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ロボ・ステーション


ロボットメーカーの開発戦略 次の一手はこれだ
「不気味の谷」を越えるレベルにまで到達したのではないでしょうか【ココロ】

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横田 祐子課長

横田 祐子 Yuko Yokota

企画部企画課課長
1990年、女子美術大学 芸術学部芸術学科卒。同年、ココロに入社。2003年、神流町恐竜センター「ライブシアター」にて総合ディレクターを務める。その後、2005年の愛知万博では NEDO技術開発機構の「次世代ロボットプロジェクト」において、アクトロイド-EXPOの開発に従事する。


松崎 辰夫主任

松崎 辰夫 Tatsuo Matsuzaki

営業部動刻営業課主任
1986年、東北大学 工学部電気工学科卒。1991年、ココロに入社。1995年、交通誘導ロボットの開発や展示ロボットの制御担当に従事する。その後、2005年の愛知万博では NEDO技術開発機構の「次世代ロボットプロジェクト」において、アクトロイド-EXPOの開発に携わる。

人型ロボット、恐竜、巨大昆虫、キャラクターロボットなど、エンターテイメント市場に魅力的なロボットを送り込むココロ。愛知万博に登場した接客ロボット「アクトロイド」は、外観や質感、仕草や表情に至るまで人らしさを追求し、世間を驚かせた。徹底して人らしさを追求する同社の開発姿勢、根底にあるロボット観について、企画部の横田祐子課長と営業部の松崎辰夫主任に聞いた。

当社は1984年の設立より、博物館や大型企画展などで恐竜ロボットを展示する動刻事業を中心に、エンターテイメントの場で活躍するロボットを開発し続けてきました。92年には巨大昆虫動刻シリーズを発表し、97年にはエアサーボシステムを搭載した恐竜動刻を開発しました。また、国立科学博物館や福井県立恐竜博物館など多くの施設で動刻制作を、また、神流町恐竜センターなど文化施設の企画・動刻制作・施工を手がけてきました。

当社における人型ロボットの開発は、こうした動刻事業の一環として位置付けられるものです。87年には、第1号機となる愛知国際児童記念館の「いねむりおじいさん」を開発しました。その後、2003年11月には国際ロボット展でアクトロイドを発表し、05年6月には、愛知万博に出展したアクトロイドをベースに開発した、レンタル専用機「アクトロイド-DER」*1を発表しました。

*1:アクトロイドのレンタル料金は、5日間で約40万円から。コスチュームやナレーションを特注した場合は別途オプション料金がかかるが、自社のオリジナルコスチュームを着せられるのが好評だという。

また、共同開発も積極的に取り組んできました。愛知万博に出展したアクトロイド-EXPOは、アドバンスト・メディアさんと共同開発したものです。産業技術総合研究所とNEDO技術開発機構の共同開発品である恐竜型2足歩行ロボットでは外皮製作を手がけました。さらに、人型ロボット開発の延長として、97 年より研究機関用の研究機材製作にも着手し、2004年に大阪大学大学院石黒研究室での成人型アンドロイド「Repliee-Q1」、「Repliee-Q1expo」などの製作に携わりました。

当社は、今年で創設より25期を迎えました。新たに「単純化」、「先進性」、「新奇性」、「意外性」の4つをキーワードに、新たなロボットの開発に取り組んでいるところです。

エンターテイメントを目指す

当社のロボット製作のコンセプトは、人を楽しませるエンターテイメントです。人型ロボットの開発では、人とロボットとのコミュニケーションのあり方を追求されていることが多いですが、これらとは一線を画していると言えます。

アクトロイドの開発も、そのコンセプトに沿って取り組んでいますが、着手した背景には、まず限りなく人間そっくりのロボットを開発したいという思いがありました。当社は、以前より人間そっくりに仕立て上げた展示用ロボットを製作していましたが、体格がやや大きく、一部をデフォルメしたものばかりだったからです。
 また、当社独自のエアサーボシステムの完成という技術的なトピックスもあります。これは、サーボバルブを経由することにより、空気圧アクチュエータ*2を精密に制御できるようにしたシステムです。圧縮空気の給排気を細かくコントロールすることにより、シリンダーをスムーズに動かすことができます。小型ながらも滑らかな動きを実現しているのが大きな特徴です。
 こうした思いと技術が結実して、2003年11月にアクトロイド1号機の完成に至ります。

*2:空気圧アクチュエータには、おもに圧縮空気の給排気により往復運動を得る空気圧シリンダー、機械的な回転エネルギーに変換する空気圧モータなどがある。(1)エネルギーの蓄積が容易で、短時間の高速動作が得られる、(2)クランプ時のエネルギー消費が少なく発熱が小さい、(3)微妙な力の調整ができる、といった特徴がある。

「なぜ若い女性をモチーフにしているのか?」という質問を受けますが、最大の理由は、男性に比べて女性型ロボットの方が、開発の難易度が高いからです。身体構造上細い個所があれば、顔も小さいです。また、若い女性の顔はツルッとしており、シワを出さないで表情を出すのが難しいです。チャレンジするに値するテーマだからこそ、取り組んでいると言えるでしょう。

アクトロイドを支える要素技術

開発したアクトロイドのおもな特徴は、リアルで存在感のある外観と表情豊な滑らかな動き、自然な会話にあります。動きに関しては、人らしい動きを徹底して追求しており、例えば、視線を向けてから顔を向けるときの動作の流れや、立っているときの微少な揺らぎなどを取り込んでいます。
 以下に、その詳細を説明します。

まず外観ですが、独自の外装製作技術により顔や手、プロポーションなどをつくり込んでいます。眼球やまつげ、髪型に至るまでリアルに再現しています。万博では4人のアクトロイドが登場しましたが、すべて異なる顔や表情に仕上げました。

また、表情豊な滑らかな動きは、機構設計技術によるものです。後述の「アクトロイド-DER2」では47個所の動作点数を有しています。等身大の外見の中に機構を収め、唇の動きや顔の表現までも再現しています。
 これら動きは、上述のエアサーボシステムにより実現しています。エアサーボシステムで駆動する機構部にはセンサを設置しており、動作状況をコントローラにフィードバックし、サーボバルブを細かく調整することで緩急をつけた動作を可能にしています。

2006年10月にデビューした、アイドル系の「アクトロイド-DER2」。

2006年10月にデビューした、アイドル系の「アクトロイド-DER2」。18歳の女の子を想定して開発している。47個所の動作点数を持ち、表情豊かななめらかな動きを実現している。


さらに、愛知万博で発表したアクトロイド-EXPOではさまざまなシチュエーションでも会話ができるようシナリオも工夫しています。シナリオは、これまで当社が培ってきたノウハウを対話フロー設計に反映させています。音声認識にはアドバンスト・メディアさんの「AmiVoice」を用いています。
 AmiVoiceは、事前に対話者の話し方のクセを学習させる必要がないうえ、アクセントや会話スピードに左右されずに認識できるのが特徴です。また、ノイズキャンセラーも搭載しており、雑音が多い環境下での使用にも耐えられます。

音声については音声合成ではなく、リアリティを追求して、声優さんの肉声を録音した音声を用いています。会話データベースを構築し、録音された音声をピックアップして単語をつなげていくことで音声をつくり出していますAmiVoiceは単語だけでなく連語で認識できるので、例えば、来場者に「万博、おもしろいですか?」と聞かれると、「万博の」、「何が」、「どうですか?」という文として認識し、適切な答えを関連付けて返事をします。

セリフは何千も用意しており、例えば、「ありがとうございます」と言うとき、会話の流れを受けて、ちょっとバカにしたような言い方をされた場合は皮肉っぽく言ったり、儀礼的に言ったり、うれしいという感情を込めて言ったりします。いろいろなパターンを用意しましたが、それが自然な会話を実現する総合演出力につながっています。

不気味の谷を乗り越えたのでは

アクトロイドは、プレイバック方式で事前に記録している演技や、ナレーションを再生して繰り返すナレーション機能により、展示会の案内役やイベントなどでの司会などをこなすことができます。

これまでに、愛知万博での会場・施設案内をはじめ、アクトロイド-DERは、国際フロンティア産業メッセ2005でのロボットパフォーマンスステージでの挨拶、プライベートショーでの企業PRなどで活躍しています。2006年には、米国の雑誌「ワイヤードマガジン」主催の次世代先端技術展(NEXTFEST)で招待出展し、艶やかな振袖姿で日舞「藤娘」を披露しました。

愛知万博では、来場者の口コミにより人気を得ることができました。ログに残っている音声認識の記録を見ると、『すごく会場が混んでいてどこのパビリオンにも行けなかったけど、あなたと会話できてよかった』とか、『あなたはアクトロイドですよね。お話をするのは2回目です』といった会話が残っていました。アクトロイドとの会話を目的に足を運ばれた方が、少なくなかったことが分かりました。

これらの反応を通じて感じるのは、人間に近い容姿を持っているアクトロイドには、無機質な感じのロボットとは接し方が異なるということです。かわいい女の子なので、自然と優しく接してしまう、かわいい女の子に注意されると許せてしまう、というメンタル面での効果を発揮しているのだと思います。ですので、ユーザーに対して「機械を優しく扱ってね」と、押し付けがましくなく言えるのです。そこに、当社がリアルな人型ロボットを目指している意味があります。

アクトロイドの開発では、エンターテイメント性の追求としてリアリティを出すため、実在の人物を参考に、限りになくそれに似せることを目標に置いています。
 しかしながら、顔の好みというのは人により異なります。製作過程では、「鼻はもう少し高い方がいい」といった意見がスタッフから出ることもあります。それを反映するともっと美人になるかもしれませんが、ともすると人工的な印象になり、人間臭さが失われてしまいます。この人間的な生命の輝きを損なわない外見の造形にはいつも苦労します。

かといって、人間の容姿をしたロボットの問題として挙げられる「不気味の谷*3」に挑戦しようとしているわけではありません。技術一辺倒のアプローチではなく、人を楽しませるもの、喜んでもらえるものを目指しています。上述のような好意的な反応を見ると、こうしたアプローチの結果、不気味の谷を越えることができたのではと感じています。

*3:ロボットが人型に近づくにつれて、ロボットが人に与える親近感が上昇するが、あまりにも人型になり過ぎると、マネキンのように、時として逆に不気味さを与え、親近感が急激に下がる現象が存在する可能性がある。その親近感が急激に下がることを指して「不気味の谷」と言われている。1970年に、ロボット工学者の森正弘氏が提唱した。

アクトロイドで培った技術の応用にも意欲

2006年10月には、アイドル系としてアクトロイド-DER2をデビューさせました。アクトロイド-DERは、会場の案内役ということで若手の女子アナのイメージで年齢は24歳を想定していますが、男性の方から「10代の女の子があるといい」という声が多数あがりました。そこで、DER2は18歳を想定して開発しています。

アクトロイド-DER2アクトロイド-DER2

アクトロイド-DER2は、女の子の憧れ“小顔”と“ナイスバディ”をもつ。司会やご案内役として幅広く活躍している。

アクトロイドの顔は、数種類を製作した中で、好感度の高いものを選んでいます。といっても、往々にして男性に好評な顔は女性には不評で、実際には女性の意見を中心に拾い上げて反映させています(笑)。女性はクールな大人のイメージを支持しますが、男性にはややとっつきにくく、かわいいアイドル系を好む傾向があるようです。そんなことも分かってきました。

最近は、アクトロイドのほか、その技術を応用した分野にも力を入れ始めています。その一例として、日本歯科大学付属病院医療人GP推進委員会さんに、モリタ製作所を通じて納めた「シムロイド」があります。これは、歯科実習生のための実習用シミュレータの患者ロボットです。顎関節の動きや口腔内まで精密につくり込んでいて、人間の患者さんと同様の臨場感が再現できています。また、歯にはセンサを搭載しており、歯科実習生の治療の状況を記録できます。

アクトロイドの技術応用ならではのポイントは、苦痛や不快の表情や、嘔吐反射などの表情ができることです。いかにも医者を信用していない不安と不信に満ちた表情で実習生をギロッと睨み、実際の治療現場と同じような雰囲気をつくり出します。実習生には相当なプレッシャーがかかるでしょう。このような研究開発用の需要も着実に増えてきています。

アクトロイドに関しては、どうしても人気商売という側面がありますので、引き続き展示会の案内などでオファーをもらえるように工夫しなければなりません。現段階では、案内役が中心ですが、機能アップやさらなる表現力の向上で、できる仕事の幅を広げていきたいです。

当社では将来、アクトロイドのようなリアル志向のロボットがもっと普及していくと考えています。その際、人がネガティブなイメージをもたずに、より親近感をもって大事にしてもらえるような存在にしなければなりません。研究というスタンスではなく、対話してくれる人たちの反応を見ながら試行錯誤を重ねていくことで、そうした存在へと昇華させたいです。

(取材&テキスト作成 クリエイティブ・ビジネス・エージェンシー 山田 尚子)


掲載日:2007年12月25日

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