研究開発用プラットフォームとして試作機の受注販売に注力していく」という。経営者としての堅実な一面も覗かせる。

最後に、金岡さんは研究者としての立場から、次のような目標を話してくれた。
 「どのような道具でも、使い慣れるに従い、作業者と一体になって機能するようになります。これは『道具を使っていない感覚』とは違います。作業者からすれば、道具を使っていると意識しつつも、その特性を、あたかも自身の身体の延長として使っている状態と言えます。そのような状態がMMSEの究極の姿だと考えています。
 各応用分野に適した“道具"として提供し、熟練作業者とMMSEの相乗効果によって、より高度なパワーとスキルの両立を目指したいです」


掲載日:2008年1月15日

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